A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

本当のデビュー作・・・後から発掘されることがよくあるが?

2007-11-20 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
Opening Night / Thad Jones & Mel Lewis big Band

タレントがメジャーデビューする以前に、隠れデビューしていることがある。場合によっては芸名も違って。デビュー後、徐々に有名になると、過去の経歴や埋もれたままの幻のデビュー作が陽の目を見ることに。

マンハッタントランスファーも、アトランティックレーベルでのデビュー作の前に、前身のグループでのアルバムがある。ランバートヘンドリック&ロスしかり
サドジョーンズ&メルルイスのオーケストラのデビュー作は、ソニーレスターが設立した当時の新興レーベルであるソリッドステートレーベルの「PRESENTING」といわれていた。

ところが、本当のファーストアルバムが、2002年になってから発売された。
“Presenting”に先立つ2ヶ月前、1966年の2月7日、サドメルのオーケストラが、本拠地のVillage Vanguardに出演した時のライブ。これぞ本当の初演であり、初アルバムだ。

評論家のアラングラントは、ニューヨークのFM局WABC FMで、”Portraits in Jazz”という番組を持っていた。ジャズクラブからのライブ演奏を売りにしていたそうだ。

サドジョーンズとメルルイスがペッパーアダムスを加えたクインテットでHalf Noteに出演していた時、アランがたまたまこの演奏を聴きに訪れた。そこで、メルルイスから、「実は18人編成のオーケストラのリハーサルをA&Rスタジオでやっている」という話を聞く。
さっそくリハーサルを聞きに出掛けたアランは、ニューヨーク在住の有名ミュージシャンを集めたそのオーケストラの演奏を聴いて、その素晴らしさにただ驚くばかりであった。
その演奏を皆に聴かせようと、ヴィレッジバンガードのオーナー、マックスゴードンに相談を持ちかける。とんとん拍子に話が進み、初出演の日が2月7日と決まった。
手作りのチラシを作ってコンサートの案内をしたものの、お客の入りはあまり期待していなかったとか。
ところが、いざ蓋を開けてみれば階段までお客で一杯。店外の行列は隣のブロックまで続くという大成功。こうしてサドメルの初演が拍手喝采の元に無事終了。
その後Monday Nightのレギュラー出演に続いていったそうだ。

この演奏の模様をFM放送用に収録したテープが残っていて、陽の目をみたのがこのアルバム。サドメルファンにとっては、「こんな演奏があったのだ」と改めて歓喜した一枚だ。
グラントはビッグバンド好きなのか、同じ頃誕生したDuke Pearsonのビッグバンドのアルバムにもその誕生を祝うライナーノーツを書いている。ニューヨークでこの頃新たなビッグバンドが生まれたのには、裏方として彼も一役買っていたのかもしれない。

演奏には、サドメルの初期のお馴染みのレパートリーが並ぶ。ジョーンズのこの頃の作品には、ベイシーのオーケストラ用に作編曲してお蔵入りしていたものが多くある。後期の作品に較べると、ベイシー風な曲想が多いのもそのせいだろう。
”ONCE AROUND”や”MEAN WHAT YOU SAY”など素晴らしい演奏が続く。ベイシーはリハーサルさえしなかった曲もあったらしいが、ベイシーが演奏していたらはたしてどんな演奏になったのだろうか?興味津々だ。

小さなクラブでのライブ。
これが初演とは思えないほどこなれた演奏だ。リハーサルにたっぷり時間をかけたのだろう。
聴衆のざわめきやメンバーの合いの手や掛け声が生々しく収められている。サドメル独特のアンサンブルにワークに加え、この雰囲気に後押しされるようにソロも自由にブローしている。まさにサドメルの原点ここにありといったプレーぶり。 若き日のエディーダニエルスも熱演している。
このようなアルバムが、月日が経ってから発掘されるのは嬉しいものだ。

ちなみに、ジャケットの写真に写っているチラシは、アラングラントがその時の物をとってあったもの。入場料が2ドル50㌣とは。この演奏がこの金額で聴ければ毎日でも通います。

1. Introduction
2. Big Dipper
3. Polka Dots Moonbeams
4. Once Around
5. All My Yesterdays
6. Morning Reverend
7. Low Down
8. Lover Man
9. Mean What You Say
10. Don’t Ever Leave Me
11. Willow Weep For Me
12. The Little Pixie


Thad Jones, (Cor,Flh, Co-Leader ,Arranger)
Snooky Young, Bill Berry, Jimmy Nottingham, Jimmy Owens(tp)
Bob Brookmeyer (Valve-tb ,Arranger)
Garnett Brown, Jack Rains. Cliff Heather (tb)
Jerome Richardson, Jerry Dodgion (as,ss,cl,fl)
Joe Farrell, Eddie Daniels (ts,ss,cl,fl)
Pepper Adams (bs,cl)
Marv Holiaday (bs,cl)
Richard Davis (b)
Sam Herman (g)
Hank Jones (p)

Mel Lewis (ds, Co-Leader)

Alan Grant MC, Producer, Liner Notes

Recorded live at the Village Vanguard , New York , Monday 7,February 1966

Opening Night
Thad Jones,Mel Lewis
Alan Grant Prod.

このアルバムの詳細を見る

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