元町の映画館で木下恵介監督特集をやっていたので観に行く。1953年の作品「日本の悲劇」。戦後8年、まだまだ日本が貧しくこれから成長していく頃の話である。このころの実際の映像や新聞記事などが挿入され世相を反映させている。
望月優子演じる春子は未亡人で子供2人を義兄に預け、旅館の住み込み女中(今は死語?)として懸命に働いている。苦しい生活のなか、姉には洋裁と英語を学ばせ、弟は医大にやっている。そんな子供だけが生き甲斐の生活だが、姉弟は母には感謝もせずそれぞれ勝手に生き、姉は妻子持ちの英語教師と駆け落ちし、弟は母に無断で裕福な医者の家の養子に収まろうとしている。母は学資の足しにと相場に手をだし返せる当てもない借金まで抱え、最後は電車に身を投げてしまうという暗澹たる話である。
それにしてもまったく救いがないストーリーだった。同じ監督の「香華」では花柳界に生きる女の身勝手で破天荒な生き方が描かれ、そちらの方は明るく救いがあって拍手をしたいぐらいだったが、今回は溜息が出るのみ。家族の絆という言葉を嘲笑うかのようだった。
せめて花でも