Transitions / Emily Remler
4月は学校でも会社でも新人が目立つ季節。右も左も分からない新人が先輩の後について新しい環境で生活を始める。何の世界でもそうだとは思うが、見よう見まねで始めてしばらくして慣れた所で次のステップに引っ張り上げるのは先輩達の役目。結果的に新人が育つかどうかは最初についた先輩の良し悪しに因るところが大きいものだ。
コンコルドにデビューした女性ギタリスト、エミリーレムラーは2枚のアルバムを出して着実に成長していた。最初のアルバム"Firefly"では大ベテランハンクジョーンズのピアノトリオをバックに、ウェスモンゴメリーが大好きだという彼女のオーソドックスな男勝りのプレーが聴けた。未知数である新人のまずは実力の一端を披露といったところだ。
そして、2枚目の"Take Two"ではピアノが当時売り出し中のジェイムスウイリアムスに替わる。よりメンバー全員の若々しさを前面に出した演奏になった。ここでは、新人達の明日に向けてのやる気を感じる事が出来た。
そして3枚目のこのアルバムは、まさにホップ・ステップ・ジャンプ。新人を卒業して独り立ちできるかどうかの見極めとなった。結果は彼女が熟考を重ね、自らメンバーを選び、そして編成したグループでの演奏となり期待通り大きく飛躍することができた。
この頃のコンコルドではアルバム作りにミュージシャンの意向を大きく取り入れ、場合によってはミュージシャン自身にプロデュースを任せるアルバムも多くなっていた。ここでもジェファーソン自らのプロデュースであったが、中身に関しては全面的にレムラーに任せた。ジェファーソンの大英断が、レムラーの飛躍を手助けする事になった。
ギター好きのジェファーソンは、ベテラン達には自由に演奏させていたが、これはミュージシャンの個性あふれるプレーの良さを引き出すため。しかし、若手となると、レムラーはコンコルドの秘蔵っ子でもありあれこれ注文を出したい所であったと思う。しかし、自由にさせたということは、これを機に一気に彼女のやりたい方向に進むことを後押しし、独り立ちさせようとした親心が勝ったのであろう。
このアルバム作りのすべてを任されたレムラーはまずは6か月間ニューオリンズやニューヨークでの仕事がある時以外はバージニアに引き籠ってこのアルバムの構想をあれこれ練り直した。そして、今までのスタイルやメンバーもすべてリセットして再スタートすることにした。
まず始めにやったことはグループの編成からピアノを外したこと。というのも、自分のギターでコード進行を考える時にピアノはかえって邪魔になったという。当然コードワークは自分のソロのためというよりも他のソロのバックのためだが、ソロのバッキングも彼女は好きだったそうだ。そして、グループのソロ楽器として選んだのがトランペット。結果的に、このワンホーンとギタートリオが彼女の望む編成であった。
トランペットには、バディーリッチやライオネルハンプトンのオーケストラのメンバーにも加わり、サドメルにも参加した事のある若手のジョンディアースを選んだ。そしてベースにはビルエバンストリオで活躍したエディーゴメツ。ドラムのボブモーセズもゲイリーバートンやラリーコリエルと演奏をしていた新感覚のドラマーだ。
丁度このアルバムが録音された80年代の初めは、メインストリームからフュージョン、そして新主流派といわれたモダンなサウンドが入り乱れていた時代。どんなスタイルでも受け入れられた時代であったが、彼女は自分の演奏の軸足をモダンなサウンドにリニューアルしたことになる。この頃、レコーディン以外では、彼女はアストラッドジルベルトのグループに加わる事が多かった。そしてプライベートでは、ピアノのモンティーアレキサンダーと此の頃結婚していた時期である。
アルバムの一曲目のこの”Nunca Maisd”でいきなり聴けるように、演奏スタイルや曲作りにはその影響が大いに感じられる。オリジナル曲以外にはキースジャレットの曲をやったかと思えば、サムジョーンズがキャノンボールアダレイのグループで演奏したファンキーな曲も取り上げている。
彼女はどちらもオリジナルを聴いた事が無かったという、どちらも素材としての良さから選曲しただけで、演奏はオリジナルに影響されることなく、自分のスタイルに自信を持っていたということに他ならない。
モダンスイング系のイメージが強かったコンコルドだが、新人達がこんな新しい感覚のアルバムを作ることができたのは、オーナー&プロデューサーであるジェファーソンの度量の広さだろう。
コンコルドのアルバムに名盤といわれるものは少ないが、駄作が少ないのも頷ける。
1. Nunca Mais Emily Remler 4:56
2. Searchin' Steve Allen / Duke Ellington 6:08
3. Transitions Emily Remler 7:56
4. Del Sasser Sam Jones / Donald Wolf 6:44
5. Coral Keith Jarrett 6:07
6. Ode to Mali Emily Remler 4:41
Emily Remler (g)
John D'earth (tp)
Eddie Gomez (b9
Bob Moses (ds)
Produced by Carl Jefferson
Recording Engineer : Ed Trabanco
Recorded at Mastermind Studio, New York, October 1983
Originally released on Concord CJ-236
4月は学校でも会社でも新人が目立つ季節。右も左も分からない新人が先輩の後について新しい環境で生活を始める。何の世界でもそうだとは思うが、見よう見まねで始めてしばらくして慣れた所で次のステップに引っ張り上げるのは先輩達の役目。結果的に新人が育つかどうかは最初についた先輩の良し悪しに因るところが大きいものだ。
コンコルドにデビューした女性ギタリスト、エミリーレムラーは2枚のアルバムを出して着実に成長していた。最初のアルバム"Firefly"では大ベテランハンクジョーンズのピアノトリオをバックに、ウェスモンゴメリーが大好きだという彼女のオーソドックスな男勝りのプレーが聴けた。未知数である新人のまずは実力の一端を披露といったところだ。
そして、2枚目の"Take Two"ではピアノが当時売り出し中のジェイムスウイリアムスに替わる。よりメンバー全員の若々しさを前面に出した演奏になった。ここでは、新人達の明日に向けてのやる気を感じる事が出来た。
そして3枚目のこのアルバムは、まさにホップ・ステップ・ジャンプ。新人を卒業して独り立ちできるかどうかの見極めとなった。結果は彼女が熟考を重ね、自らメンバーを選び、そして編成したグループでの演奏となり期待通り大きく飛躍することができた。
この頃のコンコルドではアルバム作りにミュージシャンの意向を大きく取り入れ、場合によってはミュージシャン自身にプロデュースを任せるアルバムも多くなっていた。ここでもジェファーソン自らのプロデュースであったが、中身に関しては全面的にレムラーに任せた。ジェファーソンの大英断が、レムラーの飛躍を手助けする事になった。
ギター好きのジェファーソンは、ベテラン達には自由に演奏させていたが、これはミュージシャンの個性あふれるプレーの良さを引き出すため。しかし、若手となると、レムラーはコンコルドの秘蔵っ子でもありあれこれ注文を出したい所であったと思う。しかし、自由にさせたということは、これを機に一気に彼女のやりたい方向に進むことを後押しし、独り立ちさせようとした親心が勝ったのであろう。
このアルバム作りのすべてを任されたレムラーはまずは6か月間ニューオリンズやニューヨークでの仕事がある時以外はバージニアに引き籠ってこのアルバムの構想をあれこれ練り直した。そして、今までのスタイルやメンバーもすべてリセットして再スタートすることにした。
まず始めにやったことはグループの編成からピアノを外したこと。というのも、自分のギターでコード進行を考える時にピアノはかえって邪魔になったという。当然コードワークは自分のソロのためというよりも他のソロのバックのためだが、ソロのバッキングも彼女は好きだったそうだ。そして、グループのソロ楽器として選んだのがトランペット。結果的に、このワンホーンとギタートリオが彼女の望む編成であった。
トランペットには、バディーリッチやライオネルハンプトンのオーケストラのメンバーにも加わり、サドメルにも参加した事のある若手のジョンディアースを選んだ。そしてベースにはビルエバンストリオで活躍したエディーゴメツ。ドラムのボブモーセズもゲイリーバートンやラリーコリエルと演奏をしていた新感覚のドラマーだ。
丁度このアルバムが録音された80年代の初めは、メインストリームからフュージョン、そして新主流派といわれたモダンなサウンドが入り乱れていた時代。どんなスタイルでも受け入れられた時代であったが、彼女は自分の演奏の軸足をモダンなサウンドにリニューアルしたことになる。この頃、レコーディン以外では、彼女はアストラッドジルベルトのグループに加わる事が多かった。そしてプライベートでは、ピアノのモンティーアレキサンダーと此の頃結婚していた時期である。
アルバムの一曲目のこの”Nunca Maisd”でいきなり聴けるように、演奏スタイルや曲作りにはその影響が大いに感じられる。オリジナル曲以外にはキースジャレットの曲をやったかと思えば、サムジョーンズがキャノンボールアダレイのグループで演奏したファンキーな曲も取り上げている。
彼女はどちらもオリジナルを聴いた事が無かったという、どちらも素材としての良さから選曲しただけで、演奏はオリジナルに影響されることなく、自分のスタイルに自信を持っていたということに他ならない。
モダンスイング系のイメージが強かったコンコルドだが、新人達がこんな新しい感覚のアルバムを作ることができたのは、オーナー&プロデューサーであるジェファーソンの度量の広さだろう。
コンコルドのアルバムに名盤といわれるものは少ないが、駄作が少ないのも頷ける。
1. Nunca Mais Emily Remler 4:56
2. Searchin' Steve Allen / Duke Ellington 6:08
3. Transitions Emily Remler 7:56
4. Del Sasser Sam Jones / Donald Wolf 6:44
5. Coral Keith Jarrett 6:07
6. Ode to Mali Emily Remler 4:41
Emily Remler (g)
John D'earth (tp)
Eddie Gomez (b9
Bob Moses (ds)
Produced by Carl Jefferson
Recording Engineer : Ed Trabanco
Recorded at Mastermind Studio, New York, October 1983
Originally released on Concord CJ-236
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