私的図書館

本好き人の365日

一月の本棚 『電車男』

2005-01-09 22:20:00 | 日々の出来事
恋愛小説は好きですか?

源氏物語の昔から、恋に落ちるのは男女の宿命。
こればっかりは誰にも止められない。

あまたの詩人が歌に詠み、物語作家が書き連ねてきた人類永遠の興味の対象。

人様の恋愛物語ほど順調だと退屈で、こじれると面白いものはありませんね☆(性格悪っ!)

今回紹介する本はちょっと変わった、それでもやっぱり純然たる恋愛小説。
きっとあなたも読みながら叫んでしまう、そんな臨場感タップリの物語*(ドキュン)*

リアルタイム恋愛中継『電車男』をご紹介します☆

まず出会いはNHKのTV番組「週刊ブックレビュー」(いつも参考にしています♪)

その中で、ちまたの話題になっていると話題にのぼったのがこの「電車男」。
オタク青年、インターネット、感動と涙。
そもそもタイトルの「電車男」からしてなにがなんのことやら、それがかえって”読みたい心”に火をつけました。

知りたい! 読みたい! 手に入れたい!!

舞台はモテない男たちの集まるインターネットのサイト。
そこで交わされたログがそのまま、一冊の本になっているってのも面白いのですが、なぜそれが恋愛小説なのか。

「電車男」こと二十代の会社員。
アニメやゲームが好きで、同人誌を買いにコミケにも出かけるアキバ系の青年が、電車の中でヨッパライから若い女の子を助けたことを掲示版に書き込んだことから、このとんでもなく魅力的なドラマは始まります☆

女の子と付き合ったこともないこの青年。
電車の中でのお礼にと、女の子から送られてきたペアのティーカップをきっかけにして、サイトの毒男たち(モテない男たちの総称なのか?)にそそのかされて、宅急便の送り状に書かれていた女の子の電話番号に、お礼が届いたそのお礼の電話をかけることになってしまい、大慌て。

匿名掲示版なので、みんなどこの誰ともわからないはずなのに、あまりに情けない「電車男」のあわてぶりに、役に立ったり立たなかったりするアドバイスを書き込み続けます。

電車男の書き込みが続くにつれ、この匿名の世界にひろがる妙な連帯感。
なんとかして「電車男」の恋を成就させてやりたい。
でもそこはモテない男(女性の書き込みもアリ)たちの集まるサイト。

どうやってデートまで持っていくんだ?
なんて誘ったら警戒されない?
食事に誘うならどんな店?
髪型は? 服装は?
話題はどんな?

電話での会話をシュミレーションしたり、お礼の手紙や贈り物の中身から、相手の気持ちを推し量ったり。

乏しい経験とネットの力をフル稼働させて情報を集める毒男たち。

…お、お前らいい奴だなぁ~☆

細い糸をたどるように彼女に会うところまでなんとかこぎつけた電車男と仲間たち。
書き込みをしていた連中も、半ば満足し、これ以上進展するとは誰もが(電車男本人も含め)思っていなかった、そんなところへ、彼女の思わぬ爆弾が投げ込まれるのです!
         ∧_∧
キターーーー( ・V・ )ーーーーーー!!!!

これは間違いなく恋愛小説です。
しかも、リアルタイムで進んでいく現実のドラマ。
「24」ばりに書き込みの上に表示される書き込み時間が秒単位で進み、深夜の一時になっても帰ってこない「電車男」によからぬ憶測が流れたり、ちょっと過激な書き込みがあったり、進まぬ状況に中毒症状で衛生兵に運ばれる住人が現れたりと、サイトの中は恋の嵐で遭難者続出*(キラキラ)**(ハート)**(キラキラ)**(ドキュン)**(キラキラ)**(割ハート)**(キラキラ)*

読んでいるこっちも、最初は毒男たちのけんとうはずれなアドバイスや、鋭い読みに「わかってないな~」とか思って笑っていたのに、いつの間にか引き込まれてしまって、もはや途中下車不能のレールの上を走っていました。

どうしよう止まらない、どうなっちゃうの、この先?*(汗)*

こんなに臨場感を持って感情に訴えてきた作品は、スティーブン・キングの「ミザリー」と、鈴木光司の「リング」「らせん」以来!

読み終わった時、涙ながして感極まって、本を両手に握って天を仰いでいました☆

とにかく真剣に相手のことを考えて(考えすぎて)、悩む男たちがカッコイイ。
恋愛中ってこんなにも色々考えているんですね。

相手のこと考えて服を選んだり、髪型を決め、店を下見し、それでもよけいな一言に後悔しまくる姿は、美男美女で洗練されたセリフの恋愛小説を一蹴してしまうくらいのパワーと笑いを持っています。

好きだな~、こんな人間たち♪

「電車男」の奇跡の最終章を、みなさんぜひご覧下さい。
きっとあなたも叫んでいることでしょう。

「電車男」がんばれ! って☆






中野独人  著
新潮社

*(風鈴)*「中野独人」とは、「インターネットの掲示版に集う独身の人たち」という意味の架空の名前です。