Encounter! / Pepper Adams
ペッパーアダムスのリーダーアルバムをとりあえず全て紹介したと思ったら、肝心な一枚がまだだったようだった。大分前に記事を書いた記憶があったのだが、追加で紹介しておくことにする。
実は、この最後の一枚が、自分の好きなアダムスのアルバムの中で上位に入るアルバムだ。何といってもこのアルバムの良さはエルビンジョーンズのドラムにあると思うのだが、改めて聴き直してみると・・・。
まず、このアルバムが録音されたのは1968年12月、サドメルでの活動も3年目に入り一層忙しくなっていた時期である。
アダムスにアルバム作らないかと誘ったのはプロデューサーのFred Norsworthy。過去に、一度Jazzlineというレーベルを作ったこともある。アダムスもそこでWillie Wilsonのアルバムに参加したこともあり、お互い知った仲だった。以前紹介したが、その後このアルバムは権利関係が曖昧になって、数多くのコピー版が作られたアルバムだ。その辺りがルーズなプロデューサーかもしれない。
このノースワーシーは、その時はどこのレーベルにも所属していないフリーな立場のプロデューサーであった。レコーディングにあたって彼からの具体的な要求は何もなく、曲も共演者も何の拘束も無い、アダムスが自由に選んでいいというものであった。
アダムスは、このアルバムでのプレーを「無駄な脂肪が何もついていない、特段の仕掛けも無い正直な演奏だ。当時は、何かしらお金にするための露骨な試みが入るものであったが」と言っている。それだけで、素顔のアダムス、そしてその仲間達の普段の演奏が聴ける内容となる条件は整った。
アダムスは一週間話を預かって、彼に返事をした。「メンバーが決まったので、話を受けようと」。そして、スタジオを手配して、レコーディングセッションが開かれた。ちょうどデュークピアソンのビッグバンドの録音を終え、クリスマスも迫った12月11、12の2日間であった。
アダムスの好きなようにしていいと言われたメンバーは確かにアダムスとはツーカーの中であった。シムスは一緒にロフトで切磋琢磨した仲、フラナガンのエルビンは昔からのプレー仲間、ベースのロンカーターも世代は少し違うがアダムスの隣町出身の同じデトロイターであった。セッションの様子は、すぐに地元のBlue birdでのセッションの雰囲気となった。録音は快調に進み、2日間で6時間分以上のテイクが録られたそうだ。
選曲は、晩年はオリジナルに拘っていたが今回は2曲だけ。最初のアダムスのオリジナルInaoutでは、ウォーミングアップを兼ねてか各人のハードなソロの交換が続く。
ジョーヘンダーソンの曲を2曲選んでいるのが特徴であり、ファンキーやハードバップというのと少し違った穏やかなムードを醸し出している。The Star-Crossed Loversのバラードプレーも良い感じだ。サドジョーンズの曲ではミンガスを意識し、トミーフラナガンがオーバーシーズで演じたVerdandiも取り上げている。
このアルバムは、録音するまでは順調であったが、出来上がってからが一苦労であった。
ノースワーシーは出来上がった録音を持って、各レーベルを廻る。ところが、パシフィックジャズもブルーノートも、この時代のアルバムの多くはPOP路線に変わっており、特にメジャーレーベルではこのようなストレートアヘッドなジャズアルバムは受入れられなかった。
そこに助け舟で現れたのが、プレスティッジの元で自由にアルバム作りを任されていたドン・シュリッテンだった。結局、ドン・シュリッテンがこのアルバムを買上げて、プレスティッジに売り込みに行った。プレスティッジのオーナーのボブ・ワインストックがレーベルの売却話を始めたドサクサに紛れてうまくプレスティッジへの売り込みに成功。めでたくプレスティッジのカタログに並んで陽の目を見ることになる。
という意味では、今回はドン・シュリッテンも直接はタッチしなかったが、彼のお蔭で結果的に素晴らしいアルバムが世に出たということになる。しかし、プレスティッジに渡されたテイクは最小限だけ。残りのテイクは胡散霧消、プレーヤー達には印税も入らなかったらしい。
どうもアダムスはお金に縁が無い。
アダムスのクロノグラフィーを見ると、このようなgigが何日も並ぶ。レコーディングは自分のアルバムであろうと、他人のアルバムであろうと、ある種よそ行きの顔、日々のgigで聴けたような、このような普段着の演奏はなかなかアルバムでは聴く事ができない。プライベート録音は数多く残されているようなので、その内、ライブ物で聞けるようになればいいのだが。
例えば、これは1967年モントリオールでの録音
1. Inanout Pepper Adams 5:47
2. The Star-Crossed Lovers Duke Ellington / Billy Strayhorn 3:54
3. Cindy's Tune Pepper Adams 5:58
4. Serenity John Coltrane / Joe Henderson 6:27
5. Elusive Thad Jones 7:15
6. I've Just Seen Her Lee Adams / Charles Strouse 7:17
7. Punjab Joe Henderson 4:05
8. Verdandi Tommy Flanagan 3:57
Pepper Adams (bs)
Zoot Sims (ts)
Tommy Flanagan (p)
Ron Carter (b)
Elvin Jones (ds)
Produced by Fred Northworthy
Engineer : Tommy Nola
Recorded on December 11 & 12, 1968
ペッパーアダムスのリーダーアルバムをとりあえず全て紹介したと思ったら、肝心な一枚がまだだったようだった。大分前に記事を書いた記憶があったのだが、追加で紹介しておくことにする。
実は、この最後の一枚が、自分の好きなアダムスのアルバムの中で上位に入るアルバムだ。何といってもこのアルバムの良さはエルビンジョーンズのドラムにあると思うのだが、改めて聴き直してみると・・・。
まず、このアルバムが録音されたのは1968年12月、サドメルでの活動も3年目に入り一層忙しくなっていた時期である。
アダムスにアルバム作らないかと誘ったのはプロデューサーのFred Norsworthy。過去に、一度Jazzlineというレーベルを作ったこともある。アダムスもそこでWillie Wilsonのアルバムに参加したこともあり、お互い知った仲だった。以前紹介したが、その後このアルバムは権利関係が曖昧になって、数多くのコピー版が作られたアルバムだ。その辺りがルーズなプロデューサーかもしれない。
このノースワーシーは、その時はどこのレーベルにも所属していないフリーな立場のプロデューサーであった。レコーディングにあたって彼からの具体的な要求は何もなく、曲も共演者も何の拘束も無い、アダムスが自由に選んでいいというものであった。
アダムスは、このアルバムでのプレーを「無駄な脂肪が何もついていない、特段の仕掛けも無い正直な演奏だ。当時は、何かしらお金にするための露骨な試みが入るものであったが」と言っている。それだけで、素顔のアダムス、そしてその仲間達の普段の演奏が聴ける内容となる条件は整った。
アダムスは一週間話を預かって、彼に返事をした。「メンバーが決まったので、話を受けようと」。そして、スタジオを手配して、レコーディングセッションが開かれた。ちょうどデュークピアソンのビッグバンドの録音を終え、クリスマスも迫った12月11、12の2日間であった。
アダムスの好きなようにしていいと言われたメンバーは確かにアダムスとはツーカーの中であった。シムスは一緒にロフトで切磋琢磨した仲、フラナガンのエルビンは昔からのプレー仲間、ベースのロンカーターも世代は少し違うがアダムスの隣町出身の同じデトロイターであった。セッションの様子は、すぐに地元のBlue birdでのセッションの雰囲気となった。録音は快調に進み、2日間で6時間分以上のテイクが録られたそうだ。
選曲は、晩年はオリジナルに拘っていたが今回は2曲だけ。最初のアダムスのオリジナルInaoutでは、ウォーミングアップを兼ねてか各人のハードなソロの交換が続く。
ジョーヘンダーソンの曲を2曲選んでいるのが特徴であり、ファンキーやハードバップというのと少し違った穏やかなムードを醸し出している。The Star-Crossed Loversのバラードプレーも良い感じだ。サドジョーンズの曲ではミンガスを意識し、トミーフラナガンがオーバーシーズで演じたVerdandiも取り上げている。
このアルバムは、録音するまでは順調であったが、出来上がってからが一苦労であった。
ノースワーシーは出来上がった録音を持って、各レーベルを廻る。ところが、パシフィックジャズもブルーノートも、この時代のアルバムの多くはPOP路線に変わっており、特にメジャーレーベルではこのようなストレートアヘッドなジャズアルバムは受入れられなかった。
そこに助け舟で現れたのが、プレスティッジの元で自由にアルバム作りを任されていたドン・シュリッテンだった。結局、ドン・シュリッテンがこのアルバムを買上げて、プレスティッジに売り込みに行った。プレスティッジのオーナーのボブ・ワインストックがレーベルの売却話を始めたドサクサに紛れてうまくプレスティッジへの売り込みに成功。めでたくプレスティッジのカタログに並んで陽の目を見ることになる。
という意味では、今回はドン・シュリッテンも直接はタッチしなかったが、彼のお蔭で結果的に素晴らしいアルバムが世に出たということになる。しかし、プレスティッジに渡されたテイクは最小限だけ。残りのテイクは胡散霧消、プレーヤー達には印税も入らなかったらしい。
どうもアダムスはお金に縁が無い。
アダムスのクロノグラフィーを見ると、このようなgigが何日も並ぶ。レコーディングは自分のアルバムであろうと、他人のアルバムであろうと、ある種よそ行きの顔、日々のgigで聴けたような、このような普段着の演奏はなかなかアルバムでは聴く事ができない。プライベート録音は数多く残されているようなので、その内、ライブ物で聞けるようになればいいのだが。
例えば、これは1967年モントリオールでの録音
1. Inanout Pepper Adams 5:47
2. The Star-Crossed Lovers Duke Ellington / Billy Strayhorn 3:54
3. Cindy's Tune Pepper Adams 5:58
4. Serenity John Coltrane / Joe Henderson 6:27
5. Elusive Thad Jones 7:15
6. I've Just Seen Her Lee Adams / Charles Strouse 7:17
7. Punjab Joe Henderson 4:05
8. Verdandi Tommy Flanagan 3:57
Pepper Adams (bs)
Zoot Sims (ts)
Tommy Flanagan (p)
Ron Carter (b)
Elvin Jones (ds)
Produced by Fred Northworthy
Engineer : Tommy Nola
Recorded on December 11 & 12, 1968
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