森林ジャーナリストの裏ブログ

表ブログに書けない、書く必要もないドーデモ話をつらつらと。

「安い外材」

2007-04-01 01:35:30 | 林業・林産業

「安い外材」。

日本の林業の不振を紹介する際に、常に原因として語られる言葉だ。いい加減にしてほしい、これは死語である、大きな間違いであり、林業不振を外部要因に転換する言い訳にすぎない……と、何度も訴えてきた。

が、治らない。
マスコミの林業問題に触れた記事には、必ずと言ってもいいほど、このフレーズが登場する。マスコミで林業に詳しい記者などほぼいないから、おそらく別のマスコミの言葉の孫引きか、取材先(森林組合など)で聞いたのだろう。それを検証することもなく使う。それを聞いた別のマスコミや林業関係者までが信じて、また使う。そうした連鎖が、この禍々しい言葉が消えずに使われるのだろう。

最近、某シンポジウムのパネラーに呼ばれた某森林組合連合会のお偉いさんまで使っていた。思わず、「外材は安くない。国産材の方が安い」と私は突っ込んだ。そして「それを一番知っているのは、森林組合ではないか」

なぜ「安い外材」というフレーズがこんなに出回るのか。林業界のお偉いさんが、現在の国産材の値段を知らないわけではあるまい。(だって、別のところでは国産材の値段が安いことを嘆くのだから。)

どうやら、「安い外材」というのは、林業を語る際の枕詞と化しているらしい。まさか、と思っているが、本当に「国産材の方が安い」ことを知らない森林組合のお偉いさんもいるようだ。そもそも、外材の値段を知らないのかもしれない。比べることをしないで、この言葉を使えば、林業不振を説明できると刷り込まれている。
しかも、外材のせいにすれば、国内林業界の責任を考えずに済む。悪いのは 外国だ、国はもっと援助しろ、と要求できる。思考停止である。

ただ、この震源はどこかにあるはずだ。誰かが言い出して、その情報が流布したと思われる。そこはどこか。

林野庁を疑ったが、さすがに現在では、「安い外材」と記した資料を発見することはできなかった。(もしかしたらあるかもしれない。誰か発見したら教えて。)
しかし以前は、そう書いた可能性がある。事実、20年ほど前までは、外材の方が安い時代があった。円高が生んだ一過性の価格ではあるが。その際のフレーズを今に至るまで引きずっているのではないか。

それとも建築業界かもしれない。高い外材を「安いから」と言って使えば、ユーザーは喜ぶから。国産材を使わない理由にできる。そこまで嫌われた?


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2 コメント

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意識の時間差 (になみ)
2007-04-01 09:07:56
安い外材…という歎きを林業の世界でよく耳にしてた頃、

マスコミにはそんな話題はあんまりでてなくて、最近特によく聞くような、気がしますが…

田中さんがこの春東京で講演された、その朝にもNHKからその言葉が流れてきてたな。

安い外材というのが一見わかりやすいのと、

林業や木材産業に対する認識が遅れてついてきてるのでは…



でも森林組合の場合は、へんだなぁ(>_<)

原因を自分が関われないずっと外のせいにしといたほうが、楽だからかな…
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ウソ (田中淳夫)
2007-04-01 10:00:32
あの日のNHKもですか……。
昔に林業界が言っていた言い訳が、今頃世間に広まった可能性もあるかも。そして林業界の人も、マスコミ情報を鵜呑みにしやすい。

今日放送で「安い外材で日本の林業は壊滅」と言えば、エイプリルフールになるんだが(^^;)。
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