雪がシンシンと一晩中降った翌朝、
銀色に閉ざされた無彩色の世界が広がっていました。
静まり返った池のほとりに、秋には綺麗な花を咲かせてくれた 「のこんぎく」が、
星をちりばめたように、キラキラ光る雪をかぶって、
今、旅立とうとしていました。
又来年と願う気持ちを、この綿の様な かよわい種子に託して
逞しく、凛として立っていました。
白い色は、さびしげ、ことに雪の白さは花とは違って太陽があたれば、
何もなかったかのように、はかなく消えてしまいます。
でも一時ではあっても、水墨画の様な清らかで、神秘的な世界を見ることが出来ました。
雪の降る日、空を見上げていますと 雪は皆私にむかって降り注いできます。そんな風に見えるのです。
時には美しい結晶そのままで、手のひらにふんわりと、
又時には、北風に吹かれながら、冷たく厳しく。
でも、みんなはかなくて、手のひらは一瞬にして、又灯篭に積もった雪もこの温かい雨ですっかりと消えました。
南信州は、本当は雪の少ない所ですが、私の家は標高が高いため、同じ町内でも、我が家だけ雪の降る日もあるのです。