今月は、前半の通勤時間を試験勉強に活用したため
読書おとなしめです。
おかげで本読みたいぞー!という気持ちが強まってきました。
久々に図書館行きました。
たくさんの本に囲まれて、思わず大興奮。
図書館に足を踏み入れるだけで、心が落ち着きます。
32.名前探しの放課後(上)(下)/辻村深月
感想:☆☆☆☆
大好きな辻村作品を見かけたため、妹のために
借りました。前回、私が借りたときは、妹はまだ
「凍りのくじら」も「ぼくのメジャースプーン」も
読んでいなかったのです。
この2作品を読んだ人にしかお勧めできない作品です。
この2作品を読んだ人、そして、その内容をしっかり
覚えている人しか楽しめない作品です。
けれど、この2作品を読んだ人であれば、とてつもなく
幸せな気持ちを味わえる作品だと思います。
だから。
本のタイトルは「続編」だと分かるようにしてあげた
ほうが親切だなー、と思うのです。
34.プラスマイナスゼロ/若竹七海
感想:☆☆*
若竹さんの作品は2タイプに分けられます。
ひとつは、明るくほのぼのとしたコージーミステリ。
もうひとつは、人間のダークな部分を強調して
書かれているハードボイルドサスペンス。
この作品は、由緒正しいコージーミステリ。
さらさらと読めます。
ただ、私は若竹さんの人間に対する悪意に満ち溢れた
作品のほうが好きです。・・・ゆがんでますけど。
35.わたしはだれ?/吉行和子、冨士真奈美、岸田今日子
感想:☆☆☆☆
魅力的に年を重ねている仲良し三人組のエッセイ集です。
肩に力をいれず、無理せず、思うままに生きる3人の
姿がかっこよく、こういうふうに年を重ねたい、と
強く思いました。
ちょっぴり苦手だった冨士さんも、そのおおらかさ
明るさ、強さあふれる人柄が文章から垣間見え、
大好きになりました。
岸田さんが既にこの世にいないことが残念でなりません。
年を重ねても、この3人のように遠慮なく、
自分のペースを崩すことなく、そして、友人たちへの
尊敬を失うことなく、友情を維持したい。そう思いました。
36.ぼんくら/宮部みゆき
感想:☆☆☆☆
時代劇の名手による人情もの、と思っていましたが、
読み進めていくうちに、どんどん謎が明らかになっていきます。
連作短編集1編目では、たいして謎と思っていなかった
出来事が2編、3編と読み進めていくうちにつながり
実は仕組まれた出来事だったことが見えてきます。
伏線の張られ方のうまさに感服しました。
37.日暮らし(上)(下)/宮部みゆき
感想:☆☆☆☆
「ぼんくら」の続編。
前作では「悪役」として描かれていた人が、視点を変えることで
一転して、「悪い人」ではなくなります。
読み終える頃には、まったく共感できなかったはずの登場人物に
対して、この人も実はさびしい人だったのだ、と理解を示せる
ようになっていました。
一方からだけ、物事を見てはいけない。特に人間関係は。
そう思いながら、本を置きました。
39.新釈 走れメロス 他四篇/森見登美彦
感想:☆☆☆*
かの有名な「山月記」「藪の中」「走れメロス」「桜の森の
満開の下」「百物語」をモチーフに、森見作品おなじみの
腐れ大学生の友情や青春、生き様を描いた短編集。
名作たちに臆することなく、そして、テーマからそれすぎる
ことなく、ほどよく作品の色を変え、なおかつ、徹底的に
自分色に染め上げているのは、森見さんならでは。
腐れ大学生の腐れ具合は、極端にデフォルメされていますが
その核となるものは、どこか共感できるものばかりで
読んでいるうちにいとおしい気持ちになってきます。
どの作品も、同じ世界の中の出来事。舞台は京都。
時は大学の文化祭シーズン。「夜は短し歩けよ乙女」で
書かれていたあの文化祭のサイドストーリーです。
人が集えば集うほど、その人の数だけ、物語がある。
森見作品を読んでいると、そういった感慨に襲われます。
最初の頃は森見作品の腐れ大学生が苦手だったのですが
いまやすっかりいとしい存在に。なんとなく中毒になります。
40.RURIKO/林真理子
感想:☆☆☆☆
林真理子さんの作品を初めて読みました。なぜか食指が
動かなかったのです。どうもテレビでよく見かける
「作家さん」の作品には、あまり手を出さない傾向にあるような。
けれど、この「RURIKO」は、以前、誰かが
絶賛していたのを聞いて以来、とても気になっていたのです。
期待は裏切られませんでした。
「芸能界」に生きる女優の裏話としても、
「芸能界」で自分を貫く女性の生き方の指南としても
とても面白い作品でした。
単なる「添え物女優」「アイドル」だったルリ子がいつのまにか
「女優」にやりがいを感じ、そして「女優」を天職と思い始めます。
その変化をまぶしく感じながら読み進めました。
また、この作品を通して、「昭和」という時代の熱気も
肌で感じることができました。特に戦後、驚異的な復興を
遂げる日本のエネルギーはすさまじかったのだ、と
本を通してでさえ、感じることができました。
その「昭和」を密度濃く過ごした「スター」たち。
彼らの生き様を見ていると、私たちは今、多くのものを手に入れ
便利な生活を送っているけれど、その一方で、失ったものの
数も大きさも計り知れないな、と思うのです。
彼らの熱気を肌で感じ、少しうらやましく感じてしまいました。
41.蛇を踏む/川上弘美
感想:☆☆☆
ざらざらとした違和感、不快感が襲ってくるような感覚。
読みながら、鳥肌が立つような、生理的に不安を感じるような
そんなむき出しの感情に教われました。
蛇を踏んだヒロインのもとに現れる蛇の化身。
その化身がヒロインを蛇の世界に招き入れようとする。
その誘いに対し、「行きたいこともないかもしれない・・・」
と迷うヒロイン。その迷いにも、ラクなほうへ流れようとする
心の動きも共感できる気がしました。
42.父とムスメの往復書簡/松本幸四郎・松たか子
感想:知性あふれる親子の往復書簡。松さんたちの芝居に向ける
真摯な態度、親子間で繰り広げられる演劇論に鳥肌が
経ちました。使われている言葉ひとつひとつが美しく
品性や知性は言葉からにじみ出るものなのだとしみじみ。
父親である松本さんも、娘の松さんも飾らず、驕らず
正直に自分のことを晒していて、心から尊敬しました。
この作品はできれば購入して手元においておきたい。
それぐらい好きな作品でした。
43.あの子の考えることは変。/本谷有希子
感想:☆☆☆☆
ずっと気になっていた作家、本谷さんの作品を初めて
手に取りました。
予想通りの強烈なヒロインたちの予想以上に妄想が
とまらない小説で、その世界観の特異さに魅せられ
っぱなしでした。演劇畑の作家さんだからこその
読みやすい言葉で描かれる「読み下しにくい」出来事の
数々。その迫力がすさまじく、読み終えた後、しばらくは
現実世界に戻ってくることができませんでした。
特にクライマックスのスピードあふれる展開には、
胸がざわざわしっぱなし。
おっぱいしか自信がないヒロイン巡谷も、自分を臭いと
思い込んでいるもうひとりのヒロイン、日田も
どちらもおかしい。おかしいけれど、現実に存在していても
ちっともおかしくない。そんな現実感がある。
彼女たちの抱える孤独も性欲も、誰かと一緒にいたい
と願う気持ちも、すべてデフォルメされているけれど、
確かに私たちの中に存在しているもので、
自分の中のブラックボックスから目を背けていないからこそ、
この作品は、ざわざわと私の胸をかき乱したのだと思います。
44.地図のない島/井上靖
感想:☆☆☆
昭和32年の作品。井上靖さんというと、私にとっては
「氷壁」で硬派な作品を書く人、というイメージが
大きかったのですが、この作品は恋愛小説です。
恋愛を主題に、人の孤独を描いています。
さすが昭和32年・・・と感慨深く思う描写が
いたるところに盛りだくさんで、日本はこの50年で
恋愛や結婚に対しての考え方やそのスタイルが
大きく変わったのだと実感できた小説でした。
時代が異なるだけに「共感」は難しいけれど、
彼女たちの考え方や行動はとても興味深いです。
一箇所だけ、強く共感したところ。
未亡人と一晩の過ちを犯した男性は、その一晩をきっかけに
未亡人に恋愛感情を抱きます。しかし、未亡人は彼の
恋愛感情を「愛ではなく、ただの執着だ」と言い切る場面。
この場面に強い共感を覚えました。
愛と執着は見極めが難しい。
終わりかけだったり、うまくいっていなかったりする
恋愛は特に。そして、執着は人を余計に孤独にさせるんだろうな。
と、つれづれ思いました。
読書おとなしめです。
おかげで本読みたいぞー!という気持ちが強まってきました。
久々に図書館行きました。
たくさんの本に囲まれて、思わず大興奮。
図書館に足を踏み入れるだけで、心が落ち着きます。
32.名前探しの放課後(上)(下)/辻村深月
感想:☆☆☆☆
大好きな辻村作品を見かけたため、妹のために
借りました。前回、私が借りたときは、妹はまだ
「凍りのくじら」も「ぼくのメジャースプーン」も
読んでいなかったのです。
この2作品を読んだ人にしかお勧めできない作品です。
この2作品を読んだ人、そして、その内容をしっかり
覚えている人しか楽しめない作品です。
けれど、この2作品を読んだ人であれば、とてつもなく
幸せな気持ちを味わえる作品だと思います。
だから。
本のタイトルは「続編」だと分かるようにしてあげた
ほうが親切だなー、と思うのです。
34.プラスマイナスゼロ/若竹七海
感想:☆☆*
若竹さんの作品は2タイプに分けられます。
ひとつは、明るくほのぼのとしたコージーミステリ。
もうひとつは、人間のダークな部分を強調して
書かれているハードボイルドサスペンス。
この作品は、由緒正しいコージーミステリ。
さらさらと読めます。
ただ、私は若竹さんの人間に対する悪意に満ち溢れた
作品のほうが好きです。・・・ゆがんでますけど。
35.わたしはだれ?/吉行和子、冨士真奈美、岸田今日子
感想:☆☆☆☆
魅力的に年を重ねている仲良し三人組のエッセイ集です。
肩に力をいれず、無理せず、思うままに生きる3人の
姿がかっこよく、こういうふうに年を重ねたい、と
強く思いました。
ちょっぴり苦手だった冨士さんも、そのおおらかさ
明るさ、強さあふれる人柄が文章から垣間見え、
大好きになりました。
岸田さんが既にこの世にいないことが残念でなりません。
年を重ねても、この3人のように遠慮なく、
自分のペースを崩すことなく、そして、友人たちへの
尊敬を失うことなく、友情を維持したい。そう思いました。
36.ぼんくら/宮部みゆき
感想:☆☆☆☆
時代劇の名手による人情もの、と思っていましたが、
読み進めていくうちに、どんどん謎が明らかになっていきます。
連作短編集1編目では、たいして謎と思っていなかった
出来事が2編、3編と読み進めていくうちにつながり
実は仕組まれた出来事だったことが見えてきます。
伏線の張られ方のうまさに感服しました。
37.日暮らし(上)(下)/宮部みゆき
感想:☆☆☆☆
「ぼんくら」の続編。
前作では「悪役」として描かれていた人が、視点を変えることで
一転して、「悪い人」ではなくなります。
読み終える頃には、まったく共感できなかったはずの登場人物に
対して、この人も実はさびしい人だったのだ、と理解を示せる
ようになっていました。
一方からだけ、物事を見てはいけない。特に人間関係は。
そう思いながら、本を置きました。
39.新釈 走れメロス 他四篇/森見登美彦
感想:☆☆☆*
かの有名な「山月記」「藪の中」「走れメロス」「桜の森の
満開の下」「百物語」をモチーフに、森見作品おなじみの
腐れ大学生の友情や青春、生き様を描いた短編集。
名作たちに臆することなく、そして、テーマからそれすぎる
ことなく、ほどよく作品の色を変え、なおかつ、徹底的に
自分色に染め上げているのは、森見さんならでは。
腐れ大学生の腐れ具合は、極端にデフォルメされていますが
その核となるものは、どこか共感できるものばかりで
読んでいるうちにいとおしい気持ちになってきます。
どの作品も、同じ世界の中の出来事。舞台は京都。
時は大学の文化祭シーズン。「夜は短し歩けよ乙女」で
書かれていたあの文化祭のサイドストーリーです。
人が集えば集うほど、その人の数だけ、物語がある。
森見作品を読んでいると、そういった感慨に襲われます。
最初の頃は森見作品の腐れ大学生が苦手だったのですが
いまやすっかりいとしい存在に。なんとなく中毒になります。
40.RURIKO/林真理子
感想:☆☆☆☆
林真理子さんの作品を初めて読みました。なぜか食指が
動かなかったのです。どうもテレビでよく見かける
「作家さん」の作品には、あまり手を出さない傾向にあるような。
けれど、この「RURIKO」は、以前、誰かが
絶賛していたのを聞いて以来、とても気になっていたのです。
期待は裏切られませんでした。
「芸能界」に生きる女優の裏話としても、
「芸能界」で自分を貫く女性の生き方の指南としても
とても面白い作品でした。
単なる「添え物女優」「アイドル」だったルリ子がいつのまにか
「女優」にやりがいを感じ、そして「女優」を天職と思い始めます。
その変化をまぶしく感じながら読み進めました。
また、この作品を通して、「昭和」という時代の熱気も
肌で感じることができました。特に戦後、驚異的な復興を
遂げる日本のエネルギーはすさまじかったのだ、と
本を通してでさえ、感じることができました。
その「昭和」を密度濃く過ごした「スター」たち。
彼らの生き様を見ていると、私たちは今、多くのものを手に入れ
便利な生活を送っているけれど、その一方で、失ったものの
数も大きさも計り知れないな、と思うのです。
彼らの熱気を肌で感じ、少しうらやましく感じてしまいました。
41.蛇を踏む/川上弘美
感想:☆☆☆
ざらざらとした違和感、不快感が襲ってくるような感覚。
読みながら、鳥肌が立つような、生理的に不安を感じるような
そんなむき出しの感情に教われました。
蛇を踏んだヒロインのもとに現れる蛇の化身。
その化身がヒロインを蛇の世界に招き入れようとする。
その誘いに対し、「行きたいこともないかもしれない・・・」
と迷うヒロイン。その迷いにも、ラクなほうへ流れようとする
心の動きも共感できる気がしました。
42.父とムスメの往復書簡/松本幸四郎・松たか子
感想:知性あふれる親子の往復書簡。松さんたちの芝居に向ける
真摯な態度、親子間で繰り広げられる演劇論に鳥肌が
経ちました。使われている言葉ひとつひとつが美しく
品性や知性は言葉からにじみ出るものなのだとしみじみ。
父親である松本さんも、娘の松さんも飾らず、驕らず
正直に自分のことを晒していて、心から尊敬しました。
この作品はできれば購入して手元においておきたい。
それぐらい好きな作品でした。
43.あの子の考えることは変。/本谷有希子
感想:☆☆☆☆
ずっと気になっていた作家、本谷さんの作品を初めて
手に取りました。
予想通りの強烈なヒロインたちの予想以上に妄想が
とまらない小説で、その世界観の特異さに魅せられ
っぱなしでした。演劇畑の作家さんだからこその
読みやすい言葉で描かれる「読み下しにくい」出来事の
数々。その迫力がすさまじく、読み終えた後、しばらくは
現実世界に戻ってくることができませんでした。
特にクライマックスのスピードあふれる展開には、
胸がざわざわしっぱなし。
おっぱいしか自信がないヒロイン巡谷も、自分を臭いと
思い込んでいるもうひとりのヒロイン、日田も
どちらもおかしい。おかしいけれど、現実に存在していても
ちっともおかしくない。そんな現実感がある。
彼女たちの抱える孤独も性欲も、誰かと一緒にいたい
と願う気持ちも、すべてデフォルメされているけれど、
確かに私たちの中に存在しているもので、
自分の中のブラックボックスから目を背けていないからこそ、
この作品は、ざわざわと私の胸をかき乱したのだと思います。
44.地図のない島/井上靖
感想:☆☆☆
昭和32年の作品。井上靖さんというと、私にとっては
「氷壁」で硬派な作品を書く人、というイメージが
大きかったのですが、この作品は恋愛小説です。
恋愛を主題に、人の孤独を描いています。
さすが昭和32年・・・と感慨深く思う描写が
いたるところに盛りだくさんで、日本はこの50年で
恋愛や結婚に対しての考え方やそのスタイルが
大きく変わったのだと実感できた小説でした。
時代が異なるだけに「共感」は難しいけれど、
彼女たちの考え方や行動はとても興味深いです。
一箇所だけ、強く共感したところ。
未亡人と一晩の過ちを犯した男性は、その一晩をきっかけに
未亡人に恋愛感情を抱きます。しかし、未亡人は彼の
恋愛感情を「愛ではなく、ただの執着だ」と言い切る場面。
この場面に強い共感を覚えました。
愛と執着は見極めが難しい。
終わりかけだったり、うまくいっていなかったりする
恋愛は特に。そして、執着は人を余計に孤独にさせるんだろうな。
と、つれづれ思いました。