A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

世の中変化が多く目移りする時こそ、王道を行く演奏が光る・・・

2015-06-17 | PEPPER ADAMS


Bull’s Eye’s / Barry Harris

ディーディーブリッジウォーターはジャズの伝統をスタンダード曲と過去の巨匠達の歌唱力の中に探し求めたようだが、ジャズの伝統というとビバップもその要素の一つだろう。
時代と共に変遷を遂げてきたジャズだが、このビバップはいつの時代にもそれを探求するミュージシャンは存在し続けている。今でも、ビーバップオリエンテッドな演奏をするグループは世界中にいくつも存在する。日本でも、澤田一範や村田浩のグループなどが有名だが、そのプレーを聴くと、やはりビバップでありハードバックがモダンジャズサウンドの原点という感じがする。

1968年、この頃はジャズの変革期であった。前年に亡くなったコルトレーンの後を継ぐのは誰か?モーダルなプレーを極めようと、新人もベテランも入り混じって群雄割拠していた時代だ。さらに前衛的な演奏があるかと思えば、ジャズロック風の演奏も流行だし、メジャーレーベルではコマーシャリズムに乗ったアルバムも多く作られた時代だ。

たまたまペッパーアダムスの足跡を追ってこの時代のアルバムを聴き返すこととなったが、このアルバムはこの時代の演奏だから貴重ともいえる。もし、10年前の録音であれば周りで聴かれる演奏と大きく違ったものではなかった。しかし、この1968年ではこの正統派のハードバップのサウンドは珍しかった。
この年のアダムスのレコーディングを時系列で聴いても、サドメルに参加し、ジミースミスジョージベンソンのバックのオーケストラに参加する日々が続き、いきなり正統派ハードバップの演奏というのは珍しく、他には見当たらない。

アダムスはこのバリーハリスとは同じデトロイト出身の仲という事もあり、前作の“Luminescence!”にも参加していた。ハリスにとってはプレスティッジでの初アルバムであったが、プロデューサーのドンシュリッテンは次のアルバムをすぐにでも作りたかったようだ。毎月のようにハリスにお伺いを立てるが、答えは「まだだけどじきに」であった。シュリッテンの辛抱強い誘いに応えて、前作から1年以上経ってやっとハリスがその気になって作られたアルバムがこのアルバムとなる。

前作とメンバーはがらりと変わり、トランペットにケニードーハム、テナーにはいつもはアルトを吹くチャールスマクファーソンが加わる。ベースには、デトロイト仲間のポールチェンバース、ドラムにはビリーヒギンス。前作よりは何となくしっくりくる感じだが、実際に演奏の方もこちらの方がいいと思う。

作編曲も得意なハリスなので基本はオリジナル曲だが、唯一モンクの曲オフマイナーを加えている。この曲はトリオでの演奏だが、モンクを意識したのかオリジナルでもOff Monkというモンクに因んだ曲をやっている。ピアノのプレーぶりも自然にモンク調になる。バドパウエルの影響を引き継ぐハリスだが、バップの伝承者としては、モンクの影響も当然受けていての不思議ではない。

この頃のアダムスはアルバムでは裏方が多く、ソロがあっても不完全燃焼であったが、久々にアダムスらしい豪快で流暢なプレーが聴ける。タンゴのリズムでラテン調の少し変わった感じのBarengoでもアダムスのソロはいい感じだ

この、アルバム録音の2か月後にアダムスはサドメルに加わって初来日することになる。比較的単調なサイクルで仕事をこなしていたアダムスだが、色々変化が始まる1968年6月であった。



1. Bull's Eye 7:08
2. Clockwise 4:46
3. Off Monk 9:52
4. Barengo 7:10
5. Off Minor (Thelonious Monk) 4:40
6. Oh So Basal 8:51

Barry Harris (p)
Kenny Dorham (tp) ( 1, 3, 4 & 6)
Charles McPherson (ts) (1, 3, 4 & 6)
Pepper Adams (bs) (1, 3, 4 & 6)
Paul Chambers (b)
Billy Higgins (ds)

Produced by Don Schlitten
Recording Engineer : Richard Alderson
Recorded in New York on June 4, 1968

Bull's Eye!
クリエーター情報なし
Ojc
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする