私的図書館

本好き人の365日

五月の本棚 2 『日ペンの美子ちゃん』

2004-05-16 22:07:00 | 日々の出来事
「かつて美しい文字で、幸せをつかんだ少女がいました。」

うわ~、懐かしい~♪

ある程度の年齢の方なら、雑誌の片隅に掲載されていた、この広告マンガのことはご存知ですよね☆

今回は、私達の年代なら、誰も知らない人はいないという、超有名キャラでありながら、実は誰もよく知らないという、魅惑の少女「日ペンの美子ちゃん」に捧げられた一冊。

『あの素晴らしい日ペンの美子ちゃんをもう一度』という本のご紹介です☆

長い歴史を持ち、先生方は超一流。
テキストは使いやすいバインダー式。
練習は一日20分程度でOK!
なんとペン字検定一級合格者の四割が日ペンの出身者。

通信教育の大手「がくぶん」が、ボールペン習字講座の宣伝マンガとして1972年に登場させたのが、この「日ペンの美子ちゃん」

口ぐせは「美しい字は心のおしゃれ」♪

だいたい九コマくらいの内容で、美子ちゃんの活躍(?)を描き、上記の歌い文句も必ず入っているという、実に欲張りな作品。
いつもその強引な持っていき方には、作家先生の苦労がしのばれたものです。

「海開きが近づいたわ、ペン字を習わなくっちゃ…」

なんでやねん!(笑)

キレイな字が書ける美子ちゃんの周りはボーイフレンドがいっぱい。
ラブレターを書けばモテモテ。
招待状を出せば人だかり。
きれいな字が書けるお妃を探しているエルフの殿が出てきたり。
美しい文字(本人ではない)ゆえに宇宙人に求婚されたり、ついには社長秘書の座を手に入れ、結婚相手まで捕まえてしまうのです♪

こう書くと、なんだかストーリーのある一本のマンガのようだけれど、そこは広告マンガ。
掲載される雑誌もバラバラなら、読者層によって内容も合わせてあるので本当に内容はバラエティー豊か。
こうして一冊にまとめてみて、初めて分かることもいっぱい。

実は練馬区に住んでいて、名字もちゃんとあるらしい。
宝塚と巨人軍のファンで、西城秀樹と焼き芋が好き。
SF小説や英国文学が大好きで、トールキンの「指輪物語」は特にお気に入り。
机の前にはお手製の「中つ国」の地図が張ってあって、本棚にも「二つの塔」と「王の帰還」の表紙が見える。(しかもちゃんと上下揃ってる☆)

ちなみに「日ペン」とは、「日本ペン習字研究会」の略らしい。

子供の頃、学習誌を買うと、よくこの広告がついていました。
当時は読み飛ばしていたのに、こんなに深い内容があっただなんて(笑)

眠っている間に暗記できる枕式の睡眠学習装置とか、何の効果があるのか忘れましたが二つのローラーを指で弾くような装置とか、当時としても怪しげな広告にまじって、顔写真入りの体験談が載っていたのを憶えています。

「日ペンの美子ちゃん」が4代目までいることにも驚き。
作者ごとに性格も描きわけられていて、初代から3代目までの三人が一緒に登場する回まで存在します。

好みはやっぱり矢吹れい子先生(現・中山星香先生)の描く1代目かな。
服装が妙におしゃれで、恋愛と夢のために日夜せっせと日ペンに燃える姿(なぜ日ペンなのかは謎として)はこちらにもその頑張りが伝わってきます。

広告マンガといってバカにできない面白さ。
よくぞこんな本を作ってくれたと、編集者に感謝したいくらい。(ヒマだよね~)

懐かしさも手伝って、爆笑させてくれた一冊です☆





岡崎 いずみ+mico secret service 著
第三文明社