A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

モンゴメリーライクのギターにはオルガンが良く似合う

2016-03-07 | MY FAVORITE ALBUM
Touch Of Love / 宮之上 貴昭 & Jimmy Smith

ライブハウスというと都心にあると思いがちだが、最近では郊外にも多い。自宅の近くにあるライブハウスには一度は行ってみたいと思うが、きっかけがないとなかなか出向く機会がない。先日も書いた気がするが、やはり誰か知っているメンバーが出ている時でないと。

先日、そんなライブハウスにギターの宮之上貴昭が出るというので行ってみた。自宅からは車で10分足らずの武蔵境のフォンタナ。駅からは少し離れているが、同じ町内といっても良い距離だ。今回一緒のメンバーはトロンボーンの駒野逸美。このコンビは以前別の所でも聴いたこともあり、内容も勝手知った演奏だったので初物の楽しみはなかったが。

最初に演奏した曲が、宮ノ上のオリジナルで、ジミースミスと共演したアルバムで演奏したSmokin’ in the rainでスタート。スタンダード中心にジャズの名曲やオリジナルも交えていたが、宮之上の曲はどれも演奏スタイル同様メロディアスでスインギーだ。途中、ボーカルの飛び入りもあったが、持参した譜面も不要と、絶妙の歌伴も聴けて楽しいセッションであった。



この宮之上とジミースミスのアルバムというと宮之上がデビューしてまだ間もない1981年、ジミースミスが来日した時に録音したアルバムだ。ギターとオルガンというと相性がいい組み合わせだが、曲によってはヴァイブやテナーも加わってさらに彩を加えている。
ジミースミスとウェスモンゴメリーというとアルバムDynamic Duoが有名だが、ウェス信奉者の宮之上にとっては、願ったりかなったりの共演で、オリジナルのデュオにどこまで迫れるかといった感じであったろう。
このようなセッションにはエピソードが付き物だが、最近の自身のフェースブックでもその出来事を記事にされていたので、以下に転載させて頂く。

〜〜 以下転載 〜〜
「ジミー・スミスに捧ぐ」
ジャズオルガンの神様ジミー・スミスが亡くなって
今月で8年になるんですね。
わたしが28歳の時にジミー・スミスとのレコーディングが決まり、
彼の来日歓迎パーティがあるとのことで、ディレクターと大阪に飛んだ。
しかし神様はこのパーティで演奏するギャラのトラブルか、
待てども暮らせども会場に来ない。(*_*;
さらに待つこと1時間半。
ようやく会場に現れたジミースミスはものすごく恐い表情。
しかしオルガンに座ると夢にまで描いたジミーサウンド炸裂!!
でも2曲ほど短く弾き切るとすぐにステージを離れて休憩した。
そんな中、今でいうKYなディレクターがジミーに近づいて
「This is Japanese Wes Montgomery,Yoshiaki Miyanoue」
Σ(゜Д゜)
ジミーはわたしに向かってこう言いました
「I like Wes, I love Wes, but I don't like copy!」
ひぇ~~(*_*;
これから一緒にステージに上がるというのに何ということを!!
※当時のわたしは今よりずっとウェス色強烈でした(汗)
ジミーは「You like Wes...hum, You must be know this tune」
そう言っていきなり「Baby it's cold outside」を弾きはじめました。
わたしは初めて演奏する曲でしたけど、
ウェスとジミーのレコードで聴いたことはあります。
テーマでコード進行を頭に叩き込み、
思いっきりウェスのように演奏しました。
だってそれしかできなかったんですから。
演奏途中からジミーの顔は笑顔に変わり、
ステージを終えると熱烈なハグをされました。
(一体ウェスのコピーはDon't like、何だったんでしょう)

〜〜 以上転載終わり〜〜


この頃は、このような来日大物ミュージシャンとの共演アルバムが良く作られたが、若手でも動じることなく素晴らしい演奏が多く残されている。
ここでも二回り近く年上の大先輩であり超有名スターのジミースミスの胸を借りる共演だが、全体は宮之上ペースで、ジミースミスは脇役ゲストといった感じだ。というのも、宮ノ上の物おじしない余裕のプレーは、下積み時代は横田基地のクラブで演奏し、アメリカで武者修行をしてからデビューをしたという経験が生きていたからだと思う。

この手の共演だとスタンダード曲が多いが、ここではSmokin’ in the rainだけでなく宮之上のオリジナル曲が中心。ジミースミスのオルガンだけでなく、ヴァイブとテナーを曲によって適宜加えているが、これも2人の演奏に実によくブレンドされアルバムとしての纏まりもある。

最後は、今回のレコーディングに付き合ってくれたジミーに謝意を表して、ギターとベースで自らのリズムギターをオーバーダビングして「サンキュー・ジミー」で締める。
演奏はジミースミスのオルガンに合わせてブルージーな黒っぽい感じが基本だが、ジャケットの白地のデザインに合わせたような洗練されたサウンドでもある。

昔はこんなデモツールもありました。↓



1. Fried Cornbread
2. Georgia On My Mind
3. Smokin’ In The Rain
4. Body And Soul
5. Touch Of Love
6. Tokyo Air Shaft
7. Thank You, Jimmy

Yoshiaki Miyanoue 宮之上 貴昭 (g)
Jimmy Smith (org)
Kenny Dixon (ds)
Hiroshi Hatsuyama 初山 博 (vib)
Q. Ishikawa 石川 久雄 (ts)
Yuzo Yamaguchi  山口 雄三 (b)

Produced by Shigeru Kurabayashi 倉林 茂
Engineer : Haruo Okada 岡田 治男
Recorded at AOI Studio on September 26, 29 1981

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バリトンサックスとヴァイブの組み合わせは珍しいが、この2人はどちらも有名人・・

2016-03-01 | MY FAVORITE ALBUM
Lionel Hampton Presents Gerry Mulligan

バリトンサックス自体、それが主役となった演奏は少ないが、バリトンサックスとヴァイブの組み合わせというのはさらに聴く機会が無い。ペッパーアダムスも、ライブではレッドノーボやテリーギブスなどとは演奏したことはあるようだが、ヴァイブと共演したアルバムは前回紹介したレイアレキサンダーのアルバム位かも。ヴァイブの王者ライオネルハンプトンのバンドのメンバーになったことはあるが、これはハンプトンのビッグバンドメンバーの一員であり共演といえる形ではなかった。

このハンプトンは、無名のレイアレキサンダーと較べると反対に超有名人。古くはベニーグッドマンのグループの一員で人気を博したが、その後自分のバンドでも大活躍した。他のメンバーのグループに参加する事も多く、ジャズフェスティバルにも数多く出演していた。共演したミュージシャンの数は桁違いに多かった。
ジェリーマリガンも若い頃から自分のグループを率いるだけでなく、こちらも色々なグループに参加し、また誰とでも共演する機会は多かった。
どちらも目立ちたがり屋なのか、どこにでも顔を出していたので、ステージ上では顔を合わせることはあった。一緒にプレーしたアルバムとなるとなかなか実現しなかった。お互い忙しくしている有名プレーヤーとなると、スケジュール調整もあるし、契約問題も影響することもあったという。

行動力のあるライオネルハンプトンは、自分のレーベルを持ったことが2度ある。その一つWho’ Who in Jazzレーベル。大物ミュージシャンを迎えて、自らプロデュースし自分との共演アルバムを作った。バディーリッチなどは相性がいい感じがするが、異色なチャーリーミンガスとの異色な組み合わせアルバムもあった。ジャズの真髄を極めるとジャンルなどは関係ないのかもしれない。
そのシリーズの中にジェリーマリガンとの共演アルバムがある。異色な組み合わせだとどんなスタイルで? というのがまずは気になるが・・。

お馴染みのマリガンの曲、アップルコアで始まる。2人のスタイルが特に変る事はない。普段通りのプレーだ。アダムスのプレーは、モダンな感じがするが実はディキシー・スイングスタイルに近いという記事をどこかで見た事がある。
バックを務めるメンバーは?というと、ハンクジョーンズ、グラディーテイトとこちらも誰とでも合わせられる面々。バッキーピザレリの味のあるギターが加わるとバンドのサウンドはモダンスイングな感じになる。結果的にこのメンバーは皆、一度はベニーグッドマンのグループにいたことがあるようだ。やはり、ハンプトンの原点はグッドマンということだろう。特徴的なのは、それにコンガのキャンディドを加えている点。4ビートにこのチャカポカが新鮮だ。

ハンプトンはこの企画では、共演するプレーヤーの良さを引き出すことを一番に考えていたそうだ。
マリガンというとアレンジ物も得意だが、ここではプレーヤーとしてのマリガンの良さを出すためにアレンジは極力少なくした。マリガンだけでなく、ハンプトンやバックのメンバーのソロもタップリ聴かせる構成になった。
曲はジェリーマリガンのオリジナルが中心。このセッションに合わせたハンプトンのオリジナルも加えてマリガンを迎える段取りはできた。

クラリネットも吹くマリガンなので、もしクラリネットを吹いたらベニーグッドマンのカバーになっていたかもしれないが、曲がマリガンの曲ばかりなので、マリガンソングブックをグッドマンスタイルでといった感じのアルバムに仕上がった。



1. Apple Core
2. Song For Johnny Hodges
3. Blight Of The Fumble Bee
4. Gerry Meets Hamp
5. Blues For Gerry
6. Line For Lyons
6. Walking Shoes
7. Lime Light

Gerry Mulligan (bs)
Lionel Hampton (vib)
Hank Jones (p)
Bucky Pizarelli (g)
Geoge Duvivier (b)
Grady Tate (ds)
Candid Camero (conga)

Produced by Lionel Hampton
Recoeded in New York City, October 28, 1977



Lionel Hampton Presents...
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Kingdom Jazz
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平成維新を支えた若手も今では中堅、そろそろ代替わりの頃だが・・・

2016-02-04 | MY FAVORITE ALBUM
Jazz Battle Royal Produced by Masahiko Osaka at Tokyo TUC

平成になっていつのまにか28年も経ってしまった。平成元年である1989年はベルリンの壁の崩壊、東西冷戦時代の終わりを告げた年だ。その後世界の枠組みが大きく変った。当時参加した講演会で、「今後は宗教と民族の争いの時代になる」と予測した話が強く印象に残っていた。今、まさにその通りになっている。そしてその直後のバブルの崩壊を境に長期の経済低迷が続く。その後の平成は失われた20年どころかますます混沌とした時代になってしまった。

ちょうど平成に替わる頃、自分自身は現役真っ只中の仕事人間だった。仕事で日々忙しく飛び回っていたせいもあり、ライブに行くことも無く、思い出したようにCDを買っても集中して聴く事もなく、ジャズはBGMとなってしまい少し疎遠になっていた。
その頃、日本のジャズ界は有望な若手が育っていたが、ほとんどその演奏を聴く機会も無かった。日本ジャズ維新と名付けられたムーブメントで彼らのアルバムも多く作られたが、それらが最近復刻された。今では中堅、いやベテランの域に達した彼らの若い頃のストレートアヘッドな演奏を今聴いても実に新鮮に感じる。

そのアルバムの中に、バトルロイヤルと題された一枚がある。トランペット、アルトサックス、テナーサックス、トロンボーン同じ楽器のプレーヤーを3人、もしくは4人集めたバトル物だ。テナーの松本英彦だけがベテランだが、他は皆当時新進気鋭の新人達だ。
会場は、今でも拘りのライブを提供してくれる東京TUC。1995年6月3日、同じ日に各楽器が入れ替わり立ち代わりのセッションであるが、単なるジャムセッションではないバトルに纏め上げているが、フロントラインが目まぐるしく替わる中で、要となったのはドラムの大坂昌彦であった。



このステージからすでに21年、このバトルロイヤルは今でも続いている。先日、テナーバトルのライブに行ってきたが、テナーは長老の峰厚介、竹内直、そして川島哲郎の3人。ソロ有、デュオあり、そして3人のバトルありで、三人三様の個性ある素晴らしいテナープレーを存分に楽しませてくれた。竹内直のダニーボーイ、そして川島哲郎のテナーでのドナリーが印象的であった。そして、この日のセッションをまとめたのもドラムの大坂昌彦であった。

バトルシリーズは続いており、明日はアルトサックスになる。こちらは中堅の太田剣が2人の若手を率いてのセッションだ。前回のテナーのベテランの名人芸とは違った演奏が楽しめそうだ。次回のギターのバトルもすでに予定されているようなのでこれも楽しみだ。
経済的には低迷を続けている平成時代だが、ジャズ界は元気に次世代を誕生させているようだ。もちろんベテランはまだまだ発展途上、色々な所で3世代入り乱れてのセッションが行われそうだ。

1. Milestone
2. There Is No Greater Love
3. Donna Lee
4. A Night In Tunisia
5. Wee Dot
6. Lament
7. Anthoropology
8. St.Thomas

岡崎 好朗 (tp)
原 朋直 (tp)
松島 啓之 (tp)
中川 英二郎 (tb)
福村 博 (tb)
向井 滋春 (tb)
池田 篤 (tb)
多田 誠司 (as)
緑川 英徳 (as)
山田 譲 (as)
安保 徹 (ts)
岡 淳 (ts)
川島 哲郎 (ts)
松本 英彦 (ts)
水野 修平 (p)
上村 信 (b)
大坂 昌彦 (ds)

Produced by Yoichi Nakao & Masahiko Osaka
Engineer : Hiroyuki Tsuji
Recorded at Tokyo TUC, Kanda Tokyo on June 3 1995

ジャズ・バトル・ロイヤル
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キングレコード
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グラミー賞にノミネートされた自信をバックにワンホーンでのびのびと・・

2016-01-29 | MY FAVORITE ALBUM
Signals / Nick Brignola Quartet

先日フォードが日本から撤退するというニュースが流れた。実は、自分は以前フォードの車に長く乗っていたファンの一人だった。といっても車は頻繁に乗り換えずに乗り潰す主義なので、ステーションワゴンタイプで一時人気のあったフォードトーラス、そしてSUVのエクスプローラーの2台だったが。
アメ車は故障しやすいという評判であったが、運よくどちらも故障知らず。特にエクスプローラーは16年間、走行距離は25万キロ、故障は全くない当たり車であった。まだまだ乗れたが、流石に時代が省エネ車全盛になった中で燃費の悪さだけは如何ともし難く、買い替えようと思って新しいエクスプローラーを試乗した。2000CCのエコブーストに興味はあったが、車幅が2メートルを超える図体の大きさだけは受け入れられなかった。これではコインパーキングには停められない。流石に街乗りはできないと諦めて今のCX5にした。
今回のニュースを聞いて、日本ではアメリカ車が売れないというが、やはり日本で売れる車を作らない方が悪いのは明らか。以前トーラスワゴンが日本でも人気が出た時に、どうしようもない形にモデルチェンジしたのはビックリした。一気にファンを失った。
売れずに撤退と聞いても、それは自業自得だと思う。TPPが批准されると日本に合わない物を無理矢理押し付けられそうで今後が思いやられる。グローバル主義は色々な意味で今や落目なのは明白なのだが。

ジャズの世界も、アメリカで人気があるミュージシャンやアルバムにちっとも良さを感じなかったことは良くあった。反対に日本で先に人気を得て、認められたものが着実に世に広まったことは多い。古い名盤の発掘もそうであったし、日本のレーベルが元気な時は新しいアルバムもジャズ界を牽引していた時代もあった。

ニックブリグノラは、ペッパーアダムスとのバリトンマッドネスで本格的にソリストとしてアルバムデビューした。そして、それに続くリーダーアルバムは日本人プロデューサーの妙中氏が主宰するレーベルInterplayで作られた。
その中の一枚LA Bounceは1981年のグラミー賞のBest Jazz Groupにノミネートされる出来であったが、続くアルバムが作られるまでにはしばらく時間が掛かった。そして、アルバムが数多く作られるようになったのはそれから10年近く時を経て、90年代になってからだった。
バリトンサックスのプレーヤーとしてペッパーアダムス亡き後を引き継いだ一人だが、実はその時決して若手ではなかった。人気が出て活躍した90年代はすでに50歳を過ぎた遅咲きのプレーヤーであった。

ペッパーアダムスがバリトン1本で勝負してきたのに対して、このブリグノラはマルチリードプレーヤーだ。何でもリード楽器を17種類吹くことができるという。リード楽器にそんなに種類があることさえ自分は想像できないが。それ故ソロアルバムでも、バリトンだけでなくソプラノをはじめとして色々な楽器を吹き分ける。
さらに、ブリグノラはハードバップスタイルの伝統を引き継ぐプレーヤーで有名だが、実はどんなスタイルでもこなすマルチジャンルをこなすプレーヤーでもあったようだ。ライブでもディキシーから、バップスタイル、そしてフュージョンまで何でもこなしていたという。ダブルマルチのオールラウンドプレーヤーだったということになる。

ブリグノラは、学生時代ダウンビート誌でベストカレッジグループに選ばれたこともある。
グラミー賞にもノミネートされ、実力は常に評価されていたがなかなか人気の方は一気にはブレークしなかったようだ。そんな時を過ごしていた83年に作られたリーダーアルバムがDiscoverレーベルにある。

レコードの時代は、A面、B面で多少中の趣を変えることがあるが、このアルバムもそんな感じがする一枚だ。
A面は、アダムス譲りのバップオリエンテッドな曲、そしてバリトン中心の演奏が続く。B面になると、一転ソプラノがメイン。いきなりモーダルな演奏だ。一緒にプレーしているのは皆、無名の若手。この頃になると基本をきちんと学んだ若手が増えてきた時代だ。日本からも多くの若手が、留学、武者修行にアメリカに渡った頃だ。このような若手はどんなスタイルでもプレーできるという。バップスタイル同様モーダルなプレーも普通にこなす。続いて、オリエンタルムードの調。アップテンポのサンバ調と曲のイメージも多様になる。そして最後はバリトンとドラムとのデュオで〆る。

どんなスタイルでも、ブリグノラはバリトン、そしてソプラノを駆使しワンホーンで自在にソロを繰り広げる。大きく飛躍する前ではあるが、若手達と一緒に自分達の曲を気負いもなく、得意なマルチスタイルのプレーを存分に披露しているアルバムだ。

1. In From Somewhere               Nick Brignola 3:45
2. Brother John                  Nick Brignola 4:57
3. Night Song                    Bill Dobbins 6:08
4. Tadd’s Delight                 Todd Dameron 5:09
5. Signals                     Bill Dobbins 5:22
6. The Frame                   John Lockwood 5:27
7. Once Upon A Samba               David Colarco 5:19
8. Fun                       Nick Brignola 4:11

Nick Brignola (bs,ss)
Bill Dobbins (p)
Joh Lockwood (b)
David Calarco (ds)

Produced by Nick Brignola & Albert L.Morx
Engineer : Bob Youger
Recorded at U.C.A. Recording Studios, Urico, N.Y. on June 21, 1983
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今では師とするWESを超えたかも・・・

2016-01-26 | MY FAVORITE ALBUM
Song For Wes / 宮之上貴昭クヮルテット

プレーを始めた時に影響を受けたミュージシャンというのは必ずいるものだ。それが自分のスタイルの出発点となる。しかし、演奏活動を長く続けていると、他のプレーヤーや環境の変化など色々な影響を得てそのスタイルは変っていく。特に、一時のエレクトリックサウンドの登場や、フュージョンの台頭のようにジャズ界全体が大きな変化を遂げた時、マイルスのようにスタイルを一変させるミュージシャンもいた。
一方で、世の中の変化には目もくれず、自分が出発した時のスタイルをひたすら追求してきたミュージシャンもいる。日本を代表するギタリスト宮之上貴昭もその一人だろう。ウェスモンゴメリーに始まり、いまもそのスタイルを追求し続ける姿勢には感服する。根強いファンが多いのも納得する。

先日、その宮之上貴昭と盟友吉岡秀晃のライブがあった。自分がこの2人の演奏に出会ったのは今から30年以上前。まだ吉岡秀晃がデビューしたての頃であったが、それ以来の2人のファンだ。彼らのライブに行く機会は多くは無かったが、ライブ通いが復活した最近ではよく聴きにいっている。



デビュー以来変わらないウェスモンゴメリーの影響を受けた宮之上のプレーは円熟さに加え最近では迫力も加わっている。それに加えて、この2人のコンビネーションも30年以上の付き合いの安定感と信頼感なのだろ。目と目が合っただけ、そして一音一音がお互いのプレーを刺激し合っているのがライブだと一層伝わってくる。聴いている方も、一人しかめ面をしながら演奏している姿をみるよりも、お互い楽しそうに演奏している姿を見ながら聴ける方が楽しいし、それがライブの醍醐味だ。

この宮之上は自らギター道場やセッションを主催し後進の育成にも力を入れている。門下生が数多く育っているのも喜ばしいことだ。そして、この日のライブにもゲストが一人。セッションに顔を出したという17歳の女子高校生。師匠の演奏を楽しむだけでなく飛び入り参加したが、スタンダードのオールザシングスユーアー、そしてアンコールのパーカーナンバーのオーニソロジーで高校生とは思えない堂々としたプレーを聴かせてくれた。ジャズを聴く若者が少ないと言われる一方で、このような若手が育っているのも嬉しい限りだ。






さて、この宮之上のモンゴメリートリビュートのアルバムは多いが、このアルバムが最初のアルバム。1978年の録音だがこれがデビュー2作目となる。ちょうどその時来日中のフィリージョージョーンズがドラムに加わっているスペシャルセッションだ。大物相手に、メンバー全員をぐいぐい引っ張っている。このアルバムが宮之上の演奏の原点だが今もこのスタイルは引き継がれ、進化させている。
今のグループの橋詰大智のドラムも、バップドラミングをストイックに追い求めているという。彼にとってはこのアルバムのフィリージョージョーンズが師なのだろう。一緒にプレーするメンバーも、このような若手の方がかえってバップスタイルをけれんみの無いプレーで聴かせてくれる。ファンにとってはこの拘りがたまらないのだろう。

デビュー以来常に元気に活動を続けてきた宮之上だが、来月一杯でしばらく演奏活動を休止するという。というのも長年酷使してきた手首の腱鞘炎が悪化し療養のため休まざるを得ないそうだ。その日も吉岡とのコラボで大乗に乗った曲では、その一曲で弦のテューニングが狂ったとか。このプレーぶりを見ると、今まで故障無く来れたのが不思議な位だ。早い演奏活動再開を願うばかりだ。

1. Song For Wes          Takaaki Miyanoue 8:30
2. Willow Weep For Me           Ann Ronell 3:59
3. Blues For Philly           Takaaki Miyanoue 7:02
4. In A Sentimental Mood         Duke Ellington 7:43
5. Maki’s Dream            Takaaki Miyanoue 8:14

Yoshioka Miyanoue (g)
Naoki Kitajima (p)
Takashi Mizuhashi (b)
Philly Jo Jones (ds)

Produced by Tsuneaki Tone
Engineer : Hatsuro Takanami
Recorded on September 25, 1978

ソング・フォー・ウェス
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キングレコード
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歌も良いけどピアノもいい、そしてボサノバも良いけどやはりジャズも素晴らしい・・・

2016-01-20 | MY FAVORITE ALBUM
Something for You / Eliane Elias Sings and Plays Bill Evans

年末最後のライブは辛島文雄、病気療養中とのことだったが、久々の奥平真吾との共演は呼吸もピッタリで元気な演奏を聴けて一安心。共演した岡淳、池田篤のサックスも素晴らしく、年の締めのライブに相応しい演奏であった。

そして、年明け一番のライブは、こちらもピアノのイリアーヌ・エリアス。今回はトリオでの演奏に加えて、ビッグバンドとの共演もプログラムされていたので、連日出掛けることになった。
ブラジル出身ということもあり、エリアスというとどうもボサノバが有名だが、彼女のデビューは確かステップスアヘッドに加わったアルバムだったと思う。ボサノバだけでなく、ストレートアヘッドなジャズでもなかなか聴き応えのある演奏を聴かせてくれるので、さて今回はどんな演奏を?という楽しみもあった。



ビッグバンドの共演で相手を務めたのはエリックミヤシロ率いるブルーノートオールスターズ。このバンドはこれまで何回もゲストを迎えたライブを行っているが、ただ一緒にやっているというのではない。時にはミヤシロ自身がアレンジを行い、いつも共演する相手を意識したプログラムで構成されていて感心する。
今回もオーケストラのレパートリーにイリアーヌのピアノがゲスト参加することもあれば、彼女がボブブルックマイヤーのアレンジで作ったアルバムの再演も聴け、なかなか聴き応えのあるステージであった。



トリオの方は、ベースは良きパートナーのマークジョンソン、ドラムも同じブラジル出身のマウリシオ・ゾタレリで呼吸もぴったり。ピアノにボーカル、ジャズにボサノバ、それにオリジナルにスタンダードが程よくミックスされ、飽きさせることのないステージであった。特に、ボーカルではチェットベイカーに捧げたエンブレイサブルユー、そしてボサノバの名曲のディサフィナードではジャズとボサノバの完全融合。曲の展開、各人のソロ、そしてメンバーとのコラボレーションも圧巻であった。単なるボサノバのプレーヤーではない事をアピールしていた。

このイリアーヌのアルバムというと毎年のようにアルバムもリリースされ数多くあるが、自分の好きなアルバムは比較的最近のアルバムで、ビルエバンスに捧げたSomething For Youだ。エバンスのトリビュートアルバムというと世の中に数多くあるが、その中でも好きなアルバムだ。

ボサノバのボーカル物が多くなっていた中で、久々のジャズアルバムということで買い求めたアルバムだった。全曲がボーカルという訳でもないのに、スイングジャーナルのディスク大賞でボーカル賞を受賞したのは、あのゼタールンドで有名な「ワルツフォーデビー」のボーカルがあるからかもしれない。アルバムとしては、あくまでも彼女のピアノ中心のアルバムだと思う。

今のジャズピアニストでエバンスの影響を全く受けていないというピアニストは少ないと思うが、このイリアーヌももちろんエバンスの影響は多く受けたという。というよりは、若い頃彼女は多くのピアノスタイルを学び、それを実践できたといわれるが。
今回も一緒に来日したベースのマークジョンソンは、エバンスの最後のトリオのメンバーだ。彼にとっては、エバンスは特別な存在だろう。イリアーヌが最初に結婚したのは、ランディーブレッカー、そして今のパートナーであるマークジョンソン。プレーにも伴侶の影響は受けるのだろう、このアルバムの誕生にはもちろんマークジョンソンの影響もあった。

事実、このアルバムにはマークジョンソンに託したエバンスが残したカセット録音も登場し、マークジョンソンもスコットラファロが愛用していたベースを借り受けてきて演奏した曲もある。という意味では、2人の共同作業による、色々な意味でのエバンストリビュートなアルバムであった。

今回のステージを聴いて、このアルバムで聴けるようなエバンスライクの演奏は彼女の演奏の一面であることも良く分かった。反対に、どんな曲をやっても熱のこもったエネルギッシュな迫力あるプレーが目立った。美形のジャズミュージシャンとして、これまでジャケットにもピンナップガールのような写真が多かった彼女も、歳とともにステージでは演奏ぶりを含めて益々「貫禄」が目立つようになってきた。

1. You and the Night and the Music                    Arthur Schwartz 3:17
2. Here Is Something for You                  Eliane Elias / Bill Evans 2:58
3. A Sleepin' Bee                      Harold Arlen / Truman Capote 2:51
4. But Not for Me                              George Gershwin 3:51
5. Waltz for Debby                             Bill Evans 4:05
6. Five                                   Bill Evans 4:59
7. Blue in Green                       Miles Davis / Bill Evans 4:50
8. Detour Ahead                      Lou Carter-Herb Ellis-John Frigo 4:32
9. Minha (All Mine)                        Francis Hime/Ruy Guerra 3:13
10. My Foolish                            Heart Victor Young 5:01
11. But Beautiful/Here's That Rainy Day           Johnny Burke / James Van Heusen 4:25
12. I Love My Wife                              Cy Coleman 2:54
13. For Nenette                                 Bill Evans 2:53
14. Evanesque                          Eliane Elias / Bill Evans 3:23
15. Solar                                     Miles Davis 3:11
16. After All                                 Eliane Elias 4:29
17. Introduction to "Here Is Something for You"         Eliane Elias / Bill Evans 2:13

Eliane Elias (p,vol)
Marc Courtney Johnson (b)
Joey Baron (ds)

Produced by Hitoshi Namekata & Marc Courtney Johnson
Engineer : Al Schmitt
Recorded at Avatar Studios , New York

Something for You
クリエーター情報なし
Blue Note Records
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クラーク&ボランビッグバンドもサドメル同様ライブでの演奏で本領発揮・・・

2016-01-11 | MY FAVORITE ALBUM
The Kenny Clarke - Francy Boland Big Band Live At Ronnie Scott’s

サドメルがビレッジバンガードで活動を開始したのが1966年2月、丁度同じ頃ヨーロッパで本格的に活動を開始したのがケニークラーク・フランシーボランビッグバンド(CBBB)だ。最初のレコーディングは1963年であったが、ヨーロッパ在住のスタープレーヤーを集めたこのビッグバンドはレギュラー活動をスタートするにはなかなか課題が多かったようだ。

サドメルが一気に評判になったのに刺激を受けたのか、このCBBBも1966年5月ドイツのマインツで初のライブ活動を始めた。1972年3月ニュールンベルグでのラストステージまでの6年間が実質的な活動期間となる。その間ドイツを拠点としていたがヨーロッパ各地で演奏を繰り広げた。

ライブ活動を始めてから2年経ちレギュラーオーケストラとして演奏も脂が乗って調子が上がって来た1968年2月17日から3月1日まで、ロンドンの有名クラブ”Ronnie Scott's Club”に出演した。これまでのライブはコンサートが主体、クラブ出演のように同じ場所で毎晩演奏を続けるのはこれが初めての経験だった。翌年カーメンマクレーとの共演アルバムを作った時も、このロニースコットクラブに出演するためにイギリスに滞在中であった。それも、このライブが好評でこのロニースコットクラブには定期的に出演していたようだ。

古くはカウントベイシーオーケストラが長い巡業から帰り、ホームグラウンドのバードランドに帰ってくるとリラックスした演奏をしていた。サドメルやVJOもホームグラウンドのビレッジバンガードでの演奏が何かしっくりしている。CBBBもこのロニースコットクラブでの演奏は、何かファミリーで演奏を楽しんでいるような感じであったという。もちろん一緒に活動している期間が経つと仲間意識が高まってくるものだ。特に、このクラブのオーナーであるロニースコットは、自身もメンバーの一員として参加し、これまで参加したオーケストラのベストとだと気に入っていたので尚更であったであろう。もちろんここまで育って一番悦に入っていたのは、創設者のジジカンピであったとは思うが。

このCBBBはサドメルと似た所がある。オールスターメンバーを揃えたリハーサルオーケストラとしてスタートし、2人のリーダーに率いられている。全員がソリストとしての実力も十分なメンバーなので、アンサンブルワークに加えソロのウェイトも高い。それを引き出すアレンジもリーダーの役割で、CBBBではフランシーボランが一手に引き受けていた。
サドジョーンズのアレンジは曲によっては繊細さも求めたのに対して、ボランのアレンジはソロの迫力をアンサンブルで増長するようなダイナミックなノリを求めた。昨今のヨーロッパ系のビッグバンドはサドジョーンズやボブブルックマイヤーの影響を受けた演奏が多いが、このCBBBバンドはディジーガレスピーやクインシージョーンズのバンドのようにバップオリエンテッドなDNAを引き継いでいるように思う。

2枚組のアルバムにこのバンドの良さはタップリ収められているが、重厚なサウンドの源泉にはボランのアレンジに加えテナーが3本という編成や、2ドラムというのも大きく影響している。クラブでのライブというリラックスしたノリの良さも、ソロにアンサンブルに十分に伝わってくる。

サドメルのアレンジは今でもプロだけでなく、アマチュアにも広く演奏されているが、このCBBBのレパートリーを演奏するビッグバンドにはなかなかお目に掛かれない。この迫力を出すには、アレンジよりも個々のプレーヤーの技量が大きく左右するのかもしれない。一度生で聴いてみたかったバンドだった。

1. Box 703                Francy Boland 10:40
2. Griff's Groove              Francy Boland 10:10
3. Volcano                   Kenny Clarke 4:30
4. Love Which To No Loved One Permits Excuse For Loving (From The 'Inferno-Suite') Francy Boland 3:20
5. Now Hear My Meanin'              Jimmy Woode 5:40
6. And Thence We Issued Out Again To See The Stars (From The 'Inferno-Suite')  Francy Boland 5:45
7. Rue Chaptal                  Kenny Clarke 4:00
8. I Don't Want Nothin'              Kenny Clarke 3:30
9. Sax No End                  Francy Boland 11:30
10. You Stepped Out Of A Dream           N.H.Brown 3:20
11. Fellini 712 (Blues)               Francy Boland 3:40
12. The Girl & The Turk (From The 'Middle East-East Suite') Francy Boland 6:00
13. Kenny & Kenny (From 'Faces')          Francy Boland 7:00

Kenny Clarke (ds)
Francy Boland (p,arr)
Benny Bailey (tp)
Dusko Goykovich (tp)
Idrees Sulieman (tp)
Tony Fisher (tp)
Erik Van Lier(tb)
Nat Peck (tb)
Ake Persson (tb)
Derek Humble (as)
Johnny Griffin (ts)
Ronnie Scott (ts)
Tony Coe (ts,cl)
Sahib Shihab (bs)
Ron Mathewson (b)
Kenny Clare (ds)

Producer – Chris Whent, Gigi Campi
Engineer – Wolfgang Hirschmann

Recorded Live At Ronnie Scott's Club, 47 Frith street, London W.1. - February 28th 1969

Complete Live Recordings at Ronnie Scott's-Februar
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Rearward
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エルビンジョーンズのビッグバンドでのドランミングはなかなか聴く機会がないが・・・

2016-01-06 | MY FAVORITE ALBUM
Giant Steps / Elvin Jones & Frank Foster with Nobuo Hara & Sharps & Flats

ペッパーアダムスがサドメルを辞めた後に参加したアルバムの棚卸は1978年のアルバムが続いている。ちょうど辞めてから1年後、ライオネルハンプトンの50周年記念のオーケストラに加わってニューポートに出演、古巣のサドメルにもゲスト出演したりしていたので、何か記事でも無いかと思って当時のスイングジャーナルを繰ってみた。

ニューポートジャズフェスティバルの詳細な記事が載っていたが、7月2日のSratoga Swingと命名されたその日のステージはベイシー、エリントンを始めとしてビッグバンドばかり9グループの揃い踏みであった。秋吉敏子のバンドは参加していなかったようだが、当時のビッグバンドの盛況ぶりが分かる。

一方、日本に目を転じても、シャープやニューハード、そして東京ユニオンなども積極的に活動していた頃なので、さぞかし活況を呈していたのだと思ったが、「いまビッグバンドジャズ界は燃えているか?」という記事があった。



いきなり最初の項のタイトルが「絶望的な状況か」で始まっているので半信半疑で読み返してみると、確かにジャズフェスティバル参加の機会は減り、仕事自体も減っているという状況のようであった。
とはいうものの4大ビッグバンドはまだレギュラーで活動していたので今よりは良かったとは思う。アルバムでも意欲的な作品もリリースされていた。ちょうど、この記事が載っている9月号のディスクレビューに、ジャープスアンドフラッツの新作が紹介されていた。
それがこのアルバム、エルビンジョーンズとの共演アルバムだ、久々に聴き直してみた。

ビッグバンドとエルビンのドラムいうとどうもしっくりこない。昔のジャズミュージシャンは若い頃ほとんど皆がビッグバンドを経験してきたが、このエルビンジョーンズに限っていえばビッグバンドでの演奏は聴いた事も無ければ記憶に無い。エルビンのドラミングは今の時代のコンテンポラリーなオーケストラならまだしも、シャープとは果たしてどんな演奏であったか改めて興味が湧くが、この両者の仲人を務めたのがアレンジを担当したフランクフォスターだ。

シャープはこの頃、オリバーネルソンなどアメリカのアレンジャーへ作編曲を依頼する事も多く、このフォスターにそれまでもアレンジを頼んだことはあった。そのフォスターがエルビンジョーンズのグループで来日するのに合わせて、アレンジを頼むだけでなくフォスターの演奏に加えエルビンジョーンズとの共演も一緒に企画された。

フォスター自身のビッグバンドThe Loud Minorityのアルバムも前の年の1977年に制作された。さらに遡れば1975年のサドメルのメンバーとして来日した時に、同じタイトルのGiant Stepsというリーダーアルバムが作られた。このアルバムのメンバーは全員サドメルのメンバーなので、サドメルのフランクフォスター作品集といってもいいアルバムだが、契約の関係でフランクフォスターのオーケストラとなっている。
いずれにしても、この頃はフランクフォスターにとって、ビッグバンドの企画は皆日本のレコード会社が実現してくれた良き時代であった。

さてこのアルバムだが、エルビンをゲストに招いているので、フォスターのアレンジもその点を考慮している。全部で10曲が用意され、このアルバムに収められたのは4曲(ということは他に6曲あるのは陽の目を見たのか?)。どの曲にもエルビンのソロが登場する。バディーリッチやルイベルソンのようないわゆるビッグバンドのドラムのショーケースのようなソロではなく、あくまでも曲の流れの中での自然なソロだ。

A面の2曲はフォスターのオリジナル。1曲目はモーダルな3拍子。2曲目は8ビートのジャズロックだがいずれもエルビンのドラミングに掛かると普通のビッグバンドの切れ味とは違ったリズム感だ。このエルビンのドラミングに合わせるために、レコーディングではオーケストラの面々は仕切り板をとりエルビンを囲んで生音を聴きながら演奏したそうだ。

B面のジャイアントステップスと質問は、以前のアルバム「ジャイアントステップス」でも演奏していた曲。アレンジは同じでも前作のドラムはメルルイス、エルビンのトラムとはスタイルが違う。サドメルとシャープでもバンドカラーが違うので、演奏自体も違って聞こえる。これがジャズの楽しい所だ。
質問はアレンジも多少変えてソロも長めに、今回がエルビンに合わせたバージョン2といった感じだ。

ビッグバンド界は絶望的と記事で語られていたが、こんな面白い企画のアルバムが誕生したのだから今の時代と比較すれば遥かに恵まれていると言わざるを得ない。

1. Shinone                Frank Foster 8:25
2. Someone’s Rocking          Frank Foster 11:54
3. Giant Steps              John Coltrane 7:26
4. Shi-Tsu-Mon              Frank Foster 12:30

Elvin Jones (ds)
Frank Foster (ts,arr)
原 信夫 (ts)

前川 元 (as)
鈴木 和雄 (as)
唐木 洋介 (ts)
森川 信幸 (bs)
森川 周三 (tp)
佐波 博 (tp)
岡野 等 (tp)
羽毛 知也 (tp)
西山 健治 (tb)
佐藤 俊治 (tb)
花坂 義孝 (tb)
及川 芳雄 (btb)
蒲池 猛 (p)
小林 順一 (b)
川上 和彦 (g)
中村 俊幸 (ds)

Produced by Kohji Saitoh
Engineer : Kazuo Nagao
Recorded at King Record #1 Studio, Tokyo April 19, 1978
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せっかくの初録音はやはりいい録音でなければ・・・

2016-01-05 | MY FAVORITE ALBUM
Emergence / Roy Hargrove Big Band

今年も新年早々ロイハーグローブが来日する。スレートアヘッドなジャズの演奏を基本とするがR&B、Hip Hop、ラテン・・・何でもこなすハーグローブなので、今回の出し物は果たして何だろうか?昨年はビッグバンドでの来日だった。
ビッグバンドといってもこのアルバムも出ていたので、ライブに行ってどんな演奏をするのか想像はできたが。普段コンボで演奏しているミュージシャンがビッグバンドを組んだと聞くと、本来の演奏を聴く以外にどんなバンドサウンドになるかを確認するのもビッグバンドファンの楽しみのひとつだ。

このロイハーグローブのビッグバンドも結成されたのは1995年に遡るという。本場アメリカといえどもビッグバンドを編成するのはなかなか大変なようだが、ハーグロープの「ビッグバンドをやりたい」という声に応えてプロモーターのJames Browneがグリニッジビレッジで開かれたジャズフェスティバルに出番を作った。ハーグロープのマネージャーも本番に備えて練習場所の確保に奔走した。ビッグバンドは誰かの協力がないと一人で頑張っても実現できないものだ。

無事出演を終えた後も、練習場所にしていたThe Jazz Galleryでリハサールを繰り返し、時にはそこでgigを行うようになった。その内、各地のジャズフェスティバルやコンサートからも声が掛かるようになった。今の時代、このような有名人が率いるバンドでもこのようなリハーサルオーケストラの形態をとらざるをえないのがビッグバンド界の現状である。もっともハーグロープは色々な活動をするので、このような形が理想かもしれないが。

継続して活動をしているとレコーディンをしてアルバムを残したくなるのも世の常だ。一度、このホームグラウンドにしているThe Jazz Galleryでの演奏をライブレコーディングした。しかしその結果は満足の行く結果ではなかったようだ。

そんな時、2008年6月西海岸のハリウッドボウルで開かれたプレーボーイジャズフェスティバルに出演の機会を得た。そして運が良いことに、そのコンサートの直後にハリウッドのCapital Studio Aが空いていた。さらにグラミー賞を数多く受賞しているエンジニアのアルシュミットのスケジュールも確保できた。50年代から数多くの名盤の録音が行われた晴れ舞台で待望のレコーディングが行われることになった。

何でも目標ができると練習にも熱が入る。本番に向けての5月、6月のホームグラウンドThe Galleryでの演奏も熱が入ったようだ。そして、コンサート出演の熱の醒めない内のレコーディング。バンドが誕生してからかれこれ20年近く経って、晴れて初アルバムが完成した。
過去にも、ビッグネームが率いるビッグバンド、例えば過去アルバム紹介したジョーヘンダーソンフランクフォスターのバンドといえども、バンドの結成から初レコーディングまでには時間がかかり、それに時の運が幸いして初めてアルバムが生まれるのが現実だ。

ハーグロープのビッグバンドの演奏は、彼のいつもの演奏のように色取り取りだ。セプテンバーレインのように歌も飛び出すスタンダードのスインギーな演奏もあれば、マンボのリズムで盛り上がって終わるマンボフォーロイ、そしてモーダルな演奏まで。まさにハーグローブの良さをそのままビッグバンドにしたような感じで勝手気ままだ。無理やり難しいアレンジの曲をやるのでもなく、仲間同士で楽しく演奏している様子がそのままの形で聴こえてくる。

曲やアレンジもハーグローブだけでなく色々なアレンジャーを起用、メンバー達も持ち寄っている。有名なアレンジャーを起用している訳ではない。先日ベイシーオーケストラの一員で来日したジェイソンマーシャルも自作曲ミスグレービーでシャッフルのリズムに乗って大ブローしている。さらには、女性ボーカルのロバータガンバリーニの参加も華を添えている。

有名ミュージシャンと数多く共演を重ねてきたハーグローブ、そして録音場所はハリウッドとなればレコーディングのために有名ミュージシャンを集めることはできたであろう。実際のメンバー達はあまりよく知られていないレギュラーメンバー、若い頃から一緒に演奏してきた仲間達、そしてニューヨークで一緒に普段一緒に演奏している仲間達だそうだ。

ハーグロープのビッグバンドはハーグロープの名前を売るわけでもなく、アレンジを売りにするのでもなく、あくまでもそれまで一緒に切磋琢磨してきた普段の仲間達の演奏そのものを売りにする手作り感が漂うバンドだ。
トランペットの世界ではすでに巨匠の仲間入りをしているハーグロークだが、偉そうな感じの先輩のマルサリスと違って思いやりのある優しい性格のハーグロープが仲間達と手塩にかけて育てたビッグバンドだ。こんなビッグバンドが増えて欲しい。



1. Velera                Roy Hargrove 4:14
2. Ms. Garvey, Ms. Garvey       Jason Marshalle 5:33
3. My Funny Valentine   Lorenz Hart / Richard Rodgers 6:00
4. Mambo for Roy             Chucho Valdés 6:37
5. Requiem                Frank Lacy 13:36
6. September in the Rain    Al Dubin / Harry Warren 6:59
7. Every Time We Say Goodbye        Cole Porter 5:56
8. La Puerta               Luis Demetrio 3:28
9. Roy Allan               Roy Hargrove 5:51
10. Tschpiso               Roy Hargrove 7:17
11. Trust                 Roy Hargrove 4:26

Roy Hargrove (tp,flh,vol,arr.)
Ambrose Akinmusure (tp)
Darren Barrett (tp)
Greg Gisbert (tp)
Frank Greene (tp)
Vincent Chandler (tb)
Jason Jackson (tb)
Saunders Sermons (tb)
Max Siegel (btb,arr)
Bruce Williams (as,fl)
Justin Robinson (as,fl)
Norbert Stachel (ts ,fl,vol)
Keith Loftis (ts,fl,vol)
Jason Marshall (bs,fl,vol)
Saul Rubin (g,arr)
Gerald Clayton (p,arr)
Danton Boller (b)
Montez Coleman (ds)
Roland Guerrero (per)
Roberta Gambarini (vol)

Produced by Larry Clothier & Roy Hargrove
Al Schmitt : Audio Engineer, Mixing
Steve Genewick ; Asistant Audio Engineer
Recorded at Capital Studio A, Hollywood, Calfornia, June 16 & 17, 2008

Emergence
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Emarcy / Umgd
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元旦の朝は「世界は日の出を待っている」を聴いて迎えるのが定番であるが・・・

2016-01-01 | MY FAVORITE ALBUM
George Lewis and his New Orleans All Stars in Tokyo 1963

世の中全体が昔と較べて正月らしさが無くなっているが、帰省する田舎がなく、今年は子供も海外へ行ってしまった我が家は普段と変わらない朝を迎えた。それでも女房は一人早起きをして初日の出を見に出かけたようだが、自分は夜が明けてからのこのこ起き出した次第。この正月休みはゴルフや旅行の予定もなく、いつになくのんびり寝正月になりそうだ。
大晦日の夜は家にいればジョージルイスのオハイオユニオンを聴くことが多かったが、昨晩は聴かず仕舞いでそのまま撃沈。見ようと思っていた「朝生」の録画共々、結局夜が明けてから聴く事になった。

たまには定番のオハイオユニオン以外でということで、北村英治もあるが棚から見つけたのはこのアルバム、同じジョージルイスの東京でのコンサートライブのアルバムだ。
ジョージルイスは、このアルバムが録音された1963年から数年続けて来日している。全国津々浦々何十箇所もツアーをこなしたというので、それだけのファンが当時日本にいたことになる。

この時自分は中学一年、まさにジョージルイスを知ったのは翌年1964年であった。ジョージルイスのレコードを初めて買ったのもこの頃だが中学生では流石コンサートにまでは行けなかった。当時はもっぱらラジオが情報源だったが、この「世界は日出を待っている」も大晦日のラジオでは良く流れていた。

自分はこの曲はジョージルイスの、そしてトラッドジャズの定番だと思っていたが、元は1918年にカナダのアーネストセインツというピアニストが作曲した曲だそうだ。スイング時代になるといわゆる流行曲(後のスタンダード曲)が取り上げられることが多くなるが、古くニューオリンズジャズにどうしてこの曲が取り上げられるようになったか興味が湧く。



さて、このアルバムは、今は無き新宿厚生年金会館でのライブだが演奏だけでなくMCも一緒に収められている。「アレキサンダースラグタイムバンド」に始まり、「最後の聖者の行進」までほぼステージ上で演奏された順番だろう。ステージも最後に近づき、「世界は日出を待っている」そして「アイスクリーム」と続くが、会場の拍手は一段と高まる。やはり、当時会場に駆けつけたファンにとっても、この2曲はお待ちかねの定番の演奏であったのが分かる。ここでのバンジョーはエマニュエルセイルスであるが、やはりオハイオのローレンスマレロの演奏には及ばないのは仕方がない。オハイオユニオンからは10年近く経ち、ジョージルイス晩年の演奏だが、元気な演奏を録音も良い状態で聴ける一枚だ。

ジャケット解説を見返していて、油井正一の解説の中に面白い記事を見つけた。
ジョージルイスの記者会見で、「ニューオリンズの伝統的な演奏は、アンサンブルに終始することである。しかし、曲によってはソロをフィーチャーすることもあると言っていた」と始まる。
この演奏を聴くと曲によってソロが取りまわされるが、これはルイアームストロングに始まるジャズはソロをフィーチャーするという「悪影響」が、ニューオリンズの伝統を守って復活したといわれるジョージルイス達にも影響を与えている。
ニューオリンズジャズのアドリブの発生は一人のソロを残して他のメンバーが演奏を止めるブレイクから生じたもので、最初はせいぜい2小節だった。これを打ち破って自由にアドリブを展開するソリストはルイアームストロングによって初めて実現され、そのスタイルが今のジャズまで引き継がれている功績は大きいのだが・・・と続く。

今の時代は、アドリブのソロがメインで、アンサンブルやオブリガードが従になっているが、この時代のソロはアドリブではなかった。事実ジョージルイスをフィーチャーした自作曲のバガンディーブルースのソロは、どのアルバムを聴いてもアドリブではなく計算され尽くしたソロだという。

という前提でこの演奏を聴くと、これはニューオリンズジャズの伝統を再現する創世記のジャズではなく、あくまでもアームストロングから広まったディキシーランドジャズの「悪影響」を受けたものだという。つまり、この時ジョージルイスが現役に復帰してからすでに20年以上、オリジナルの良さを残しながらも、その演奏スタイルは時代の変化を採り入れ変ってしまったということをいわんとしている。

油井正一氏は、最後に例えそうであても、「昔のままの演奏など実際上不可能なのだ・・という認識に立ち、しかし、もはや真似手さえも現れない彼らの音楽であるという視点に立てば、これらの古老の実演は感動を持って理解されるものと信じると」括っている。

プリザベーションホールという小さな小屋で地元の聴衆だけを相手に普段着で演奏しているのと、1000人を超える大観衆を相手にタキシード姿で演奏するステージでは確かに演奏する曲もスタイルも変えざるを得なかったのも現実であろう。今思えば、このステージは自らが若い頃に体験した「オリジナルニューオリンズジャズ」を多少今風に脚色して再現したショーであったのかもしれない。

事実、生き証人のプレーヤーがいなくなってしまったプリザベーションホールの今の演奏スタイルはさらに大きく変化している
。伝統を守るというのは口で言うのは簡単だが、現実は大変だし難しいという事になる。これは代時代が代わる時、何の世界においても直面する課題だ。

今の時代、素晴らしいソロに、絶妙なバッキングやオブリガードが絡むのは本来のジャズのアンサンブルの楽しさを再現しているのだろう。そしてミンガスがチャレンジしたグループでのインプロピゼーションはまさにニューオリンズスタイルの再興だったようにも思う。
ジャズの楽しさを形を変えて実現しようとチャレンジする者は今後も必ず現れるであろう。形式やサウンドは違っても、ジャズの伝統は引き継がれるということだ。
一方で、絶滅すると思われた彼らのスタイルを忠実に真似て演奏するミュージシャンもいる。油井氏の心配は杞憂であったようだ。

1. Alexander’s Ragtime Band
2. Over The Waves
3. St.Louis Blues
4. Somebody Stole My Gal
5. Just A Closer Walk With Thee
6. Wat A Freiend We Have In Jesus
7. You Rascal You
8. Burgandy Street Blues
9. Muskrat Ramble
10. St.James Infirmary
11. The World Is Waiting For The Sunrise
12. Ice Cream
13. Till We Meet Again
14. When The Saints Go Marching In

George Lewis (cl)
Punch Miller (tp)
Louis Nelson (tb)
Emanuel Sayles (bjo)
Joe Robichaux (p)
Papa John Joseph (b)
Joe Watkins (ds)

Produced by Motohiko Takawa
Engineer : Toshio Kikuta
Recorded live at Kosei-Nenkin Kaikan Hall, Tokyo on Aug.21. 1963

イン・トーキョー1963
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キングレコード
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親子どころか孫以上に歳が違う若手のベーシストと組んだ3世代の共演は・・

2015-12-30 | MY FAVORITE ALBUM
I Hear A Rhapsody / Hod O’Brien Trio introducing Daryl Johns

忘年会、打ち収めゴルフ、そしてライブ通いを続けている内に、今年も残すところあと一日。仕事も辞めたので、今年こそは時間もあるので大掃除ができるかと思っていたが、やはりバタバタのまま大晦日を迎えそうだ。どうも貧乏性なのかゆったり一日を過ごすことができない性分は変らない。

このブログも今年で9年目、途中で一時中断した事もあるが何とか続いている。忙しい最中に毎日更新していた時期もあり、これも時間があるとか無いとかは関係なさそうだ。
ジャズとゴルフを話題にしている限りネタ切れになることはなさそうなので、此のくらいのペースであれば来年も続けられそうだ。

ペッパーアダムスのアルバム紹介もリーダーアルバムは終え、サイドメンとして参加したアルバムも9割方終わったので来年中には終わりそうだ。何でも一区切りつくというのは嬉しいものだ。一方のコンコルドは250枚を超えたが、このペースではいつ終わることやら?来年は50枚(週一回ペース)を目標にしてみよう。

何をやるにしても長く続けるにはテーマを決めるのがいいと良く言われている。何か次なるテーマも考えておかねばとも思うが、手持ちのアルバムだとやはり好きなプレーヤーになってしまうかも?
最近はアルバムを聴くよりついついライブに出掛けてしまうので、新しいアルバムを買うのは実はライブがきっかけというのが一番多い。本当は海外の新しいミュージシャン、特に不案内なヨーロッパ系をかじってみたいとも思うが、やはり長年聴かずに積んだままの棚卸をやろうと決めたので、新しい物にはなかなか手が出ない。

という訳で、ライブで聴いたのがきっかけで比較的最近手に入れたアルバムから一枚。

先日、大森明のライブツアーのために、リズムセクションがアメリカから来日した。
そのピアノがこのアルバムのホッドオブライエンであった。同じメンバー(ベースは急遽変わったが)で今年発売したアルバム「マンハッタン組曲」の発売記念を兼ねたツアーであった。そのピアノがホッドオブライエン、確か今年で80歳の大長老。ジャケットの写真は実に若々しいが、少し腰を曲げてステージを歩く姿は、歳を感じさせたが、プレーぶりは衰えをみせず。バップスタイルのピアノの真骨頂を聴かせてくれた。

このアルバムは、そのオブライエンの2年前の録音だが、もう一つの目玉はベースのダリルジョンズを紹介するアルバムである。まだ10代の脅威の新人だが、実は16歳の時全米ハイスクール選抜のビッグバンドに参加して来日している。2年続けて来日したが、彼のベースはもちろん全員が10代のビッグバンドの迫力にびっくりしたものだ。そのジョンズがオブライエンと組んで初レコーディングということで入手したアルバムだ。



ドラムはジョンズの父親が務めており、まさに3世代共演のトリオの演奏。オブライエンのピアノは相変わらずバップスタイルの枯れたピアノだが、このピアノにジョンズの図太いベースが良く似合う。ピアノトリオということもあり、時にはベースがメロディーラインをとることもあり、ジョンズのベースのすべてが浮き彫りとなっているが、聴いただけではまだ10代とは思えない演奏だ。曲も、スタンダード中心でバップスタイルにはピッタリ。「お爺ちゃんからバップの伝統」をしっかり引き継いだベーシストに育ちそうだ。



1. Save Your Love For Me
2. Yours Is My Heart Alone
3. Tricotism
4. I Hear A Rhapsody
5. A Slow Hot Wind
6. How Deep In The Ocean
7. The Squirrel
8. All Of Me
9. All Too Soon
10. Oblivion

Hod O’Brien (p)
Daryl Johns (b)
Steve Johns (ds)

Produced by Hod O’Brien
Recorded at Sonic Park Recording Studio in Paramus, N.J. on Dec.19, 2013

ラプソディー
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Spice of Life
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元亭主との共演を、15年ぶりに突然ロンドンで行う事に・・・

2015-12-15 | MY FAVORITE ALBUM
November Girl / Carmen McRae & Kenny Clarke・Francy Boland Big Band

40年代の初めモダンジャズの発祥の地で有名なミントンズプレイハウスには、パーカー、モンク、クリスチャン、ケニークラークなど、後のジャズの巨人達が集っていた。カーメンマクレーも最初はそこでピアノを弾く一人であったが、そこのハウスドラマーであったケニークラークと恋仲になり1946年結婚した。旦那の方は人気絶頂のドラマー、一方のマクレーの方はピアニストとしては芽が出なかった、歌手としてもまだ駆け出しであった。

そんな夫婦であったが、ケニークラークが1949年に浮気に走る。相手は何とイギリス出身の、後にランバードヘンドリックス&ロスで有名なアニーロス。2人の間には子供までできるが、結局は破局に。

マクレーはじっと我慢の夫婦生活を続け、その間歌手としての実力をつけベツレヘムでリーダーアルバム”East to Love”を出すまでに成長した。続くアルバム”By Special Request”では夫君ケニークラークをバックに従え、2人の仲も元の鞘に戻ったかと思われたが、翌年の1956年には正式に離婚する。

以後2人の間は友人関係が続いた様だが、仲良く一緒に演奏することは無かったようだ。というのも、マクレーが歌手として益々存在感を高めていった一方で、クラークの方は離婚後すぐにフランスに活動拠点を移していた。

マクレーもヨーロッパに行くことは多かったが、1970年11月にもロンドンを訪れていた。ちょうどその時、ケニークラーク・フランシーボラーンのビッグバンド(CBBB)も地元の有名なクラブ「ロニースコットクラブ」に出演していた。CBBBの実質的なディレクター&スポンサーといえば、まさにこのCBBBを誕生させたGigi Campiだが、このロンドン公演も彼が段取りをしていた。そして、彼がまた活躍をする。

マクレーがイギリスに居るのを知ると、カンピは早速カーメンマクレーとCBBBの共演を思いついた。マクレーとクラークにとっては、バイスペシャルリクエストから15年ぶりの共演アルバムとなる。

とはいってもCBBBはビッグバンド、共演のためには譜面が要る。マクレーもその頃のレコーディングはアトランティックで大編成をバックにしたものが多かったが、これはいわゆるビッグバンド編成ではなく、その譜面を持っている訳でもなかった。共演といってもジャムセッションとは違ってゼロからのスタートとなった。

早速フランシーボラーンがアレンジを行う事になった。普通であれば「無難に歌い慣れている何かスタンダード曲でも」と思うが、ここではメンバー達が書いたオリジナルが中心となった。 特に、ベースのジミーウッズが大活躍。サドジョーンズがモニカゼタールンドのために書いたアレンジはバスの中で書いたと言われているが、そこまで突貫工事ではないにしても、連日クラブ出演をしている中でのアレンジの用意となった。マクレーにしても全くの新曲、歌詞を覚える所からの準備が必要だ。結局、リハーサルの時間もたいしてとれない中でのレコーディングとなった。

ボラーンのアレンジは歌伴だからといって手抜きは無い。いつもの重厚なアンサンブルに、名手揃いのメンバー達のソロも適度にまぶされている。もちろんマクレーも、この迫力に負けない歌いっぷりだ。一点、エイトビートがある訳でもなくいつものCBBBのサウンドなのに、ボラーンのピアノが全編エレキピアノであるのが気になるが。

マクレーは、東京では、思いもしない弾き語りのライブアルバムを作ることになったが、ロンドンではこれも思いがけずに昔の旦那との共演に加え、新曲をビッグバンドの伴奏でという難問に、リハもそこそこでレコーディングとなった。
難解なビッグバンドの譜面を初見でこなしているプロの姿を見ていつも感心しているが、どのような状況でもアルバムまで作り上げてしまうマクレーのプロ根性には恐れ入る。
また、このようなマッチメイクをするプロデューサーの眼力と熱意も凄いものだと思う。

1. November Girl
2. Just Give Me Time
3. 'Tis Autumn
4. A handful Of Soul
5. Dear Death
6. I Don't Want Nothin' From Nobody
7. You're Getting To Be A Habit With Me
8. My Kinda World

Carmen McRae (vo)
Kenny Clarke-Francy Boland Big Band
Benny Bailey, Dusko Gojkovic, Idris Suleiman, Art Farmer (tp)
Ake Persson, Nat Peck, Eric van Lier (tb)
Derek Humble, Billy Mitchell, Ronnie Scott, Tony Coe, Sahib Shihab (reeds),
Francy Boland (p,key)
Jimmy Woode (b)
Kenny Clare, Kenny Clarke (ds)
Dizzy Gillespie (snare d)

Produced by Gigi Campi
Recorded in London November 3, 1970



November Girl
クリエーター情報なし
Rearward
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たまにはベイシーを忘れて、ハードバップで・・・・

2015-12-12 | MY FAVORITE ALBUM
Straight on Till Morning / Butch Miles

ベイシーオーケストラに在籍したメンバー達が自分のアルバムを作ることになると、どうしても日頃身に付いたベイシーサウンドが気になる。聴く方のファンもそれを期待してしまうことが多い。
一方で、ベイシーサウンドを知り尽くしたメンバーが、ベイシースタイルの演奏をするバンドに加わると、バンド全体のスイング感が変る。何かベイシーのスイング感には独特なDNAのようなものがあるのかもしれない。

今回もベイシーオーケストラの一員として参加しているアルトのマーシャルマクドナルドがバイソン片山のビッグバンドに、デニスマッケルがベイシーサウンドオーケストラに加わったライブがあったが、いずれもDNAを持ったゲスト効果が表れていたように思う。

70年代から80年代にかけてのベイシーオーケストラで活躍したドラムのブッチマイルス。一昨年のベイシーオーケストラの来日時ゲスト参加していた。久々の古巣でのプレーであったがツボを押さえたドラミングは流石であった。

今回のベイシーオーケストラのメンバーの中ではテナーのダグローレンスが目立ったので彼のアルバムでも聴きたいと思ったが、リーダーアルバムは残念ながら手持ちがない。(というより知らないという方が正しい。今度探してみようと思うが)。何か手持ちのアルバムで参加したものがないかと探したら、ブッチマイルスがリーダーを務めたこのアルバムがあった。

ライナーノーツもあまりじっくり読んだ記憶が無かったが、今回読み返してみるとこのセッションはなかなか面白いプロジェクトだったようだ。

ブッチマイルスは、ベイシーオーケストラ時代はスインギーでダイナミックなドラミングを聴かせてくれた。このプロジェクトでは敢えて慣れ親しんだベイシーサウンドから離れた演奏にチャレンジしようと思い立ってそうだ。
とはいっても、もちろんベイシーオーケシトラを離れてもドラミングの基本は変わらない。モーダルな演奏やフリーをやろうと訳ではないので、バップオリエンテッドであり、時にはラテンの味付けをしたストレードアヘッドなスイングジャズという事になる。

もちろん自分一人ではできないので、友人達に声を掛けると皆主旨に賛同してくれてこのアルバムが生まれた。その中にテナーのダグローレンスが加わっていたということになる。メンバーはローレンス以外にも一緒にベイシーで一緒だった仲間が多い。フロントは彼のテナーにトランペットとトロンボーンを加えた3管編成。特にトランペットのボブオヘーダは作編曲も協力してくれた。曲によってはベイシーオーケストラの重鎮であったフランクウェスがテナーと、フルートで参加している。ローレンスと2人のテナーバトルも楽しめるという編成だ。

曲はスタンダードもあるが、オリジナル曲も加えてオリジナリティーを出している。
ベイシーナンバーからは唯一キュート。この曲はベイシーでもドラムのブラッシングをフィーチャーしているが、ここでもマイルス自身のアレンジでベースをフィーチャーする試みとなった。

一曲目のHangover Blues。同名の曲が野口久和ビッグバンドのレパートリーにもあるが、こちらはオヘーダの曲。二日酔いのブルースといった雰囲気はどちらも同じだ。続く曲も狙いどおりどの曲もハードパップオリエンテッドな演奏だ。マイルスのドラムも多少モダンな感じはするが、確実にビートを刻む切れの良いドラミングは変らない。
7曲目のA flower in a lovesome thingで雰囲気が変る。ピアノのケニードリューJr.のトリオの演奏だが、このドリューのピアノの参加がグループ全体の雰囲気を新しい感じにしているかもしれない。

以前聴いた時は、ブッチマイルスも最近は少し新しいスタイルになった位に思っていたが、意図的に演奏したハードバップスタイルも悪くはない。

1. Hangover Blues                Ojeda 3:45
2. Another Drum Thing              Ojeda 4:56
3. Frank's Blues                 Ojeda 4:23
4. Cute                     Hefti 3:52
5. Dreamsville              Henry Mancini 7:18
6. When You Wish Upon a Star        Leigh Harline 6:45
7. A Flower Is a Lonesome Thing       B.Strayhorn 8:15
8. Quick Fix                   Ojeda 3:21
9. After Hours                  Ojeda 5:52
10. Outside Inn                  Ojeda 5:58
11. I'm Leavin'                   Miles 4:11

Doug Lawrence (ts)
Bob Ojeda (tp,arr)
Frank Wess (ts,fl)
Alex Saudargas (g)
Kenny Drew, Jr. (p,arr)
Lynn Seaton (b)
Butch Miles (ds)

Produced by Frank Nagel.Heyer & Butch Miles
Recorded at Pedernales Studio, Texas on January 3 & 4, 2003


Straight on Till Morning
クリエーター情報なし
Nagel-Heyer Germany
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能ある鷹は爪を隠すというが、爪音を立ててピアノを弾くのは・・・

2015-12-08 | MY FAVORITE ALBUM
As Time Goes By / Carmen McRae Alone Live At The DUG

ピアニストというのは指先の手入れには神経を使うと思う。ちょっとした指先の怪我でもプレーに支障を来すのに、爪を伸ばしてピアノを弾くことは普通ではありえないことだと思うが・・・。

女性ジャズボーカルの三大大御所というと、エラ、サラ、そしてカーメンマクレーであろう。それぞれ個性溢れる実力者だ。アップテンポのスキャットも良いが、じっくり歌い込むバラードもいい。それぞれ名盤、名唱といわれるアルバムは数多いが、いずれも代表作にライブ物が多い様な気がする。
自分の持っているアルバムの数からいうと、その中ではカーメンマクレーが好きという事になる。ジャズを聴き始めて比較的早くにマクレーファンとなった。シュガーヒルでのライブ録音の、I left my heart in San Franciscoが最初のお気に入りだった

1973年の秋にそのマクレーが来日した。Great American Songbookのアルバムを出した直後の来日であった。この年は、学生生活最後の年となる節目の年なのでよく覚えている。オイルショック、日航機ハイジャック事件など大きな出来事が続いた。

来日するミュージシャンは多かったが当時は貧乏学生、どのコンサートに行くかも迷いに迷って決めていた記憶がある。この時のマクレーの来日はカウントベイシーオーケストラとのジョイント、両方が聴けると何か得する気分で決めたように思う。

この時のベイシーオーケストラは名の通ったメンバーは少なかった。そしてマクレーのステージになるとピアノは若いピアニストに代わった。ベイシーオーケストラとの競演というよりは、ビッグバンドアレンジのバックにベイシーのメンバーを借りた感じであった。であれば何もベイシーオーケストラでなくても良かったのでは?マクレーはやはりピアノトリオがいいかな?と、何か損をした気分になった記憶がある。

当時は来日したミュ―ジシャンのレコーディングが良く行われた。その年来日したサラボーンはステージそのもののライブアルバムが作られた。このマクレーにもレコーディングの話が持ち上がった。ベイシーと共演したステージは、素人耳にも今一つであったのでこれがアルバムになることは無かった。別途マクレーのアルバムということになったが、一緒に来日したピアニスト(誰だったか名前も忘れたが)を起用はNGとなった。

そこでプロデューサーが思いついたのはマクレーの弾き語りであった。

カーメンマクレーの音楽生活は、そもそもピアニストとしてのスタートであった。ドラムのケニークラークと別れて歌手として独り立ちしたが、最初の頃の仕事はメインステージのインターミッションのピアノと歌の弾き語りであったという。
ところが、本格的に歌手としてレコードを出すようになってからは、ピアノを弾く事も無く、まして弾き語りのアルバムなどはそれまで作った事がなかった。

そんな彼女に弾き語りのアルバムを要求したプロデューサーも度胸があると思うが、最初のマクレーの答えは「弾き語りで歌える曲は2、3曲しかないので無理」というというものであった。「そこを何とか」と再度プッシュして実現に漕ぎつけた粘り強さには恐れ入る。

短い日本の滞在期間の中での録音、たいして練習する時間も無かったと思う。東京での公演を終え、翌日から地方の巡業に出掛けけるという日に録音が行われた。場所は新宿のDUGでのライブレコーディンだった。この日は東京公演の最終日、渋谷公会堂でステージを終えると、その足で新宿に向かった。

ピアノに向かい、自らのピアノのイントロに続き、ため息とも気合ともいえる「あー」という一声で曲が始まる。タイトル曲のタイムゴーズバイだ。後は、完全に彼女のペース。お馴染みのスタンダード曲が続く。時にはアップテンポで歌われる曲も、今回はすべてがバラードプレーだ。バラードといってもマクレーの歌声は腹の底から絞り出すような力強い歌い方で甘ったるさはない。マクレー節ともいえる得意なテンポだ。ピアノがイントロ、バック、そしてソロと絶妙に歌に絡みつく。ナットキングコールのような饒舌さは無いが、ツボを押さえたピアノは彼女の歌を支え、弾き語りの真骨頂を聴かせてくれる。

そして、最後の曲プリーズビーカインドを終えると、聴衆からの拍手にサンキューと一言応えるが、いつにない緊張感から解放され、肩の荷が下りた安堵感が伝わってくる。本来であればリラックスした気分で気軽に歌える弾き語りだが、今回ばかりはマクレーといえども普段やったことのない弾き語りの一発勝負のレコーディングと言う緊張感の中での演奏だったと思う。

ジャズのライブレコーディングの魅力は、JATPのような演奏の大きな会場での熱気が伝わってくるのも一つだが、ビルエバンスのビレッジバンガードでのライブのように、プレーヤーの息遣いに加えて、小さな会場で食器が触れ合う音やおしゃべりが聞こえてくるような臨場感もたまらない。

その意味では、このアルバムの臨場感も格別だ。会場のノイズに加え、マクレーの息遣い、そしてマクレーのピアノプレーでは爪が鍵盤に当たる音も聞こえてくる。急にピアノを弾くことになったからといって、爪を短く切る事はしなかったようだ。



1. As Time Goes By                  Herman Hupfeld  5:41
2. I Could Have Told You So                  J.Oliver  4:19
3. More Than You Know   Edward Eliscu / Billy Rose / Vincent Youmans  5:27
4. I Can't Escape from You             Leo Roirc R.A.Whiting 3:50
5. Try a Little Tenderness  Jimmy Campbell / Reginald Connelly / Harry Woods  4:13
6. The Last Time for Love                  Carmen McRae  6:15
7. Supper Time                        Irving Berlin 3:31
8. Do You Know Why?           Johnny Burke / James Van Heusen 4:55
9. But Not for Me               George Gershwin / Ira Gershwin 6:04
10. Please Be Kind                 Sammy Cahn / Saul Chaplin 6:27

Carmen McRae (p,vol)
Produced by Tetsuya Shimoda
Engineer : Tamaki Bekku
Recorded live at The Jazz Club DUG, Tokyo, November 21, 1973

アズ・タイム・ゴーズ・バイ
クリエーター情報なし
ビクターエンタテインメント
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スタンダード曲をどう料理するかを聴き較べるのもジャズの楽しみ

2015-12-07 | MY FAVORITE ALBUM
Standards / Bireli Lagrene

地方に行く機会があると、地の美味しいものに食指が動く。最近ではB級グルメが流行っているせいか、「何でこれがこの地の名物?」といえるようなものもあるが、やはり昔ながらの地元の特産品、そして地元の味付けの料理は格別だ。都会住まいでは目にすることのない地魚、地野菜を使った料理は珍しさも手伝って食が進む。

ジャズの世界でもその発展の中ではご当地ジャズが盛んであった。ニューオリンズから始まり、シカゴ、デトロイト、カンサスシティー、シンシナティ・・・,そして西海岸へ、地域色豊かな味付けのジャズが生まれた。さらにアメリカ大陸から世界中に広まっていく中では、世界各地の音楽と融合した独特なスタイルを生み出していった。

その中に「マヌーシュジャズ」といわれるスタイルがある。いわゆるジプシー音楽とスイングジャズのハイブリット種であり、それを生み出したジャンゴラインハルトのスタイルともいえる。当然中心となるギターの演奏スタイルも多くのギタリストに影響を与えたが、前回紹介したアルバムのチャーリーバードもその一人ということになる

ジャンゴラインハルトの影響を受けたギタリストは多いが、自らジプシーの家系に生まれ、8歳ですでにラインハルトの演奏をカバーしていたというのが、ビレリーラグレーンである。ジャンゴラインハルト直系の後継者の一人であろう。

ジャンゴラインハルトが亡くなったのは1953年、まさにモダンジャズへの変革の時であった。ラインハルトの音楽は彼が生きた時代のジャズであるスイングジャズが基本、彼がモダンジャズの時代まで生きていたらどんな演奏をしたか興味が湧くが・・・。

一方、ラグレーンが生まれたのは1966年。彼が育った80年代のジャズはフュージョン全盛期であった。18歳の時にラリーコリエルと出会う。そしてジャコパストリアスと一緒に演奏することにより、ラグレーンはジャズ&フュージョンに大きく関わった。新しいジャズに積極的に取り組んだラグレーンだが2000年代に入ると、その経験を踏まえて再びジプシー音楽を軸足にした演奏に回帰した。

そのラグレーンが発展途上であった1992年にそのタイトルどおり、スタンダード曲をばかりを演奏したアルバムを作った。
何の予備知識もなく、どんなスタイルの演奏をするか分からないミュージシャンのアルバムを買う時、「スタンダード曲」を中心としたアルバムがあると思わず手にしてしまう事が多い。このアルバムもそんな感じで入手した一枚だ。

ここでは「朝日のごとく爽やかに」、「ボディーアンドソウル」といった歌物だけでなく、「ドナリー」や「オーニソロジー」といったパーカーナンバーのジャズスタンダードや、フランスのポピュラー曲「セッシボン」、「枯葉」や「酒とバラの日々」まで、まさにスタンダード曲が満載だ。そして最後にはジャンゴラインハルトの曲を一曲。
基本は元のメロディーラインを踏襲した演奏が多いが、原曲がイメージできないフリーな演奏の枯葉まで、それぞれの曲の解釈やスタイルも変化に富んで面白い。

メンバーは、ベースはペデルセン。ドラムがフランスのドラムの重鎮アンドレチャカレリのトリオ。スタンダード曲に加え、このメンバーにも興味が湧いたアルバムだ。
このような聴き慣れたスタンダード曲のアルバムを聴き較べるのもジャズの楽しみの一つだ。



1. C'Est Si Bon                 Henri Betti / André Hornez 6:43
2. Softly, As in a Morning Sunrise Oscar Hammerstein II / Sigmund Romberg 5:37
3. Days of Wine and Roses          Henry Mancini / Johnny Mercer 5:20
4. Stella by Starlight             Ned Washington / Victor Young 6:00
5. Smile           Charlie Chaplin / Geoffrey Parsons / John Turner 5:56
6. Autumn Leaves       Joseph Kosma / Johnny Mercer / Jacques Prévert 4:57
7. Teach Me Tonight                Sammy Cahn / Gene DePaul6:03
8. Donna Lee                         Charlie Parker 5:02
9. Body and Soul  Frank Eyton / Johnny Green / Edward Heyman / Robert Sour 7:24
10. Ornithology                 Benny Harris / Charlie Parker 4:25
11. How Insensitive (Insensatez)   N. Gimbel / A. Carlos Jobim / V. de Moraes 7:10
12. Nuages                        Django Reinhardt 4:27

Biréli Lagrène (g)
Niels-Henning Ørsted Pedersen (b)
André Ceccarelli (ds)

Produced by Christian Pégand
Engineer : Malcolm Pollack
Recorded at Studio Davout, Paris, France, June 1992

Standards
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EMI Europe Generic
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