A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

苦労して世に出たアルバムには、それまでの皆の想いが込められて・・・

2014-04-24 | PEPPER ADAMS
Dedication! / Duke Pearson

1961年7月ドナルドバード&ペッパーアダムスクインテットは、地方巡業の途中セントルイスのJorgie’sでのライブの模様をアルバムに残した。その夏は引き続きツアーを続けていたが、バードとアダムスは8月にスウェーデンの歌手Monica Zetterlundと共演した録音もしたが、どうも見当たらないようなのでこれが陽の目を見たかどうかは定かではない。このゼタールンドは64年のビルエバンスとの共演アルバムで有名な歌手だが、アダムスとはその後も親交が続き、サドメル時代になってからも2人は共演している。

そのような夏を過ごしている中、バード&アダムスクインテットを辞めたデュークピアソンが8月2日にトロンボーンのウィリーウィルソンのアルバムを作るためにスタジオ入りした。アダムスが参加したレコーディングセッションは諸々トラブルが多かったが、このセッションもトラブル続出であった。

まず、ピアソンがウィルソンを伴ってスタジオ入りすると予定していた他のメンバーが見当たらない。確認を入れてみると当初予定していたトランペットのケニードーハムはどこへ行ったか見つからず、慌ててフレディーハバードをピンチヒッターで起用することに。
ベースのウィルバーウェアは他のレコーディングとダブルブッキング、これもウィルソンの旧友トーマスハワードが急遽参加、そしてニューヨークにいたペッパーアダムスにも助っ人要請があり、急造チーム6人でのレコーディングとなった。

何とかメンバーも揃って録音に漕ぎつけたが、本来の主役であるはずのウィリーウィルソンにとってさらに不幸だったのは、当初予定されていたJazzlineというレーベルからリーダーアルバムとしてのリリースが没に。結果としてそのマスターが世にばら撒かれた後、色々なレーベルから名前を変えて出ることに。このウィルソンはこの2年後に亡くなっているので生前このアルバムを本人が耳にすることは無かったということだ。

自分が所有しているのはデュークピアソンがリーダーのDedicationとタイトルされたCD盤だが、実は同じ演奏が他にもこれだけバリエーションがあるようだ。

* Jazzline JAZ 33-03 The Willie Wilson Sextet (not released)
= Prestige PR 7729; Original Jazz Classics OJCCD 1939-2 Duke Pearson - Dedication!
= Fontana (E) 683 290 JCL, (E) 883 290 JCY Freddie Hubbard - Groovy!
= Black Lion (E) BLP 60122, (G) BLCD 760122 Freddie Hubbard - Minor Mishap
= Jazzline (J) PA-3081 Freddie Hubbard - No. 5

オリジナル盤がジャケットを変えて再発というのは良くあるが、リーダーやタイトル名まで変えられると、ファンにとっては同じアルバムを何枚も買い求める羽目に陥る。
最近はCDになって複数のLPのカップリングもよくあるし、50年の著作権が切れたアルバムはセット物でごった煮状態。格安なのはいいが欲しいアルバムを探すには苦労する時代になった。もっとも聴くだけであればネットで気軽にダウンロードできる時代にもなったので、音楽の世界はどうやら聴く事と集めることは別の物になった。

脱線ついでに、リーダー、タイトルだけでなく、曲名まで変えられた物もある。
先日紹介したバード&アダムスクインテットの名盤” Pepper Adams/Donald Byrd - Out Of This World”
これがはTCBレーベルになると、タイトルが、”Jammin' With Herbie Hancock”と変わり、



何と曲名まで変わって、それぞれ
Curro's (edited version) ⇒ (Jammin' With Herbie)
Bird House (edited version)  ⇒ (Herbie's Blues)
Mr. Lucky Theme (edited version) ⇒ (Rock Your Soul)
Out Of This World (edited version) ⇒ (T.C.B. With Herbie)
Day Dreams (edited version)  ⇒ (Soul Power)
I'm An Old Cowhand  ⇒ (Cat Call)

と全く別物になる。こうなると、聴き終わってからどこかで聴いた事があるアルバムだということになって、アルバム探しもディスコグラフィー片手に確認しないと、ジャケ買いなどはできなくなった。

さて、本題に戻るが、こんな寄せ集めメンバーで一発勝負のジャムセッションのようなアルバムになったが、実はこのアルバムはDuke Pearsonの想いが籠った物に仕上がっている。

デュークピアソンと本来の主役ウィリーウィルソンは出身地アトランタでは幼馴染同士。子供の頃は同じピアノの先生にレッスンを受け、10代の頃は一緒のグループで演奏していた仲だった。此の頃デュークはトランペットを吹いていたそうだ。このアルバムに参加したトーマスハワードはその頃のメンバー同士だったらしい。

その頃一緒にやったメンバー達に後押しされたデュークピアソンがニューヨークに出てきたのが1959年。すぐにドナルドバードのグループに参加し頭角を表すようになった。
このピアソンがすぐにブルーノートのスタッフとして登用されたと思ったら、実はこの年1961年にドラムのデイブベイリー、プロデューサーのフレッドノースワーシーと一緒にこのJazzlineというレーベルを興した一人であったようだ。倒産するまでに何枚かのアルバムが出たが、このアルバムはどうもお蔵入りのままだったようだ。
ということで、そもそも仲間の出世頭のピアソンが旧友のウィルソンの為につくったアルバムという事で、ウィルソンをフィーチャーした曲が多いが、スタンダードのニアネスオブユーではミドルテンポで軽快に、タイムアフタータイムはバラードで、それぞれワンホーンでじっくりと、さらに自作の妻アルビアに捧げたブルースでは自らトップバッターでソロをとる。



アダムスの曲Apothegmは、アダムスの参加した初期のアルバムJazzmen Detroitでも演奏されていたが、ここでは若干テンポを遅く。ピアソンはテンポの速い曲を好まなかったそうだがそれが影響しているもかも。フラナガンの曲Minor MishapもアダムスのリーダーアルバムCritic’s Choiceで演奏されていた曲で、アルバム作りにアダムスの持ち曲も取り上げられているのも急場しのぎだったのかもしれない。



いずれにしても、今となってみれば無名トロンボーン奏者のウィリーウィルソンの遺作集としても貴重なアルバムで、旧友であるピアソンの貢献が大きいが、アダムスも思わぬ出番で活躍している一枚だ。

1.Minor Mishap     Tommy Flanagan 4:27
2.Number Five      Duke Pearson 3:49
3.The Nearness of You  Hoagy Carmichael / Ned Washington 5:04
4.Apothegm       Pepper Adams 5:39
5.Lex Donald Byrd   Duke Pearson 5:51
6.Blues for Alvina    Willie Wilson 7:14
7.Time After Time    Sammy Cahn / Jule Styne 6:51

Freddie Hubbard (tp) 1,2,4,5,7
Willie Wilson (tb)
Pepper Adams (bs) 1,2,4,5,7
Duke Pearson (p)
Thomas Howard (b)
Lex Humphries (ds)

Produced by Fred Northworthy
Recorded at Bell Sound Studios, NYC, on August 2, 1961


Dedication
Duke Pearson
Ojc

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