A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

もうひとつのバード&アダムス・クインテット

2014-03-17 | PEPPER ADAMS
Motoer City Scene / Donald Byrd & Pepper Adams Quintet


ハーフノートでのライブを終えた直後、バードとアダムスはブルーノート以外でもう一枚のアルバムを制作する。それが、このベツレヘムのアルバム。録音日は定かではないが、11月中旬。ハーフノートの出演が13日までだったので、多分その直後であろう。

2人以外のメンバーはがらりと代わって、ピアノがトミー・フラナガン、ギターがケニー・バレル、ベースがポールチェンバース、ドラムがルイス・ヘイスだ。アルバムタイトルが表しているように、デトロイト生まれ&育ちのメンバーによるセッションだ。アダムスは以前にも同じデトロイト出身メンバーによるアルバム”Jazz Men Detroit” に参加しているので同じような企画の2回目のセッションになる。
ドナルド・バードもデトロイト出身なので、今回は幹事役をアダムスに任せて同郷の一プレーヤーとしての参加だ。したがって、2人が一緒に参加しているものの、いつものブルーノートでのアルバム作りとは少し雰囲気が違う。

Motor City Sceneというタイトルのアルバムは、サドジョーンズが加わってもう一枚ある。この3枚がでトロイト三部作だが、デトロイト出身者の仲の良さを感じる。

幹事役のアダムスは、今回は気合が入っており、自分のオリジナルも2曲提供しアレンジも担当した。とは言ってもバードとはいつも一緒にやっている。2人の呼吸は合っているので全体の構成作りを中心に。今回はバレルもメロディラインを担当してもらって3管編成の雰囲気を出したアレンジを施した。普段、双頭コンボとはいうもののすべてがバード主導でアダムスもフラストレーションが溜まっていたと思うが、このアルバムで鬱積していた憂さ晴らしができたと思ったのだが・・・・

後に、このアルバムに関してのアダムスのインタビュー記事が残されている。
素直に聴いた限りは、フラナガンのピアノを筆頭に素晴らしい演奏をしているように感じたのだが・・、アダムスに言わせると最悪のレコーディンであったということになる。

とにかくスタジオとエンジニアが最悪で、これがすべてをぶち壊したと。温厚そうに見えるアダムスのコメントとしては相当頭にきている雰囲気を感じる。それは、いつもバードと一緒に参加しているブルーノート御用達ルディーバンゲルダーとそのスタジオと較べれば仕方がないとは思ったのだが、その原因は何かというと・・・。

最近、ライブに行くとPAをあまり使わず生音を聴かせるグループが時々ある。そもそもビッグバンドだと狭い会場ではPAなしでも十分で、ソロマイクだけでも十分楽しめる。辰巳さんのライブはいつも生音だが、彼に言わせると生音でないとピアニシモの良さを感じ取り、フォルテシモとのメリハリを味わう事ができないということだ。確かに、時々フルボリュームで折角の楽器の音色が騒音となって響き渡っているPAに出くわすとうんざりしてしまう。せっかう小さい音で始まったのにいきなりボリュームが上がっていつもと同じ音量になったり、ソロが小さい音量の時にバックが大音量でソロが消えてしまったり、折角の演奏がぶち壊しになることはまだまだ多い。

実は、この録音がその状況に陥っていたということだ。ケニー・バレルを管と一緒にフロントラインに加え、さらには曲のアレンジも強弱を意識したアレンジを施したのに、アダムスが言うには「出来上がった音はすべて平板で聴くに堪えない仕上がりだった」という事だ。
そういわれて聴き直してみると、個々の楽器はオンマイクで上手く録られているように感じるが、音量、そして音圧のバランスは確かに今一つだ。指摘されているケニー・バレルの音は思惑通りには聴こえてこない。折角アダムスが仕込んだ、曲によって、あるいは曲の途中での音の強弱も平板な動きだ。
ブルーノートでのバードの録音が曲想も段々ファンキー路線になってきており、アダムスはこのアルバムで少し違った側面を出そうと思ったに違いない。

ドナルド・バードをフィーチャーしたスターダストから始まるが、デビューした頃の演奏を思い返すようなストレートなプレーだ。アダムスは登場しない。アダムスのオリジナル2曲に、ああとはエロルガーナーと旧友サドジョーンズの曲。いずれも、ブルーノーのファンキー路線とは少し雰囲気が違う選曲をしている。本来のクインテットはこんな演奏もやるんだというのをアピールしたかったのかもしれないし、プレーヤーとしては第一人者であることはすでに世に知れ渡ったが、曲作りを始めとしてアダムスの違う側面を昔の仲間で応援しようとした企画であったのかもしれない。

このアルバムはアダムスにとって7枚目のリーダーアルバムになる。6枚目はこのセッションにも参加しているトミー・フラナガンも加わってつくられたが、未だ陽の目を見ていないようだ。バード&アダムスのクインテットのアルバムとしては、ブルーノート盤以外の貴重なアルバムだが、裏にはそんな事情が隠されていたようだ。




1. Stardust       Hoagy Carmichael / Mitchell Parish 10:16
2. Philson       Pepper Adams 10:44
3. Trio         Erroll Garner 8:06
4. Libeccio       Pepper Adams 8:38
5. Bitty Ditty     Thad Jones 5:12

Pepper Adams (bs)
Donald Byrd (tp)
Tommy Flanagan (p)
Kenny Burrell (g)
Paul Chambers (b)
“Hey”Lewis (Louis Hayes) (ds)

Recorded in mid November 1960


モーター・シティー・シーン
Donald Byrd % Pepper Adams
SOLID/BETHLEHEM
コメント
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