今昔

2012年05月26日 | 日記
今日は熊本日独協会の創立50周年記念総会でした。私はなぜか協会の理事で、且つ日独協会合唱団の指揮者でもあります。合唱団は毎年の総会で歌を披露していますが、今年は記念の年ということで少し趣向を凝らし、弦楽アンサンブルとの共演で歌わせて頂くことになっています。午前中に3人、午後に2人のレッスンをしてから会場に駆け付け、リハーサルをしました。リハーサルに入る前の時点ではかなり疲れていたのですが、毎度ながら練習を始めるとスイッチが入ったように元気になります。本当に不思議。
本番では最初にア・カペラを3曲歌ってから弦楽との共演になるので、控室でア・カペラの練習をしたのですが、普段と場所が違うため、響きが少々不安定でハーモニーがまとまらない感じです。あまり時間もないし、困ったなあと思いながら弦楽との合わせに臨みました。弦楽の指揮者が指揮をして下さるので、私もソプラノに入って歌います。
自分も一緒に歌っているので、全体がどんなふうに聴こえているのかわかりません。しかし、感触としてはア・カペラより乗っているようです。一通り合わせた後、ソプラノのメンバーの一人が「気持ちいい~!」と感に堪えないような声を発しました。やっぱり伴奏があると安心して歌えます。しかも今日は弦楽の伴奏です。弦楽器の音は人間の声に近いと言われますし、ピアノと違って伸ばす音でも表現ができるので歌との相性がいいのですね。確かにとても歌いやすい気がしました。
あっという間にリハーサルの時間が過ぎ、本番です。最初に弦楽アンサンブルがパッヘルベルのカノンを演奏します。その間、合唱団は控え室でストレッチをしたり歌詞を読んだりしながらスタンバイ。いよいよ本番です。最初にア・カペラでメンデルスゾーンの「3つの民謡」を歌います。リハの時にアラが目立ったので内心ハラハラしながら指揮をしましたが、うちの合唱団はいつも「本番が一番上出来」という、火事場の馬鹿力のある合唱団で、ご多分にもれず今日も本番が一番まっとうな出来でした(無論、いろいろ問題はありますが)。次に弦楽との共演でウェルナーの「野ばら」とメンデルスゾーンの「おお、ひばり」。初めて弦楽の指揮者の指揮で歌うので、テンポがずれては大変と皆が指揮に集中しています。そのせいか、快心の出来と言ってもよさそうな演奏になりました。ドイツの副総領事はじめドイツ人の来賓方もじっと耳を傾けて下さいました。もちろん日本人のお客様方も。
レセプションの時、団長が副総領事に「私たちのドイツ語は通じましたでしょうか?」と尋ねていましたが、そう訊かれて「いいえ」とは言えませんよね(笑)。副総領事は流暢な日本語で私たちの合唱を褒めて下さいました。団員の一人が「ドイツではウェルナーの「野ばら」とシューベルトの「野ばら」はどちらの方がよく歌われるのでしょうか。最近の若い人たちはこういう曲をあまり知らないという話ですが...」と問いかけると、「正直に申し上げてもいいですか」と前置きされて、「若い人はどちらも知りません。ドイツでも最近はカラオケが流行っていて、一時期より歌がよく歌われるようになってはきましたが、若い人が歌うのはポップスやロックで、こういう古い歌はあまり歌われないのです」と答えられました。先日、「夏の思い出」や「花の街」や「ふるさと」を知らない若者のことを書きましたが、ドイツの若者も「野ばら」や「菩提樹」や「ローレライ」を知らないのです。西も東も似たような実情なのですね。時代の流れを感じます。質問者は残念そうに、こうした名曲の復権を切に願っている、と応じていました。
このパーティには、一時帰国中のKさん(先日のブログ「ファミリー・レッスン」に登場した方です)も参加されました。ニューフェイスは自己紹介をするという会のしきたりに従って登壇したKさんは、ヨーロッパでの合唱体験に基づいて合唱の楽しさと素晴らしさを壇上から語りかけられ、合唱団員から盛んな拍手を浴びていました。図らずもKさんが合唱団の広告塔になって下さったような趣でした。
Kさんに「吉田さんは日独協会に入ってどれぐらいになるんですか?」と訊かれ、改めて計算してみたら何と25年です。月日の経つのは本当に早いものです。時の流れや時代の変化に意識がついていけていないなあ、と思うと同時に、変わったもの、変わらないもの、変わるべきもの、変えてはいけないもの、そうしたものを心の中でもう一度よく整理しないといけないという気持ちになりました。

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2 コメント

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Unknown (ドレミファそら豆)
2012-06-01 09:05:31
ドイツの若者も・・・名曲とは言え、もう口にしないのですね!!
う~~~ん、ちゃっと哀しいです。

偶然Kさんと仲良く(?)なりました。
人懐こい方で、Kさんから声をかけてこられ、しばし先生繋がりで話が盛り上がりました。
よろしくお伝えください。
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Unknown (吉田)
2012-06-02 08:36:49
Kさんもそら豆さんとお知り合いになれて喜んでいらっしゃいましたよ。
昔の歌の良さを知る者は、それらをできる限り若い人たちに伝えていかないといけませんね。私の担当する初修ドイツ語クラスの6月の歌は「菩提樹」にしました。ちょうど定冠詞・不定冠詞の勉強をしているので、題名の「Der Lindenbaum」と歌詞の中に出て来る「ein Lindenbaum」、Baumが男性名詞であることや、Lindenbaumが合成語であることなどを説明できます。先日亡くなったフィッシャー=ディースカウの名演奏を範唱CDとして聴いてもらいました。今はよくわからなくても、記憶の片隅に残ってくれればと願っています。
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