ザイルと焚火と焼酎と

ザイルを使う登山にちょっぴり憧れ、山中に泊まると焚火を囲み、下山後は焼酎でほのかに酩酊。いい加減なのんびり登山の日記です

NZ旅№7―――2日目は全員でボールパス往復

2014年03月07日 | ニュージーランド旅2013

2013/11/16  今日はボールパスを往復する予定の日です。
キャロラインハット出発は何時だったのでしょうか? 正確な記憶はないのですが、10時は過ぎていたのでは? 天気にも若干の不安要素がありましたし、何よりも今日はボールパスまでの往復が出来ればいいのですから、さほど焦る必要はないのです。ゆったりと雪山生活を楽しんでいい日なのです。

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▲キャロラインハットすぐ横の斜面で、まずは滑落停止のトレーニングをしました。11:01ころ。
日本でなら、滑落しながらピッケルのピックに全体重を載せるような感じで体をあずけ、ピッケルで停める方式です。でもニュージーランドでは、体を反転させてこの写真のような格好になり、両足両手で停めるのです。
おそらく雪面が氷のように硬い状態では日本と同様の方法で停めるのでしょう。ただ、軟雪でそれほどの急斜面でなければ、この方法は有効だと感じました。

そしてここで久し振りのニュージーランドびっくり事情その4です。
“事情”というほどのことではないのですが、ピッケルの持ち方が日本とは違うのです。
僕は日本ではこんな風に教わりました。つまり、「ピッケルのピックを常に山側に向けろ」と。登りでは前向き、下りでは後ろ向き、トラバースでもピックの意識を山側に向けるように持っていたものです。ところが、ニュージーランドでは「常にピックは後ろ向き」なのです。この方が「転倒した際にすぐにピックを雪面に刺し易い」からなのだそうです。
これは慣れの問題でもあるでしょうから、一概にどちらが正しいとは言えないと思いますが、驚きでした。

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▲滑落停止等のトレーニングを終了させて、いよいよスタート。先頭をマーティンが行きます。続いてS子。S子の右手のピッケルはピックが後ろ向き。11:16ころ。

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▲華世ちゃんと藤井さんが続きます。11:39ころ。
このあたり、ガイド二人はストックだけ、他の3人はピッケルとストック、僕は普段からストックは使わないのでピッケルだけで歩いています。
トラバースのような左右で傾斜がある場所を歩く場合は、山側にピッケル谷側にストックを配し、ストックでバランスをとるように歩きます。

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▲キャロラインハット上部にも少しですが雪のない岩場を歩く箇所がありました。11:48ころ。

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▲登って来た方角を振り返りました。下方にはタズマン氷河が見えています。11:52ころ。

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▲中央、少し左寄りのコルがボールパス(Ball Pass)2121m。その左のピークはカイティアキ山2222mだと思います。このピークにも登る予定です。12:09ころ。

以下、左回りに四囲の景観をどうぞ。

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▲タズマン湖が見えますが、そのずっと下流に独特のスカイブルーを湛えるプカキ湖も見えています。左の山は2000m級の BURNETT MOUNTAINS という名の山塊のようです。

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▲手前はタズマン氷河ですが、向こう側へ分岐している谷は Murchison River です。上流では Murchison Glacier になります。
左奥へと伸びている長い山嶺は LIEBIG RANGE です。2000m台後半の峰々が連なります。

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▲中央の山嶺は MALTE BRUN RANGE です。最高峰はMalte Brun 3155m。そのピークはおそらく雲の中でしょう。
この山嶺の右手前から顕著なピークは Novara Peak 2299m、Mt Johnson 2682m、Mt Chudleigh 2952m、ではないでしょうか?

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▲右下の白い尾根が今日登って来ているボール尾根。その左下にはタズマン氷河の支流にあたるボール氷河が流れ、さらに写真左のキャロラインフェースからはキャロライン氷河が流れ落ちています。中央の双耳峰のようなピークは Anzac Peaks 2530m。

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▲キャロラインフェースです。マウントクックの山頂は雲の中です。12:10ころ。

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▲ボールパス目指して再スタートです。このあたりからS子はマーティンがタイトロープして確保してくれています。マーティンが「ロープで確保してもいいけどどうする?」と聞いてくれたので、そんな経験もなかなか出来ませんから、了解の返事をしたようでした。12:18ころ。

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▲ボールパスが見えています。先頭から、ギィディアン、マーティン、S子、華世ちゃん。12:34ころ。

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▲タズマン湖を見下ろす、手前から華世ちゃん、S子、マーティン。12:54ころ。
マーティンのヘルメットには帽子のつばだけが取りつけてあります。Nice Idea ですね。

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▲タズマン湖とタズマン氷河の様子です。13:47ころ。
タズマン湖も40年ほど以前はこれほど広くはなかったようです。僕が持っている地図を見ると、Tasman Lake という表記はなく、小さな湖が数個点在していて、Blue Lakes と名付けられていました。

ちなみに僕は1980年発行の「Map of MOUNT COOK & WESTLAND NATIONAL PARKS」を持っていて、それを参照しながらブログを書いています。10万分の1の縮尺ですから、山屋の感覚では概念図程度にしか地形の把握は出来ません。
ニュージーランドで何軒も本屋などを回ったのですが、人気の地域だからでしょうか、どこも在庫がないのです。5万分の1の地図を手にしたかったのですが、致し方ありません。
若いころから、ニュージーランドのマウントクックには関心を抱いていて、ずいぶん昔のことですが、NZに旅行に行く知人に買って来てもらったのです。

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▲ボールパスもだいぶん近づいて来ました。指差す華世ちゃん。13:51ころ。

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▲ボールパスまであとわずか! 14:08ころ。

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▲ボールパスへ向けて最後のトラバース。マウントクックはまだ雲の中ですが。14:12ころ。

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▲左からギィディアン、マーティン、S子。タイトロープの様子がよく分かりますね。14:15ころ。

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▲1匹のクモが雪の上を元気に歩いていました。ギィディアンが見つけて、名前も教えてくれましたけれど、忘れてしまいました。でも“Snow Spyder”とか、ありきたりな呼び名だったような・・・・ 14:20ころ。

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▲ついにボールパス目前! 14:22ころ。

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▲ここがボールパス! 14:34ころ。

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▲ボールパスに佇む華世ちゃん。14:37ころ。

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▲北方に連なり昇る MT COOK RANGE 。マウントクック南稜と呼んだ方がすっきりとしますね。相変わらず山頂は雲の中。14:37ころ。

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▲ボールパスから南西方向に落ちている谷を見下ろしました。谷にはフッカー氷河が流れています。左右に連なっている山稜は MAIN DIVIDE 、南島の背骨にあたる脊梁山脈のような山脈です。マウントクックはほんの僅かですが、 MAIN DIVIDE からは外れているのです。
山名の同定は到底出来ませんが、昨日マウントクック村から見上げた MT Sefton 3157mや、その隣りの The Footstool 2765mなども遠くに見えているはずです。14:41ころ。

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▲右下から登って来たのです。14:43ころ。

キャロラインハットからボールパスまで休憩も含めて3時間20分ほどかかりました。今日は急ぐ必要はありませんでしたから、ゆっくり歩いたとはいえかかり過ぎです。
カイティアキ山へは登らないこととなりました。ちょっと残念です。

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▲ボールパスからの下降を始めました。ボール尾根を俯瞰します。矢印のあたり、山陰にキャロラインハットがあるのだと思います。15:01ころ。

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▲ときには尻制動で滑ります。滑っているのはS子。下ではギィディアンが安全のため、待っていてくれています。右はマーティンと藤井さん。15:04ころ。

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▲華世ちゃんがS子のことを「宇宙人みたい」と言って笑います。確かにそう見えますね。あの有名な地球人に手をひかれた背の低い宇宙人の写真です。15:10ころ。

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▲雪のない岩場。15:13ころ。

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▲雪山に来て、こんな光景の中を歩くのが僕は好きです。15:20ころ。

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▲こんな白と青の世界が僕は大好きです。15:23ころ。

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▲マウントクックを望む、左からギィディアン、マーティン、S子、華世ちゃん。15:25ころ。

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▲何故眺めていたのかというと、山頂の雲がもう少しで取れそうだったからです。でも、まだなかなか雲はどきませんでした。15:25ころ。

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▲写真にボールパスから辿って来たルートを赤い矢印で書き込んでみました。15:26ころ。

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▲また、マウントクック山頂の雲が消えそうになり、立ち止まって見守りました。15:46ころ。

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▲右の棚引く雲にほんの少し隠されていますが、ほぼ現われました。15:48ころ。

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▲ついでですから、望遠撮影のも。15:48ころ。

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▲僕自身はタイトロープをしたこともされたこともありませんが、マーティンのやり方を見ると、その具体的方法が分かって勉強になりますね。16:09ころ。

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▲上を見上げると、藤井さんと華世ちゃんが楽しそうに降りて来ています。尻制動をしたような跡がありますね。僕がしたのかもしれません。16:09ころ。

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▲ここからはトラバースです。ギィディアンが先行しています。おそらく中央に見える小さな雪崩痕のせいでしょう。ここの通過はこの写真のギィディアンとマーティンほどの間隔をおいて一人ずつ通過しました。16:09ころ。

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▲マーティンとS子が通過中。16:11ころ。

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▲急斜面のトラバースになりました。数分前まではストックだけで歩いていたマーティンが、ここでは左手にピッケル、右手にストックというスタイルに変更しています。万が一、S子が滑落すれば、さすがのマーティンもピッケルなしには停められないからでしょう。16:17ころ。

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▲後方に目をやると、一人ずつ間隔を開けて歩いている華世ちゃんと藤井さん。そして、ここからが急傾斜のトラバースになるのです。16:22ころ。

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▲緊張する箇所はすでに通過しました。ギィディアンとマーティンはふたり先行しています。S子のタイトロープも解除されました。
そうです! 目の前にはキャロラインハットが! 見えますか? 16:28ころ。

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▲小屋に到着! 16:36ころ。

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▲記念撮影です。僕とS子。16:40ころ。

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▲華世ちゃんとS子。16:41ころ。

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▲登山靴に付いた雪を落として小屋に入ります。16:54ころ。

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▲マウントクックを眺めながら、何を想う、華世ちゃん。16:55ころ。

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▲キャロラインハット到着と同時にマウントクック山頂の雲が全部消えました。16:55ころ。

今日は実にのんびりと雪山歩きを楽しめました。朝も遅い出発で、帰着も早く、就寝までの時間もたっぷりあります。僕にとってガイド山行はほぼ初めての経験ですが、そんな安心感もあって、純粋に楽しむことができました。
明日はボールパスクロッシング。いよいよ今回の目的であるボールパスを越えてフッカー氷河へと至るロングコースです。でも、山の雰囲気や景色は今日一日で充分に堪能できましたね。2日目まででも十分満足感を得られました。

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1 コメント

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いや~、すごい。本当にすごい。 (ano)
2014-03-25 16:09:16
いや~、すごい。本当にすごい。
多くの日本人がNZを訪れますが、ここまでMtクックの山頂に近付ける人はそういないと思います。
それにしても素晴らしい風景。
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