未来へ

2012年05月24日 | 日記
今朝、日本声楽界の重鎮であったバリトンの畑中良輔氏の訃報に接しました。日本で声楽や合唱に従事する人で畑中氏の名前を知らない人はいないでしょう。声楽を志す人が必ず学ぶ「イタリア歌曲集」をはじめ、数多くの声楽教本の編集に携わり、長らく芸大で教鞭を取られました。私は直接お会いしたのは一回きりですが(それも30年も前)、エッセイなどを能くされていたので、文章を通じて温かいお人柄を感じていました。18日にはフィッシャー=ディースカウが逝ったばかり。この年になると、自分達を導き、育てて下さった世代の方たちが次々と鬼籍に入っていかれます。寂しいことですが、今度は私たちが次の世代を育てていく使命を担うわけです。
今日、老健の職員合唱団で「未来へ」という曲を練習しました。KIROROのヒット曲です。「ほら 足もとを見てごらん これがあなたの歩む道 ほら 前を見てごらん あれがあなたの未来」という歌詞で始まり、「未来へ向かって ゆっくりと歩いて行こう」で終わるこの曲、途中にパッヘルベルの「カノン」風のメロディが挿入され、卒業式の歌にぴったりの雰囲気を醸し出しています。未来ある若い人たちに、人生を前向きに着実に歩んでほしい、あなたは一人ではない、愛し愛されながら人生を歩んでいくのだ、あなたが歩む人生はただ一つのかけがえのない物語なのだ、という心のこもったメッセージが溢れています。
折しも「巨星墜つ」というべき2つの訃報に接して感慨を深くしていただけに、これから人生を切り拓いていく若い人たちへのエールのような歌を聴いているうちに、心が温かくなってきました。私たちは亡くなった人たちともつながり合って生きているのですから、託されたものを知り、受け止め、次につないでいくことが使命なのだと感じます。未来は若者たちの手の中にある。それなら若者を応援しよう。私もそんなことを考える年になったのだなあ、と思います。

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2 コメント

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Unknown (ドレミファそら豆)
2012-05-25 20:31:00
私たちが学生時代に夢中になってレコード(凄い昔のような気がします?)で聴いたドイツ系の歌手の方が段々と少なくなって・・・寂しい限りです。
フィシャー・ディスカウの「冬の旅」は思い出深い曲です。
ドイツ・リードの世界を知ったのも彼のレコードからだったし、就職してすぐに(本当にすぐに)年休を取り福岡までコンサートを聴きに行き・・・校長からお叱りを受けたのが懐かしく思い出されます。
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Unknown (吉田)
2012-05-25 22:10:08
そら豆さん、コメント有難うございます。私はレコードで音楽に触れた最後の世代に属します(大学時代にCDが開発されましたので)。当時は発声もドイツ系、イタリア系などという区別がよく言われていました。今から考えれば、発音はともかく、声楽発声の原理は基本にはすべて同じはずですし、本当にうまい人は大抵、歌曲をしっかり勉強していますよね。フィッシャー=ディースカウもシュヴァルツコップも、オペラ歌手としてもリート歌手としても超一流でした。あれほどスケールの大きな声楽家はもうなかなか現れないでしょうね。
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