ぼちぼちやりま!

悪い時が過ぎれば、よい時は必ず来る。
事を成す人は、必ず時の来るのを待つ。
焦らず慌てず、静かに時の来るのを待つ。

海賊と呼ばれた男

2014-03-08 11:44:13 | 読書
「海賊と呼ばれた男」 読了。

戦前戦後の混乱期を一途に切り抜けた石油屋の物語。立志伝、昭和史、労働問題、国際政治、いろんなアングルから読める本だが、どこまでがノンフィクションなのか。主人公を別名にしたところに作家が用意した逃げ道を感じ、タイトルにもやや違和感を覚える。
そんなことは別にして、確かに本屋大賞を獲る理由がわかる。面白いのだ。文体は簡潔で、一気読みさせる工夫があちこちにちりばめられ、飽きさせない。「原稿用紙1枚に3か所笑いをとるように書いています」という宮藤官九郎の言葉を思い出させる。作家百田直樹はエンターテイメントに秀でたストーリィテラーではある。

ただ作者が主人公にのめりこんでしまうと、宗教団体の信者が教祖を描いた伝記物と大差がなくなってくる。周りの人間を矮小化し、嫌味な事実はあっさり消去し、都合のいいエピソードばかりを取り入れてしまうのだ。民族主義礼賛からはじまり、そこそこにちりばめられたウソを見極めながら読まねば、判断を誤る。
イランタンカー派遣が<歴史的愚行>になり、休日も残業代もない会社は<ブラック企業>の烙印を押されたかもしれない。突進する主人公の足跡に無残な悲劇が転がっていなかったかどうか。

公共放送の経営委員ながら選挙で元自衛官を応援し、「南京虐殺」はなかったと断言する作家の一連の挙動が、この本を読む老眼鏡に色眼鏡を掛けさせてしまった。


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