風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

秋の詩集2015

2015年10月03日 | 「詩集2015」


 シャボン玉

ストローの息に
虹がかかる
ゆらゆらとぽつぽつと
光の橋をわたる

虹は
たったの六ペンス
触れると壊れる

ストローのさきを伸ばす
星まで届いたら
その日のトリップは終わる
小さな息つぎにも
虹がかかる日があった


*

 紙ヒコーキ

空に放った
思いをのせた言葉のように
紙は

風のままに浮くことをやめて
折られて指のさきへ
みずから真っすぐに飛んだ

山をこえ海をわたる
鳥にはなれなかったけれど
翼のままで紙は
ひととき空の
美しい希いとなった


*

 竹トンボ

すいーっと水平に
赤いトンボが
いくども記憶の空をよぎった

ハルジオンの花の上を
シロツメグサの草の上を
プロペラの竹になって
赤いトンボを追った

そうして竹は
羽になった
風になった
記憶の空の果てまで飛んで
我に返って
トンボになった


*

 紙フーセン

高みへ高みへと
打ち上げるそれは
紙に包んだ
一匁ほどの願いごとだった

風の声にさそわれて
その日
ふたつの手をはなれ
ひとつになって昇っていった
あれから

ふと空を
見上げたくなるときがある
ぱんと音がして
紙フーセンのやわらかい手が
雲の背中を打っている







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