森林ジャーナリストの裏ブログ

表ブログに書けない、書く必要もないドーデモ話をつらつらと。

間伐論-地力の減退

2007-04-08 00:34:39 | 林業・林産業

間伐論から派生するが……。

農地から作物を収穫すると、やがて地力が減退するという。作物の形で、土の中の成分が持ち出されるからだ。具体的にはリンやカリや窒素、それにミネラルなどが失われる。そのままだと作物は育たなくなる。だから肥料をやる。

山林も同じではないか、という議論がある。伐採した木を外部に持ち出せば、土地が痩せる。やがて木が育たなくなる……というものだ。とはいえ、林地に施肥をすることは考えられない。だから林業地は、やがて滅ぶというのだ。

だから、伐採しても幹だけにして枝葉を林地に置いてきた方がよいとか、切り捨て間伐も土に還す効果があるという理論になる。

さて、本当のところはどうなんだろう。たしかにそんな議論は習った記憶はある。が、明確な証拠はないというのが結論だった。本当に土地が痩せたところはないのだ。

ただ現在の林業地のほとんどは、一、二度しか収穫していない(収穫を一度もしていないところも多い)から、わかりにくい。
唯一、400年以上循環を繰り返した吉野では、大正時代に収穫表を造り、「50年生の材積において現在の1等地は以前の2等地に相当し、現在の2等地は以前の70%減」という数字を出している。生長も、原生林伐採跡地より3~4年遅れているそうだ。

このままだと、林地は痩せて、やがて木は生えなくなるのか?

ところが、吉野の林業家は、「土は痩せた方が、生長が遅くなって年輪が詰まるからよい」というのだ 土壌の豊かなところに生えた木は材質が悪いらしい。

それに、堤利夫氏の研究によると、数十年もの永き期間があると、どうも収穫で失われた栄養分は補給される可能性もあるらしい。

たとえば、斜面ゆえ上から流れ落ちてくる土が長年の間に積もる。また鳥の糞、昆虫、鳥獣の死骸……など、馬鹿にならない量がある。サケのように川を遡る魚が持ち込む有機物もある。風で飛んでくる砂も。微々たる量に見えても、数十年も積もれば、こうした形で補給される有機物やミネラルで土は甦る。

農業でも、不耕起農法のように完全無施肥で収穫する農法もあるが、理屈は同じらしい。

山の不思議、樹木の時間の妙、といったところか。


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2 コメント

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Unknown (山本一典)
2007-04-09 21:07:59
久しぶりにお邪魔しました。「田舎で起業」の増刷、おめでとうございます。
「不耕起農法のように完全無施肥で収穫」というのは完全無施肥ではなく緑肥のことだと思うので、おそらく田中さんがイメージしているのは緑健農法かそれに近い農法のことではないでしょうか?
それはともかく間伐論は興味深いですね。共有地で建築材を間引きした時期と林業が産業として成立した時期、地方によっても違うと思いますが、だぶっているのかなあ?(屋久杉だって島津藩の財政を支えたんだから、近代の側面で捕らえた方がいいのかな)。  
 
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不耕起農業 (田中淳夫)
2007-04-09 23:17:04
たしかに誤解を与えてしまいましたね。

不耕起農法と言っても、完全無施肥とは言えないです。雑草を刈り取ってその場に置く(腐って堆肥になる)ことをしますから。

ここでは、外部から肥料に相当するものを持ち込んで散布しないという意味です。その土地内だけで賄う農法ですね。その説明によると、収穫物を持ち出して減量した肥料分(ミネラル分など)は、鳥の糞や風で飛んでくる土てどで補給される、という考え方でした。

緑健農法は、極微量の化学肥料を播きます。こちらも興味深いのだけど、外から持ち込んでいることになります。

間伐論と林業興国論?は、改めてやろうと思っています。山本さんも、プログを始めたんですね。(bookmark参照のこと)
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