インドで作家業

ベンガル湾と犀川をこよなく愛するプリー⇔金沢往還作家、李耶シャンカール(モハンティ三智江)の公式ブログ

インドの靴投げ記者

2009-04-10 02:27:54 | 私・家族・我が安宿
ブッシュ米前大統領に靴を放ったイラク人記者の事件はあまりにも有名
だが、インドでも一昨日、同様の事件が起きた。

                              

首都デリーにおけるチダンバラム(P.Chidambaram)国務相の記者会見上
の質問席で、ダイニック・ジャグラン(Dainik Jagran)日刊紙のジャル
ナイル・シン(Jarnail Singh)さん(シンという姓はすべてシク教徒か、
ヒンドゥ教徒の王侯カースト)が、スニーカーを放り投げたのだ。
幸いにも、命中せず横にそれたが、国務大臣もその瞬間はさすがに唖然。
すぐに平静を取り戻し、件の靴投げ記者が警備に両脇から抱えられて退
場させられた後(写真)、何事もなかったように会見を続けたが。

同記者がズック靴を放るにいたった怒りの原因とは、
1984年シク教徒警備によるインディラ・ガンジー(Indira Gandhi)首相
暗殺後のシク教徒殺戮暴動を扇動した与党国民会議派政治家ジャグディッ
シュ・タイトゥラー(Jagdish Tytler)氏を、CBI(中央情報機関)が
証拠不十分で放免したことによるもの。目撃者の証言ではジャグディシュ
氏はクロで、一万名もの無辜のシーク教徒が犠牲になっただけに、25年後の
不当な調査結果に怒り狂ったようだ。

                        

同僚記者によれば、ジャルナイルさんは日ごろは冷静温厚で通り、家族
もとっぴな行動に驚いているほど。

選挙前ということもあり無罪放免されたが、事後ご本人は記者として正
当な抗議の仕方ではなかったと自省の弁。その一方でついかっとなって
感情に走ってしまった背景にある、シク教徒の気持ちをわかってほしい
と、エモーショナルな弁明も。

             

これを受けて、シク教徒の多い北西インドのパンジャブ州ではストラ
イキ暴動が発生、与党国民会議派はダメージコントロールに必死、つい
にソニア・ガンジー(Sonia Gandhi)総裁(名門政治家一家ガンジー家
のイタリア出生嫁、夫のラジヴ・Rajivは91年暗殺)が、ジャグディシュ
・タイトゥラー氏ほか、もう独りの扇動者サジャン・クマール氏(Sajjan
Kumar)を候補リストからはずす事態にまで進展した。

靴投げ効果は多少なりともあったというべきか。

いまさら一万名の犠牲者がよみがえるわけでもないが、ジャルナイル氏
の激怒は、全シク教徒を代表する感情だったかしれない。

                             


*   *   *

*後日談/英字紙の読者投稿欄に、今後記者会見には、報道陣は全員裸足
でというルールが義務付けられるかもとあったのが笑みを誘った。
ジャルナイル記者の念頭に先の靴投げイラク記者のことがあったのは確
かで、でなければ、こういった抗議の仕方は思い浮かばなかったはずだ。
さてさて、靴投げ余波はまだ続く。今度はハリヤーナ州の選挙集会で、
国民会議派議員の政策に反対して、サンダルを投げる男性が発生。
インドでは今後、靴投げ抗議はもしかして、ポピュラーになるかもしれ
ない?
ちなみに、多数のサンダルを紐に通してネックレスにし、相手の首に架
けるとインドでは最大の侮辱になる。
コメント
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