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七月の本棚 2 『封神演義』 ストーリー編

2005-07-18 00:36:00 | 日々の出来事
今月は、中国に古来から伝わっている物語。
安能務訳、講談社文庫に納められている『封神演義』をご紹介しています☆

しかし実はこの『封神演義』。
中国の民間に古くから伝わっているにもかかわらず、作者不明で、日本でもあまり知られていません。

かろうじて、主人公の太公望くらいが知られているくらいでしょうか。

こんなに面白いのにもったいない*(びっくり2)*

川で釣りをする老人。
しかしその釣り針は水面から離れている。
これでは魚が釣れるわけがない。

訪れた文王(のちの周王朝の祖)が「釣れますか?」と訊ねると、老人は「なに、本気で魚を釣ろうというのではない」と答え、魚釣りに喩えて、「天下経営の学」を文王に説いて聞かせる。

中国の『史記』にもある、有名な「軍師と帝王の出会い」の場面です。
こうして、太公望は文王と、その息子、武王の軍師となります。

もちろん、この逸話も物語の中に盛り込まれています。
「商周革命」は本当にあった歴史的事実。この歴史的事実を下敷きに、道教的解釈と、神仙思想で脚色されたものが、この、『封神演義』なのです*(星)*

さて、肝心のストーリーのほうですが…

邪魔な仙人と生意気な人間を「神界」に封じようとする封神計画。
この計画をスムーズに推し進めるためにも、下界の商王朝には速やかに滅亡に向かってもらわなければならない。

ところが、三十一代目の紂王(ちゅうおう)は、武術にもすぐれたなかなかの名君。
しかも部下には、崑崙山で修行した太師聞仲をはじめ、優秀な宰相の商容に、何百万の軍勢をひきいるあまたの武将達がひかえている。

しかし、商周の入れ替えは、変えようのない天の定め。これすなわち「天数」という☆

でもなかなか人間風情にこの「天数」に逆らうことは出来ないみたい。
そう、いかな名君にもやっぱり弱みはあるもの。
この紂王の場合、それは、無類の女好きということ*(ハート3つ)*

「女媧宮」に詣でた紂王は、その神像の美しさに心奪われ、思わずふらちで淫らな詩をその壁面に書き付けてしまいます。(ま、一種のセクハラですね)

これに怒った女媧娘娘(にょかにゃんにゃん)は、三匹の妖げつ(千年の女狐と九首の雉と石琵琶)に命じて、残り二十八年とされる商王朝の天数を縮ませようと画策します。
絶世の美女になりすました三妖は、次々に後宮に入り込んで、紂王の心を惑わします*(音符)*

あぁ、実から出たサビとはいえ、狐相手にもてあそばれるとはなさけない*(汗)*

もちろん、これには「封神計画」の一端を担うという役目もあります。ですから、武力でもって商王朝を滅ぼそうとする太公望たちと、ほんとうは目的は一緒。
ところが、なかなかそうはいきません。

千年の女狐の色香と妖術に操られた紂王は、忠臣を退け、後宮で荒淫に耽る日々。

一方、太公望のもとには、姿かたちを自由に変えられ、神速で敵に襲いかかる哮天犬を袖口に隠した道士、妙道真君の楊ゼンが参加。
また宝珠から造られたため魂魄がなく、そのために死ぬこともない人間兵器のナタクもやってくる。
次々と集まる崑崙山の道士達。
みな師匠の仙人に命じられたり、自分の因果で参加したりしているのだが、実はこの「封神計画」に隠されたもう一つの計画があることを、彼らは知らない…

仙人たちの世界、「仙界」には、大きく分けて三つに勢力があります。
一つは、崑崙山を中心とした「闡教」の一派。これはもともと人間だった人たちが修行を積んで仙人になった集団。

もう一つは蓬莱山などを中心した「截教」の一派。
こちらは禽獣玉石樹木が天地の霊気と日月の精気を浴びて道術を会得して仙人になった集団。

さらに、西方の「仏教」と縁のある仙人もたくさんいる。

「封神計画」のもう一つの目的は、「截教」の仙人たちを「神界」に押し込み、「仏教」の仙人たちを西方に追放して、崑崙山の「闡教」による「仙界」独占を図ろうというものなんです!

これにいち早く気付いた、崑崙山の変わり者。
帝位を拒否したということで特別待遇を受けている申公豹(しんこうひょう)は、太公望に持ちかけます。

天界の気まぐれに付き合っていらぬ争いを招くまでもなく、千年の女狐を成敗すれば、紂王は正気に戻る。あの皇帝は少々スケベだが悪い奴じゃないから許してやれ。

と、いうのです。
この申公豹、千里眼の力を持つ白い虎の「クロ」にまたがって空を駆け、最強の呼び名も高い宝貝(パオペイ)「雷公鞭」を持つ、たぶん物語中でもっとも魅力的なキャラクター*(ハート)*

誰にも従わず、勝手気ままなんだけど、人間界に自分達の都合でちょっかいを出す「天界」や「仙人界」をおもしろくないと思っているらしいのです。

だから自分も直接は手を出しません。
そのくせ、時たま現れては、様々なことに口を出しては混乱させる。
「仙界」にとってはまさにトラブルメーカー。

美しい妖怪により、内から崩れ、各地の武将達が反旗を翻し、終末の悲鳴を上げる商王朝。

各勢力の仙人達が、様々な秘密兵器を持ち寄り、壮絶を極めていく戦場。

「神界」設立にために立てられた封神台に、肉体から切り離された魂が飛んで行く…

父や子が、夫や妻が庇い合い、時に切り結ぶ、愛情と非情とが飛びかう大河ロマン!

こんな物語を、何百年も昔から語り伝えてきた中国ってほんとスゴイ*(星)**(キラキラ)*

SF、ファンタジー、スプラッタホラーにアクション、お色気、歴史小説から戦記もの、裏切り、仇討ち、悲恋に愛憎劇と、これでもかってくらい色々な要素が詰め込まれています。

あまりに多いので、この紹介も、もう一回だけ続きます♪

どうか見捨てずに、お付き合い下さい☆





安能 務  訳
講談社文庫









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