私的図書館

本好き人の365日

二月の本棚 2 『ボッコちゃん』

2008-02-28 01:34:00 | 本と日常
バーのマスターが趣味で作った女性型ロボットは、完璧な容姿を持つ美女だった…

さて今回は、1000編を超す作品を生み出された、星新一さんの本をご紹介したいと思います。

星新一さんといえば、長編も書かれていますが、何といってもショート・ショートです!

長くて重い小説は読む気がしない。
軽くて、楽しく、オシャレで、面白い♪
そんな本をお探しですか?

そんな欲張りでお得なものが好きで理想の高いあなたには、ショート・ショートがピッタリ!

とっても短いお話なのに、内容はバラエティー豊か、手軽に読み始めることができて、しかも刺激的なんです☆

その中では、宇宙船は飛ぶし、悪魔は飛び出すし、強盗や殺し屋がそっとうしろに忍び寄る♪

お金に困ったサンタクロース。
宇宙人から贈られたプレゼント。
未来の地球。
過去の発明。
ライバルに差をつけたい女優の前に現れた妖精。
みんなに施しをして回るなぞの青年。
少女をペットとして飼う老医師。
などなど。

それはもうたくさんの作品があるので、どの作品を紹介しようか迷うのですが、その中でも初期の作品が収められた自選短編集。

*(キラキラ)*『ボッコちゃん』*(キラキラ)*をご紹介しましょう☆

「ボッコちゃん」はロボットです。

でも見た目は完全に人間。
しかも完璧な容姿をしています。

欠点は、頭の中まで手が回らなくて、簡単な会話の受け答えしかできないこと。

それでも、バーのお客を相手に、お酒を飲むことだってできます。

ただし、飲んだお酒は足元のチューブをつたわってマスターが回収するんですけどね☆

ちょっとツンとしているのも美人の条件。

「きれいな服だね」

「きれいな服でしょ」

「なにが好きなんだい」

「なにが好きかしら」

「ジンフィーズ飲むかい」

「ジンフィーズ飲むわ」

そっけない答え。
べたべたしたおせじも言わない。
そのくせお酒に乱れることもなく、とびきりの美人とあっては、お客さんが放っておくはずがない。

すっかりお店の人気者となったボッコちゃん。

星新一さんの作品の魅力は、その設定のうまさもありますが、この人の裏をかくようなストーリー展開に、普段常識を疑いもしない人々の価値観をゆさぶる内容、そしてそれを少しも押し付けない文章です。

同じ本の中の一編『なぞの青年』では、子供たちのために公園を作り、困っている人たちを助けるためにお金を使い、名乗りもせずに去っていく青年が現れます。

彼は実は税務署の職員で、収められた国民の税金を無断で使っていたのです。

彼の上司は怒り心頭、「信頼してお金をあつかう重要な役目をまかせたのに、勝手にそんなバカげたことに使とは、頭でもおかしくなったのか!」と彼を異常者あつかい。

「わたしが異常で、他の議員や公務員たちは、みんな正気だとおっしゃるのですか」

そんな話があるかと思えば、ライバルの女になんとか差をつけたいと思っている十九歳の女の子の前には、なんでも願いをかなえてあげるという妖精が現われます。

ただし、その願いは、ライバルのところには二倍になってとどくのです。

お金も自分の二倍。ボーイフレンドも自分の二倍。

さてこの女の子は何を願うのか、それとも願わないのか?

「マネー・エイジ」という作品では、ワイロをもらうことを認めて、なにもかもがお金で動く世界が登場します。

親も、学校の先生も、弁護士も裁判官も、お金で動くのがあたり前。

ところがそんな世界の方がうまくいく。

テストの点を上げてもらうために先生にワイロを渡さなきゃいけないけれど、もちろんワイロを渡したくないから勉強をしなくちゃいけない。

犯罪を犯したら、警察、弁護士、裁判官にワイロを渡さなきゃいけないから、犯罪が割りに合わないと誰もが考える。

いじめっ子はお金を巻き上げることは出きるけれど、その額より、バレた時の出費の方が高いから頭の悪い子しかやらない。

しかもワイロをあまり受け取ると、成績や昇進に響いて、将来もっとワイロがとれる地位につくことができなくなってしまう…(笑)

こんなに変わった内容なのに、不思議と読み終わった後、印象がしつこく残りません。
いや、重くのしかかってこないのです。

時代や風俗に頼ることなく、おせじを言わず、そっけないのに、そこがまた魅力的♪

それは、星新一さんの、独特の作風、計算された文章の力のような気がします。

だから、いつまでたっても古くならない☆

もしかしたら、人類が滅びてしまっても、星新一さんの作品は残ったりして♪









星 新一  著
新潮文庫









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