また写真館の続き。
木馬である。きんま、と読む。馬というより橇の上に丸太を積み上げ、木の線路(木馬道)の上を人間が引っ張って運ぶ。道ではなく、梯子状に組まれた線路の上を歩きながら橇を引っ張るのだから、おそるべき木材搬出方法である。伐採現場から、木馬道まで丸太を落とし、土場までこれで運ぶ。川を流すのは、その後のことだ。
これが、江戸時代、明治、大正、そして昭和に入って戦後も結構長く続けられていたことに仰天する。
おそらく積む木材の重さは1トン近くになったのではないか。重要なのは、線路で、わずかに下りの傾斜を付けてあること。だから人力でも動くのだが、それでもたまには詰まる。すると油を垂らして滑らすのだそうだ。逆に滑りすぎると暴走して危険なのだが、ブレーキはない。かろうじて橇に用意した紐を巻き付けて摩擦で止める。全身を丸太の前にさらして足で踏ん張る。失敗したら人体は踏みつぶされるだろう。
危険で重労働ゆえに、木馬挽きの待遇はよかったらしいが、今ではできる者はいないし、やりたい人もいまい。しかし、写真でわかるとおり、数珠つなぎで木馬を挽く時代があったのだ。
ところで木馬ですが、シイタケ原木で、現在でも細々とやっている人はいますね。
写真のような大がかりなものとは比べものになりませんが、二年ほど前に見かけました。
残念ながら作業中をみることは出来ませんでしたが、やはりハシゴ状に組まれた木のレールのようなものが、斜面に一定勾配に設置されていて、それに沿ってブレーキ用のワイヤーロープがあり、終点の土場には木製の橇と山になったシイタケ原木がおかれていました。
年配の方が一人でやっていたようです。
ちなみに「修羅」をやっている人も見かけたことがあります。私には谷に材をたたき落として、途中に引っかかった材の上を滑らせているようにしか見えませんでしたが、当人は「修羅」だと言い張ってました・・・
今では林内作業車やヘリコプターに変わってしまい、木馬の技術は途絶えてしまうでしょう。
そこで、「筏下り」をまねて「木馬下り」はどうでしょう。ジェットコースターのようなスピードは無いにしても、高い橋や急勾配で結構スリルがあるのでは、ただし命の保障が無いので無理かな。
私も和歌山県で、木炭の原木を木馬で挽き出しているのは知っています。
ただ、規模が全然違いますね。重さも数十キロというところでしょうか。それでも、木馬道といい、面白かったです。
写真は吉野ですから、当時の経験者は今も生きていますね。私が話を聞いた川上村の辻谷さんも、もう70を越えたか。
でも、今もやっているんですか? それは驚異だ。今度、見学に行きましょう! ヒデさんも、挑戦してください。私は、横で見ています(笑)。
でも、当時を追体験するような施設を作ったらいいと思うんですね。丸太を張りぼてにしたら危険度はかなり減るから、山から木馬を引くイベントなどはどうでしょう。
当方のブログに先輩が投稿(2件あり)していますので、ご覧ください。
奈良県には、野猿と呼ぶロープウェイはありますが……。これは人が乗って、自分でロープをたぐって川や谷を渡るもの。せいぜい100mまででしょう。