私的図書館

本好き人の365日

十一月の本棚 3 『ムーミン谷の十一月』

2008-11-30 23:58:00 | 本と日常
今回は、ムーミンシリーズの一冊。

*(キラキラ)*『ムーミン谷の十一月』*(キラキラ)*をご紹介します☆

ご存知ですよね?

フィンランド生まれの作家、トーベ・ヤンソンさんが生み出した、どこかユーモラスで、心温まるキャラクター。

主人公のムーミンは、本名をムーミントロールっていうんですよ♪

小説としてムーミンが初めて登場したのは、1945年。
『小さなトロールと大きな洪水』という物語で、このお話の中でムーミンたちは、初めてムーミン谷にやって来ます。

弱虫なスニフ。

ちょっと生意気なちびのミイ。

おしゃれが好きなスノークのおじょうさん。

そしてムーミントロールの親友スナフキン。

その他にも、変な生き物のニョロニョロとか、融通のきかないヘムレンさんたちに、料理や掃除が生き甲斐のフィリフヨンカや、寂しがり屋のホムサたち。
ちびのミイのお姉さんであるミムラ姉さんに、ムーミン一家の水浴び小屋に住み着いているトゥーティッキなど、魅力的なキャラクターがいっぱい☆

小説としては九冊の作品がありますが、1970年の作品、この『ムーミン谷の十一月』が最終巻となります。

今回の主人公は、ヘムレンさんと、フィリフヨンカと、トフトというホムサの少年。
それと何でも忘れるスクルッタおじさんに、スナフキンの5人。

そう、ムーミンパパもムーミンママも、ムーミントロールたちもこのお話には登場しません。

いったいどこに行ってしまったんでしょう?

さまざまな理由でムーミン谷のムーミンの家にやってきた5人。

それなのに、いつも温かく迎えてくれるはずのムーミンたちの姿が見えません。

ムーミンたちを待つ5人は、何となく奇妙な共同生活を始めます。(もちろんスナフキンはテント生活です♪)

もっとも、全然共同生活じゃないところが面白い☆

普通一緒にいる以上は、仲良くしたり、協力したり、多少は我慢しますよね?

もちろん、スナフキンたちだって、誰かが喜ぶことをするのは好きです。
みんなで食事をすることだって。

パーティーだって開きます。

でも、一人の時間も大切。
誰だって、自分ひとりになりたい時はあるもの。
そんな時は、たとえそれが大好きなムーミントロールだって邪魔なのです。(もちろんムーミントロールはそこのところはわかっているので、”一緒にいても”ひとりっきりにさせてくれます☆)

ひとりになりたい。
それは、友達じゃないってことではありません。

まるで、5人の時間は勝手勝手に流れているように見えます。

音楽のこと考えたり、人の役に立つことをあれこれ考えたり、髪をとかすことに夢中になったり、ひたすら空想の世界に遊んだり。

人の話をまったく聞いていない登場人物なんて、ヒドイと思いません?

ところが、ムーミンの物語の不思議なところは、それが全然当然なんです。

いや、むしろ、それが必要とさえ思えます。

夜中に森の中を一人で歩く。
テントの中でハーモニカを吹く。

自分のためだけの時間…

時にはスナフキンに話を聞いてもらったりもします。
ミムラ姉さんに髪をとかしてもらったり。

それぞれが独立して歩いているようでいて、一瞬、サッとそれぞれの時間が重なる。

同じ世界に生きているんですから、当然ですよね。

いつも一緒にいて、いつも同じことに笑っていなくちゃいけないのが友達?

ただ親切にしたいだけ。自分がよく思われたいから。そう思われていないと怖いから…

パーティーで、ミムラ姉さんはスナフキンのハーモニカに合わせて踊ります♪
ヘムレンさんは自作の詩を朗読し、ホムサも難しい本を読んで聞かせます。
フィリフヨンカは、ムーミンたちがボートに乗って帰ってくる様子を見事な影絵で上演します。

「わたし、しないではいられなかったんですもの。あなただって、わたしとおなじように、したくてたまらないことをすればいいんだわ…」

人間は一人では生きていけない、とよく聞きます。

確かに、そういう面もあるでしょう。

でも、人間は、一人でもちゃんと生きていける。
そう言ってあげる必要もあるんじゃないでしょうか。

そりゃあ、たまには誰かと話すことも必要です。
助け合ったり、励まし合ったり。
時にはそれをうとましく思ったり。

でも、大丈夫。あなたはちゃんと一人で生きていける。

そう言ったからって、友達じゃないってことには全然なりません。

だから、あなたのしたいことをすればいいの。
誰の顔色も気にせず、誰からも命令されず。

あなたはちゃんと一人で生きていける。

ムーミンシリーズが好きなのは。、この本の中に、こういうメッセージがあるんじゃないかと思えるから。

もちろん、私の勝手な感想です♪

そして、ちゃんと一人で生きていける者同士が、友達になるって素晴らしい☆

スナフキンとムーミントロールを見ているとそう思います♪

きっと、十人いたら、十人なりの「ムーミン」があることでしょう☆

みんなが同じ感想なんて、そっちの方がヘンですものね。

ムーミントロールの好きな人。

スナフキンが好きな人。

ちびのミイが好きな人。

おしゃまさんことトゥーティッキが好きな人。

たくさんのムーミンファンがいることでしょう♪

そういう数多くの人たちに愛させるのは、やっぱりそれだけこの「ムーミン」の物語に魅力があるってことなんでしょうね。

アニメでは知っているけれど、小説の「ムーミン」はって方。

この機会に、一度本屋さんで手に取ってみませんか?

ちびのミイがスナフキンと実は兄妹だとわかったり(いや、むしろ姉弟と書いた方がいいのかな)、スノークのおじょうさんがムーミンたちとは違う種族だと発見したり、いろいろな驚きが見つかることと思いますよ♪

ムーミン一家とたのしい仲間たちの物語。

どうか、あなたにも、素敵な出会となりますように☆















トーベ・ヤンソン  著
鈴木 徹郎  訳
講談社文庫