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リタイアーのよもやま話

55歳からのハローライフ

2012-01-01 23:49:25 | 人生

55歳からのハローライフ

村上 龍

結婚相談所

「最初の見合い「(6)


 その離婚経験者は、相談員さんがびっくりするくらい、
自分の結婚生活や離婚について綿密に分析していて、相手
の希望も非常に具体的だったという。

 身長はできるだけ高く、学歴は旧帝大の国立大、もしくは
早稲田慶応、一部上場企業の管理職で、多趣味で、しかもテ
ニスとかヨットとか登山などアクティブなものが望ましく、
ユーモアを解し、話術に長けていて、子どもはいないほうが
よいが、いる場合は「責任済み」でなければいけない。

 そんな人、いないですからね、相談員さんは両手を口に
当てて笑い、つられて中米志津子も声を出して笑った。

 「いや、もちろん世の中にはそういう男性はきっと大勢い
ますよ。でも、そういった方はいろいろな意味で安定して
いらして、何かの事情で離婚されても、再婚を望めば比較
的楽に実現されるんですよね」

 その女性管理職は、紹介できる相手がいなくて、たまた
ま近い条件の人がいても頭ごなしに拒んで、しばらくして
人が変わったようになり、相談所の外でいろいろな男と付
き合うようになって、やがて二十歳年下の詐欺師のような
ワルと出会い、ほとんどの財産を失う羽目になったのだそ
うだ。

 「所詮、結婚相手と言っても、男と女ですからね。頭で考
え決めたことすべてに、心とからだが従うということはない
んですね。別れた夫とはタイプが違う男性、という条件その
ものは悪くないんですよ。

 ただし、それよりも大切なのは、自分がこの先どんな人
生を生きようと思っているのか、ということなんです」


以上。

小説とはいえ、離婚した女性管理職が、再婚相手を求めて
考えている男性への要求のレベルの桁外れに高いこと。

びっくりである。

実際に、このような女性がいるものだろうか。

こんな男性がいるのなら、わざわざ、この小説で登場する
ような離婚した女性管理職と再婚するものか。

いくらでも、再婚を希望する女性がいるはずだし、とくに、
相談しなくても、周囲の方で放って置かないはずだ。

このような人が結婚相談所なんて、くるはずがないと思う
のだが。。

小説の話しに、とやかくいうのも可笑しいが。

現実にそのような女性がいるとすれば、そのようなことが
理解できない女性だから、離婚もしたはずだ。

なんて、いらんことを考えてしまう。

それはそれとして、この小説に関心を持ったのは、次ぎの
文章が気になったからである。

それよりも大切なのは、自分がこの先どんな人
生を生きようと思っているのか、ということなんです

これである。

実は、この文章が気になったのは、理由がある。

先日、本屋でブラブラしていたら、「婚活」をテーマとした
新書があったので、ちょっと立ち読みをしていたら、その
内容の凄さにびっくりしてしまったからである。

「婚活」という言葉を聞くようになって、久しいが、わたし
たちの若い時代は、「婚活」という言葉はなかったし、今の
時代でいう「婚活」というような気張ったことで、結婚した
人は、いなかったのではと思う。

できる人は、自然と結婚したのであり、できない人は、
それはそれで諦めたと思う。

この本を読むと、まるで、買い物をするかのような調子で
結婚をしようとする様が紹介されており、たじろいでしま
う。

ちょっと、何度かつきあって、お互いしゃべるだけしゃ
べって、なんとなく気が合いそうになると、今すぐにでも、
結婚して、子どもを生もうなんて、セックスをけしかける
という話しである。

まるで、盛りのついた発情期の猫と変わらない。

これが、若い女性の話しだそうで、このようなことの
繰り返し繰り返しで、なんとか結婚しようとなんて、
日夜、もくろんでいるとなると、魑魅魍魎の世界で、
恐ろしくなる。

そういえば、最近読んだゲイの本でも、やはり、結婚、
男、男、日夜、盛りのついた猫のような生活が日常である
世界がテーマになっていたが、いろんな人がいるものだ。

この「婚活」をテーマとした本を立ち読みして、違和感を
覚えたのは、結婚さえすれば、人生すべて、これで、万事
めでたしめでたしの発想に、違和感を覚えたのである。

まるで、かつてあった。一流大学にさえ、入学できれば、
後は、人生万事うまくいくという発想と変わらないからで
ある。

結婚さえできれば、人生すべて、それで、うまくいくと
いう単純で短絡的な考え方で、はたして、その後の長い
人生、うまくいくものだろうか。

三浦友和の「相性」という本をちょっと、立ち読みして
みたが、二人の人柄と、その相性があってこそ、ベスト
カップルと称されるのだなと、感じ入ってしまった。

先般、ちょっと立ち読みした「婚活」の新書に出てきた
婚活女性の生態の浅ましさ、おぞましさは、身震いする
思いだ。

「~それよりも大切なのは、自分がこの先どんな人生を
生きようと思っているのか、ということなんです」

村上氏は、このように書いているのだが、身の回りで、
離婚をした夫婦を観察すると、なかなか容易ではない
ようだ。

それはそうと、必ずしも結婚だけの話しではなく、いわ
ゆる就職の問題でも、意外と漠然としているのが、大方では
ないかと思ったりして、考えこんだりしてしまった。


「~それよりも大切なのは、自分がこの先どんな人生を
生きようと思っているのか、ということなんです」

肝要な話しではと思って、大変印象に残ってしまった。