デュアル

2014年01月24日 | 日記
発声には身体の使い方のバランスがとても大切です。身体というものはどんな動きをするにしても必ず様々な筋肉が連動しますが、その際、必ず反対の動きをする筋肉、即ち拮抗筋が働きます。或る方向に動こうとすれば、それを引き止める働きが生じます。これは「デュアル」ということですね。dualとはつまり2つあることです。
先週だったか、朝のTV番組で「美脚をつくる」という特集をしていました。何気なく見ていたら、足を肩幅に開いて立った状態でつま先立ちを連続30回やって下さい、と言っていました。バレエの基礎練習風ですよね。そこで私も早速やってみましたが、これがなかなか大変。10回までは平気なのですが、20回ぐらいになると疲れてきて、30回やるとふくらはぎが痛くなります。でも、30回やった後は足の裏が床に吸いつくような感じになり、重心も安定して下半身がどっしりとした感じになります。これを1日3回、1ヵ月から3ヶ月ぐらい続けると美脚ができるそうですが(笑)、それはともかく、息を高く上へ飛ばすには下半身の筋力が不可欠なので、これはヴォイトレにも使えそうだと思って福祉サービス事業所のヴォイトレでやってみました。やはり皆さん30回はかなりキツイみたいでしたが、息の抜けが良くなり、息モレが減った分だけ声の響きが明るく輝かしくなりました。これは良い!それ以来、個人レッスンや合唱のレッスンでもやっています。息のポジションを高くしようと思えば、上半身の呼吸筋だけでなく足の筋力も必要なのですね。
足の使い方ではもう一つ注意することがあります。踵の方に重心をかけ、足の指で床をつかむようにして膝を少し緩め、高音域になったらぐっと重心を下げるのです。すると息が喉の後ろの方を通り、声が顎に引っかかりません。その時は背筋や後頭部にも緊張があります。
発声時に息を十分に持続させる、即ち息を支えるためには、軽く胸を張り続けて吸気筋を使い、下がった横隔膜が元に戻らないよう腰の周りの筋肉も動員します。この拮抗し合う感覚を覚え、それを維持することで「支え」ができるわけです。バランスよく拮抗させれば身体はプラスマイナスゼロの状態になり、「あれ?これで筋肉使ってるのかな?」というぐらいラクな感じになります。そして不思議なことに、歌っている曲のキーが低く感じられるのです。
デュアルを体得するにはバランス感覚を磨く必要がありますね。どんなに気をつけていても、人間のすることにはどうしても偏りややり過ぎが生じます。バランスの取れた身体の使い方ができているかどうかは声を聞けばわかりますが、悲しいかな自分の声は客観的に聴くことができないので、よい耳を持った第三者にチェックしてもらうことがどうしても必要です。かのドミンゴやグルベローヴァでさえ定期的にヴォイトレに通っているというのですから。そしてまた、自分自身も良い耳を養うことが大事です。美しい響きというものは器楽にも声楽にも共通ですから、歌だけでなく弦楽器や管楽器の良い演奏を聴くこともためになると思います。よい音楽会、よいCDをたくさん聴きましょう。

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