Stan Getz & Bill Evans
スタンゲッツとピアノといえばビルエバンスとの共演も忘れる訳にはいかない。
VerveレーベルはJATPのコンセプトの流れか、50年代の後半は有名プレーヤー同士のバトル物のアルバムを多く作った。スタンゲッツもピーターソン、マリガン、ベイカー、JJジョンソンなど数多くある。
60年代に入ってジャズの世界が変わった。必ずしも大物同士のセッションが受け入れられる時代ではなく、よりマスマーケットを狙ったアルバム作りになった。よくコマーシャリズムに毒されたといわれる時代だ。
マイスルやコルトレーンなどを除くと、大物といわれるプレーヤーも路線変更を強いられた。クインシージョーンズのビッグバンドもPOP路線になり、ベイシーやエリントンもビートルズナンバーやヒット曲でアルバムを出した時代、ゲッツもボサノバで売り出した。
Verveはその時代もピーターソン、モンゴメリー、ジミースミスなど大物ミュージシャンを抱えていた。時代は変わり、プロデューサーもクリードテイラーに変わったが、大物の共演アルバムはビッグバンドをバックにして少し趣を変えて作られていた。いゆゆる丁々発止にという感じは薄れて。
大物達の中にはゲッツとエバンスもいた。両者の共演アルバムは当然あってもいいはずだが、当時はそれぞれ人のプレーは「人の動向には我関せず」のスタンスで、共演アルバムなどは夢の中といった雰囲気であった。プロデューサーによって表向きの顔が作られてしまったからか。
丁度東京オリンピックの頃、自分がジャズを聴き始めた時代のジャズ界であった。
ところが10年近く経ってから、実はゲッツとエバンスのアルバムがあったという話題が広まり、未発表アルバムとしてリリースされた。当時リリースされたアルバムでの演奏とはガラッと雰囲気の違うストレートな2人のホットな演奏にビックリしたし、「やればできるじゃない」と思ったものだ。
人は社会に出ると自然といくつかの顔を持つようになる。家庭の顔、仕事の顔、友人付き合いの顔、そして恋人同士の顔・・・・などなど。
自分も意識している訳ではないが、寡黙な時もあれば多弁な時もある、穏和に感じられることもあれば、怖い印象を与えていることもあるようだ。仕事で知り合って付き合ってみるとプライベートでは全く違うキャラの持ち主だったということは良くある。異性と付き合う時は、意識して付き合い出すとなかなか素顔の自分を出すきっかけが難しいが、最初から本音ベースで付き合えると結構気楽な付き合いが長く続くものだ。もっともこればかりは相性がまずは大事だが。
60年代に入ってからのジャズアルバムも、売るための仕掛けが色々と工夫されるようになると、いつの間にか世に出る演奏スタイルは普段のプレーとは違った形で意図的に作られた物になってきた。
ボサノバのスタンゲッツなどはその最たるものであろう。その点、エバンスの方が化粧は薄めだが。でも、リバーサイドのビレッジバンガードのライブのような素顔の演奏とは異なってきていた。
さて、ゲッツとエバンス、この2人のスタイルは似てはいるとは言ってもそれぞれ自己主張が強い。それに何と言ってもこのアルバムは強力なバック陣だ。エルビンジョーンズにロンカーター&リチャードデイビスといえば、それぞれも時代を代表する主役。このアルバムは、まさにリズムを加えた4人の自己主張とお互いぶつかり合ったコラボレーションの成果だ。
お蔵入りしたのが不思議なアルバムだが、やはり「表の顔が売れている最中に素顔のアルバムは如何なのか?」という辺りが実情であったのだろう。もっとも、その後2人はライブでも共演の機会があったが、ここではゲッツのプレーぶりに腹を立ててエバンスがプレーを中断したという話もあるので、2人の微妙な意識のずれがアルバムに残すのに躊躇いがあったのかもしれない。ジャズはある意味瞬間芸の産物、そのようなアルバムがあってもいいとは思うのだが。
では、このアルバムが録音された64年当時のゲッツの素顔のアルバムが皆無かというとそうでもない。
同じ‘64年の5月の録音にボブブルックマイヤーのアルバムにスタンゲッツが客演したアルバムがある。ここでは、リズム隊は同じエルビンにカーター、このアルバムの様にゲッツのホットなプレーが聴ける。
こちらはレーベルがCBSと異なりプロデューサーもテオマセロが務めている。自宅では表向き大人しくしていたゲッツだが、遊びに行った友達の家で他所ではそこの親御さんの理解があり一暴れさせてもらった感じだ。実は、このアルバムは、それに先立ち自宅でも親の目を盗んでひと暴れしていたというものだ。
まさしく、表の顔と素顔が同時期にうまく両方残されていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/51/c84993fa01e30aa665b0fe202ff6adf7.jpg)
オリジナルのLPは味気ないジャケットデザインであったが、再発CDのジャケットはオリジナルとがらりとイメージを変えたデザイン。イラストの中にエラ&ルイのアルバムが据えられているが、それは何か意味を含ませているのか??
あまり表裏のない感じの仲睦しい2人を羨んでいるのかも。
1. Night and Day Cole Porter 6:45
2. But Beautiful Johnny Burke / James Van Heusen 4:41
3. Funkallero Bill Evans 6:40
4. My Heart Stood Still Lorenz Hart / Richard Rodgers 8:37
5. Melinda Burton Lane / Alan Jay Lerner 5:04
6. Grandfather's Waltz Lasse Färnlöf / Gene Lees 6:28
7. Carpetbagger's Theme Elmer Bernstein 1:47
8. WNEW (Theme Song) Larry Green 2:50
9. My Heart Stood Still Lorenz Hart / Richard Rodgers 6:45
10. Grandfather's Waltz Lasse Färnlöf / Gene Lees 5:32
11. Night and Day Cole Porter 6:34
1~6が当初のLP収録曲。
Stan Getz (ts)
Bill Evans (p)
Ron Carter (b)
Richard Davis (b)
Elvin Jones (ds)
Recorded in NYC, May 5 & 6 1964
スタンゲッツとピアノといえばビルエバンスとの共演も忘れる訳にはいかない。
VerveレーベルはJATPのコンセプトの流れか、50年代の後半は有名プレーヤー同士のバトル物のアルバムを多く作った。スタンゲッツもピーターソン、マリガン、ベイカー、JJジョンソンなど数多くある。
60年代に入ってジャズの世界が変わった。必ずしも大物同士のセッションが受け入れられる時代ではなく、よりマスマーケットを狙ったアルバム作りになった。よくコマーシャリズムに毒されたといわれる時代だ。
マイスルやコルトレーンなどを除くと、大物といわれるプレーヤーも路線変更を強いられた。クインシージョーンズのビッグバンドもPOP路線になり、ベイシーやエリントンもビートルズナンバーやヒット曲でアルバムを出した時代、ゲッツもボサノバで売り出した。
Verveはその時代もピーターソン、モンゴメリー、ジミースミスなど大物ミュージシャンを抱えていた。時代は変わり、プロデューサーもクリードテイラーに変わったが、大物の共演アルバムはビッグバンドをバックにして少し趣を変えて作られていた。いゆゆる丁々発止にという感じは薄れて。
大物達の中にはゲッツとエバンスもいた。両者の共演アルバムは当然あってもいいはずだが、当時はそれぞれ人のプレーは「人の動向には我関せず」のスタンスで、共演アルバムなどは夢の中といった雰囲気であった。プロデューサーによって表向きの顔が作られてしまったからか。
丁度東京オリンピックの頃、自分がジャズを聴き始めた時代のジャズ界であった。
ところが10年近く経ってから、実はゲッツとエバンスのアルバムがあったという話題が広まり、未発表アルバムとしてリリースされた。当時リリースされたアルバムでの演奏とはガラッと雰囲気の違うストレートな2人のホットな演奏にビックリしたし、「やればできるじゃない」と思ったものだ。
人は社会に出ると自然といくつかの顔を持つようになる。家庭の顔、仕事の顔、友人付き合いの顔、そして恋人同士の顔・・・・などなど。
自分も意識している訳ではないが、寡黙な時もあれば多弁な時もある、穏和に感じられることもあれば、怖い印象を与えていることもあるようだ。仕事で知り合って付き合ってみるとプライベートでは全く違うキャラの持ち主だったということは良くある。異性と付き合う時は、意識して付き合い出すとなかなか素顔の自分を出すきっかけが難しいが、最初から本音ベースで付き合えると結構気楽な付き合いが長く続くものだ。もっともこればかりは相性がまずは大事だが。
60年代に入ってからのジャズアルバムも、売るための仕掛けが色々と工夫されるようになると、いつの間にか世に出る演奏スタイルは普段のプレーとは違った形で意図的に作られた物になってきた。
ボサノバのスタンゲッツなどはその最たるものであろう。その点、エバンスの方が化粧は薄めだが。でも、リバーサイドのビレッジバンガードのライブのような素顔の演奏とは異なってきていた。
さて、ゲッツとエバンス、この2人のスタイルは似てはいるとは言ってもそれぞれ自己主張が強い。それに何と言ってもこのアルバムは強力なバック陣だ。エルビンジョーンズにロンカーター&リチャードデイビスといえば、それぞれも時代を代表する主役。このアルバムは、まさにリズムを加えた4人の自己主張とお互いぶつかり合ったコラボレーションの成果だ。
お蔵入りしたのが不思議なアルバムだが、やはり「表の顔が売れている最中に素顔のアルバムは如何なのか?」という辺りが実情であったのだろう。もっとも、その後2人はライブでも共演の機会があったが、ここではゲッツのプレーぶりに腹を立ててエバンスがプレーを中断したという話もあるので、2人の微妙な意識のずれがアルバムに残すのに躊躇いがあったのかもしれない。ジャズはある意味瞬間芸の産物、そのようなアルバムがあってもいいとは思うのだが。
では、このアルバムが録音された64年当時のゲッツの素顔のアルバムが皆無かというとそうでもない。
同じ‘64年の5月の録音にボブブルックマイヤーのアルバムにスタンゲッツが客演したアルバムがある。ここでは、リズム隊は同じエルビンにカーター、このアルバムの様にゲッツのホットなプレーが聴ける。
こちらはレーベルがCBSと異なりプロデューサーもテオマセロが務めている。自宅では表向き大人しくしていたゲッツだが、遊びに行った友達の家で他所ではそこの親御さんの理解があり一暴れさせてもらった感じだ。実は、このアルバムは、それに先立ち自宅でも親の目を盗んでひと暴れしていたというものだ。
まさしく、表の顔と素顔が同時期にうまく両方残されていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/51/c84993fa01e30aa665b0fe202ff6adf7.jpg)
オリジナルのLPは味気ないジャケットデザインであったが、再発CDのジャケットはオリジナルとがらりとイメージを変えたデザイン。イラストの中にエラ&ルイのアルバムが据えられているが、それは何か意味を含ませているのか??
あまり表裏のない感じの仲睦しい2人を羨んでいるのかも。
1. Night and Day Cole Porter 6:45
2. But Beautiful Johnny Burke / James Van Heusen 4:41
3. Funkallero Bill Evans 6:40
4. My Heart Stood Still Lorenz Hart / Richard Rodgers 8:37
5. Melinda Burton Lane / Alan Jay Lerner 5:04
6. Grandfather's Waltz Lasse Färnlöf / Gene Lees 6:28
7. Carpetbagger's Theme Elmer Bernstein 1:47
8. WNEW (Theme Song) Larry Green 2:50
9. My Heart Stood Still Lorenz Hart / Richard Rodgers 6:45
10. Grandfather's Waltz Lasse Färnlöf / Gene Lees 5:32
11. Night and Day Cole Porter 6:34
1~6が当初のLP収録曲。
Stan Getz (ts)
Bill Evans (p)
Ron Carter (b)
Richard Davis (b)
Elvin Jones (ds)
Recorded in NYC, May 5 & 6 1964
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