2013/6/1 例年ならばその年最初の沢登りを4月には行なっているものですが、今年はなにやかやで遅れに遅れ、6月に入ってしまいました。S子は山歩き自体がほぼ一ヶ月ぶりですから、易しい沢を選びました。
易しいとは言っても遡行したことのない沢ですから、ネットで調べた範囲でしか分かりません。ネットでの評価は「数メートルの小滝はあるけれど、ワサビ田とクモの巣だらけの沢でしかない」と言った評価。こんなマイナス評価も実際に行ってみないと僕自身がどのように感じるかは分からないものです。ただ、この沢を選んだ決め手は途中から中腹の林道へエスケープ可能という点でした。
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▲境橋バス停で下車し、境集落の方へ奥多摩むかし道を進むと、年代物の大きな橋梁が見えます。これは戦後、東京都の水瓶である小河内ダムを建設する時に氷川から水根へ資材運搬用に作られた鉄道路線です。1952年から5年半だけ使われたのだそうです。その後、水根までの営業路線として活用する案もあったそうなのですが、地質が不安定で安全運行が危ぶまれ、実現はしませんでした。8:53ころ。
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▲奥多摩むかし道が小中沢を横切る地点には立派なトイレが設置してあります。(上の写真)
道路横の広場で朝食を済ませ、沢支度をしました。そこから見えるのですが、支流出合にかかる25mほどの滝が見えます。正式名称かどうかは知りませんが、どうやら“不動上滝”と呼ばれている滝のようです。どうして“上滝”かと言うと、この下流、多摩川との出合に“不動滝”があり、その上流にある滝だからでしょう。9:59ころ。
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▲小滝が現われました。釜もあって、緑明るいこの季節は沢が美しいシーズンです。10:01ころ。
実は、僕とS子はずいぶん昔にこの小中沢に来たことがあります。いつかは忘れましたが、おそらく10数年以上前でしょう。しかし、こんな小さな滝の記憶すらありません。何故かと言えば、入渓してすぐに谷全体を埋め尽くす倒木に出くわしたからです。倒木と倒木の隙間をくぐり抜けながら進みました。しばらく進めば、倒木帯から抜け出せると予想していたからです。でも、まったく先が見えません。結局、ジャングルジムのような倒木帯の底から天辺に10m近くもあったでしょうか(ちょっと大袈裟ですが)! まさにジャングルジムを登るように、隙間をくぐるように登って行き、倒木帯の上に立ちました。その上流に延々と続く倒木帯を見て、遡行を諦めたと言う訳です。
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▲大きな釜を持つ滝が現われました。左のバンド状をへつっても行けそうですし、右壁を落ち口に向かって登ることも出来そうです。どちらにせよ、S子のためにザイルは出さなければなりません。左は中間支点が取りにくそうなので、右の方が良さそうです。水面から1mくらい登ってみましたが、大丈夫そうです。
ところが、S子が「時間がかかるから高巻こう」と言います。それも確かなので、今回は登らないことに。10:05ころ。
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▲水を送っているゴム管の下から高巻きました。ザイルを出していないので、高巻きにはくれぐれも用心が大事です。10:10ころ。
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▲さきほど境集落で見上げた鉄道路線が小中沢を横切っていました。10:22ころ。
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▲橋梁のすぐ上流から再びこのような渓流の様相です。10:23ころ。
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▲小さな沢でもこんなシーンがあると楽しめます。10:26ころ。
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▲先ほどから沢に沿って設置されていたゴム管の出発点がここ。取水口なのでしょう。10:35ころ。
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▲瀞が映す緑が美しいですね。10:36ころ。
滝の上には木の橋が見えます。仕事道です。
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▲2条の滝が現われました。右の流れを進むS子を岩の上から撮影しました。10:41ころ。
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▲ワサビ田はありますけれど、ワサビ田だらけというほどではありませんでした。奥多摩の沢にはもっとワサビ田が連続する沢はたくさんあります。手入れされていて現役のワサビ田が多いので沢自体が荒廃している印象はありませんでした。
写真の上部左にワサビ田が広がっているのですが、珍しいことに木で作製した樋を使って水を流し込んでいます。10:53ころ。
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▲沢の石の上に鳥の巣の残骸がありました。鳥の巣を誰かが取ってここに捨てたのでしょう。それとも、獣の仕業でしょうか? 11:11ころ。
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▲水線沿いにも登れそうでしたが、水を浴びてしまいそうなので、右の乾いた壁を登ることにしました。11:11ころ。
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▲念のため、S子にはザイルを出しました。11:24ころ。
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▲支沢から高さのある滝が流れ落ちていました。長い倒木が立てかけてありますけれど、誰かがそのあたりを登ったのでしょうか? 確かに登るとすれば倒木が立てかけてある辺りが易しそうです。11:34ころ。
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▲このような小滝が続きます。11:40と11:44ころ。
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▲水と緑の中を歩くだけで僕は満足なんです。11:51ころ。
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▲この滝は直登できないので、高巻きました。11:54ころ。
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▲こういう小滝でもどこを登ろうかとチャレンジするのが楽しいものです。どこを登ったっけ? 11:59ころ。
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▲いろんな形の滝があります。12:08ころ。
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▲左上の岩が倒れかかったのか、それとも下の岩が挟まったのでしょうか? 左に岩の穴が出来ています。12:50ころ。
二度目の休憩をした後でした。
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▲ひとつ前の写真の下部を左から右へ移動しているところです。岩に頭を押さえつけられるようで、体勢の取り方が難しい箇所。12:53ころ。
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▲沢の左岸のワサビ田跡に鉄のレールが出現しました。仕事用のモノレールです。13:08ころ。
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▲頭の上を朽ちかかった木橋が通ります。二万五千図の山道がこれなのかな、と思います。13:15ころ。
この先にはミニゴルジュがあるそうです。ミニゴルジュを越えたところからもエスケープ出来るようですが、今日のS子の調子から判断すると、この辺りから下山するのがいいと判断しました。
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▲木橋のすぐ横にはモノレール軌道も渡っています。このモノレールは最近になって奥多摩全域に次々作られています。増え過ぎたシカによる食害を防ぐために、森林を保全することが目的で作られているようです。13:22ころ。
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▲モノレールは途中で1本は沢へ向かいました。もう1本はこの植林帯を上がっていきます。写真の右端にレールが少し見えています。山道はしっかりと付いていました。13:27ころ。
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▲杉林の中で純白の花が咲いていました。ウツギです。漢字なら「空木」と書くことからも分かりますが、木の枝の断面が中空になっています。13:31ころ。
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▲静御前とその亡霊がともに舞う姿から「フタリシズカ」と名づけられました。その名の由来は最高にロマンチックですが、個人的には名前負けしているように感じます。二人ではなく、三人や四人のケースも多く見られますし、どちらかと言えば「三人かしまし」といった風情ですよね。13:32ころ。
もうひとつの「ヒトリシズカ」の方は花と葉に幽玄の雰囲気も感じられ、名前負けしていないように思ってますけれど。
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▲廃屋が見えて来ました。三ノ木戸(さぬきど)林道も間近なのでしょう。13:38ころ。
林道名ですが、林道にあった地図上では小中沢林道となっていました。でも、何となく三ノ木戸林道と、僕は呼んでいましたし、天益で地元の人に聞いても「もし呼ぶのなら三ノ木戸だなっ」といった雰囲気でした。
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▲林道の終点にぴったし飛び出しました。そこはモノレールの中継基地になっているようで、上へ下へ幾本ものレールが行き交っていました。13:45ころ。
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▲これがモノレールの車両です。人だけが乗ると、3人は楽勝でしょうか? レールをしっかりと噛んでいて、急な勾配でも安全です。13:47ころ。
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▲モンベルのサワーシューズロング。価格が6600円とリーズナブルなのと、沢用スパッツを兼用している点が長所です。短所は着脱の困難さ。最近やっと慣れて来て、足を攣らさずに出来るようになりました。S子はいまだに手こずっています。14:19ころ。
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▲右のピークは御前山1405.0m、中央は鞘口山1142m、その左が鋸山1109m、いちばん左の顕著なピークが天地山981mだと思います。14:20ころ。
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▲右端の天地山から始まって左へ、三角のピークは鍋割山1084m、その左下に歯の欠けた櫛のような山頂(写真をクリックして拡大すると分かるかな?)は御岳山929m、いちばん左のなだらかなピークは大塚山920.3mだと思います。14:21ころ。
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▲三ノ木戸林道を奥多摩駅へと歩き始めてすぐに、このような対岸斜面が見えて来ます。伐採跡に広葉樹を植えているようです。おそらく、ここの伐採の影響で10数年前の倒木帯が下流部に出来たのでしょう。14:37ころ。
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▲右の鋸山と左の天地山の間から大岳山1266.5mが山頂をのぞかせました。14:50ころ。
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▲スイカズラ。僕はこの花の甘い香りが好きです。ネットで調べると、漢字で「吸い葛」と書くそうです。僕は吸ったことがありませんが、吸うと蜜が甘いのだとか。今度吸ってみます。右の花は黄色っぽいですが、古くなるとだんだん黄色くなります。14:54ころ。
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▲これはヤマボウシ。ハナミズキなどの仲間です。白い花びらの様なのは「総苞」と言って、花びらではありません。ミズバショウやドクダミの白い部分も同じ。ヤマボウシは秋になると桃色の丸い実を付けます。柔らかくて口に含むと優しい甘みが広がります。15:02ころ。
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▲この花も僕が好きな花です。コアジサイと言います。ひとつひとつの花も小さくて、背丈も低い樹木。日本固有種なのだそうです。15:26ころ。
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▲羽黒三田神社です。15:29ころ。
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▲コアジサイがまた咲いていました。僕がこのコアジサイを好きな理由のひとつが、この青さです。白から薄青まで偏差はありますが、青い花が少ない中、この青さは貴重です。よく見ると、茎も青いんですね。15:33ころ。
沢初めなので無理をせず早めにエスケープして下山しました。小中沢は長さだけなら奥多摩でも長い方でしょうから、S子と遡行して六ッ石山まで行けるとは思っていませんでした。予定通りの三ノ木戸林道からの下山。
林道途中から天益に電話をし、席を確保しておきます。カウンターでは地元の人、青梅からしょっちゅう山歩きに来る人、関西から出張に来たついでに富士山登山のトレーニングに来た人など、話しが弾みました。