とあるゲイの本にあった話しである。
裸のお姫さま
むかしむかし、そのまたむかし。
お買い物が大好きでファッションに大変興味を持つ、
それはそれは美しいお姫さまがおりました。
お姫さまは毎日のように買い物を楽しんで着飾っては、
パーティーヘと出かけていきました。
しかし、女性からは「ステキなお洋服ですね」と話し
かけられるのに、男性はみな話しかけてくれよせん。
そんなある日、ドレス屋の主人が言いました。
「もっと高級なドレスを着れば、男にモテるのですよ」
そうか、その手があったのか。
お姫さまはドレス屋の主人の言うままに高級ドレスを
仕立てさせました。
「とてもよくお似合いになりますよ。これを着てパー
ティーヘ行けば、すべての男性がお姫さまの虜でしょう」
ドレス屋の主人はそう言いました。
そして、お姫さまはそれはそれはお高いドレスを着て
またパーティーヘと出かけました。
しかし、またしても男性からは声をかけられません。
どうしてだろう。こんなにステキな服を着て綺麗になった
のに……。
お姫さまが悩んでいると、カバン屋の主人が声をかけま
した。
「お姫さま、せっかくステキなドレスを着ているのです
から、それに見合ったステキなバッグを持たなければ
なりません。それが男をオトす極意なのです」
なるほど、たしかに、高級なドレスに安物のバッグは
不釣り合い。お姫さまはすぐに高価なバッグを取り寄せ
ました。
「あぁ、なんと素晴らしい。このバッグをそのドレスに
コーデすれば、間違いなく、お姫さよはモテモテです」
そうカバン屋の主人におだてられ、お姫さまはパーティー
ヘと出かけていきました。
しかし、やはり声をかけてくれる男性はいませんでした。
それどころか、帰り際に「隙がなさそうな女だ」という
声が聞こえました。
隙がない?
こんなにもいい服を着ていいバッグを持っているのよ?
隙がないからなんだっていうの?
きっと世の中の男たちは見る目がないのだとお姫さまは
思いました。
するとそこへ、靴屋の主人が声をかけました。
「ノンノンノン、お姫さま、ダメでございます。オシャ
レは足元から。
ピンヒールで美しい靴をお買いあそばせ。男は美しい靴を
履く女性に夢中でございます」
お姫さまは言われるままに靴を買い、高級ドレスに高価な
バッグ、そして美しい靴を履いて、またまたパーティーヘ
出かけましたが、男性からはまったく声をかけられる気配も
ありませんでした。
それどころか、またしても帰り際に「金がかかリそうな
女だな」という声が聞こえました。
いったいどうして?
綺麗になるということはお金をかけること。
いい女になるということは、お金をかけていいものを持つと
いうこと。
そんなこともわからない男たちに、お姫さまはほとほと呆れて
しまいました。
そこへ、今度はネイル屋の主人が声をかけてきました。
「お姫さま、なんですか、そのお爪は。いけません。もっと
華やかにギラギラにモテネイルで飾らなければ、男性の目は
引けないのですよ」
そして、ネイル屋の主人はお姫さよに派手なネイルを施
しました。
「う-んワンダフル。これでモテ子の中のモテ子になれます」
そう言われてお姫さまは、高級ドレスに高価なバッグに美しい
靴を履き、モテネイルでパーティーヘと出かけました。
それなのにどうしたことでしょう。
またしても男性から声をかけられるどころか、去り際には
「怖そうな爪、あんなんで家事ができるのか?」と言われて
しまいました。
こんなに可愛いネイルにしたのに。
この良さがわからない男なんてつまらない。
わたしの良さを知ってくれる男性にチヤホヤされて愛されたい。
家事なんてしなくていいって男性はこの世にいるはずよ!
そう思っていたお姫さまに、今度は化粧屋の主人が声をかけ
ました。
「お姫さま。もったいのうございます。そんなにステキな
ご容姿なのですから、もっとしっかりお化粧をしましょう。
男をオトすモテメイクを伝授いたします。ついでにモテヘアーも
してさしあげますよ」
化粧屋の主人に言われるまま、お姫さまは大量の高級化粧品を
買い込みました。
高級なドレスに高価なバッグ、美しい靴に、モテるネイル、
モテる化粧にモテるヘアスタイル。
全身すべて、言われるとおりにコーディネートしたお姫さまは、
今度こそとパーティーヘ行きました。
しかし、お姫さまは唖然としました。
パーティーにやってきた女性すべてが、みな似たような服を着て
いたのです。さらに、似たようなバッグを持ち、似たような靴を
履き、似たようなネイルにメイクに、ヘアスタイルまで!!!
これでは、誰が誰だか区別がつさません。
それに男性も声をかけてきません。
お姫さまはついに我慢がでさずに、一人の男性をつかまえて
訊きました。
「わたしのことをどう思いますか? 高級なドレスを着て、
高価なバッグを持ち、美しい靴を履き、綺麗な爪に男ウケする
メイクにヘアスタイルをしているわたしは、いい女じやありま
せんか?」
しかし、男性はこう言いました。
「貴女がいい女かどうかはわかりません。わたしには高い服も
安い服もその違いがわかりません。
服を脱いでしまえばそこには価値がありません。化粧は落として
しまえばそこにあるのは貴女の素の顔です。
美しい靴を脱げば貴女が本当はどんな人生を歩んできたのか
わかります。
いくら着飾ってもそれは物に頼っているだけで、本当の貴女では
ありません。すべてを脱ぎ捨てて裸になったとき、貴女には何が
残っているのですか? 誇れるる何かを持っているのですか?
もしも貴女自身の中に素晴らしい何かがあれば、きっと貴女は
キラキラと輝いて見えるはずです。そして、そんな貴女を見て
くれる男性が、必ずいるでしょう。
でも、いまの貴女にはとても中身があるようには思えません。では、
失礼いたします」
そして、男性はお姫さまの前から立ち去リました。
お姫さまは愕然としました。
そんなこと誰も教えてくれなかった。
みんな、モテるためにはあれを買え、これを着ろと言い、その
とおりにしたら褒めてくれたのに、それはただわたしにお金を
使わせたかっただけ。
お金を持っているお姫さまを利用して、自分たちが儲けた
かっただけ。
それなのに、言われるままに着飾リ、いい女になった気に
なってひとりで浮かれていたなんて……。
でもこの先、服もバッグも靴もネイルもヘアメイクもなく、
どうやってモテればいいの?
お姫さまはさっぱりわからなくなりました。
そうだ、その方法をさっきの男性に訊こう……。
そう思い、あわてて追いかけると、男性は馬車に乗るところ
でした。
「待って……待ってください」必死に声をかけましたが、
その声は届かず、男性は馬車に乗り去ってしまいました。
お姫さまは男性が馬車に乗り込む際、何かを落としたのに
気づさました。
急いで駆けよると、名刺が一枚落ちていました。お姫さま
は名刺を拾いました。
《恋愛アドバイザー カーネ モ-ケ》
「あのお方は恋愛アドバイザーだったのですね」
お姫さまは男性のもとを訪れ、今後の人生についてアドバイス
をもらおうと心に誓ったのでした。
そこで、「いい女」にかこつけた美顔器などを売リつけられること
になるとも知らずに-
『裸の王さま』ならぬ、裸のお姫さま、か。
そういえば、美顔器を買わされたこと、あったな……。
わたしはちょっと吹き出しそうになった。
一度しか使わず、今じゃどこにあるかもわからない。そんな
どうでもいいことまで思い出してしまった。
たしかにアサコの言うとおり、男性には理解のできない女の
オシャレはたくさんあると思う。自分らしさを貫くことを選ぶか、
男性目線に立ってオシャレをするか。
それ自体はその人の生き方だから、どちらを選択しても間違い
ではないのだろう。
でも、きっとアサコはきちんとわかっているのだ。
高い靴を買ってくれない旦那さんが「女ゴコロに理解がない」
のではなく、高い靴など履かなくてもそばにいてくれるだけで
いい、そう思う「男ゴコロ」があることを。
以上。
あまりにも、まとまった文章なので、ほとんど借用してしまっ
た。
このゲイの著者が書いている本の中に、「綺麗売り」という
言葉が頻繁に出てくる。
わたしたちの世代には、おそらく「綺麗売り」という言葉には
なじみが薄いと思うのだが。
わたしの個人的な感じ方かも知れないが、この「綺麗売り」と
いう言葉には、なにかしら、上げ底的な印象を受けてならない。
ネットを検索したら、次ぎの文章が出てきた。
「上げ底」とは
箱や桶などの底を少し上げて作ったもの。外見からは実際より
中身が多く見えるようになっている。
転じて、実力や実物、実態以上の評価をして、あたかもそれが
もの凄く秀でているように錯覚せれることを指す。
「上げ底景気」とか「上げ底美人」、「上げ底女優」などと
いった使われ方をする。
ということであるが、「綺麗売り」を連発する女性は、この
言葉をどう思うのだろう。
ところで、「メッキがはがれる」という言葉は、今では、もしか
すると、死語になっているかもしれない。
これも、ネットで探してみると、
いわゆる「メッキがはがれる」というと、偽物がついにその正体を
現す、という悪い意味でつかわれますが、諺にまで使われるくらい
だから~
とかいうのがあった。
このいずれの言葉も、実態以上に、見せかけを取り繕う。という
ことでは、同じである。
そういえば、「はったり」という言葉もあったし、「見かけ倒し」
という使われる身になると恥ずかしい言葉もあった。
わたしたちの世代は、中身と外面が乖離しすぎることは、快く
思われなかったという思いがするがどうだろう。
いずれにせよ。「綺麗売り」の連発には、抵抗がある。
「綺麗売り」に励まなくても、売れる者がいるのは
事実だし、「綺麗売り」を言い出した時点で、売れ残り
宣言をしているような気もするのであるが。
ところで、だいぶ前に、ブログで紹介した文章がある。
「なぜ、この人たちは金持ちになったのか」
トマス・J・スタンリー=著 広瀬順引=訳
日経ビジネス文庫
にあった内容では。
億万長者の結婚生活の成功を支える配偶者の資質
上位5位
1 正直
2 責任感がある
3 情愛豊か
4 有能
5 協力的
夫婦とも、同じような考え方のようである。
億万長者が配偶者となる人の資質の中で最初に
惹かれた点
上位5位
配偶者の資質
1 知性的
2 誠実
3 明朗
4 信頼できる
5 情愛豊か
以上。
となっているが、そのような相手を見つけることも
そう簡単ではないし、何よりも、自分自身がその
ようにあることも簡単ではない。
と、書いたが、「綺麗売り」にうつつを抜かす「姫君」
これをどうみるのだろう?
本当に野心があれば、それ相応の努力は、必要だが。
「綺麗売り」でオトせる男、それだけの男と見なさざる
を得ないのではないか?
なんて、やけに、「綺麗売り」を目の敵にしてしまった?
この話しでは、「姫」とあるように女性で話題が展開しているが、
なんのことはない。男性だってありうることだ。
だいぶまえに、テレビで、収入のほとんどを衣類代にあてている
男性の紹介があったが、自分の中身を充実することなく、衣装で
うわペだけを着飾ることに虚しさを感じないのか不思議でしよう
がなかった。
仕事上の実力や生活力で、能無しであっては、着飾ることに
秀でたって、揶揄されるだけではないのか。
そういうことでは、真の自尊心は、保証されないのでは。という
ことである。
それにしても、見てくれのファッションに関することだけでは
ない。
男性にして見ても、一端の者に見られたいとか、一角の人物で
ありたいとかで、車に拘ったり、時計に拘ったり、それなりに、
何かとブランドものを持ちたがったり、やたら、人を非難して
正義感ぶったり、代案の提起のできない誹謗中傷で、賢しら
ぶったり、はたまた、身の程をわきまえないさもしく見苦しい
野心に、うつつを抜かしては、辺りを鼻白む雰囲気にして、
憚らない者がいる。
なんのことはない。そんなこんなで、物入りの生活にアップ
アップしていること、男性も少なくはないだろう?
だから、かなずしも、この「姫」だけに限ったことでは
ないということで、示唆に富むと感じ入った。
ただ、時に騙されてみるのも、その人の資質を向上させる
機会となることもあるので、やっかいだ。
わたしごとで、言えば、昔、楽譜を書きたくて、まったく
わたしの勉強不足だったせいだが、ミュージ郎というセット
の商品があって、買ってしまった。
DTMの商品だが、打ち込みようの楽譜をてっきり、楽譜が
書けると思ってしまったのだ。
ちょうど、この時期に、わたしの仕事場の近くに、マックの
ディスプレイ一体型のPerfoma 5200があったことも、幸いし
た?
これにインストールして、楽譜を書いてみようとなんて、
思ってしまった。
しかし、後で、振り返ってみると、なんとも無謀な行為を
していたことに気づいた。
なにしろ、パソコンの起動と終了がまだ、まともに分かって
いなかったし、なにしろ、ワープロさえうてなかったし、
このソフトが、英語で書かれていたので、どうして、インス
トールできたのか、まったく思いだせないのである。
いずれせよ、このソフトではいくら頑張っても楽譜が書けない
ことが分かり、半年後フィナーレという楽譜の作成ソフトに
辿り着き、やっと、念願を果たすことができた。
結局、これは、とんでもない勘違いだったが、DTMに取り組む
ことになった。なんにもMIDIの基礎的な力のないままではあるが、
編曲や作曲にのりだすことになった。
それから、5年ほど経って、DTM環境をセミプロ級まで整え、
DTMに関する著書を片っ端から、買い集めて、とりあえず、
我流ながら、マスクプレー等のBGMや効果音等の作成で、
スタッフの一員として活動ができるようになった。
それまでは、シンセサイザー等のキーボードを並べて、即興
で、ステージの舞台に合わせて、BGMや効果音を演奏していた
ので、格段の表現力を得ることができた。
退職したいま、このような活動をすることはなくなった
が、このようなことができるにあたって、DTMの興隆期に
めぐり合わせたことは、とても、幸運なことだったと、
後日思うようになった。勿論、そのような職場にいたこと
も最大の幸運であったが。
この時期は、ちょうどDTMの興隆期で、機材も本も次から
次へと、販売されていた時期で、今ではあの盛り上がりが、
バブルが消えたかのように静まり返っている。
あの時期、今になって振り返ると、とんでもない散財を
したかに思えるが、あのDTMの熱気にあふれた時代に、
よくも悪くも時代のムードに煽動されていなかったら、
このような貴重な経験をすることはなかったろうと
思うと。
時代が囃し立てることに、ある程度、騙されるのも必要悪
ではなんて、自己弁護したりすることもある。
それにしても、
現代社会は、誰もが、誰かに散財してもらうことによって、
自分の生活が成り立っている。
新聞のチラシの広告で象徴されるように、年がら年中、
お買い得だと、出費を煽って止まない。
わたしは、子どもの頃
桃の節句や端午の節句のお祝いをしたことがない。
勿論、七五三なんてのも、知らない。
今では、当たり前だが、わたしの世代は、誕生会なんて誰も
したことはないだろう。
わたしは、東京にいたせいで、成人式も参加していない。
母の日、父の日、敬老の日、クリスマス、歳末大売りだし、
新年の福袋、バレンタインデー、ホワイトデー、et cetera。
われわれは、人並みであろうとして、抗しがたい散財の
誘惑の波に溺れそうである。
なんていう時代なんだろう。
みんな、モテるためにはあれを買え、これを着ろと言い、その
とおりにしたら褒めてくれたのに、それはただわたしにお金を
使わせたかっただけ。
お金を持っているお姫さまを利用して、自分たちが儲けた
かっただけ。
それなのに、言われるままに着飾リ、いい女になった気に
なってひとりで浮かれていたなんて……。
でもこの先、服もバッグも靴もネイルもヘアメイクもなく、
どうやってモテればいいの?
お姫さまはさっぱりわからなくなりました。
ということだが。
われわれは、なんという時代に生きているのだろう。
今日も、アクアを聴きながら。
Aqua
作曲:坂本龍一
娘の坂本美雨のために作った曲のピアノバージョン。
美雨の声がヒーリング的な要素が強いことから、意識的にニュー
エイジ系の曲となった。坂本が作曲した中では1、2を争うほど
シンプルで、メジャーコード(ソ、シ、レ)で始まる点も珍しい。
アルバム『/05』に再収録されている。アルバムでは水中用スピー
カーを水槽の中にいれ、流した曲を収録した。[要出典]