森林ジャーナリストの裏ブログ

表ブログに書けない、書く必要もないドーデモ話をつらつらと。

「最適の人材」を求めるな

2011-04-19 01:40:15 | 娘ネタ

昨日、にわか雨と強風が吹き荒れた。

娘から傘を持っていないから迎えに来てくれ、と電話。天気予報で雨と言っていたのに、持って行かないお前が悪い、と小言いうが、仕方ない、高校まで車を走らせる。

が、車に乗り込んでくるなり、娘は感謝の言葉よりも、学校であったことをしゃべりだした。

ようするに、生徒会のメンバーはろくに動かないし、そこに教師が介入してくるし……といった愚痴だ。あと少しで生徒会も卒業するはずなのに、山ほど仕事を抱えて、右往左往している。そして周りが思うように動かない、横やり入れてくることにいらだち、「もう学校楽しくなくなった」とまでいう。

そこで私は言った。「周りのみんなは、自分の理想どおりの人物で、理想通り動くと思っていたのか。誰もが賛成して手伝ってくれると思っていたのか」。

それはあり得ない。むしろ、周りのみんなは常に自分とは思いが違い、(自分には)役立たずであることを前提に世の中動くのだ。イヤなら投げ出せ。ほかのメンバーに任せて、口を出すな。それもしたくなければ腹くくれ。

……頭に描いていたのは、今回の震災と原発に関する世間の動きだ。

世間は、政府、とくに菅内閣を批判の的にしている。

たしかに出来がいいとは思わない。いや、原発に関する対応は後手に後手。さらに隠したり隠されたり、右往左往上下左右。怒鳴ったり泣いたりしているらしいから、かなり情けない。

が、「阪神大震災の時、政府はしっかりしていたのに」という論調が出てきたのには驚いた。当時の政府関係者から、「村山首相(当時)は、すごかった、現場を鼓舞して、見事なチームワークで乗り切った」などという証言?が次々とマスコミに登場する。

アホいうな。私は、当時大阪に住んでいて、阪神大震災の現場とその報道に密に向き合っていた。そりゃ酷かった。村山首相、そして自社さ内閣は、まったく迂路迷走、出鱈目、右顧左眄……被災者から「政府は何もしないことが現場を助ける」とさえ言われていたのである。あげくに総理は「初めてのことなので」と国会答弁?までした。

それに比べて、今回の震災は、出足はすごくまともだった。自衛隊出動や被災地情報の確保、そして民間組織の救助体制の構築も、私にはなかなかの出来に見えた。がむしゃらなボランティアの押しかけもなかった。避難所づくりも物資輸送も、巨大地震の中では頑張ったと思う。ネットも十分に活用された。

そして、首相もすぐに現地視察した。村山首相なんて、現地を訪れたのは何週間後だったっけ。遅い! と批判されたのだ。それなのに菅首相が早々に現地視察したことが、今度は批判の対象だ。

結局、菅首相が情けなくなるのは、福島原発の暴走が明らかになってからだ。地震と津波に対しては、16年前の経験を活かしてソコソコうまく対応をしていたのに、原発ではそうはいかなかった。未経験の原発事故に出会って迷走を始めたのだ。

もちろん、リーダーたるもの「初めてのことなので」なんていう言い訳をしてはいけない。それなのに、村山はよくて菅はダメだ? アホか。どちらもリーダーとしては欠陥品だ。内閣など担当する人材の出来も、両者とも無能だ。私は、当時、村山を戦後最低の首相と呼んでいた。まあ、その後「最低」は、次々と更新されるのだが。

だが、危機管理とは、理想的な人材が揃っていることを前提に立てるものではない。無能で、逆に足を引っ張りかねない人物が要所をしめていることを前提に行わねばならないのだ。これは危機管理の基本である。

危急の際には、リーダーや担当者がどんなアホで嫌われていようと、彼らの失敗を周囲がカバーすることを心がけねばならない。同時に自力での復興に努力する覚悟もいる。それはアメリカは9・11の際に、ブッシュ大統領を野党も国民も支持したのと同じだ。(それでイラク戦争まで突っ走ったのだが……。)

残念ながら、日本国にそんな動きはない。常に足を引っ張り合い、気に食わなければ引きずり下ろし、かといって自身が個々に課題をこなそうという気概もなく、次に誰をリーダーに担ぎ上げるか考えるだけ。リーダー依存症か。そんな発想が、独裁者を求めることにつながる。もっとも期待に沿わなければ、また引きずり下ろすのだろう。
その行動原理は、「好き嫌い」だけ。嫌いな奴のすることは、すべて反対して、足を引っ張ることが仕事と思っている。目先の感情ばかりで大局を見ない。

今必要なのは、周りがうまく動いてくれないことを嘆くのではなく、自分が最善を尽くすことだ。

……そんな話をすると、娘は「自分たちがルールに乗っ取り担いだ首相を、すくに下ろすのはおかしい。担いだ責任があるだろ」と言う。そのとおり。首相は、野党も含めて国会で手続きを踏んで選んだのだ。それなのに、危急の際に野党はおろか民主党内でも足の引っ張り合いかよ。

娘も、腹をくくったようである。

ま、愚痴くらい聞いてやるけどね。

 


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6 コメント

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リーダーの資質 (田中淳夫)
2011-04-26 23:26:22
東北より帰りました。

菅総理だけでなく、自治体の首長に関する評判も各地で耳にしました。

報道とは違ったさまざまな面があったのですが、ただ同じことをやっても貶されるケースと褒められるケースがあることは感じますね。
温家宝・中国首相は、すぐに現地入りして褒めレ等、菅総理はボロクソ。
やっぱり日頃の行いの差でしょうか(笑)。
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Unknown (あがたし)
2011-04-22 19:37:35
>このブログの趣旨に似合わぬ、熱いことを書いてしまったのに、見事に受けてくださいました。

いえ,この熱さこそこちらのBlogの真意ではないかと思って喜んで読ませていただきました.やっぱり田中さんは(裏では)こうでなくっちゃ.

ところで,阪神淡路と東日本の違いは被害地域の広さの差がまず第一ですよね.村山総理は遅すぎ,菅総理は早すぎたという考えも成り立つかと考えます.

3年前の中国・四川大地震では温家宝首相がその日に現地入りするという思い切ったはやわざを見せました.もしかしたら内陸活断層系の地震の被害の狭さを見越して,阪神淡路のときの日本政府対応を反面教師としながら素早く動いたのかもしれませんね.

なんにしても,「国際社会を見据え社会に対して提言している父親」を持っている子供さんって,とても羨ましいですね.
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お恥ずかしい…… (田中淳夫)
2011-04-20 18:17:36
いや、お恥ずかしい。
本来は「大きく包容力のある父親」を演じるべきでした(笑)。
別に上司じゃないんだから……。
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娘さんとちゃんと (スポット)
2011-04-20 17:16:57
娘さんときちんと向き合ってますね~。

ええお父ちゃんですねぇ~。
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お見事!  (田中淳夫)
2011-04-20 00:07:21
このブログの趣旨に似合わぬ、熱いことを書いてしまったのに、見事に受けてくださいました。

そう、自分の足さえままならぬのです。私も、よく転びます。
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自分も。 (熊(♀))
2011-04-19 20:17:25
人は思い通りに動かない。

自分ですら、思い通りに動くのは
なかなか大変。

足を上げたはずなのに、
上がってなくて、
段差でつまずく。。
ああん。自分の足、ちゃんと動けいっ。
てな具合。

だもん、他人さまの足なんて動かせませぬ。
。。なんてね。
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