多忙が続くうちにいつの間にか10月になってしまった。
映画もずいぶん久しぶりのような気がする。今回は東野圭吾原作の「さまよう刃」。法律的に死刑にできない犯人の少年への、被害者の父親の復讐がテーマの映画だが、感情を抑えて、静かにたんたんと描かれている。
殺人といってもその内容は偶発的なものから、極悪非道のものまであり、この映画のような後者のケースでは、法治国家ゆえそのようなことは許されないとしても、遺族は死刑より私刑にしたいと思うのも当然である。しかし国家の裁きに頼っても極刑にはならない場合も多く、遺族は自分の気持ちをどう、ぶつければいいのか、愛する者を失ったことだけでも堪えられない苦しみなのに、さらに苦しむことになる。人道的、宗教的などの立場から死刑廃止論議もあるが、世論もたやすく与する気にはなれないのが現状だと思う。
罪を悔いて心から反省すれば、どんなひどい罪でも許されるのか、先日NHKで放送された永山則夫裁判の番組も観たが、難しい問題である。さらにいうなら、平時では、それほど重大な「人を殺める」という行為が、戦時にはいとも簡単に行われ、賛美されることさえあることはどう考えればいいのだろうか。
重い内容になってしまったので横道に。この映画の寺尾聡だが、デビュー作だろうか昔、「黒部の太陽」に出た時の台詞が恐ろしく棒読みだったのが懐かしい。