低音の魅力

2013年02月26日 | 日記
人形劇の仕事をしているIさんが久し振りにレッスンに来られました。初めてうちへ来られた時は、声の酷使で声帯結節ができて嗄声になっていらっしゃいましたが、治療と併せてリハビリ的なヴォイトレを続けるうちに、だんだん声が出しやすくなってきたそうです。車に荷物を積んで遠方まで仕事に行かれるそうで、今日も牛深に行ってきた帰りです、とのこと。体力勝負の仕事ですね。
Iさんの声はかなりハスキーです。レッスンしているうちにだんだん息の音が少なくなり、密度の高い声になっていきますが、いつも高音域の抜けがもう一つ、というところでレッスンが終わります。それは結節のせいだと思っていたのですが、今日、ひょっとしてIさんは声帯が太いのではないだろうか、と、ふと思いました。というのも、やはり演劇をやっているハスキーヴォイスの大学生のレッスンで、どうもこの人は声帯は極太なのではないかと思い当たり、身体をよりしっかりと使って発声してもらうことで、とても厚みのある立派な声が出始めたことがあったからです。重い声帯をくっつけるには、場合によっては軽い人の倍ぐらい筋力が要りますし、閉じた声帯を引っ張って伸ばす高音域は更に筋力が要ります。Iさんが2点イ音より高くなると声帯を引っ張りきれなくて声が出なくなるのも、そのあたりが筋力の限界なのでしょう。
そこでIさんも、高音ではなく中音域から低音域にかけての練習を重点的にやってみました。すると驚くほど良い声が響き出したのです。Iさんは小柄で細身なので、何となく軽いハイソプラノのような気がして高音域の練習ばかりしていたのは申し訳ないことでした。中低音域の練習をする時も高音域と同じく息をしっかり上へ飛ばし、胸を軽く張って吸気筋優位にします。そうすると声帯を厚く使っても息が喉にまとわりつかず、声帯の負担が軽く済みます。Iさんは高い音域へスライドして行く時、1点嬰へ音ぐらいでガラッと裏声に変わってしまうので、そこを上手に通過できるようにポルタメントをかけながら練習しました。腹筋に負荷がかかる感じがするそうです。それをゆるめないようにします。コツが飲み込めてくると上手に通過できるようになりました。
様々なタイプの生徒さんのお陰で、私も本当に勉強になります。

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