熊澤良尊の将棋駒三昧

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書き駒と盛り上げ駒の話

2017-12-22 20:50:35 | 文章
12月22日(金)、晴れ。

今日は、「書き駒と盛り上げ駒」に関して、ある方への手紙の抜粋です。

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水無瀬兼成卿に代表される古の能筆家による書き駒は、余人では換えがたい「卓越した書の技量と集中力」に裏打ちされたものであり、現今の盛上げ駒を遙かに超えるものだと思うのです。
今回、ご用命くださった貴兄も、同様のお考えかと推察いたしております。

水無瀬駒を初めて見たのは32歳の頃でした。そのとき「これに迫るような駒が作れるようになりたいものだ」と直感。しかし、その技量と自信もない小生は、これを「生涯の目標」として心に決めたものの、長らく果たせないまま月日が過ぎました。

きっかけは64歳の頃。大阪商業大学の谷岡学長から学内に開設するギャラリーの目玉展示品として「大局将棋」の制作要請を受けた時でした。
総数804枚の駒は、念願の「書き駒」で作ると決めてチャレンジした結果は、自分なりに納得が行くもので、以後の書き駒制作の大きな力となり、数組を作りました。(映像はその一つの玉将)

今回制作させていただくのは、水無瀬神宮蔵「兼成八十二才の駒」の筆跡と分厚い駒の姿形を、当時の製法である漆の肉筆直書きで、私なりに迫って再現しようとするもので、心を込めてしっかり作りたいと思っております。
使用する材は、薩摩ツゲ古材の柾目で、玉将の厚みは一般的な玉将の1.5倍の13ミリほど。
目立った模様はありませんが、それがかえって穏やかで古い時代の駒の雰囲気を醸します。7

ところで、世間では盛上げ駒が最上品のように云われています。そうでしょうか。
確かに盛上げ駒の制作には長い手間と時間が掛かります。
しかし、工程に時間が掛かれば高くなるというのは,工業製品の論理です。

元々、盛上げ駒は、能筆家の公卿が駒を作らなくなった幕末以降の明治の工人が、書が格別上手くなくても、古の能筆家の優美な文字を再現しようとした製法で、文字を印刷した紙を貼って彫り込んだ下地に、漆筆で何度もなぞって書く。つまり「塗り絵のような」擬似的製法なのであります。

蛇足ですが、一般的に書き駒の評価は低いのは、作るだけならば誰でも作れそうなことと「書き駒は=安価な天童駒の大衆品」という固定概念が定着しているからでありましょう。

・・以下、省略。
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