インドで作家業

ベンガル湾と犀川をこよなく愛するプリー⇔金沢往還作家、李耶シャンカール(モハンティ三智江)の公式ブログ

息子と本音の飲み会

2014-12-26 13:15:58 | 私の作品(掌短編・エッセイ・俳句)
先の一時帰国からの帰路、息子が同棲中の恋人のマンションに寄宿して、ニュージーランド産マッドハウスのメルロー赤ぶどう品種のワインを、チーズやからすみ、チョコなどのつまみとともに戴きながら、一足早いクリスマスパーティーを催したことはお伝えした通り。

お酒が入ると、本音が出て、伯仲した議論になった。
息子サミール(26歳、日本名理秀)は南インドのシリコンバレーとの異名をとるIT都市でエンジニアとして勤務の傍ら、ラップミュージック活動に従事している。
11月には東インド一帯で初のコンサートも開催、まだ駆け出しとはいうものの、テレビに放映される回数も増えてきて、人気急上昇中である。

一方、ガールフレンドのラチャナは同い年で、市中二番手の銀行に勤務、来年二月に中国に短期派遣される予定が決まったとかで、息子とは違うキャリアを目指している。

そのため、話題はどうしても双方のキャリアに集中する。
ラチャナは恋人の動静をよく見ており、サミールのショーのオーガナイザーとの交渉のまずさを指摘、強引に売りつければいいというものでない、もっとディプロマシーを発揮せよと意見、父を早くに亡くしバンガロールに出稼ぎに来ているだけに、甘やかされて育った息子よりずっとマチュアで、恋人のことを、よく見てるなあと感心させられた。

さらに、息子が自分のアートを、ほかのミュージシャンと比べる癖があるのを突いて、時間の無駄、自分のアートにフォーカスすべきと手痛い批評、ここにいたって息子はさすがに自分のその短所を認めたので、私も他人と比べるのでなく、ライバルは自分なのだから、自分の作品を常に超える次作に精進すべきと、意見した。
なあんて、えらそうなこと言って、私も息子と同い年ごろはつい他人と比べてしまったもので、いまだって、比較の罠から完全に逃れたわけではない。ただ、比べても仕方ないとは思っている。たとえば、二、三十年プロでやってきている作家と比べても埒が明かず、かえって落ち込むだけ、それよりも、自分は自分と割り切って、前作に劣らぬ、否超える作品を目指すべきで、ベター、ベターへと精進することが大切と思う。ライバルはまさに自分なのだ。

そのことを、おのれへのいましめもこめて、息子に伝授したわけ。

若く野心に満ちた二人はエゴのぶつかり合いもしばしば、親としては見ていてはらはらする口論になることも。しかし、ラチャナは愚息をよく理解していると思う。的確なアドバイスだし、いまさらながら頭のいい子だなと思った。

ラチャナのリビングキッチン付、シャワールーム付設の2ベッドルームの2LDKマンションには、彼女の妹も同居しており、朝の11時ごろ戻って、夜の11時に出て行くという深夜勤務。

都会のインドの若者の生態が分かってなかなか面白い。
ファッションコンシャスなことも、スマートフォンを手離さないことも、日本の若者と変わらない。
ただ、草食系と称される日本の青年たちに比べると、ぎらぎらしている。

インドはよく、悠久の時間が流れる国と称されるが、都会に関する限り、秒刻みの社会で、息子と恋人を見ていても、ばたばたとあわただしく、一泊二日お世話になった間も若い二人は席を温めている暇もないせわしさ、やれパスポート申請(ラチャナの中国行きのためのインド国籍パスポート申請に息子が付き添った)だの、ラップのショーの打ち合わせ練習だの、私たち夫婦と悠長に会話を交わしている暇があまりなかったのだが、深夜息子カップルと飲んでしゃべれたことは、本音を探る意味でもよかったと思う(夜に弱い夫は爆睡)。

ラチャナはいい子だが、若いがゆえのエゴの衝突がちと心配。
夫は、これから三年続いたら、結婚してもいいとは言っているのだが、どうなることやら。ただしっかりした恋人なので、サポートという意味ではベスト、それと彼女は、息子に群がって来る女性に嫉妬しないんだそうだ。
ルックスのいいラッパーということで、女性は掃いて捨てるほど寄ってくる。
これまで交際した子も何人かいたようだが、経済的に寄りかかってきたり、ファンに嫉妬したりで、相当往生したらしい。
やっといい子を見つけたというのが、息子の言。

若い恋人たちが、切磋琢磨しあってキャリアの追求、双方が成功してくれることを祈るばかりだ。
この恋が成就され、最終的に結婚に結びつくかどうかはわからないけど。



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