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本好き人の365日

『おぢいさんのランプ』

2011-05-05 19:32:00 | 本と日常
子供の日ということで、文化庁委託事業、「若手アニメーター育成プロジェクト」「PROJECT A」で制作されたアニメーション作品、4作品がBSデジタル放送で放映されました。

「若手アニメーター育成プロジェクト」というのは文化庁がお金を出して、日本の優秀な産業であるアニメーションの未来を担う若手アニメーターを育てようというプロジェクトです。

アニメーターと呼ばれる原画マン、動画マンは基本一枚いくらという歩合制で(一部給料制のスタジオもあります)働いているため、低賃金長時間労働というのがずっと当たり前の世界でした。
そうした労働環境に対する問題提起もこの育成プロジェクトには含まれているようです。

実際私がアニメーターをしていた時は動画で一枚100円~200円という時代でしたから、一ヶ月500枚描いてようやく5万円~10万円。
もちろん個人差はありますが、たいていみんな生活は厳しいです。

アニメーターの地位向上はぜひ実現して欲しいところなので、こうした取り組みは大歓迎ですが、今の政権では今後どうなることやら。
とりあえず、制作された4作品を見てみました。

今回放映された作品は一部の映画館ですでに上映もされています。

本郷みつる監督
「キズナ一撃」

格闘家の女の子が活躍するアクションコメディー。
監督は初期の「クレヨンしんちゃん」などが代表作だけあって動きが楽しい♪

滝口禎一監督
「おぢいさんのランプ」

童話作家新美南吉の作品をアニメ化。
明治維新後文明開化の中でランプを売る青年の物語。

吉原正行監督
「万能野菜 ニンニンマン」

野菜嫌いの女の子のもとに野菜の妖精(?)が現れて…
いやにハイテンションなニンジンのニンニンマンが面白い(笑)

黄瀬和哉監督
「たんすわらし。」

こちらは座敷わらしならぬ、たんすわらし。
実家からアパートに送られてきた古いたんすから現れた6人のたんすわらし達が独身OLの身の回りの世話を始めます。
淡い色調を使っていて、笑いの中にちょっとしんみりできる物語。

どの作品も短編なのですが、それぞれに味があってよかったです☆
ただあまり個性が爆発! っていうのはなかったかな。
ミサイル飛び交う板野サーカスとか、先頃亡くなられた出崎統監督の劇画調演出とか、大張正己のパース大袈裟演出みたいな(笑)

新美南吉の本は家にあったのでさっそく『おぢいさんのランプ』を読み返しました。
「普段は頭のよい人でも、自分の商売が失われるかどうかの瀬戸際になると、正しい判断を失うものである…」という一文があって、思わず最近の日本の首相やどこかの電力会社の社長のことを思い浮かべてしまいました。

闇雲に前に進むより、引き返す判断をする時の方が難しく、勇気のいることがありますよね。

今の地位や過去の栄光にすがっていると、未来を犠牲にしてしまうことになる。
さすが新美南吉、いい作品でした。

日本はどうも昔から芸術に対する理解と評価が低いような気がするので、若手アニメーターにはこれからも頑張って欲しいところです。




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