A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

映像でのこされた一シーンのステージをそのままの流れで再現して聴いてみると新たな発見が・・・

2015-04-11 | MY FAVORITE ALBUM
Newport ’58 / Dinah Washington, Terry Gibbs, Max Roach, Don Elliott

マスターズが始まるとゴルフもいよいよ本格的なシーズンイン。ところが日本は寒い日が続く。先日はまさかの季節外れの雪の中のゴルフ。気持ちのいいゴルフはしばらくお預けだが、こんな日が続くと反対にジャズを聴く時間は増える。

最近はYou Tubeのお蔭で昔の演奏をレコードやCDだけでなく映像でも楽しめる。前回紹介したロソリーノの演奏も、アルバムで聴く以上に表情が硬く感じたのが印象的だった。やはり何事も聞くと実際に見るのとでは大違いだ。

ジャズの映像物といえば、やはり1958年のNewportを舞台にした「真夏の夜のジャズ」が有名だ。ステージ上でのミュージシャンの演奏する姿だけでなく、街の風景や聴衆の表情までを含めドキュメンタリー仕立てした構成が実にいい。

この映画の制作された経緯は、ニューポートジャズフェスティバルの発案者、イレーンロリラードのインタビュー本に詳しいが、それを知るとこの映画もいくつかの偶然が重なって生まれた産物であった。入念に企画されたというより、制作スタッフのバタバタの中で生まれたまさにドキュメントである。

まず、最初にこのドキュメントをプロデュースしたのは、映像のプロデューサーではなく、彼女の友人から紹介されたスチール写真家のバート・スターンであった。彼は、映像の経験が無いどころかジャズにも弱かったので、流石に心配になったのかコロンビアレコードのプロデューサージョージアヴァキャンの弟であるアラム・アヴァキャンをサポートに頼んだ。ライバルが何社か手を上げる中で権利を獲得した彼らが初日の撮影に臨んだのだが・・・。

案じていたとおり初日の撮影は大失敗に終わった。ムービーの経験の無いスターンは、ドキュメンタリー専門のカメラマンを集めたものの何をどのように撮るのかの指示を与えることができずに大混乱になる。撮影したフィルムを急いで現像してラッシュを見たが、画面がひどく暗かったりピンボケであったり、全く使い物にならず、ここでスターンはギブアップ。
ここで、全権をアラムにバトンタッチする。アラムも映像の専門家とはいえ得意なのは編集作業。止むを得ずカメラのセットはオーソドックスに行い、編集作業をイメージしながらカメラマンに指示を出すという芸当を使ったようだ。というのも、当時は今のようにすべてのカメラを回しっぱなしにして後で編集すればいいという手法もフィルムが高価であったために使えず、自ら会場の真ん中に陣取り、彼の頭の中のリアルタイムバーチャル編集のイメージで指示するカメラを切り替えるという技で切り抜ける。その努力の結果、録り直しの効かないライブ物の全部で10万フィートに上る映像から、あの映画が生まれたそうだ。

この58年のニューポートといえば、56年に話題を呼んだデュークエリントンも登場しているし、マイルスデイビス、そしてデイブブルーベックなどの大物も出演していたが、映画の中に登場しなかった。その理由は契約の問題ではなく、初日の撮影をミスったのが原因であったというのが真相のようだ。事実、出演者との交渉はすべて撮り終えてから始まったという。
そして、この映画にはニューポートには欠かせないジョージウェインのクレジットがないというのも七不思議のひとつ。外されたウェインは色々思う所はあったようだが大人の対応をしたそうだ。もっとも最初からウェインが噛んでいたら映画の内容も別物になったと思うので、この映画はこのスタッフ達の大混乱という状況が無ければ生まれなかったともいえる。

さて、この映画の中には名場面はいくつかあるが、演奏に関していえばライブアルバムが出ているものも多い。このダイナワシントンのアルバムもその一枚だ。映画の中ではテリーギブスをバックにしたAll of Meのシーンが収められている。

そのシーンはこちらで↓


最初にクローズアップされる彼女の衣装が印象的だが、この演奏はギブスのバンドに最後に彼女が飛び入りで加わった物。全体のステージの流れは、ウィントンケリーのピアノにホーンセクションが加わって彼女の歌が続き、ギブスのバンドに替わって演奏が続く。最後にそこに彼女が加わりこの曲を歌いフィナーレという流れだったようだ。CD盤では未収録であった彼女の歌の2曲が追加され、このような流れに変っている。



ギブスのバンド演奏では、Julie And Jakeもステージでのハイライトのひとつだ。ドンエリオットのメロフォーンのソロに続きマレットに持ち替えギブスとバトルを繰り広げる。歌伴では控えめであったマックスローチのドラムも大ブレークしている。ライブならではのノリノリのセッションだ。

このアルバムのプロデューサーJack Tracyがライナーノーツの最後で締めくくっている。
So enjoy yourself,have a slice of Newport ’58,the biggest jazz parade of all time.

このような大フェスティバルのライブ物では、多くのステージから自分の好みの部分を見つけるのも楽しみのひとつだ。それも映像が伴うとその場の雰囲気がダイレクトに伝わってくる。

1. Lover Come Back to Me
2, Back Water Blues
3. Crazy Love
4. All of Me
5. Backstage Blues
6. Julie and Jake

Dinah Washinton (vol) 1-4
Blue Mitchell (tp) 1-3
Melba Liston (tb) 1-3
Sahib Shihab (bs) 1-3
Terry Gibbs (vib) 4-6
Don Elliott (mellophone,vib) 4-6
Urbie Green (tb) 4-6
Wynton Kelly (p)
Paul West (b)
Max Roach (ds)

Produced by Jack Tracy
Recorded live at Newport Jazz Festival, July 7,1958

アット・ニューポート’58[+2](完全版)~真夏の夜のジャズ
クリエーター情報なし
マーキュリー・ミュージックエンタテインメント

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