私的図書館

本好き人の365日

九月の本棚 2 『老人と海』

2006-09-28 02:12:00 | 本と日常
今回は、文豪アーネスト・ヘミングウェイの*(キラキラ)*『老人と海』*(キラキラ)*をご紹介します☆

このお話のストーリーは簡単です。

キューバに住む貧しい老漁師が、小舟に乗って海に漁にでかけ、巨大なカジキマグロを4日間の死闘の末についに釣り上げる。

しかし帰ろうとするその途中、小舟にくくりつけておいた獲物がサメに襲われ、帰り着く頃には骨と頭しか残っていなっかった。

というお話。

ではこのお話は努力が報われなかったかわいそうな老人のお話なのか?

それとも結果は残念だったけれど、よく頑張ったと褒め称えるお話なのか?

もしかして、世の無常、はかなさをうたったそんなお話なのか?

どうしてこの『老人と海』が名作と呼ばれ、ヘミングウェイの代表作となり、長い間人々に読まれ、教科書にもその題名が載っているのか?

それはここに、我々人間の「強さ」が描かれているからです!(と勝手に断言!!)

…「戦う」ということ。

「戦う」=「暴力」の戦うではありません。

「戦う」ということは「生きる」ということ。

老人は、カジキマグロと死闘を繰り広げながら、力を失わないために生の魚を食べ、自分が傷を負いながらも、あきらめずに綱をたぐり寄せます。

カジキマグロに話しかける姿は、まるでよきライバル、戦友に話しかけるかのよう。

戦いの最中、この広い海に存在しているのは、確かにこの老人とカジキマグロだけ。

あなたは、無駄なことはしないタイプですか?

いつも安全、合理的、簡単で便利な方法を選択しますか?

目的地に行くために、最短で到着できる方法をあれこれ頭を使って選ぶ方ですか?

…それは、本当にあなたの意思ですか?

ひとつの価値観から見ると、この老人は敗北者かも知れません。

しかし、もうひとつの価値観からすると、彼は間違いなく英雄なのです。

このお話には少年も登場します。

かつては老人と共に海に出ていましたが、両親のいいつけで今は他の舟に乗っています。

それでも何かにつけて老人の世話を焼きにやってくる少年。

この少年にとって老人は英雄なのです。

老人は戦います。
カジキマグロに襲いかかるサメに対して、ナイフを突き立て、鋭利な木の破片で突き刺し、棒で殴りつける。

そして無残に食いちぎられていくカジキマグロ。

老人とあれほど勇敢に戦った英雄が、無力にもボロボロにされていく。

浜に打ち上げられた小舟と大きな骨を見て、他の漁師たちは息を飲みます。
彼らにもその巨大さと、それを捕まえることの大変さが少しはわかるからです。

しかし、少年は驚きません。
老人の腕を信じて疑わない少年は、傷つき、ベットに倒れ込んだ老人を介抱し、涙を流します。

その巨大な骨をたまたま見た観光客が、あれはサメに食われた大きなカジキマグロだと説明しようとする給仕の言葉を早とちりしてこうつぶやきます。

「あら、鮫って、あんな見事な、形のいい尻尾を持っているとは思わなかった」

彼は果たして哀れな老人なのでしょうか?

それとも勇敢な勇者なのでしょうか?

この『老人と海』を読んで、彼の姿をあなはどう見るでしょう?

人の力の及ばないものへ戦いを挑むこと。

それは、もしかしたら、人間だけが持つ力なのではないでしょうか。



「闘ったらいいじゃないか」とかれははっきりいった、「おれは死ぬまで闘ってやるぞ」

            ~本文より~











アーネスト・ヘミングウェイ  著
福田 恆存  訳
新潮文庫





最新の画像もっと見る

コメントを投稿