私的図書館

本好き人の365日

八月の本棚 『ムーミン谷の夏まつり』

2006-08-10 18:26:00 | 本と日常
暑い日が続きますね~

毎年この時期はクーラーに頼りっぱなし。
ついつい冷蔵庫のアイスクリームにも手が伸びてしまいます☆

せっかく自然豊かな山の中に住んでいるんだから、森や川に涼をとりに出かけてもいいのですが、(小学生の頃は川で泳いでいました♪)森や川なんて蚊は多いし、ハチは飛んでるし、草は多いし、コンビニもテレビもないですからね(^_^;)

子供の頃はそんなこと気にもしないで遊んでたんだけどなぁ~

せめて、ムーミントロールのように、蚊にも刺されないほどブ厚い皮膚だったらよかったんですけど。

さて、今回は、「三月の本棚」で紹介しきれなかったムーミンシリーズの一冊。

*(キラキラ)*『ムーミン谷の夏まつり』*(キラキラ)*をご紹介します☆

作者はフィンランド生まれの作家、トーベ・ヤンソンさん。

日本ではアニメの「ムーミン」がお馴染みですね♪

『小さなトロールと大きな洪水』という「ムーミン」の記念すべき第一作が執筆されたのが、今から61年前の1945年。

惜しくも彼女は2001年に他界しましたが、彼女の残した「ムーミンシリーズ」は、今なお多くの国々でたくさんの人たちに読まれ続けています。

奇しくも8月9日は彼女の誕生日だったそうで、とりあえず、おめでとうございます♪

『小さなトロールと大きな洪水』でムーミン谷に流れついたムーミントロールたち。

今回は火山が噴火して、またしても大洪水がムーミン谷を襲います。

とんがり屋根の素晴らしいムーミン屋敷も水に浸かってしまい、ムーミンママ自慢の台所も水の中。

ところが、けっして物事の悪い面ばかりを見ないムーミンたち。

水の底に沈んだ台所を(うっとりと!)のぞきこみ、ムーミンママは笑い出します♪

「まあ、おかしい!」

プカプカと椅子やテーブルの浮かぶ台所にもぐって、必要な物を取ってくると言うムーミントロール(言い忘れましたが、ムーミンの本名はムーミントロールというんです!)。

危ないから止めて、と言うスノークのおじょうさんにムーミンママはこう答えます。

「どうして? だめよ。この子は、いまスリルを感じているんだもの」

母親だったら、いやいや、人間だったら普通言わないようなこのムーミンママのセリフ!

でも、考えて下さい。
「普通」ってなんでしょう?
どうしてこう言いっちゃいけないんでしょう?

「ムーミン」の魅力の一つは、こうした私たちが日常”普通”だと思い込んでいることへの強烈な逆襲、だと私は思います。

「草の上にすわるべからず」「とびはねるべからず」

「べからず、べからず」とばかり書かれた公園の禁止の立て札を、一つ残らず引き抜いてしまうスナフキン。

服を着ていないことを指摘されたスノークのおじょうさんが(ムーミンたちは普通何も着ていません☆)、ドレスがたくさん並んだ衣裳部屋を見つけて喜ぶ場面では、最初はあれこれ身につけてみるものの、しだいに悲しくなってしまったと告白します。

全部着てみることはできないし、どれがいちばんキレイかも決められない。

しまいにはドレスが怖くなってしまって全部をほっぽり出して逃げてきてしまったと言うスノークのおじょうさん。

そんなスノークのおじょうさんに、ミムラねえさんから「スノークのおじょうさんは着物がいると思う?」と訊かれたホムサの少年は言います。

寒いと思うなら着たらいいよ。
でなけりゃ雨が降ったときにね。
しかしそれならレインコートを買ったほうがいいな。

ここには大きな教訓が含まれていると思いません?

私たちは普段、どんなドレスを身にまとっているんでしょう?

作り笑顔?
楽しくもないお付き合い?
当たり障りのない受け答え?

雨の日のレインコートのように、ホントにそれは必要なもの?

あれはしないほうがいい。
こんなことを言ったら嫌われる。
自分の意見と違うけど、小さなことだからまあいいか。

禁止しているのは誰?

夏まつりのイブの晩、呼びたくもない親戚のために、料理を用意し、飾りつけをして一人待つフィリフヨンカ。

しかし毎年どれだけ招待状を出しても、誰も訪ねては来てくれません。

親戚の誰一人として、たのしい人たちじゃないと言うフィリフヨンカに、きっと相手もおもしろくないと思っているんじゃないかしら、と言うスノークのおじょうさん。

「だったら、かわりに、ゆかいなわたしたちを、招待してくださらないこと?」

親戚と仲良くするものだと、思い込んでいたフィリフヨンカは思い当たります。

みんながたのしくないと思っていることをする必要なんて全然ない。

それでもまだ心配なフィリフヨンカ。

「自分が誰か好きな人とお祝いしても、だれの気持ちも傷つけないかしら?」

そう訊く彼女にムーミントロールは請合います。「ぜったいに、だれもきずつけやしませんよ」

「そんなに、かんたんなことだったの? まあ、すばらしい!」

えっと、誰も実際の親戚と付き合う必要がないって言っているわけじゃありませんよ(苦笑)

学校や職場の人間関係で、まだ何もしていないうちから、へんな思い込みで自分を抑えてしまっている人、フィリフヨンカの姿が自分と重なりませんか?
私はけっこう重なるところがあります(^_^;)

もちろん、こんな深読みしなくても、物語として充分楽しめるムーミンシリーズ♪

洪水によって水に沈んでしまったムーミン屋敷。
ムーミントロールたちは、流れてきたヘンテコな建物にとりあえず非難し、そのままその上で生活を始めます。

ところがムーミントロールとスノークのおじょうさんが木の上で眠っている間に、つないでおいたはずの家が流れ出し、ちびのミイ子も水の中にポシャリ。

残されたムーミンパパたちは、そのヘンテコな家が実は劇場だったことを利用して、劇場ネズミのエンマの指導のもと、ムーミンパパ作の劇を上演することにします。

劇のことがたくさんの人の話題になれば、ムーミントロールたちがきっとこちらを見つけてくれる。

今回はスナフキンと公園番との対決があったり、ニョロニョロ(ムーミンの世界に住むヘンな生き物)の意外な生態が明らかになったり、なんとムーミントロールが牢屋に入れられたりと、ストーリーもてんやわんや。

なかなか意外な展開です♪

トーベ・ヤンソンさんの描くキャラクターの絵もとってもユーモアで魅力的☆

ちなみに、ムーミンパパがムーミンママに励まされながら書いた劇の題名は”ライオンの花よめたち”
入場料は”食べられるものならなんでもよろしい”そうですよ(笑)

いつもは大きなたき火を燃やして祝うムーミン谷の夏まつり。

その夜は、九つの種類の花を枕の下に入れて眠ると、見た夢がかなうとか。

あなたも、素敵な夢の物語にムーミンたちと参加してみませんか?








トーベ・ヤンソン  著
下村 隆一 訳
講談社文庫




最新の画像もっと見る

コメントを投稿