私的図書館

本好き人の365日

八月の本棚 3 『アンの友達 ―第四赤毛のアン― 』

2006-08-31 23:12:00 | モンゴメリ

魂の救急箱って持っていますか?

ど~しても気分が落ち込む時ってあるじゃないですか。

友人関係、親兄弟、学校や職場で、なんだかうまくいかなくって、このままだと、どんどん嫌な自分になっていくのがわかる、そういう時、立ち直るまでの避難所になってくれて、自分を取り戻す助けをしてくれる、そんな自分にとっての魂の救急箱☆

私の場合はまず美味しいものを食べること!

これでたいていのことは幸せで塗りつぶすことができます♪

あとは音楽を聴いたり、車で走ったり。

ひどく落ち込むような時はDVDでスタジオジブリの「耳をすませば」を観たり☆

そして、もっともお手軽で、もっともお世話になっているのが、お気に入りの本を読むことです!!

特に時間がなくて、すぐにでも応急手当しないと命に関わるような時は重宝します。

ついこの間も、「このままではヤバイ!」と思って急いで一冊の本を手に取りました。

それが今回ご紹介する本。
ルーシー・モード・モンゴメリの『アンの友達 ―第四赤毛のアン― 』です☆

この本は「人間ってほんとに…」と眉をひそめたくなるような気持ちになった時、まさに効果てき面!

自分の中の優しさを思い出させてくれる、少なくとも、「人間も捨てたもんじゃないなぁ~」くらいの気持ちにはしてくれます♪

おしゃべりで空想好きな女の子、アン・シャリー(アンの綴りはもちろん終わりにEの付くANNEです☆)の登場する『赤毛のアン』は有名ですよね。

アンの物語は「アン・ブックス」と呼ばれ、アンの青春時代から恋愛、結婚、そしてアンの子ども達が登場する物語まで、たくさんのシリーズがあるのですが、その中でもこの第四赤毛のアン、『アンの友達』では、主人公のアンは少し脇に引っ込み、アンの周囲で生きる素朴な人々の生活、人生にスポットライトがあてられています。

どれもが魅力的な十二の短編。

その中でも私が好きなのは『ルシンダついに語る』という物語☆

ルシンダはペンハロー一族きっての美人。
それなのに、35才になるこの歳までなぜか独身。

ある日、ペンハロー一族が集まった結婚式のでのこと、一年前にジョージ・ペンハローと結婚したばかりの新米ペンハロー、ジョージ夫人は、慣れない一族の人々に囲まれ、つい側にいたロムニー・ペンハロー(この好男子が夫のなににあたるのか彼女には皆目見当がつかない。もっとも、複雑なペンハロー一族の親戚関係を正確に述べることができるのは年とったジュリアス・ペンハロー伯父さんだけなのだが)に、その時窓辺にいたルシンダを指して、「(ルシンダは)美しい、とお思いになりません?」と軽く声をかけてしまいます。

それを聞いたロムニーは辛らつなセリフを残して部屋を出て行き、ルシンダは真っ赤になってひたすら外を眺めているばかり、同じ部屋にいた兄嫁たちは、ジョージ夫人のことをまるでへまをした子供のように見つめています。

そう、ジョージ夫人は知らなかったのです。
ロムニーとルシンダが恋仲であり、それなのにささいなケンカがきっかけで、お互いに愛し合っているくせに、もう十五年も口をきいていないということを!

十五年!!

どうやら悪いのはルシンダのほうらしいのですが、ついロムニーに向って、もう一生、口をきかないと言ってしまい、ロムニーのほうも、ルシンダのほうから口をきかなければ自分も二度とルシンダに話しかけない、と言ってしまったらしいのです。

もう! お互い30過ぎてるのに~!!

モンゴメリの人物描写が好きです♪

このロムニーとルシンダの二人は言うに及ばず、ペンハロー一族のおばさんたちの口傘のないおゃべりの楽しいこと(笑)

まるで自分ちの親戚のおばさんたちを見ているよう♪

さて、いよいよ結婚式も終わり、みんなが帰り支度を始めたころ、またしてもジョージ夫人はへまをしてしまいます。

ルシンダを馬車で送るはずだったいとこから、急用で送れなくなったので誰か別の人に送ってもらうように、との伝言を頼まれたジョージ夫人。

ところが彼女が伝言を伝えたのは、ルシンダではなく、彼女とよく似た薄緑色のオーガンディの服を着た背の高い赤毛の娘(笑)

あわれルシンダはたった一人送る人もなく取り残されてしまいます。

さすがに腹を立てたルシンダは、プリプリしながら午前一時の道を、底の薄い靴をはいて美しい薄緑色のボイルの服をまとったまま歩き始めます。(これが田舎道を歩くにのは全然向いてない!)

ところが、その帰りの小径で出会ったのはなんとあのロムニー・ペンハロー!!

驚きながらも、ルシンダのために(無言で)木戸を開けてやり、(無言のまま)錠をかけ、(無言のまま)ルシンダと共に歩き出すロムニー。

月の光で照らされた小径を静かに歩く二つの影。

とってもロマンチックなのに、このあともっとルシンダを怒らせる事態が発生してしまいます(笑)

果たして、十五年の沈黙の先に待ち受けている結末は?

私は笑いました♪
もう最高!!

モンゴメリの描く女性はとっても活発でとっても元気で大好きです☆

こっちまで元気にしてくれる。

もし、あなたが自分にも他人にも優しくなれなくて、自分の笑顔さえ忘れてしまいそうな時、この物語を読むことをオススメします。

悩みを解決することはできませんが、少しは、少なくとも、「人間も捨てたもんじゃないなぁ~………わたしも捨てたもんじゃないかも…」くらいの効果はあるかも知れません♪

さて、ルシンダは何と語るのでしょう?

人間は、どんな時笑うことができるんでしょう?

…人生って、可笑しなものですね☆











ルーシー・モード・モンゴメリ  著
村岡 花子  訳
新潮文庫






八月の名言集

2006-08-31 18:40:00 | 本と日常

なにがしあわせかわからないのです。

ほんとうにどんなつらいことでも

それがただしいみちを進む中でのできごとなら

峠の上り下りもみんなほんとうの幸福に近づく一あしずつですから。







              ―宮沢賢治「銀河鉄道の夜」―