2013/11/15 いよいよBall Ridge に取り付き、本格的登山の開始です。
▲Ball Shelter の少し先から Ball Ridge に取り付きます。いきなりの急登。でも、ジグザグにルートはついていますから大丈夫。15:20ころ。
▲こんな大きな岩がゴロゴロしている箇所もあります。15:22ころ。
後方にはタズマン氷河湖が。
▲さきほどの Ball Shelter が見えています。(写真をクリックすると大きくなります)後方の矢印の場所です。15:39ころ。
この写真から何となく推測できるのですが、この小さな山小屋が建っている平坦な地が山裾に沿って100mほどの幅で続いています。そこにはかすかに車道のような跡も認められます。草も生えている平坦地の先(左)には灰色の氷河がありますけれど、氷河の氷が融け低くなって来ていますから、草の生えた平坦地と氷河との境目は崖になっているのですね。その崖が年々崩れて平坦地が狭くなっていっているのだと想像できます。山小屋が建っている場所も数十年後には崩れ去っているかもしれません。
▲ほんのわずかですが、こんなのどかな場所もありました。先頭はマーティン、続いてS子です。16:03ころ。
S子の右の大きな葉っぱの株はマウンテンデイジーでしょうか?
▲僕がカメラを向けると、ガイドのギィディアンがポーズをとってくれました。彼の前は藤井さんに華世ちゃん。16:20ころ。
華世ちゃんの左手のそばにあるのもマウンテンデイジーでしょうか? 大きな花が咲くそうですね。
▲後方はタズマン氷河。僕たちは写真の右から登って来たのです。16:21ころ。
このあたりから僕と華世ちゃんとの間が開き気味になって来ました。
▲Ball Ridge の稜線に飛び出ましたから、マウントクックの姿も目に飛び込んで来ます。この雪氷の付いた面がキャロラインフェースです。真下の氷河はボール氷河だと思います。川で例えればタズマン氷河の支流にあたります。16:22ころ。
このニュージーランド最高峰、正式名はAoraki/Mount Cook アオラキ/マウント・クックです。3754mですから、富士山より22m低いだけでほぼ同じ高さ。ですが、氷河を四囲に抱き、高峰としての風格は富士山の上を行っていますよね。
アオラキとはマウイ語で「雲を突き抜ける山」の意。マウイ語はニュージーランドの公用語にもなっていますから、マウント・クックとして世界中に知られるようになりましたけれど、あえてマウイ語との併記をしているのだそうです。ブログでは正式名ではなく「マウントクック」で統一しています。それは僕が単に面倒くさがり屋だから。すみません。
▲休憩です。右にガイドの二人、左に藤井さん。16:35ころ。
ガイドは二人とも短パンです。
▲記念撮影です。S子とマウントクック。16:42ころ。
▲背後のタズマン氷河、氷河後退によって出来た山麓の縞模様、ボール尾根最下部の様子などが素晴らしく俯瞰できるようになりました。17:03ころ。
華世ちゃんの手が腰にあたるようになりました。少々息が上がって来ている様子です。自転車や長距離走で持久力はある華世ちゃんですが、重荷を背負っての登山はちょっと勝手が違うようですね。これは慣れだと思いますから、2、3度このレベルの重荷と急登の山を経験すれば、すぐ楽に歩けるようになると思います。
S子はスピードは出ませんけれど、まったく苦しい様子はありません。快適なようでした。こういう山行はしょっちゅう体験していますから。
▲両手を使って登るような場所も増えて来ました。17:04ころ。
ギィディアンが華世ちゃんの様子に気づいたのでしょう、最後尾から華世ちゃんの真後ろに移って来ました。
▲マウントクック目指して登り続ける! って感じですね! 17:06ころ。
▲対岸には右からNovara Peak 2299m、Malcher Peak 2469m、Mt Johnson 2682m などが見えています。氷河後退の縞模様も綺麗に見えます。17:09ころ。
華世ちゃんの足取りが遅くなっています。心配ですね。
▲先ほどの休憩から30分ほどですが、小休止して華世ちゃんの荷物を軽くすることに。17:12ころ。
S子の荷物は歩き始める最初から軽くしてありました。その分、僕が少し重くはなっていますが、それでも10数キロなので、山では軽い範疇です。
どのあたりからだったでしょうか? “Concentration”だか“Focus”だか、危険なのでガイドから注意喚起が発せられる箇所が増えて来ました。それで、ギィディアンが「日本語ではどう言うの?」と聞いたようです。華世ちゃんだったでしょうか、それに答えて「シ・ユ・ウ・チ・ユ・ウ シュウチュウ(集中)!」。その時から、地域限定、期間限定の流行語になりました。
お互いに「シュウチュウ!」と声かけあって、心を引き締めたのです。
▲ボール尾根を登っている間中、何度も何度も雪崩の音を聞いています。大音響で轟いています。しかし、なかなか雪崩れている瞬間を見ることができません。キャロラインフェースのどこで雪崩れているのかが分からないのです。そのたびに、立ち止まって(歩きながらだと転落・滑落の危険性がありますから)探すのですが、見つかりません。
そのうち、藤井さんが発見して場所を教えてくれました。教わってもなかなか見つからないのですが、僕にもようやく分かって望遠で撮影したのがこれ。大きな音がする割にはその姿は沢の普通の滝くらいにしか見えません。でも、間近に見ると、大きな雪崩なのでしょうね。巨大な氷の塊が岩場にぶつかって鳴り響いている音なのでしょうし。18:05ころ。
▲女性2人とも手を付いて登るほどの急斜面です。さすがに陽も傾き始めましたし、風も出て来ましたから、みな上着を着ました。ついでにスパッツも装着。マーティンは短パン(裾を巻き上げているのですが)にスパッツという妙な格好です。18:10ころ。
▲雪は時折見えるようになっていましたが、もう少し先へ進むと、完全に雪山状態になると分かって来ました。一段と心が引き締まります。18:12ころ。
▲雪山突入! いきなりのトラバースです。マーティンが丁寧にステップを作って行ってくれます。その後もずうっとそうでしたけれど、歩幅の狭いS子を考慮してくれたからなのか、ステップの間隔が比較的狭くて歩き易いものでした。18:29ころ。
▲ギィディアンがロープを固定して張ってくれました。先にいるギィディアンの場所から右上へ登って行くようです。急な傾斜なのでしょう。僕と藤井さんは今いる安全な場所で待機です。18:39ころ。
▲僕と藤井さんも進んで来ました。S子と華世ちゃんにはギィディアンが付いてくれています。おそらくS子にとっては慣れた雪の傾斜だったと思います。ガイドとしては今回最初の雪の急(?)斜面だったので安全策をとりつつ、参加メンバーの登り方を観察していたのでしょう。
それとも、それ以外の要因、例えば雪崩れ、シュルンド、落石などを考慮してのものだったのでしょうか? 18:42ころ。
▲ロープを張った急斜面を登りきると、なだらかな雪面になりました。Ball Pass も行く手に見えて来ました。キャロラインハットももうすぐです。18:59ころ。
▲先頭からマーティン、S子、華世ちゃんですが、3人のちょうど真上に見えているコルがBall Pass です。19:00ころ。
前方には小さくキャロラインハットが見えているのですが、どこだか分かりますか?答えは少しあとで。
▲S子と華世ちゃん。後方右端の山はNovara Peak 2299mでしょう。この辺りが標高1750m前後でしょうから、Novara Peak ともあまり標高差を感じなくなりました。19:02ころ。
▲先ほどの問いの答えです。クリックして写真を拡大すれば、キャロラインハットの四角い建物が分かると思います。
▲広大でなだらかな雪原を登るギィディアンと藤井さん。雪山のこんな景色が僕は好きです。19:09ころ。
▲雪山という大自然の中での Activity って感じがひしひしと伝わって来ますね。S子も格好いいです。19:14ころ。
▲キャロラインハット到着直前! 山小屋の屋根も大きく見えて来ました。先頭からギィディアン、藤井さん、S子。19:39ころ。
ボール尾根に取り付いてから約5時間。平均時間よりは少しかかりましたけれど、何事もなく無事にキャロラインハットに着きました。
日本の尾根に例えればどんな尾根に似ているだろうかといろいろ考えましたけれど、なかなかぴったりという例はありません。下半部の雪がなかった辺りは薄い踏み跡が途切れ途切れにある状態です。日本の本格的バリエーションルートである、北鎌尾根、剱の源次郎尾根、谷川の東尾根などの無雪期と比べても、ずっと易しいレベルです。奥多摩の一般登山道のない藪尾根レベルよりはずっと難しいですから、想像してみて下さい。
もしガイドレスで個人山行したとしても、なんとかルートファインディングは出来ると思います。しかし、何度かは嫌な場面に遭遇しそうですね。一筋の尾根ですから、大きくルートを外すことはないのですが、細かな間違いは繰り返しそうです。
上半部の雪が出て来てからの方がルートファインディングは容易です。ただし、天気良好で見晴らしがきく時に限ります。
困難度は雪の状態次第で大きく変わるのは当然ですけれど、日本のGWころの尾瀬周辺の春山と比較して、さほど難しい山ではありません。そのように感じました。
体力的には日本の山を月に1、2回ペースでコンスタントに歩いている人ならば、大丈夫だと思います。日本の山はどこの山でも急登が多いですから、ボール尾根を特別の急登と感じる人はいないでしょうね。
奥多摩なら鴨沢から雲取山、日原から稲村岩尾根を鷹ノ巣山への登山道を標準コースタイムで歩けたり、テントを背負っての縦走などを楽しんでいるような山屋さんなら、この初日のボール尾根は問題なく歩けると思います。もちろん、ガイドが付いての話ですけれど。
それに加えて、雪山は基本でいいですから経験している方がいいと思います。初日のボール尾根でガイド同行ならばの話ですが、危険度の少ない残雪期の山や冬の奥秩父程度の雪山は経験しておいた方が安心できると思いましたね。
リアルニュージーランドのHPでは「雪山初心者でも大丈夫! 雪上でのクランポンやピッケルの使い方や歩き方など、現地の優秀なガイド達が手取り足取り指導してくれて、日本の雪山デビューの予行演習にもなる!」と書いてあったのですが、せっかくの海外旅行です、現地で初体験して「やっぱり難しかった」と言うよりも、日本である程度は経験しておいてニュージーランドでも確実に実践できる方が安心だと思いますよ。