与勇輝(あたえゆうき;本名)は天才だという人がいる。
10年ほど前、何かの展覧会で、思わず足を止めてしまった。
人形とはとても思えなかった。
リアリズムを超えた人間の感性を、ここまで表現できるものなのかと、
木綿の人形を前にして、一歩も動けなくなってしまった。
***
詩人和合亮一の「詩の礫(つぶて)」(ツイッターでの発言)が新聞に紹介されていた。
【 5日ぶりの買い出しをする。トマトを買おうと思った。余震。店外退避。戻る。トマトを買う。家に持ち帰り、塩を振ってかじりつこうか。熟れたトマトを持ってみて、分かった。野菜が涙を流していること。】
「野菜が涙をながしている」と言った詩人のつぶやきに出会った時、
なぜか与勇輝の人形を思い出した。
貧しい子供たちをモデルにした人形たちは、
敗戦という大きな不条理の中でも、一人ひとりが十分な個性を主張し生きていた。
重き流れに耐えながら、年相応に振舞っている表情に、したたかな生命力と感動を覚えた。
***
今回のフクシマ原発事故は、
「安全、安心、そしてクリーン」というコピーを微塵にも砕け散らせただけでなく、
その全貌を想像することすら出来ない程の、大きな負の遺産を残してしまった。
絶望をおもうのはたやすいが、トマトが笑う明日を創造するためには、
木綿の人形たちが発するような若いしたたかさ、そしてしなやかな生命力が必要なのかもしれない。
10年ほど前、何かの展覧会で、思わず足を止めてしまった。
人形とはとても思えなかった。
リアリズムを超えた人間の感性を、ここまで表現できるものなのかと、
木綿の人形を前にして、一歩も動けなくなってしまった。
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詩人和合亮一の「詩の礫(つぶて)」(ツイッターでの発言)が新聞に紹介されていた。
【 5日ぶりの買い出しをする。トマトを買おうと思った。余震。店外退避。戻る。トマトを買う。家に持ち帰り、塩を振ってかじりつこうか。熟れたトマトを持ってみて、分かった。野菜が涙を流していること。】
「野菜が涙をながしている」と言った詩人のつぶやきに出会った時、
なぜか与勇輝の人形を思い出した。
貧しい子供たちをモデルにした人形たちは、
敗戦という大きな不条理の中でも、一人ひとりが十分な個性を主張し生きていた。
重き流れに耐えながら、年相応に振舞っている表情に、したたかな生命力と感動を覚えた。
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今回のフクシマ原発事故は、
「安全、安心、そしてクリーン」というコピーを微塵にも砕け散らせただけでなく、
その全貌を想像することすら出来ない程の、大きな負の遺産を残してしまった。
絶望をおもうのはたやすいが、トマトが笑う明日を創造するためには、
木綿の人形たちが発するような若いしたたかさ、そしてしなやかな生命力が必要なのかもしれない。