私的図書館

本好き人の365日

十二月の本棚

2003-12-13 07:56:00 | 日々の出来事
剣と魔法のファンタジー!

そんな物語を読んでみたいと、お思いのあなた! まずはこの本をお手に取ってご覧下さい。
アーサー王? 指輪物語?
いえいえ、それらの作品も確かに捨てがたいですが、私がお薦めする一押しはこれ。

レイモンド・E・フィーストの超大作ファンタジー。

リフトウォー・サーガ『魔術師の帝国』(上・下)です☆

指輪物語を差し置いて、なんとナマイキな…と、お思いのファンタジーファンの方もいらっしゃるでしょうが、面白いのだからしょうがない♪
指輪物語には挑戦してみたけれど、あの分厚く重厚な内容と、論文じみた各設定の細かさに、途中ではね返された人も多いのでは?
私も三回読みましたけれど、いまだにその壮大な物語の世界には、モリアの坑道みたいな底知れぬ魔力を感じますね。
読むたびに発見があって、そのあまりの奥深さにタジタジになってしまいます。(ま、そこがイイんだけどね♪)

『魔術師の帝国』に始まる、このリフトウォー・サーガシリーズ。
最初の50ページくらいは「なぁんだ、よくあるファンタジー物か」くらいの印象なのですが、本編の二人の主人公、パグとトマスが<徒弟選び>の関門に立たされるあたりから、いっきに物語世界の中に引き込まれてしまいます♪

物語の”一方”の舞台となるのは、二人の暮らすミドケミアという中世ヨーロッパをベースにした世界。
十四歳になった少年は、それぞれの適性を見込まれて、職人や兵士としての訓練を受けます。それが<徒弟選び>
体の丈夫なトマスは、願い通り、武術長官の徒弟に選ばれますが、孤児で体の小さいパグは、人々からうさんくさいと思われている魔法使いの弟子として引き取られることになります。

そして始まる徒弟としての少年達の厳しい生活。
城でみかけた妖精の女王にすっかり心奪われたトマスは、いつか大戦士になって、妖精の国を訪れることを夢見、パグも負けじと、いつか王国一の魔法使いになってみせると宣言して、互いに大笑いする二人。

しかし、つかの間の平安は、一隻の異国の船が、海岸に打ち上げられたことで終りを告げ、二人はこの世界全体を揺るがす、大きなうねりの中に巻き込まれて行くことになるのです☆

森で魔法と共に暮らす妖精に、鉱山を掘り、うまいビール造りに長けた小人達。
ダーク・パス・ブラザーズと呼ばれる妖精とよく似たモレデール族にゴブリン、トロール。
ファンタジーの魅力をギュッと押し込めたこの物語の圧巻は、なんと言ってもその世界観の壮大さでしょう。

”裂け目”と呼ばれる時空の通路から押し寄せる異世界の敵。
そのもう一方の世界、異世界ケレワンは、魔法使いが絶大な権力を握る、まさに魔術師の帝国だった!
見知らぬ異世界で、パグはたった一人でどうやって生き延びるのか?

そして一方、最後の黄金竜から、竜の貴族と呼ばれたヴァルヘル族の金と白のヨロイを受け継いだトマスは、やがて、かつての持ち主、アシェン=シュガーの記憶と力に支配されていく。
アシェン=シュガーを通してトマスが知ることになるミドケミアとケレワンの過去。
このままトマスが狂戦士となれば、世界は灰燼に帰してしまう…
彼は過去の力に打ち勝つことができるのか?

そして二つの世界に隠された秘密とは?

どこからともなく現れる謎の魔術師マクロス・ザ・ブラック。
長い寿命と永遠の若さを持つ妖精の女王アグララナ。
ケレワンの人々が恐れ敬う”偉大なる者”

さらにさらに、王国の世継ぎをめぐる権謀術策や迫力ある攻城戦。雪山での戦いや、狭い坑道での死闘と、その魅力はとどまることを知りません。
本当、読んでいて止まらなくなりました。
お願い、眠らせてくれ~って感じ(笑)

ときたま顔をのぞかせるラブロマンスも、好み☆

女心に、にぶいパグは、魔法と違ってそっちの方面は苦手みたい♪
奥手なくせに、なぜか女の子にモテル彼は、知らず知らずのうちに女の子をイライラさせてしまいます。
心配した男友達に聞かれてパグは答えます。

「いったい何があったんだい?」
「わからないんだ。ただ…ただ…今日、ぼくを蹴ったんだ」

鈍いぞパグ!(笑) 
女の子にいきなり蹴られたのに、何を怒っているのかわからず、何も言い返さないパグの態度は、さらにイライラに拍車をかけてしまいます。
「女の子にとって、きらいな男に言い寄られるより嫌なことは、好きな男に注目してもらえないっていうことさ」
友達に笑われ、せかされて、夜中に彼女の部屋に忍び込むことになるパグのなんともなさけないこと。

こんなことで本当に世界を救えるのか(笑)

作者のファーストは、これがデビュー作というのだから驚きです。
緻密なストーリーに、多彩な登場人物。それらの織りなす物語のなんと壮大でなんと面白いことか。

ファンタジーが読みたくなったら、ぜひこの本を。

リフトウォー・サーガは第二部『シルバーソーン』
第三部『セサノンの暗黒』と続きます。

さらに『王国を継ぐ者』『国王の海賊』という続編もあるのですが、欲張らないで、まずはこの三部作からどうぞ。



レイモンド・E・ファースト  著
岩原 明子  訳
ハヤカワ文庫

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