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のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

2012年11月、12月の読書

2013年03月28日 22時37分08秒 | 読書歴
今更、11月から12月にかけての読書メモ。
ええ。もちろん、私自身のためのメモですよ。
そして、今更ながらに、私の記憶力のなさに驚いてます。
こりゃ、メモを取っておくべきだわ。もうすっかりおぼろげです。
でも、もう5ヶ月も前だもん。覚えてなくったって不思議じゃないもん。
・・・と自分を励ましてみる。
それにしても、見事に児童小説ばかり。疲れてたんだろうな。
小さな字を読めなかったんだろうな。

というわけで、2012年の読書生活は125冊で幕を閉じたのでした。

112.元気なモファット兄弟/エレナー・エスティス
113.ジェーンはまんなかさん/エレナー・エスティス
114.すえっ子のルーファス/エレナー・エスティス
115.モファット博物館/エレナー・エスティス
□感想 ☆☆☆☆
モファット兄弟シリーズ。四人兄弟の明るく楽しい毎日が穏やかに描かれています。穏やかな描写なのに、その中で、女手ひとつの家庭のために、モファット兄弟一家の家計は苦しいことも伺えます。楽しいだけではない。生活に困っている様子が折に触れ、出てくる。けれど、四人兄弟はいつもとても楽しそうです。お母さんもとても幸せそう。ランプのあかりで生活し、洋服も一針一針手縫い、車がまだものめずらしい時代。時間の流れが今よりゆっくりしているこの世界観が好きでした。

116.ハヤ号、セイ川を行く/フィリッパ・ピアス
□感想 ☆☆☆*
「少年の友情」が少し苦手で(おそらく少年になじみがないためだと思われます。感情移入しようと試みて挫折することが多いような。)前半で挫折しかけていました。人様から借りた本だというのに、数ヶ月放置・・・。でも、中盤過ぎたあたりから一気に物語の世界へ引き込まれました。
少年たちの宝探しが物語の主軸です。謎をとく鍵となる詩があって、その謎が少しずつ解けていく過程がスリリング。味のある大人たちがその謎の周囲に配置されていて、伏線を作り出してくれていました。爽快なラストが印象的。

117.重力ピエロ/伊坂幸太郎
□感想 ☆☆☆☆
折に触れ読み返したくなる一冊。「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ。」という言葉に強く共感しました。その言葉を体現するかのように重いテーマがさわやかに軽やかに描かれています。まったく重苦しくないのに、なぜか切なくて泣きたくなる小説です。家族がお互いに思い合っている姿が愛しいから、その優しさに心が震えるのだと思います。

118.おとなりさんは魔女/ジョーン・エイキン
119.ねむれないときは木に登って/ジョーン・エイキン
120.ぞうになった赤ちゃん/ジョーン・エイキン
□感想 ☆☆☆
アーミテージ一家の物語シリーズです。
「一生たいくつしませんように。」おくさんがそんな願いをかけたのがすべてのはじまりでした。そのために月曜日には必ずとんでもないことが起こるアーミテージ一家のお話です。庭がユニコーンだらけになったり、魔女がおとなりで幼稚園をひらいたり、幽霊の家庭教師があらわれたり、そんな「とんでもないこと」に一家の子供たち、マークとハリエットは楽しそうに振り回されています。「おとな」の両親たちも「とんでもないこと」を困りながらも受け入れて、おおらかにすごします。「ファンタジー」というには、ややダークでナンセンス。3巻の唐突な終わり方は奇妙な味わいがありました。

121.時を超えるSOS/あさのあつこ
122.髑髏は知っていた/あさのあつこ
123.闇からのささやき/あさのあつこ
124.私の中に何かがいる/あさのあつこ
□感想 ☆☆*
テレパシー少女「蘭」事件ノートシリーズ。シリーズものに出会うと、ついつい全巻読み通したくなるのです。
超能力を持つふたりの少女の友情がすがすがしいシリーズでした。まだまだ続いているみたいなので、また追いかけなければ。
小学生の頃にはまっていた「ハレー探偵長」シリーズを思い出したなぁ。・・・このシリーズについて、語り合える人にまだ出会ったことがありませんが、でも結構な数のシリーズ作品だったので、そこそこ人気があったと思うんだけど・・・。このシリーズと「どっきり双子名探偵」シリーズは、幼馴染とそれぞれ分担して購入しては貸し借りっこしてました。「小学校高学年向け」の作品を読んだせいか、そういう郷愁に襲われました。

125.長い冬(上・下)/ローラ・インガルス・ワイルダー
□感想 ☆☆☆☆☆
「大草原の小さな家」のシリーズです。小さい頃、毎週土曜日の夕方から放送されていた「大草原の小さな家」を楽しみに見ていました。盲目の長女メアリーは、「若草物語」のベスと並んで、私の憧れの女性です。けれど、原作は図書館で借りて読もうとしたものの挫折。
読書仲間でもあり、教会トモダチでもある方が貸してくださるというので、このたび約20年の時を経て再チャレンジしました。20年の時をかけただけのことはあった!ものすごーーーーーーーーーーーーーく楽しめました。
西部開拓時代の便利なものが何もない時代、襲い来る(まさに「襲う」という言葉がぴったりの)冬に静かに立ち向かうローラ一家の様子に感嘆し続けた作品でした。これだけの苦労を乗り越えて、今のアメリカの繁栄があるのだということをかみしめました。

2012年9月の読書

2012年11月17日 23時45分19秒 | 読書歴
そっか。この辺りからか。読書ペースが落ちたのは。
と、思いいたりました。
1ヶ月で6冊!全然読めてない!
基本的に本(文字)に触れない日はないというのに、
こんなにも読書量が少ないのは、
1日に2、3行ずつしか読み進めることができなかったからです。
文字を見ると眠たくなる不思議。

95.塩の街/有川浩
◆ストーリ
塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女。男の名は秋庭、少女の名は真奈。静かに暮らす二人の前を様々な人々が行き過ぎる。あるときは穏やかに、あるときは烈しく、あるときは浅ましく。それを見送りながら、二人の仲は何かが変わり始めていた。

◆感想 ☆☆☆☆☆
図書館から借りていた本を返却できていなかったために、また読み返してました。飽きもせず。本当に飽きもせず。
基本的に気に入った本は何度読んでも飽きずに読み返せます。マンガだと余計に何度でも読み返せる。
本と音楽に関してはコストパフォーマンスが大変よい体質なのです。

96.楽園(上)(下)/宮部みゆき
◆ストーリ
「模倣犯」事件から9年が経った。事件のショックから立ち直れずにいるフリーライター、前畑滋子のもとに、荻谷敏子という女性が現れる。12歳で死んだ息子に関する、不思議な依頼だった。少年は16年前に殺された少女の遺体が発見される前に、彼女が殺されている光景を絵に描いていたというのだ。はたして少年は超能力を持つものなのか。

◆感想 ☆☆☆
宮部さんらしく、ひとりひとりの人物描写がとても丁寧で、だからこそ読み終えてやるせない気持ちになりました。自分の「欲望」にとても忠実で、「欲しい」「手に入れたい」「自分だけ損するのはいやだ」「自分だけでいいから得したい」「周囲の人たちよりいい思いをしたい」そう願う人種がいる。どんなに言葉を尽くしても分かり合えない気もするし、でも、そういった欲望は私の心の中にもあるもののような気もする。その欲望をなんとしてでもかなえようとしてしまったのがこの小説の登場人物のひとりで、私は、単にその思いをかなえようと願うその熱量が足りないだけのような気がする。そういったことをぐるぐると考えさせられる小説でした。崩壊してしまった家族のその後を思うと、本当に心底やりきれなくなります。

98.天地明察(上)(下)/冲方 丁
◆ストーリ
徳川四代将軍家綱の治世にあるプロジェクトが立ちあがる。即ち、日本独自の暦を作り上げること。当時使われていた暦・宣明暦は正確さを失い、ずれが生じ始めていた。改暦の実行者として選ばれたのは渋川春海。碁打ちの名門に生まれた春海は己の境遇に飽き、算術に生き甲斐を見出していた。彼と「天」との壮絶な勝負が今、幕開く。

◆感想 ☆☆☆*
人生を賭けて「天命」と向き合う主人公の姿が清々しく爽快な小説でした。大きな仕事になればなるほど、一朝一夕で成し遂げられるわけなどないし、「天」との勝負であっても、必ず「人」が絡む。「人」が絡む以上、自分の思惑だけで動けるわけもなく、自分の思う通りに進めるためには、回り道に見えても通さなければならない筋というものが生じてしまう。混沌とした現代に読むからこそ、胸を打つ部分、「こうありたい」「こうあってほしい」と強く願わずにはいられない部分の多い小説でした。短略的に「すぐに」目に見える結果を求めてはいけない。自分に言い聞かせようと思います。

100.悪いうさぎ/若竹七海
◆ストーリ
女探偵・葉村晶は家出中の女子高校生ミチルを連れ戻す仕事を請け負う。簡単な仕事に見えたが、事故に巻き込まれた結果、ひと月の安静をやむなく過ごした彼女は、復帰直後に今度は、ミチルの友人、美和を探すことになった。やがて見えてくる高校生たちの危うい生態。親への猛烈な不信、ピュアな感覚と刃物のような残酷さ、その秘めた心にゆっくり近づく晶は、打ち解けては反発するミチルやナイスなゲイの大家、光浦たちとともに行方不明の同級生を追う。

◆感想 ☆☆☆☆
またもや再読もの。読み終えた後になんとも言えない後味の悪さが残ります。このダークな後味が好きで、ついつい定期的に読み返してしまいます。偽悪的で、周囲の人に甘えることなく独立独歩を貫こうとしているヒロインなのに、頼ってくる人に最後まで付き合ってあげる。不言実行の優しさが魅力的で、なおかつオトコマエなヒロインでした。

2012年8月の読書

2012年11月17日 11時22分22秒 | 読書歴
11月に入って、まったくもって本が読めてません。
下旬に入ったというのに、ようやく3冊ぐらい。
ここ数年で一番のスローペース。8月はそこそこ読んでるのにな。
「塩の街」なんて立て続けに4回読み返しました。
・・・そういえば、この月は「しなくてはならないこと」があって、
それから逃げてたんだよなー。読書は現実逃避に最適です。
なおのこと、今月はなんで読めてないんだろ、という疑問がわきあがります。

80.青い棘/三浦綾子
◆ストーリ
夕起子は心の片隅で大学教授の舅に理想の男を描いていた。そして舅は夕起子の中に、戦中の青春をかけて愛した、亡き先妻の面影を重ねていた。危機を孕む人間同士、夫婦、嫁舅それぞれの心の奥にひそむ棘を鋭く衝く問題作。
◆感想 ☆☆☆*
愛の形、結婚の形、そして戦争に対する人間の業が読みやすい文体で描かれていました。30年以上前に書かれた作品のため、愛や結婚についての登場人物の意見やスタンスには時代を感じさせられる部分がありましたが、「戦後」になって、「あの戦争」が遠いものになっていく焦りや焦燥感は今に通じる描写ばかりでした。30年以上前だというのに、すでに「あの戦争」が過去のものとなりつつあることに危機感を抱いていた三浦さんが、今もまだ生きていたとしたら、この世の中を一体、どのような想いで見るんだろう、と思いました。

81.岩に立つ/三浦綾子
◆ストーリ
お袋の貧乏と苦労を見て育ちましたでしょう。女郎さんたちは叩き売られた可哀そうな女たちだ。とても遊ぶ気にはなれませんでしたよ。
一本気で、無法者にも膝を屈しない。信念と信仰にささえられた腕で建てる家は、誰もが褒める。人間らしく生きるひとりの棟梁、その逞しい半生が感動をこめて綴られる。
◆感想 ☆☆☆☆*
三浦さんが実際に自宅を建てた際にお世話になった大工の棟梁の実話を基にしたお話だそうです。一本気で人間味あふれる主人公が清々しい作品でした。私はすごくひねくれた人間で、自分大好きな人とか、まっすぐに生きているふうに見える人を見ると、ついつい「けっ」と思ってしまいがちなのですが、でも、やはり、まっすぐに生きる人、明るい日のあたる場所で希望を見据えて生きる人の話は、清々しく元気を与えてくれる。そう思えた作品でした。

82.別冊・図書館戦争/有川浩
◆ストーリ
図書館戦争シリーズ本編ラストの「図書館革命」最終章からエピローグまでの空白を埋めるスピンオフ作品。郁の告白から始まった堂上とのお付き合いから結婚に至るまで、亀の歩みのようなじれったい恋物語。
◆感想 ☆☆☆☆☆
ひっさびさにシリーズ作品を読み返したくなって図書館に出向いたところ、残っていたのはこの1冊のみでした。後はすべて借り出されていたため、この一冊を読み返し、おなかいっぱいになりました。うん!満足!この甘ったるさこそ、このシリーズの醍醐味!あまりに甘すぎて図書館の中で人目もはばからずに本気でじたばたしましたけど。もだえ死ぬかと思いました。かわいい!でも、恥ずかしい!
なんでも発売当初の帯には「恋愛成分が苦手な方はご健康のために購入をお控えください」との注意書きがあったそうで。うん。看板に偽りなし!
図書館戦争本編の映画化が決まり、登場人物たちの「外れなし」なキャスティングにきゃっきゃ大喜びしていたら、なんとロケ地が愛する故郷北九州市小倉北区にある図書館でした。すてき。既に図書館前にはセットが組まれていてテンションは高まる一方です。すんごい楽しみなんですけど!絶対、見に行く!

83.RDG4レッドデータガール 世界遺産の少女/荻原 規子、酒井 駒子(イラスト)
◆ストーリ
夏休みも終わり学園に戻った泉水子は、正門でふと違和感を覚えるが、生徒会執行部として学園祭の準備に追われ、すぐに忘れてしまう。今年のテーマは戦国学園祭。衣装の着付け講習会で急遽、モデルを務めることになった泉水子に対し、姫神の出現を恐れる深行。果たして会終了後、制服に着替えた泉水子はやはり本人ではなく・・・。
◆感想 ☆☆☆
ようやく4巻!内向的な少女がヒロインだけあって、ストーリの進み方が非常にゆっくりでじれったくなりますが、4巻で話の流れががらっと動き始めました。ラストが待ち遠しい。と思っていたら、なんと6巻が近日発売予定リストに入っていました。しかも6巻がシリーズ最終作。楽しみです。ぜひ、もう一度1巻から読み返したい。

84.木かげの家小の小人たち/いぬいとみこ
◆ストーリ
森山家の末っ子、ゆりには秘密の大切な仕事がありました。それは森山家に住んでいる四人のイギリス生まれの小人たちに、かならず毎朝一杯のミルクを届けることでした。しかし、日本は大きな戦争に突入し、ミルク運びは次第に困難になっていきます。
◆感想 ☆☆☆*
ファンタジー物語の背景に見え隠れする戦争の不穏な影が印象的な作品。できれば子供のうちに出会って、そして大人になってから再会したかったな、と思いました。戦争の描写は直接、描かれていはいないけれど、戦争が子供たち小人たちの生活に落とす暗い影はしっかりと書き込まれていて、やわかもん後半、読み続けるのが少し苦しくなりました。

85.クジラの彼/有川浩
◆ストーリ
「沈む」んじゃなくて「潜る」。潜水艦とクジラと同じだから。
人数あわせのために合コンに呼ばれた聡子。そこで出会った冬原は潜水艦乗りだった。いつ出かけてしまうか、いつ帰ってくるのかわからない。そんな彼とのレンアイには、いつも大きな海が横たわる。
◆感想 ☆☆☆☆
「別冊・図書館戦争」を読み返し、有川さんの作品、やっぱり面白いわー、と手に取った作品。連作作品集なので、いろんな場所で手軽に読み返しやすいところも大好き。自衛隊三部作の中から「空の中」「海の底」のその後が描かれている作品が3つエントリー。自衛隊員の不器用な恋がどれもほほえましい作品集でした。

86.シアター/有川浩
◆ストーリ
劇団「シアターフラッグ」ファンも多いが、お金がないため、解散の危機が迫っていた。その負債額なんと300万円!悩んだ主宰者、春川巧は、兄の司に泣きつく。司は巧にお金を貸す代わり「2年間で劇団の収益からこの300万を返せ。できない場合は劇団を潰せ」という厳しい条件を出した。プロの声優、羽田千歳が加わって、一癖も二癖もある劇団員は十名に。鉄血宰相・春川司も迎え入れ、新たな「シアターフラッグ」は旗揚げされたが・・・。
◆感想 ☆☆☆☆☆
妹に貸していた本作品。戻ってきたのを見かけた瞬間、再読し始めていました。大好き!!早く3部作の最終作を手に取りたいのです。痛切に待ち望んでします。

87.フィッシュストーリー/伊坂幸太郎
◆ストーリ
「なあ、この曲はちゃんと誰かに届いてるのかよ?届けよ!誰かに!」売れないロックバンドが最後のレコーディングで叫んだ声が時空を越えて奇蹟を起こす。
◆感想 ☆☆☆☆☆
これまた再読もの。8月は図書館行けてなかったらしく(既に記憶がうろ覚え)我が家にある本を読み返す日々でした。(読み返してたみたい。・・・大丈夫かな。私の記憶力。)フィッシュストーリーは何度読んでも、毎回、胸が熱くなります。ついでに目頭も熱くなる。「大丈夫。世界に奇跡はちゃんとある。私たちの力はほんのわずかかもしれないけれど、そのほんのわずかな力が大きな奇跡をもたらすことだってきっとある」そういう前向きな気持ちになれる本です。
ずっと表題作が一番好きだと思っていたけれど、今回、読み返してみて「ぽてち」にも感動しました。映画、見てみたいな。

88.朝霧/北村薫
◆ストーリ
卒業論文を書き上げ、巣立ちの時を迎えたヒロインは、出版社の編集者として社会人生活のスタートを切る。新たな抒情詩を奏でていく中で、巡りあわせの妙に打たれ暫し呆然とする「私」。社会人となり、大人の世界を歩む「私」の日々。
◆感想 ☆☆☆☆☆
これまた再読もの。大好きな円紫師匠と「私」のシリーズです。いまや一大ジャンルとなりつつある「日常の謎」の先駆者的シリーズ。
社会人となった「私」の日々はこれまでの作品よりも時間の進み方が早く、大人になってしまった「私」をうかがい知れます。大学4年間を通して、あまり恋愛に縁のなかった「私」が恋に向かって走りだしそうな予感を漂わせる(表現が回りくどい。でも、主人公の恋愛は、このぐらい回りくどいのです。)ラストの作品が大好きです。

89.絶句!(上)(下)/新井素子
◆ストーリ
あたし、新井素子。19歳のSF作家志望の女の子。新人賞のために『絶句』ってタイトルの原稿を書いている。読者が絶句するほどおもしろい話になるはずが、なぜか突然、小説のキャラクターたちが実体化してしまって・・・。滅法強いヒーローやマッド・サイエンティスト、超能力者の美少女風男子や素子に瓜二つの人猫が、それぞれ現実世界で生活を始めちゃったから大変なことに。
◆感想 ☆☆☆*
ひっさびさに再読。思いっきり懐かしかった!ちょう懐かしかった!一時期大好きだったのです。新井素子さん。私の文章は、かなり新井さんに影響を受けていると思うのです。というか、新井さんの文章を読んでいると、ついつい影響を受けてしまうんだと思うのです。私の脳内が新井さんの口調に何度染められたことか。
時代を感じさせる作品です。文体も設定も何もかも。でも、面白い。だからこそ、かもしれません。時代を感じさせられる設定だからこそ、面白い。でも、ちょっぴり恥ずかしい気持ちもあって。それは、新井さんの作品を夢中になって読みふけっていた中学時代のあの頃の私を思い出すからなんだろうな、と思いました。

91.塩の街/有川浩
◆ストーリ
塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女。男の名は秋庭、少女の名は真奈。静かに暮らす二人の前を様々な人々が行き過ぎる。あるときは穏やかに、あるときは烈しく、あるときは浅ましく。それを見送りながら、二人の仲は何かが変わり始めていた。
◆感想 ☆☆☆☆☆
これまた再読。でも、これは図書館で借りました。ゆっくりと読み返したくなって。そして、案の定、4回ほど読み返しました。久々に読んだら、おもいっきりはまちゃったじゃないか。ふたりの恋の進み方がちょうどいい感じで好きでした。口数少なくて、恋愛不器用に見えるけれど、秋庭さんは大事なところを絶対に外さない恋愛巧者じゃないか、と読み返して思いました。

92.異譚・千早振る/鯨統一郎
◆ストーリ
粗忽長屋の熊さん八つぁんをはじめ、一本抜けたところがある面々が、知らず知らずのうちに、江戸幕府転覆のカギを握っていた!?おなじみの古典落語の名作から長屋噺をひとひねりふたひねりしたユーモア時代ミステリー。湯屋番、長屋の花見、道具屋、まんじゅう怖い、時そば、目黒のさんまなど8編収録。
◆感想 ☆
・・・うーん。話についていけませんでした。面白い古典落語なんだけどな。素材そのものの味をもっと大事にしてあげてほしかったな、と思いました。元ネタの古典落語を読み返したくなりました。

93.クリストファーの魔法の旅/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
◆ストーリ
クリストファーは幼いころから不思議な夢を見ていた。岩場を抜けてさまざまな谷におりていくと、谷ごとにちがう世界がある夢。クリストファーが別世界へ旅することのできる強い魔力を持っていると気づいた伯父の魔術師ラルフは、クリストファーをだまして、利用しはじめる。
でも、目覚めているときのクリストファーは、いっこうに魔法が使えなかった。心配した父親に探知能力者ポーソン博士のところへつれていかれたクリストファーは、意外なことを聞かされる。おまえは命が九つある特別な大魔法使いで、次代のクレストマンシーになる身なのだと。
◆感想 ☆☆☆*
大魔法使いクレストマンシーシリーズの一冊。シリーズを通してクレストマンシー(魔法使いの役職)に就いているクリストファーの幼き頃の物語。反抗期まっさかりという感じでつんけんしているクリストファーがかわいくてなりませんでした。誰一人知っている人がいないところで孤独を感じながら頑張っているから、ついついつんけんしてしまうというか、つんけんしていないと心が折れそうなぐらい寂しさを感じてしまう。そんなクリストファーがかわいらしい作品でした。

94.メルストーン館の不思議な窓/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
◆ストーリ
祖父が亡くなり、メルストーン館を遺されたアンドルー。不機嫌でがみがみやの家政婦、巨大な野菜作りに血道をあげる横暴な庭師と、ふたりの暴君にはさまれて、メルストーン館でそこそこ平和に暮らしていけるかに思われた。だが、遺産はそれだけではなかった。祖父は魔術師で、魔術師につきもののあれやこれやがちょっとした手違いから、よくわからぬままアンドルーに引き継がれることになったのだ。どたばたのさなか、突然祖父を頼ってひとりの少年があらわれた。唯一の身寄りだった祖母が亡くなって以来、へんてこな姿をしたやつらに追い回されているのだという。
◆感想 ☆☆☆*
不思議な空気感漂うファンタジー作品。ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品は、最後の最後に話の筋がすっきり収束していき、爽快感を感じるのですが、今回はその爽快感が少なめ。少し不思議な雰囲気の作品でした。きっと海外の人たちだったら、もっと身近に感じるんだろうな、というような昔話の登場人物がたくさん出てきて、最後の最後まで不思議にごちゃごちゃした、ひっくり返したおもちゃ箱のような空気感が漂う作品でした。

2012年7月の読書

2012年10月14日 00時37分01秒 | 読書歴
65.RPG/宮部みゆき
■ストーリ
住宅地で起きた殺人事件。殺された男性はインターネットの掲示板上で「疑似家族」を作っていた。その疑似家族が殺人に関わっているのか?虚実が交錯し、見えてきたものは・・・。
■感想 ☆☆☆
本棚を整理しなきゃ!と思い立ち、背表紙を眺め直して発見した本書。久々に読み返して、で、読み終えたら古本屋に売り飛ばすぞー!と心に決めてから読み返し。そっと本棚に戻しました。初めて読んだときよりも、今の方が胸に迫る内容でした。
なんで、今の社会はこうも「さびしさ」を抱えてる人が多いのかな。とやりきれない気持ちになりました。

66.さいごの冒険~ミス・ビアンカシリーズ7~/マージェリー・シャープ
■ストーリ
大使館での結婚式の前夜、花嫁の妹スーザンが姿を消してしまいました。捜索に加わったミス・ビアンカとバーナードは、大使館の地下室で意外な事件にまきこまれます。はたして彼らは式までにスーザンの行方をつきとめられるのでしょうか。
■感想 ☆☆☆
とうとうミス・ビアンカともお別れです。ビアンカは最後の最後まで優雅で雄々しく勇敢でした。そして、バーナードは愚直なまでにバーナードでした。ビアンカを思い続けるバーナードにわかりやすいハッピーエンドが訪れることを願ってやまないけれど、このふたり(二匹?)にとっては、こういう終わり方がベストなんだろうな、と納得しました。

67.からくりからくさ/梨木果歩
■ストーリ
祖母が遺した古い家に女が四人。私たちは共同生活を始めた。糸を染め、機を織り、庭に生い茂る草が食卓にのる。静かな、けれどもたしかな実感に満ちて重ねられてゆく日々。やさしく硬質な結界。だれかが孕む葛藤も、どこかでつながっている四人の思いも、すべてはこの結界と共にある。心を持つ不思議な人形「りかさん」を真ん中にして。生命の連なりを支える絆を、深く心に伝える物語。
■感想 ☆☆☆
「お人形」をついつい擬人化してしまう私にとっては、実に衝撃的なクライマックスでした。切ないにも程があるし、まさかあの「りかさん」とこんなふうにお別れすることになろうとは。とショックが大きすぎて、思わず読み終えた後に呆然としてしまいました。
個性がありすぎるくらいある与希子、紀久、マーガレットの三人を見ていると、ヒロインであるはずの蓉子が一番淡泊だったなぁと思いました。彼女の穏やかさがこの作品を流れる張りつめた糸のような雰囲気をそっと優しく包み込んでくれていました。私のあこがれの女性像はまさに蓉子で、ずっとこんな女性になりたいと思ってたはずなんだけどな。なんでこんなに猛々しくなっちゃったかな。

68.原節子~あるがままに生きて~
■内容
経済的な事情から女学校を中退した原節子は、十四歳で女優の道を歩きはじめた。野心満々とは正反対だったが、やがて映画の魅力に憑かれ、『東京物語』など名匠の作品に出演する大女優になる。彼女が新聞・雑誌に残した言葉から、引退までの半生をたどる。デビューのいきさつ、黒澤明に怒鳴られ、大根女優と叩かれ落ち込む繊細さ、終戦直後にモンペ姿で一人で買出しに出かけるたくましさ、煙草やお酒、麻雀が好きという意外な一面など、「永遠の処女」の知られざる素顔に迫る。
■感想 ☆☆☆*
なんとなく「原節子」という女優に対して「奥ゆかしさ」とか「芯の強さ」とか古き良き時代の女性像の印象を抱いていましたが、実際には実に男らしいさばさばとした方だったのだな、と驚きました。そして、昭和の映画スターはスケールが違うな、と心の底から思いました。いろいろなエピソードが詰め込まれていたけれど、どれも「スター」のキラキラ感漂うエピソード。原節子の出演する映画を見たい、と思わせてくれる本でした。

69.きとこわ/朝吹真理子
■ストーリ
永遠子は夢をみる。貴子は夢をみない。葉山の高台にある別荘で、幼い日をともに過ごした貴子と永遠子。ある夏、突然断ち切られたふたりの親密な時間が、25年後、別荘の解体を前にして、ふたたび流れはじめる。第144回芥川賞受賞。
■感想 ☆☆
・・・ごめんなさい。と思いました。
しょせん、私ごとき脳みそでは理解できないのですよ。純文学なんて。と思いました。強く。
文章がさらさらと流れていってしまい、私はその醍醐味をつかみ取ることができませんでした。残念です。とても残念。
なんとなくフレンチ女子を思い出させる空気感でした。おしゃれなカフェで臆することなくひとりの時間を楽しめちゃうようなこじゃれたジョシ。そんな空気感漂う小説でした。

70.わたしの出会った子供たち/灰谷健次郎
■内容
17年間の教師生活を通じて知った子供たちの優しさ、個性の豊かさ。どんな時も自分を支え、育んでくれた子供たちの持つ可能性の大きさと、人間への熱い思い。そして限りない感動に満ちた灰谷文学の原点。
■感想 ☆☆☆
「先生」をしている友人が多いので、実に興味深い内容の本となりました。時代は学校生活に、そして教育に、大きな影響を与えるんだな、と思いました。

71.あやし/宮部みゆき
■ストーリ
14歳の銀次は木綿問屋の「大黒屋」に奉公にあがる。やがて店の跡取り藤一郎に縁談が起こるが、なんと女中のおはるのお腹に藤一郎との子供がいることが判明する。おはるは、二度と藤一郎に近づかないようにと店を出される。しばらくして、銀次は藤一郎からおはるのところへ遣いを頼まれるのだが、おはるがいるはずの家で銀次が見たものは・・・。(「居眠り心中」)
どうしたんだよ。震えてるじゃねえか。悪い夢でも見たのかい・・・。月夜の晩の本当に恐い恐い江戸ふしぎ噺。
■感想 ☆☆☆☆
久々に読み返した作品。面白かったー!宮部さんはどのジャンルの小説も見事なまでに面白いけれど、やはり私は時代小説が一番好きだな、と再確認。

72.こいしり/畠中恵
■ストーリ
「あのね、この子猫達、化けるんですって」お気楽跡取り息子・麻之助に託された三匹の子猫。巷に流れる化け猫の噂は、じつは怪しい江戸の錬金術へとつながっていた!?町名主名代ぶりも板につき、絶妙の玄関捌きがいっそう冴えながらも、淡い想いの行方は皆目見当つきかねる麻之助。悪友3人組が魅力満点の神田町名主・裁定帖第2弾。
■感想 ☆☆☆
「まんまこと」の続編。第一弾の「まんまこと」だって、十分に切ない恋の行方だったのに、第二弾では、ますます切なさ増量。「どうにもならないこと」だってあるんだな、と思いました。

73.魔女と暮らせば/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
■ストーリ
両親をなくしたグウェンドリンとキャットの姉弟は、近所の魔術師たちの世話になって暮らしていた。グウェンドリンは将来有望な魔女で、自分でもそのことに自信を持っていたし、キャットはそんな姉に頼りきっていた。しかし、大魔法使いクレストマンシーの城にひきとられたふたりは、「魔法を使ってはいけない」と言われ、そんな暮らしにがまんできなくなったグウェンドリンは、魔法でさまざまないやがらせをしたあげく、ある日姿を消してしまう。やがて、グウェンドリンの野望の大きさと、キャットにしてきたひどい仕打ちが明らかになる事件が発生する。

74.キャットと魔法の卵/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
■ストーリ
次代のクレストマンシーとして城で教育を受けているキャット少年は、ある日、近くの村に住むマリアンという少女と知りあった。マリアンの一族は代々続く魔女の家系で、一族の長であるマリアンの祖母は最近、近隣の別の一族と対立しているらしい。キャットは、マリアンの祖母の屋根裏に長年置かれていた卵を譲ってもらうが、その卵から現れたのは思いがけない生き物だった。

75.魔法使いは誰だ?/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
■ストーリ
このクラスには魔女がいる。謎のメモに寄宿学校は大騒ぎ。魔法は厳しく禁じられ、見つかれば火あぶりなのに!続いて、様々な魔法が学校を襲い、魔法使いだと疑われた少女ナンたちは、古くから伝わる、助けを呼ぶ呪文を唱えた。「クレストマンシー!」すると現れたのは、とてもおしゃれな大魔法使いだった。

76.トニーノと魔法の歌/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
■ストーリ
魔法の呪文作りで名高い二つの家が反目しあうイタリアの小国カプローナ。両家の魔法の力がなぜか弱まり、カプローナは他国に侵略されそうな危機に瀕す。大魔法使いクレストマンシーは両家の大人たちに「危機は邪悪な大魔法使いのせいだ。」と忠告するが、彼らは聞く耳を持たない。そんなとき、両家の子どもたちトニーノとアンジェリカが、「呼び出しの魔法」に惑わされて行方不明になる。

77.魔法の館にやとわれて/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
■ストーリ
山麓の町に暮らす十二歳の少年コンラッドは、魔術師である叔父から「高地の貴族の館にいる人物を倒さないかぎり、おまえの命は長くない」と言われ、魔法の渦巻く館に従僕として奉公に行く。同じ日に従僕としてやとわれた、少し年上の少年クリストファーも、やはり別の目的を持って館に来ていた。きらびやかな館の中でともに苦労しながら働くうちに、実はクリストファーは、別世界からやってきた強大な魔法使いだということがわかるが・・・。

78.魔法がいっぱい/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
■ストーリ
クレストマンシー城に、変わった魔法の力を持つイタリア人の男の子、トニーノがやってきた。今まで城じゅうでいちばん年下で、みんなに面倒をみてもらっていたキャットは、自分より年下のトニーノが気に食わない。でも、元・クレストマンシーのゲイブリエル老人を訪ねた帰り、悪の大魔法使いにさらわれて、記憶を奪われてしまった二人は・・・?「魔女と暮らせば」の主人公キャットと、「トニーノの歌う魔法」の主人公トニーノが、力を合わせてがんばる「キャットとトニーノと魂泥棒」ほか、大魔法使いクレストマンシーをめぐる四つの短い短編。

■感想 ☆☆☆☆*
面白かったー!!どれも大魔法使い「クレストマンシー」シリーズの作品。単独でも十分に楽しめる作品でした。

79.ツナグ/辻村深月
■感想 ☆☆☆☆
直木賞作家、辻村さんの作品を読み返しました。実に久々。この秋、映画化される作品です。主人公の祖母を樹希キリンさんが演じられるそうです。ぜひ見たい。
人生に一度だけ、死者と連絡を取り合える「ツナグ」という制度。その制度を利用する人たちと、その制度の管理人のような役回りを担当している高校生をめぐるお話。死者との最後の「ほんのひととき」はどれもこれもすごく切ないものでした。

2012年6月の読書

2012年08月17日 23時44分43秒 | 読書歴
今頃、6月の本を総まとめ。
世の中には、読んだ本を管理するデータベース的なサイトもあるようで
友人から「読書メーター」を進められました。どんなのなんだろう、「読書メーター」。
ネット社会ですらひきこもりを貫いているので、まったくもって情報に疎いのです。
でも、自分の言葉で自分の読んだ本を振り返らないと、本って読み流しちゃうからなー。
6月の読書量はちょうど10冊。ちょうどよい読書ペースでした。

55.ノンちゃん雲に乗る/石井桃子
■ストーリ
8歳の女の子、田代信子(ノンちゃん)は、ある春の朝、お母さんと兄ちゃんが自分に黙って出かけたので、悲しくて泣いていた。木の上からひょうたん池に映る空を覗いているうちに、誤って池に落ちてしまったノンちゃんは、気がつくと水の中の空の上に。雲の上には白いひげを生やしたおじいさんがいて、熊手ですくって助けてくれた。ノンちゃんはおじいさんに、自分や家族の身の上を打ち明ける。
■感想 ☆☆☆
1951年に発表された日本の童話です。1951年といえば戦後たったの6年。けれど、古さをあまり感じさせません。もちろん、作品で使われている言葉の中に「級長」や「通知表」など時代を感じさせるものがあったり、東京の外れの地理描写が今とまったく異なっていて、非常にのんびりしたものだったり、と「古さ」を実感する部分はたくさんあります。けれど、それでも、今読んで面白く、今もこういった子供っていそうだな、と思わせてくれる作品でした。ノンちゃんがいい子なんだけど、その「いい子」の部分が少々、鼻につくきらいがある女の子で、そのバランスの悪さがいとおしいな、と思いました。
確かこの作品、初めて読んだときはハードカバーで、そちらは確か2色刷りになっていた気がします。おじいさんと出会ってからの「あちらの世界」の描写の部分と、現実世界の描写部分。このふたつに分けてくれていました。あの2色刷りが作品のファンタジーな設定を強めてくれていて大好きだったんだけど。

56.オー・ファザー/伊坂幸太郎
■ストーリ
みんな、俺の話を聞いたら尊敬したくなるよ。我が家は6人家族で大変なんだ。そんなのは珍しくない?いや、そうじゃないんだ!母一人、子一人なのはいいとして、父親が4人もいるんだよ。しかも、みんなどこか変わっていて。俺は普通の高校生で、ごく普通に生活していたいだけなのに。それなのに、またもや変な事件に巻き込まれて。
■感想 ☆☆☆☆
伊坂さんらしい直球のエンターテイメント。スピーディな場面展開と、どこか人を喰ったような印象を受けるセリフ回し。どちらも「伊坂さんらしさ」に満ち溢れていて、改めて伊坂さん好きだなぁ、と思いました。「面白さ」に真っ向から勝負を挑む伊坂さんが大好きです。

57.ばらとゆびわ/サッカレイ
■ストーリ
パフラゴニアのギグリオ王子は、たいへんなお人よし。ポケットにお金さえあれば、たとえ王冠を失っても気にしない。王子はいとこのアンジェリカ姫に夢中になるのですが、それは姫がつけている魔法のゆびわのためなのでした。
■感想 ☆☆☆☆
教会友達からお借りした1冊。復刻版なので、挿絵も当時のものが入っていて、懐かしい気持ちになります。また表紙のデザインがとてつもなくかわいいのです。お話自体も面白かった!子供の時に出会いたかった!!
作者のサッカレイさんは大人向けの作品「虚栄の市」の作者さんだそうです。どうやら難しい作品みたいなので、図書館でちらりと中身をのぞいてみようと思います。

58.そばかすの少年/ジーン・ポーター
■ストーリ
片手を失い、自分の本名すら知らない孤児の少年「そばかす」は、「リンバロストの森」で木材泥棒から森を守る番人として働くことになる。大人でさえ恐怖をいだく森と沼地。孤独と恐怖、厳しい自然と闘いながら、人の愛情に包まれて、「そばかす」は逞しく成長していく。
■感想 ☆☆☆☆
ジーン・ポーターの名作「リンバストロの乙女」の姉妹編。こちらの作品が1作目です。私は本作品の主人公である「そばかす」よりも「そばかす」を横で支える勇気に満ち溢れた「エンジェル」が好きでした。彼女の曲がったことが大嫌いな勇気に満ち溢れた人柄は、当時のヒロイン像としては、異色だったのではないかな、と思います。作品の大筋と関係なく、随所に盛り込まれている「食事」の場面は、読んでいると必ず、「そういえばお腹がへってるんだった」ということを思い出させてくれます。

59.もしも野球部のマネージャーがドラッガーを読んだら/岩崎夏海
■感想 ☆☆☆*
言わずと知れた大ヒット作。我が家で見つけたので手にとりました。面白かった!!売れるのも分かるな、と納得の分かりやすさです。小難しいドラッカーが具体的に分かりやすくなっていて、十分に「理解できた」気持ちを味わせてくれます。みんなが分かる言葉で描くことの大切さをを十分に描いてくれている気がします。

60.神様のシナリオ/松居幸奈
■ストーリ
高校時代から人の面倒を見ることが好きだった「委員長」こと松田咲子がテレビ局に就職し、手のひらの幸せに気づきながら成長していく姿をとおして、生きる歓び、働くことの意味を問う。
■感想 ☆☆☆☆
ドラマ化できそうな作品だな、と読みながら思っていたところ、作者の方は現役のテレビ局ディレクターさんでした。道理でね。と納得。わかりやすく面白いエンターテイメントです。主人公の苦労がちゃんと報われるので、読み終えた後にほんわかと幸せな気持ちになりました。朝ドラにできそうなのにな。してくれないかな。

61.落語的学問のすすめ/桂文珍
■内容
昭和63年4月、関西大学国文学史の非常勤講師となった西田勤先生(落語家、桂文珍)は毎週月曜日1時限目の講義を受け持ち、なんと15年間にわたり教壇に立った。国文学史といっても、学問の領域を飛び越えて、上方落語のおもしろさから吉本興業や社会現象までをネタにして教室を笑いの渦に巻き込む。
■感想 ☆☆☆☆*
こんなおもしろい講義を毎週、聴くことができた学生さんは本当に幸せ者だな、と羨ましくなりました。すごく面白い!そしてためになる。初めて知ったな、という情報が「ちょっとした雑談」風に語られる講義の中にふんだんに散りばめられていました。落語家さんというのは「話を聴かせるプロ」の職業の方なんだな、ということを実感できる授業でした。15年も講義を受け持たれていたのだったら、この作品、続編が出ているのかしら?ということが今現在、非常に気になっています。続編出ていたら、ぜひとも読みたいな。

62.シアター/有川浩
63・シアター2/有川浩
■ストーリ
小劇団「シアターフラッグ」はファンも多い中堅どころの演劇集団。しかし、彼らは解散の危機にひんしていた。なぜなら、お金がないのである。その負債額300万円。悩んだ主宰の春川巧は兄の司に泣きつく。司は巧にお金を貸す代わりに「2年間で劇団の収益からこの300万を返却すること。できない場合は劇団を潰せ」という厳しい条件を出した。プロ声優・羽田千歳が加わって、一癖も二癖もある劇団員は総勢10名に。鉄血宰相・春川司も迎え入れ、新たな「シアターフラッグ」は旗揚げされるが、はたして彼らの運命やいかに。
■感想 ☆☆☆☆☆
おもしろかった!!思わず読み終えた後にもう一度、読み返しました。それぐらい大好き!!と興奮した作品でした。もともと演劇の舞台が大好きで、劇団の運営の難しさや「食える役者」になることの難しさは、そこそこ知っているのです。だからこそ、「どこかで見たことある(聞いたことある)」ようなリアリティのある話の展開に感嘆しつつ、むさぼるように読み終えました。シリーズとしては3作目で結末を迎えるそうです。どうぞ、彼らがみんなみんな幸せになりますように。大好きな演劇を続けられますように。そう願わずにはいられないぐらい「シアターフラッグ」に肩入れしています。

64.りかさん/梨木果歩
■ストーリ
リカちゃん人形が欲しいと頼んだようこに、おばあちゃんから贈られたのは「りか」という名前の黒髪市松人形。こんなはずじゃなかったのに、とがっかりしていたようこだったが、次第に「りかさん」と心を寄せあっていく。そう。「りかさん」はようこと心を通わせる術を持っていたのだ。りかさんに導かれたようこは、偶然出会った古い人形たちの心を見つめ、かつての持ち主たちの思いに触れる。
■感想 ☆☆☆☆
読み終えて、いかにも「日本」らしいファンタジーだな、と思いました。私にとって、西洋のファンタジー作品はパステルカラーのイメージなのに対して、日本のファンタジーは渋みのあるぼかし模様。ファンタジーらしいふわふわした設定であっても、話の展開がどこかダークさを漂わせ、いつしか物語は、人間の業や苦しみ、悲しみを偽らず、隠すことなく描き出します。「りかさん」が本当にかわいくてかわいくてかわいくて、私も「りかさん」みたいなお人形がいたらな、生涯の友達にするんだけど。そう真剣に願いました。

2012年5月の読書

2012年06月18日 21時56分53秒 | 読書歴
久々の落語ブームに、しょっちゅう訪れる児童小説ブーム、そして、定期的に訪れるノンフィクションブームが私のもとにやってきました。つまり、本を読むことに疲れていると思われます。疲れると、なぜか(って、あまり考えることなく読み進められるから、ですが)児童小説に手を伸ばしたくなるのです。懐かしく「あの頃に」立ち帰れます。それにしても、落語との再会は私にとって幸せな収穫でした。でも、ただでさえ、好きなものが多すぎて時間が足りない私にとって、好きなものが増えるのはちょっと困ったことでもあるのです。

37.カフーを待ちわびて/原田マハ
■ストーリ
沖縄の離島・与那喜島で、雑貨商を営みながら淡々と暮らしている明青のところに、ある日「幸」と名乗る女性から便りがやってきた。明青が旅先の神社で絵馬に残した「嫁に来ないか」という言葉を見て、手紙を出してきたのだ。「私をお嫁さんにしてください」幸からの思いがけない手紙に半信半疑の明青の前に現れたのは、明青が見たこともないような美(チュ)らさんだった。幸は神様がつれてきた花嫁なのか?戸惑いながらも、溌剌とした幸に思いをつのらせる明青。折しも島では、リゾート開発計画が持ち上がっていた。
■感想 ☆☆
ラブストーリーが読みたくなって借りた作品。ラブストーリーって難しいな・・・と思いました。読みやすくて面白かったけれど、ラブストーリ部分よりも島のリゾート開発のほうが私にとってはインパクトが大きかったために、主人公ふたりそっちのけで読み進めてしまいました。経済が立ち行かなくなった島でのリゾート開発は、そこで暮らす人にとってどんな意味を持つのか。生きていくためには、きれい事だけではすまされないけれど、こうやって私たちはいろんなものを失ってきたのかもしれない、と思わされました。玉山鉄二さん主演で映画化されてるんだとか。見てみたいなー。

38.ストーリー・セラー/有川浩
■ストーリ
小説家と、彼女を支える夫を突然襲った、あまりにも過酷な運命。極限の選択を求められた彼女は、今まで最高の読者でいてくれた夫のために、物語を紡ぎ続けた。
■感想 ☆☆☆☆
「ラブコメ大好きで何が悪い」有川さんの名言です。この作品はコメディではないけれど、それでも有川さんの信念が伝わってくる作品でした。本人を彷彿とさせる男前なヒロインたち。彼女と彼女とともに歩む夫が互いに支えあい、思いあう姿に、思わず目頭が熱くなりました。ずるいなぁ、そう思わずにはいられない作品です。

39.炉辺荘(イングルサイド)のアン(第七赤毛のアン)/モンゴメリ
40.アンをめぐる人々(第八赤毛のアン)/モンゴメリ
41.虹の谷のアン(第九赤毛のアン)/モンゴメリ
42.アンの娘リラ(第十赤毛のアン)/モンゴメリ
■ストーリ
今やアンは6人の子どもの母親となりました。アンの愛と知恵とユーモアに溢れた子育ての日々を描く「炉辺荘のアン」一見平穏なアヴォンリーに起る様々な事件を愛とユーモアで紹介する「アンをめぐる人々」アンの子供達と隣家の牧師一家の子供たちの交流をユーモアたっぷりに描く「虹の谷のアン」そして、アンとアンの末娘リラを中心に、第一次世界大戦が勃発した世界で、成長した息子たちや娘の恋人たちが次々に出征していく中、悲しみに耐える残された人々を描いた「アンの娘リラ」
■感想 ☆☆☆☆☆
ようやくようやく赤毛のアンシリーズをすべて読み終えました。途中で放り出したままだったアンシリーズですが、最後まで読めて本当によかった。大好きな古い友人の「その後の生活」を知ることができて満足しました。もっとも印象的だったのは、シリーズの中でテイストが異なる「アンの娘リラ」。平和でのどかだったアヴォンリーの生活に戦争が影を落とす様を丁寧に描いていて胸が痛くなりました。どこの国であろうと、「国のために戦う若者の姿」や「残される人たちの悲しみ」は変わらないのだということを改めて実感しました。

43.おおきなかぶ、むずかしいアボカド~村上ラヂオ2~/村上春樹
■内容
1.人の悪口を具体的に書かない、2.言い訳や自慢をなるべく書かない、3.時事的な話題は避ける。村上春樹さんがエッセイを書く時に自ら課したルール。その法則に則って書かれた、どうでもいいようだけど、やっぱりどうにも読み過ごすことが出来ない、心に沁みる興味津々のエピソード。大橋歩さんの美しい銅版画を挿画に綴られたアンアンの人気エッセイを書籍化。
■感想 ☆☆☆☆
どの文章からも伝わってくる村上さんの誠実な、でも一風変わった人柄が心地よいエッセイ集。村上さんの文章を読むたびに、私は彼の文章から漂う品の良さ、そして揺るぎない信念が好きなのだと実感します。このエッセイ集を図書館から借りている間に3度ほど読み返しました。

44.よってたかって古今亭志ん朝/志ん朝一門
■内容
生前、他人にあまり自分の内面を見せることがなかった古今亭志ん朝。直弟子たちによって語られた芸に厳しく、人間味豊かな名人の素顔。

45.名人―志ん生、そして志ん朝 /小林信彦
■内容
2001年10月1日、古今亭志ん朝急逝の報にふれて衝撃を受けた著者が、哀惜の念をこめて、志ん生と志ん朝、父子二代の落語家を論じる。

46.志ん朝の走馬灯/京須 偕充
■内容
古今亭志ん朝が生前唯一、その落語の録音を許したプロデューサーであり、数多くの落語家の音源制作を手掛けた著者が、折々に書いてきた「古今亭志ん朝」の素顔、横顔、そして志ん朝落語に関する評論を、あらたに書き下ろした文章も追加して一冊にまとめたもの。初めて言葉を交わした日から、早すぎる死まで。一人のプロデューサーの記憶に焼きついた志ん朝の姿を追憶する。

■感想 ☆☆☆☆
時折襲われるフィクション疲れによる「本読みたくない病」のため、普段は滅多に訪れないノンフィクションの棚で本を物色しました。つらつらタイトルを眺めているとふと目についたのは落語関係の本。無性に読みたくなり、一番多く並べられていた志ん朝師匠に関するものを3冊借りました。この3冊が大当たりで、3冊それぞれに弟子、ファン、プロデューサーと異なる視点から偏りなく志ん朝師匠を知ることができ、大いに楽しみました。
そもそも落語が好きとは言え、詳しくはなく、志ん生師匠の落語は聴いたことがあるものの、志ん朝師匠の落語は未聴。だからこそ、稀代の落語家、志ん朝師匠の落語に対して、物狂おしいほどのあこがれにかられました。ぜひ一度、聴いてみたかった。同じ時代を生きていたのに、一度も聴いたことがないなんて、なんてもったいないことをしたんだろう、とそういうふうに思わされました。
また落語家(より、私は噺家という言葉のほうが好きですが)さんたちの独特な師弟関係も興味深く読み進めました。伝統芸能でもある落語故の口伝による芸の受け渡し、「この噺は、あの師匠筋のものだから」という筋の通し方など、潔く、すがすがしさを感じさせられる風習にさわやかな気持ちになりました。とはいえ、お弟子さんたちによる「よってたかって~」によると、そういった風習も徐々にすたれてきており、今の噺家さんは師匠の噺をテープに録って覚えたり、違う師匠筋の噺も何の断りもなく高座にかけたりすることがあるんだとか。「伝統」を大切にしている噺家さんたちすら、時代によって少しずつ変わっていく寂しさ、面倒だけど、大切に残してほしい風習が失われていくやりきれなさを感じさせられました。
3冊の本すべてから伝わってきたのは、志ん朝という稀代の噺家の厳格さ、芸に対しての真摯さ、厳しさ、誇り高さ。プライドを持って、芸に生きた噺家の姿を憧れを持って読み進めました。
この本のおかげで、テレビでたまに放映されている高座をビデオ録画するようになりました。またタイミングよく、志ん朝師匠の大須演芸場での独演会がCDブックとして発売されてしまったのです。全30巻!見たい!でも、高い!!うっかり買ってしまわないように気を付けないと!

47.水底フェスタ/辻村深月
■ストーリ
村も母親も捨てて東京でモデルとなった由貴美。突如帰郷してきた彼女に魅了された広海は、村長選挙を巡る不正を暴き、村を売ろうとしている由貴美に協力する。だが、由貴美が本当に欲しいものは別にあった。
■感想 ☆
ここ最近、辻村作品との相性が悪く、今回も作品世界にまったく入り込むことができませんでした。読み進めるのがとてもつらい作品でした。ただ、文章の持つ訴求力は高かったので、辛かったのは純粋に、私がこういった話が苦手だからだと思われます。人が「好き」だの「嫌い」だのそういった感情に振り回されて、理性を失う話がとてつもなく苦手なのです。ただ、作品全体の空気感は単館系日本映画で、映画化されると面白いのかもしれないとも思いました。文章だけで読み進めると、「あちらの世界に堕ちていく」緊張感が私にとって、息苦しすぎましたが、映像だとやや緩和される気がします。
その場合、ヒロインのイメージはビジュアル的には、市川美和子さんです。でも、菅野美穂さんもこういった「魔性の女」を嬉々として演じそうだな、とも思います。彼女にふりまわされる年下の男の子は、三浦春馬さんかなー。・・・ちょっと違うかな。も少し芯が強い感じなんだけどな。

48.バレエものがたり./アデル・ジュラス
■ストーリ
舞台の上のロマンチックな踊りの世界が物語になりました。お姫さまや王子さま、美しい乙女や奇妙な生きものたちが、恋をしたり、変身したり、幽霊になったり、ふしぎな魔法のお話をくりひろげます。「ジゼル」「コッペリア」「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」「火の鳥」の6話による短編集。
■感想 ☆☆*
有名な話ほど、漠然とストーリーの流れを知ってはいても、詳しいところはよく知らなかったり通して読んだことはなかったりするもんだな、と思いました。「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」は絵本で読んで話の流れまでちゃんと記憶に残っているけれど、「ジゼル」も「コッペリア」も通して読むのは初めてで、とても新鮮でした。

49.人形の家/ルーマ・ゴッデン
■ストーリ
小さなオランダ人形のトチーは「人形の家」で両親と弟のりんごちゃん、犬のかがりと幸せに暮らしていました。しかし、ある日、ごうまんな人形、マーチペーンが「人形の家」に入りこみ、思いがけない事件がおこります。
■感想
小さいころ、共に遊んだ人形やぬいぐるみを懐かしく思い出す作品。幼いころは何の疑問もなく、人形には人格があると信じていたし、今も心のどこかで「もしかしたら・・・」という想いを捨てられないで抱えている気がします。だから、人形の擬人化は抵抗なく受け入れられるし、意地悪な子もいれば、高慢な子がいたり、賢くはないけれど正直な子がいたり、という人間(人形?)模様も面白く読み進めました。
分かりやすく意地悪な子よりも、一見、人当たりがよくて、でも心の中に野望を抱えている子のほうが百倍ぐらい怖いし、たちが悪い。そして、争いの火種となる最も恐ろしい感情は「愛されたい」という欲望に「自分だけが」という特権意識が付与されたときなのかもしれない、と思いました。みんなと同じように愛されたい、でもなく、みんな同じぐらい愛されたい、でもなく、みんなより少しでも多く愛されたい、私だけが愛されたい、という想いは独占欲へと発展し、そのために周囲の人たちをおとしいれたりする感情につながるのだろうと思いました。そんな目には見え難い悪意に立ち向かえるのは「賢さ」とか「優しさ」ではなく、「自分を信じる心」「自分に正直な心」なのかもしれない、とも思いました。自分を信じているから、理不尽な要求にも屈しないし、自分が大切にしていることを守り通す。不器用な強さがまぶしく輝く作品でした。

50.くらやみ城の冒険/マージェリー・シャープ
51.ダイヤ城からの脱出/マージェリー・シャープ
52.くらやみ城の冒険/マージェリー・シャープ
53.地下の湖の冒険/マージェリー・シャープ
54.オリエントの冒険/マージェリー・シャープ
■ストーリ
優美で勇敢なミス・ビアンカが様々な人たちを助けに行く冒険譚。
第1巻では、ネズミたちで結成されている囚人友の会はが最悪の牢獄「くらやみ城」に投獄されたノルウェイ詩人を救出するため、ノルウェイ語を話せるノルウェイ鼠を招くところから始まります。ノルウェイ鼠を招くためには、ノルウェイに行く必要があり、かくして、外交官に飼われ、せとものの塔に住み、飛行機で世界中を行ったり来たりしているミス・ビアンカに白羽の矢が立ちました。そして、ここから彼女と大使館の厨房に住む鼠のバーナードの冒険が始まり、意地悪な女王の館から孤児の女の子を助けたり(2巻)、孤児の女の子を逃してしまったために、女王から罰として塔に閉じ込められている元悪者の大臣を助けたり(3巻)、地下の湖から行方不明の男の子を無事に連れ帰ったり(4巻)、オリエントの女王の罰を受けて象に踏みつぶされる運命にある給仕の男の子と女中頭の女性を救い出したり(5巻)するのです。

■感想 ☆☆☆☆
とにかくビアンカが魅力的!白い艶やかな毛並みに漆黒の瞳、細いしなやかな体につけられた細い銀のネックレス。優美で優雅な語り口調、品よく、育ちも良く、思いやりもあって、でもほんの少し世間知らずで、思い立ったらすぐ行動に移してしまう向う見ずなところもある。そんなビアンカが持ち前の行動力で次々の人間を救い出す行動力は読んでいてすかっとします。第1巻を読み終えた瞬間にシリーズ全作品をよみとおしたい!と強く思いました。残り2巻。ビアンカとバーナードの間に漂うそこはかとない恋愛感情は実を結ぶのか、大使のぼっちゃんは無事に成長し、ミス・ビアンカと一緒でなくても平気になってしまうのか(それも寂しい・・・・)。彼女たちのこれからを見守ります。

2012年4月の読書

2012年06月13日 23時46分45秒 | 読書歴
4月の記憶が既に曖昧です。がんばれ、私の記憶力。
記録に残すことって大切だなー。私のために。

26.王国 その1/吉本ばなな
27.王国 その2/吉本ばなな
28.王国 その3/吉本ばなな
29.アナザーワールド(王国 その4)/吉本ばなな
■ストーリ
薬草茶づくりの名手であるおばあちゃんと、その孫の雫石(しずくいし)は、小さな山小屋で心穏やかに暮らしていたが、雫石が18歳になったとき、山のふもとの開発が原因で山を降りざるを得なくなる。
「最高のもの探し続けなさい。そして謙虚でいなさい。憎しみはあなたの細胞まで傷つけてしまうから。」というおばあちゃんの助言を胸に、おばあちゃんと離れた雫石は、不思議な力をもつ占い師、楓のもとでアシスタントとして働くことになる。
目に見えない「大きなもの」に包まれ、守られて生きる雫石、超能力をもつ楓、そして彼のパトロンであり、恋人でもある片岡さんと雫石の恋人の真一郎くん、雫石の住むアパートの「ものすごくいやな感じ」の隣人。雫石の人生は静かに、大きく動き出す。

■感想 ☆☆☆*
やっぱりばななさんが好きだな、と思ったシリーズ作品。四部作の中で四作目は特に好きでした。ばななさんが「作品を書くこと」に対して抱いている使命感が好きです。

とてもとてもばななさんらしいな、と思った文章。
「生きていく。つなげていく。這うように、苦しくても自分の考えと磨かれた直感となるべく健康な体をもって、それだけを頼りに。人間を愛し。人間に寄りかからず。」

愛する人との別離に苦しみ続けたヒロインに対して父親が語りかけた言葉に泣きそうになりました。そのとおりだな、と思いました。
「だれもだれかを背いたりはしないよ。誰も悪くはない。時間が流れているだけだ。そして、自然にその人の思う方向に変わっていくだけだよ。」

30.吉祥寺の朝比奈くん/中田永一
■ストーリ
恋人同士の圭太と遥が内緒で交わしていた交換日記は二人だけの秘密だったはずなのに、ノートはいろんな人のもとを巡り、いろんな人がノートに書き込んでいき、新たな物語を紡ぎ始める。(「交換日記始めました!」)高校二年のときにクラスメイトだった遠山真之介。五年後の今、不思議なことに同級生の誰も彼のことを憶えていないのだ。(「ラクガキをめぐる冒険」)ツトムと小山内さんと俺。ツトムは小山内さんが気になり、小山内さんの心の内にいるのは・・・?微妙なバランスで保ち続ける三角関係の物語。(「三角形はこわさないでおく」)私のおなかは、とてもひんぱんに鳴る。そのせいで何に対しても積極的になれなかった私の前に、春日井君があらわれる。(「うるさいおなか」)山田真野。上から読んでも下から読んでもヤマダマヤ。吉祥寺に住んでいる僕と山田さんの、永遠の愛を巡る物語。(「吉祥寺の朝日奈くん」)

■感想 ☆☆☆
某小説家が扮する覆面作家だと言われており、その「某小説家」が大好きな作家さんだったために図書館に出回るのを興味深く待っていました。けれど、そんなことをすっかり忘れてしまうぐらい、作品世界にのめりこみました。かわいい。かわいらしい。恋がしたくなる。一歩前に踏み出したくなる。そんな作品ばかりでした。

31.スロー・グッドバイ/石田衣良
■ストーリ
「涙を流さなくちゃ、始まらないことだってあるんだよ」。恋人にひどく傷つけられて泣けなくなった女の子など、さよならから始まる物語を優しく追った短編集。普通の人たちの少しだけ特別な恋を綴った10篇。

■感想 ☆☆*
友人から贈り物としていただいた文庫本を母親に「読みやすいよ」と薦めたタイミングで、久々に自分も読み返したくなりました。「さよなら」から始まる物語ばかりだけれど、どれもあたたかい気持ちになる作品ばかり。恋ってきついこと多いよね。でも楽しいこともたくさんあるよね。そんな女子会トークを繰り広げたくなりました。
石田さんという作家さんに対して、私はずっとずっと「読まず嫌い」を貫いていたので、彼に出会わせてくれた友人には心から感謝です。

32.カラーバケーション/加藤実秋
■ストーリ
風営法の改正に合わせ、営業形態を変更させたclub indigo。カジュアルカフェ風の二部を設け、若手ホストが接客を担当するようになる。他者に興味を持たないイマドキな若手ホストはトラブルを運んでくるし、渋谷警察署の豆柴は殺人事件に巻き込まれるし、開店以来一度も休んだことのない憂夜が突然休暇を取れば厄介で大きな問題が巻き起こる。愛すべきホストクラブに集う一風変わったホスト探偵団の活躍を描くシリーズ第4作。

■感想 ☆☆☆
気がつけば「クラブ インディゴ」シリーズも四作目。おなじみの面々は、すでにキャラクターが確立しているため、作品世界の中を生き生きと自由自在に動き回っています。顔なじみだからこそ、の親近感で思う存分、楽しめました。特に裏稼業の方々がたくさん出てきた第四話は「これぞインディゴの面々!」というホストくんたちの大活躍が見られて、大好きでした。

33.こころげそう~男女九人お江戸恋物語~/畠中恵
■ストーリ
江戸・橋本町の下っ引き宇多が、恋しい思いを伝えられぬまま亡くしたはずの於ふじが幽霊として戻ってきた。神田川でこときれた於ふじと千之助兄妹の死の真相を探りつつも、大人になってしまった九人の幼なじみたちは、それぞれの恋や将来への悩みを絡ませ合う。

■感想 ☆☆
九人は多すぎるんだろうなぁ、と思いました。ひとりひとりの問題を丁寧に描こうとした結果、それぞれの悩みや思い入れが均等に描かれすぎて、私自身は九人のどの子にも肩入れ出来ませんでした。本来、私は誰かひとりに肩入れして、喜んだり落ち込んだりしながら本を読み進めるというのに。それぞれが自分の思いを持て余していて、恋に振り回されていて。「恋するってやっぱり大変だな・・・」という気持ちになりました。

34.偉大なるしゅららぼん/万城目学
■ストーリ
琵琶湖畔の街・石走に住み続ける日出家と棗家には、代々受け継がれてきた力があった。高校に入学した日出涼介、日出淡十郎、棗広海が偶然同じクラスになった時、力で力を洗う戦いの幕が上がる。

■感想 ☆☆☆*
何をどうやったら、こんな話をおもいつくんだろう、と心底不思議になり、作家っていうのは努力でなれるものじゃないんだな、才能なんだな、とひたすらに感嘆しながら読み終えました。すごいです。とにかくすごいの一言に尽きます。こんなにも奇想天外な話をよく思いついたな、という「すごい」と、この奇想天外なお話をよくここまで収束できたもんだな、という「すごい」。ため息交じりで本を置きました。面白かったー!

35.愛妻記/新藤兼人
■内容
妻の肝臓がんの手術が終り、余命1年余と告げられたとき、夫は妻主演の映画を撮ろうと決意した。人は老いをいかに生きるべきか。火花を散らすふたりの老仕事師夫妻の凄絶な愛と慈しみを哀惜をこめて描く。妻乙羽信子、1994年12月22日逝去。享年70。この作品は妻の一周忌にささげられている。

■感想 ☆☆☆*
感情を極力抑え、冷静に客観的に綴られた文章。その文章の合間合間から新藤監督の乙羽さんへの愛情がにじみ出ている。実に日本人らしい、奥ゆかしい愛情表現に包まれた作品で、「夫婦」を繋ぐ「愛」というものについて考えさせられた。また、新藤監督の映画に対する情熱もひしひしと伝わってくる作品。日本映画がとても元気だった時代を経て、日本映画の斜陽時代も日本映画を見捨てず、映画の可能性を追求した「仕事人」の姿に、その筋の通った生き方に、私も背筋を正された。

36.人生で大切なことはすべて映画で学んだ/童門冬二
■内容
表の顔は、歴史を鋭い視点で切り取り、現代人に有効な知恵として提供する作家・童門冬二。裏の顔は、コレなしでは生きていけないというほどの落語ファンにして映画ファン。そんな彼が歴史に残る名作から最近の佳作まで自分が人生の折々で影響を受けてきた映画について振り返る。

■感想 ☆☆
映画の感想も難しいものだと思いました。作品に対する思い入れは伝わってくるけれど、いかんせん、見たことのない作品も多く。そういった作品については、あらすじなどの作品情報も入れてもらわないと、まったく何の情報もないままでは、なかなか「好きだ」という思いに共感できないんだな、ということに気付きました。

2012年3月の読書

2012年04月11日 22時10分38秒 | 読書歴
ようやっと本を読み始めました。
えらいこと長く本から離れていたもんだ。
最近は図書館に行くたびに甥っ子君用の絵本も借りています。
これがまた楽しいのです。絵本大好き!

15.おっとりと論じよう/丸谷才一
■内容
桜の名歌、夏目漱石と明治の精神、勘三郎の歌舞伎、日本美100の選出などなど。日本の美しさについて、文学、歴史、言葉について、著名人とおっとりと論じる。発見と刺激、そして味わいに満ちた対話集。

■感想 ☆☆☆☆
ある意味、ジャケ借りの1冊。切り絵風の表紙に心惹かれて手に取りました。丸谷さんの随筆を読んでみて、言葉の選び方や感性が好きだな、と思ったのも手をとった理由のひとつ。実に、実に豊かな発見に満ちた一冊でした。すごくすごく面白かった。「好きなもの」について楽しそうに薀蓄を語る人の言葉は、たとえ私自身がその「好きなもの」に対しての知識を持ち合わせてなくても興味深く聞くことができます。というよりは、「好きなもの」について、興味を持っていない人に対しても「聞かせてしまう」言葉を持っている人だから、こうやって本として成り立つのかな。歌舞伎について興味をそそられました。

16.日本のイキ/大石静
■内容
ファーストキッチンの「ガリポテト」で知る若者の味覚、視聴率至上主義の真の背景、「全然いい」などデジタル化する日本語、子供に「翔人」と名づける親、ますます“若尊老卑”化する社会。どんどん便利になる日本、でもどこか病んではいないのか。人気脚本家オオイシが、仕事、人生、恋愛を通して日本人の心イキを問う痛快エッセイ。

■感想 ☆☆*
うーん。面白かった。のです。面白かったけれど、好みのラインからは少し外れていました。何に対して「違う」と感じたのかな?とずっと考えていましたが、やはり私は「エッセイ」や「随筆」は「あはは」と笑って読み終えられるものが好きなんだろうな、と思います。もしくはさらりと読み終えてしまう感じのもの。でも、太田光さんの随筆は好きだったことを思うと、本当に些細なところで何かがひっかかったのでしょう。脚本家さんって大変な仕事だな、としみじみ思いました。いや、楽な仕事なんて本当はないんだけど。

17.飲めば都/北村薫
■ストーリ
日々読み、日々飲む。書に酔い、酒に酔う。新入社員時代の失敗、先輩方とのおつきあい、人生のたいせつなことを本とお酒に教わった文芸編集女子小酒井都さんの酒とゲラの日々。本を愛して酒を飲む、タガを外して人と会う、酒女子の恋の顛末は?等身大のリアルな恋のものがたり。

■感想 ☆☆☆
日々飲み、日々読む。なんて理想的な生活なんだろう・・・とうっとりしながら読み終えました。仕事にしてしまうと大変なこと、「好き」だけではすまないこともたくさん出てくるけれど、「好き」だからこそ乗り越えられる大変さってあるんだろうなぁ、とどんなに飲んでもオシゴトをきちんとこなす素敵女子、小酒井都さんを尊敬の眼差しで見上げながら読み終えました。お酒大好きな小酒井さんがどんなに飲んでも、どんなに羽目をはずしても、どこかで品性を保っているあたりが北村さんらしくて好きです。私もこんなふうに酔い倒れたいものです。・・・無理だなー。

18.いとま申して~「童話」の人々/北村薫
■ストーリ
若者たちの思いが集められた雑誌「童話」には、金子みすゞ、淀川長治と並んで父の名が記されていた。創作と投稿に夢を追う昭和の青春。父の遺した日記が語る「あの時代」の物語。

■感想 ☆☆☆☆*
完全なる「創作」だと思って読んでいましたが、北村さんのお父様の実際の日記を元に描かれた作品。つまり、この本は北村さんとそのお父様の共著となります。けれど、お父様の日記を北村さんが丁寧に読み込み、細かく分かりやすく時代の空気を補足してくれているからこそ、伝わってくる「昭和のあの時代」の空気があります。みんなが貧しく、学びたくても学べなかった人がたくさんいた時代、志半ばにして病に倒れてしまった人がたくさんいた時代、貧富の差が今よりももっと大きかった時代。年代は少し異なるけれど、久世光彦さんや向田邦子さんの語る「昭和」がどこか温かく毅然としていて品格を留めているように、北村さんの語る「昭和」初期も、静謐で清潔感溢れています。時代の空気がぴんと張り詰めていて、品のある時代。物語はまだまだ始まったばかり。「書かれるべく待っている」物語を私も待ち望みます。

19.ちょちょら/畠山恵
■ストーリ
江戸留守居役とは、江戸時代の外交官。兄がなくなり、江戸留守居役を継ぐことになった新之介。欲しいのは「情報」なのだが、弱小藩ゆえ金子も伝手もまったくない。そこに勃発した藩取りつぶしの危機。兄上はなぜ死んでしまったのか。兄上の許婚であった千穂殿は今何処にいるのか。胸に思いを秘め、困窮する多々良木藩の留守居役をまっとうしようとする新之介だが・・・。

■感想 ☆☆*
ストーリもさることながら、今までまったく知らなかった江戸留守居役のお役目や、武家社会のしきたりや藩同士の外交の方法など、そういった薀蓄がひたすらに興味深い作品でした。時代劇は大好きなのに、知らないことが多すぎる・・・。

20.どんぐり姉妹/吉本ばなな
■ストーリ
姉の名はどん子、妹の名はぐり子。突然の事故で奪われた、大好きだった両親の笑顔。気むずかしいおじいさんの世話をしながら、学んだ大切なこと。苦しい時間を姉妹は手をとりあって生きてきた、とめどなく広がる人生で自分を見失わないように。
「私たちはサイトの中にしか、存在しない姉妹です。私たちにいつでもメールをください。時間はかかっても、お返事をします。」気持ちが少し楽になる居場所、それが「どんぐり姉妹」。

■感想 ☆☆☆
ばななさんの作品はどれもこれも作品が醸し出す雰囲気が似ています。新作を読んでも「吉本ばななさんの作品。」という印象が一番大きいと思うのです。それは作風が安定しているってことだと思うし、それこそが彼女らしさで好きだなぁ、とも思うけれど、初期の作品で味わったがつんとした感じ、一作一作にインパクトあるエピソードがある感じが少し懐かしいかな、と思いました。どんぐり姉妹も大好きだけれど、「どんぐり姉妹」としての活動についてのエピソードがあまりなくて、それがとても残念でした。彼女たちの活動を、彼女たちがメールを通して出会った人たちのことをもっと知りたかったな。と、本気でそう思ったぐらい「どんぐり姉妹」が大好きでした。それは、きっと彼女たちが「どんぐり姉妹」を始めるまでのエピソードが丁寧に描かれているからなんだろうな。言葉には力がある。メールで伝わる「何か」はきっとある。そういった希望の物語だと思いました。

21.プリンセス・トヨトミ/万城目学
■ストーリ
このことは誰も知らない。五月末日の木曜日、午後四時に大阪はその機能を全停止した。長く閉ざされた扉を開ける「鍵」となったのは、東京から来た会計検査院の三人の調査官と、大阪の商店街に生まれ育った二人の少年少女だった。

■感想 ☆☆☆☆
万城目さんの作品を読むたびに、小説家って、なろうと思ってなれる職業じゃないんだな、すごい人たちなんだな、としみじみ感嘆します。どこからこんな話を思いつくのか、ぜひ教えて欲しい。小説っていうのは、壮大なほら話であり、でも、読む人をまったく不快にさせないどころか、無条件で楽しませてくれる良質のエンターテイメントなんだなぁ、と幸せな気持ちになります。
ただ、前半はやや冗長で、クライマックスまでがやや長く感じられます。でも、だからこそクライマックスが盛り上がるのかな。結末のつけ方はややあっけないし、タイトルにまでなっているのに、「プリンセストヨトミ」の扱いがぞんざいすぎないかしら?と違和感を抱きもしますが、日本人にとっての「象徴」とか「大切にしているもの」って案外、そんなものなんだろうな、と納得もしました。大切なのは、それ自体ではなく、「ずっと大切にしてきた」という想いだったり、受け継がれてきたものの歴史的な重みとか「伝統」なんだろうな。「いくらなんでもやりすぎやろう」から始まる伏線についての説明は、私がイメージしている大阪人気質と非常にマッチしていて、楽しく読み終えました。
映画、見たいなー。

22.「IT断食」のすすめ
■内容
大量のゴミメールに、時間ばかり取られるパワポ資料。現場を忘れた技術者に顧客と会わない営業マン。生産性を向上させるはずのITにみんなが振り回され、会社全体が疲弊している不条理。深く静かに進行する「IT中毒」の実態を明らかにし、組織と現場の力を取り戻す方法を解説する。

■感想 ☆☆☆☆
納得することだらけの一冊でした。「確かに!確かに!!」と手を取り合いたくなる説明ばかり。「なんかおかしい」「なんか仕事が増えてる」と思っていた「なんか」の部分が具体的に説明されていて、すっきりしました。読みながら、これらの事象って「IT業界」に限らず、すべての業界に言えることなんじゃないかな、とも思いました。って、多くの業界を知りはしませんが、でも、よく話を聞く機会のある「教育分野」「介護業界分野」に関しては、同じように情報や書類に振り回されているな、年々、本質ではない仕事が格段に増えているな、という印象を抱いています。

23.四畳半神話体系/森見登美彦
■ストーリ
数式による恋人の存在証明に挑む阿呆。桃色映像のモザイクを自由自在に操る阿呆。心がへこむと空間までへこませる阿呆。彼らを阿呆と呼ぶなかれ。狭小な正方形に立て篭もる彼らの妄想は壮大な王国を築き上げ、やがて世界に通じる扉となるのだから。

■感想 ☆☆☆
これまた、よくこんなお話を思いつくなぁと感嘆する作家さんの作品です。そして、よくこんなに練りこまれたお話を作れるなぁ、と尊敬する作家さんの作品でもあります。7つのお話が少しずつリンクし、どこかで影響しあって、最後の作品へつながっていく。読んでいてただただ純粋に面白い。また、これまで読んだ森見作品の登場人物さんたちともひょっこり出会うことができて、そちらも楽しみです。「四畳半神話体系」はまだ読んだことがないので、そちらもぜひ読みたいところ。

24.背表紙は歌う/大崎梢
■ストーリ
「とある地方の小さな書店が経営の危機にあるらしい」よくある悲しい噂のひとつだと思っていたが、書店営業仲間の女性がそのことを妙に気にしていて・・・。個性的な面々に囲まれつつ奮闘する井辻くんは、東に西に今日も大忙し。出版社の新人営業マンの活躍を描いた、本と書店を愛する全ての人に捧げるハートフル・ミステリ。出版社営業・井辻智紀の業務日誌シリーズ第二弾。

■感想 ☆☆☆
第2弾だったんだ・・・と読み終えて知りました。第1弾も探さなければ!書店を舞台とした「威風堂」シリーズともほんの少しリンクしていて嬉しい気持ちになりました。書店員の仕事も出版社の仕事もとっても大変そうだけれど、学生時代に本屋さんでバイトしておけばよかったなぁ、と今頃後悔。

25.ファーストレディ物語~ホワイトハウスを彩った女たち~/宇佐美滋
■感想 ☆☆☆*
歴代の大統領、およびファーストレディについてダイジェストでまとめた作品。短くまとめてくれているので、読みやすいです。また歴代の大統領の功績よりも人間味あふれるエピソード中心にまとめられていて、「偉くなんかならなくていい。平凡に心穏やかに暮らせればそれでいい。」というような気持ちになります。人生ってプラスマイナスゼロなんだなぁと改めて思いました。私はブレ幅の大きい人生よりも、波風の少ない人生が好きです。

2012年2月の読書

2012年03月19日 01時55分33秒 | 読書歴
依然として、本から遠ざかっていた2月。
2月は(2月も)通勤時間はひったすら寝てたな。

9.オーダーメイド殺人クラブ/辻村深月

■感想 ☆☆☆☆
大好きな辻村さんの未読本を図書館で見つけ、喜び勇んで借りました。でも、おそらく辻村さんの作品ではなくても、表紙のイラストに目を奪われて借りてしまったと思う。それぐらい表紙に心奪われました。色使いから構成から何から何まで好きです。
しかしながら、内容のほうは手放しに「好き」とは言えない作品でした。でも、嫌いじゃない。ラストのラストまで、主要登場人物2名にずっと心をかき乱されっぱなしの作品でした。嫌いではない。でも、不愉快。彼らの思春期特有の自意識過剰さとか、無神経さとか、不安定さ、イタさがどれもこれもあまりにも身近すぎて、見に覚えがありすぎて、同属嫌悪を刺激されました。ただ、私は彼らと生きる時代が異なるので、ここ¥;;;まで周囲に敏感ではなかったな、と思いました。がんばれば、いろんな情報を取得できる現代だからこそ、子どもたちは、周囲の人の心の動きにもここまで敏感に反応するのかもしれない。そう思うと、私は今、この時代に思春期を生きなくてよかったな、と心から思いました。
ラストのラストまでずっと、不愉快すれすれの「放っておけない」感じで見守り続けたからこそ、彼らふたりがたどりついた「その後」に心からの喝采を送りました。

10.スノウフレイク/大崎梢

■感想 ☆☆☆☆
こちらも作者さんの名前と、表紙へのひとめぼれで図書館から借りてきた作品。
随分と甘めテイストでしたが、読み終えてほっこり幸せな気持ちになれました。
ミステリーと恋愛ものがちょど五分五分。かな。私はおそらく「もてるくせに、報われない恋を大切にし続ける」殿方に非常に弱くて、そういう意味でもどストライクでした。

11.黒の伯爵と魔法の乙女

■感想 ☆☆☆
ようやっと!ようやっと三部作すべてを読み終えました。三部作を読む順番がばらばらで1作目⇒3作目⇒2作目となってしまったので、既に黒幕が誰なのか、わかった上で読むことになりましたが、おかげで張り巡らされていた伏線に気付けて「なるほどー!こんなところでも!!」と楽しむことができました。三人全員が過去のトラウマやコンプレックスから解放されて、幸せを掴むことができてよかった。

12.昔、卓袱台があった頃/久世光彦

■感想 ☆☆
大好きな久世さんの随筆。のはずでしたが、どうにも最後まで読み通すのに時間がかかってしまいました。どうやら私は、久世さんが久世さん自身のことを振り返って綴る文章はあまり好きではないみたいだということにようやく気付けました。久世さんが久世さんの敬愛する人、尊敬する人のことについて紡ぎだす文章が好きです。

13.今は昔のこんなこと/佐藤愛子

■感想 ☆☆☆
でもって、大好きな愛子センセの随筆集。こちらは、やっぱり大好きでした。いつ読んでも愛子センセの文章や生き様は白黒はっきりきっぱりしていて面白く、読んでいるだけで力がみなぎってきます。

14.飛ぶ教室/ケストナー

■感想 ☆☆☆
大好きなケストナーでしたが、演劇集団キャラメルボックスがこの作品を舞台化した際に「そういえば、この作品は未読だった!」ということに気付いたため、図書館で探し出して手に取りました。改めてキャラメルボックスの舞台脚本が優れていたか、上手に内容を抜粋し、まとめていたかがよく分かりました。クリスマスにぴったりの温かい作品でした。きっと、また読み返します。キャラメルボックスの舞台のほうももう1回見たいなー。

2012年1月の読書

2012年03月17日 14時17分57秒 | 読書歴
2012年に入って3ヶ月。
本はあまり読めていません。
でも、漫画「ちはやふる」は繰り返し読み返していた気も・・・。
漫画に限らず、小説も好きなものを繰り返し読み返すタチですが
漫画は気軽に読み返せてしまうので、特にその傾向が強い気がします。

1.小公子/オルコット
■感想 ☆☆☆☆
私にとっては「セディ」のお話です。毎週見ていたハウス名作劇場の中でも、特に大好きな作品でした。セディとセーラ、そしてポリアンナは私にとって、とても大切な友人であり、人付き合いや人との接し方においては、尊敬の対象でもあります。
今回は、教会友達が貸してくれた村岡花子訳です。私は、あまり翻訳者のことは気にせずに本を購入するタチですが、それでも村岡花子さんは別。小さい頃に読んだ外国のお話は大抵、「村岡花子訳」と書いてありました。ものすごく親しみ深い名前です。大好きなものと親しみ深いものがセットになっていて、すごく幸せな読書タイムを過ごしました。

2.ダニー・ボーイ-マイ・ラスト・ソング4-/久世光彦
3.月がとっても青いから-マイ・ラスト・ソング3-/久世光彦
■感想 ☆☆*
大好きな久世さんの随筆集。歌にまつわる思い出や、歌に対しての想いを切々と語っています。戦前・戦中・戦後の復興の焼け野原を過ごしてきた人たちにとって、歌は特別な、そして大切な娯楽だったんだということをしみじみと悟らせてくれる一冊でした。
多くの世代の人たちが同じ歌を共有していたあの時代、「あのときのあの曲」というだけで、同じメロディを思い浮かべられる人たち、そういった頃のことを羨ましく思いながら読みました。

4.挨拶はたいへんだ/丸谷才一
5.挨拶はむずかしい/丸谷才一
6.あいさつは一仕事/丸谷才一

丸谷才一が様々な場で行つたスピーチや挨拶の原稿集。簡潔に長くなりすぎないように、起承転結があって、その場にいる人たちが退屈しないように気を配られている原稿集は、挨拶としても素敵なものでしたが、文芸評論としても非常に面白いものでした。私は、他人に対して非常に厳しいので、挨拶のときに原稿を読む人についつい「そのぐらい覚えなさいよ・・・」と思ってしまうのですが、こうやって文章に残すことの面白さや価値に気付くことができました。また、挨拶を原稿として起こすと、ついつい文章が長くなりがちな人が多い中、丸谷さんの文章の長さに対する気の配り方は素敵だな、と思いました。次は、随筆集にも手を伸ばしてみようと思います。

7.絵描きの上田さん/いしいしんじ

いしいさんの文章を読むたびに彼の日本語の文章や物語に対する愛情を感じます。語られる物語は、穏やかで静か。少しずつ大切に大切に文字にされている。そんな職人気質の作家さんのイメージ。この作品はあまり長くないお話ですが、何度も読み返したい、できれば時間を気にせず、ゆっくりと文章を反芻しながら読み返したい、そんなふうに思えた作品でした。

8.インターセックス/帚木蓬生

インターセックスとは、「第一次性徴における性別の判別が難しい状態」で生まれた人たちのことを指すそうです。ドラマで初めてその存在を知り、彼らが実在すること、とても特別な存在と言うわけではなく、割合的には多いこと、ただその存在がずっと社会から隠されていたことを知り、衝撃を受けていたところ、教会友達がこの本の存在を教えてくれました。インターセックスの入門書として非常に分かりやすく、読みやすい作品でした。インターセックスといっても、症状はひとつではなく、この言葉は様々な状態をすべて包括していること、それらひとつひとつの症状に対して医学がこれまでどのように接してきたか、なども読みやすく整理されて紹介されていました。ただ、「ミステリー」として読むと肩透かしかな、という気はします。ミステリー部分はどちらかというといらないかな。けれど、この作品「エンブリオ」という作品の続編なんだとか。俄然、そちらにも興味が湧いてきました。