私的図書館

本好き人の365日

二月の本棚 2 『神秘の短剣』

2005-02-11 23:20:00 | 日々の出来事
今月は、フィリップ・プルマンの「ライラの冒険」シリーズを紹介しています。

作り話が得意で、男の子顔負けの活躍をする主人公、「ライラ」。

人間の分身のようにつかず離れず行動を共にする守護精霊、「ダイモン」。

たくさんの世界が平行に存在するパラレルワールドを舞台に、キリスト教の聖書にある”楽園追放”の物語を下敷きにして、様々な世界の登場人物達が駆け回るこの物語。

そんな中でも一番のお気に入りが、ヨロイを着たクマ。
北極に住むクマの王、イオレク・バーニソンです☆

誘拐された友達を救うべく、北極へと旅するライラを助けてくれるこの白クマ。
力も強く、金属を加工する技術にかけては、人間など足元にも及ばないし、勇敢で、誇り高い種族なのに、最初ライラと出会う時は、人間にだまされ、ヨロイを奪われて、こわれた機械を直す仕事をしながら、その日の糧を得ていたりします。

クマにとってヨロイはダイモンのような物。
それを奪われ、落ちぶれているクマが、酒を片手につぶやく。
これが、ハードボイルドっぽくてカッコイイんです☆(クマだけど…)

「黄金の羅針盤」の下巻の表紙には、ライラを大きな背中にちょこんと乗せたこの白クマの姿が描かれていますが、これがまさに動く巨大なぬいぐるみといった感じ♪

このライラとイオレクのコンビもいいけれど、さらに熱い男の友情をみせてくれるのが、第二部『神秘の短剣』から登場するもう一人の主人公の「ウィル」☆

あらゆるものを切ることが可能で、しかもあらゆる世界に通じる《窓》を切り開くことができる短剣の担い手に選ばれた少年、ウィル。

彼は、私たちの住むこの世界の人間として登場し、迷い込んだライラを助けながら、過酷な自らの運命にも、立ち向かっていきます。

そして、ライラを通じて対面する少年とクマ。(う~ん、どうも「クマ」って書くと迫力なくなるな*(汗)*)

ライラのために戦う二人。
すべての世界に起こる異変。

やがて、魔女の言い伝え通り、ライラに、そしてウィルに、運命の時が迫ります。

「こんどは、イブは堕落しないでしょう。わたしがうまくやるから。人類は堕落しない…」

そして、敵の正体も、しだいに明らかになっていきます。

「かつてはエノクで、ヤレドの息子、マハラレルの息子だった…もの」

反乱を起こした天使。
ダイモンを連れ、マツの枝で空を飛ぶ魔女。
武装したジャイロプター部隊を率いるアフリカの王様。
体長は二十センチたらずだが、優秀な戦士ガリベスピアン。
そしてテキサスの気球乗り。

短剣を振るうたびに、別の世界への《窓》が開く。
あらゆるものを切ることができるその力は、たとえ神でさえも滅ぼすことができるという。
しかし、その短剣にも、たった一つ切れないものが…

第三部『琥珀の望遠鏡』では、ライラとウィルは〈死者の国〉へと旅立ちます。

なぜ教会はライラを追うのか?
教会の神、オーソリティとは?
そしてライラとウィルが死者の国で見るものは?

ファンタジーとしての魅力もいっぱいつまっているのに、それだけでは終わらない深いメッセージが伝わってきて、読み進めるうちに、どんどん物語の中に引き込まれてしまいます。

イブ(もともとの意味は命)がすべての罪の母?

それとも、神による抑圧の終わり、魂の解放?

天国は天上にあるものではなく、ほんとは、僕たちのそばにある…
今日という日を生きる人、すべてにあたえられた希望…*(キラキラ)**(星)**(キラキラ)*

この本の紹介は、あと一回だけ続きます。
お暇でしたら、もう少し、お付き合い下さいませ☆




フィリップ・プルマン  著
大久保 保寛  訳
新潮文庫