A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

昔お世話になった先輩の50周年のお祝いとなると、駆けつけなければならないのが世の常だが・・・

2015-01-06 | PEPPER ADAMS
Lionel Hampton 50 th Anniversary Concert live From Carnegie Hall

昔からジャズの本場アメリカといえども、レギュラーグループを組んでレコーディングができ、クラブ出演やツアーができるグループというのはほんの一握りしかなかった。ペッパーアダムスも、そのような生活を過ごしたのはドナルドバードとのクインテットを組んだ時だけ。アルバムこそブルーノートから何枚か続けて出たが、2人のクインテットでのツアーはせいぜい一回、クラブ出演というのも数える程というのが現実であった。

ソリストとして独立したペッパーアダムスが、何とか納得のいくアルバム”Reflectory”を作り、続編ともいえる”The Master”を1年半後に制作する間、このグループで活動ができたかというと、ざっと記録を見た限りでは形跡はない。所詮レコーディングでしか聴く事の出来なかったグループであり、演奏という事になる。残念ながらレギュラーグループの結成というまでには至らなかったのが現実である。

この間、活動の場所はアメリカよりもヨーロッパが多いが、その中でひとつ断り切れないともいえる仕事があった。それがライオネルハンプトンオーケストラでの演奏だった。ソリストとしての独立のためサドメルを辞めたが、結局ハンプトンオーケストラに加わっての演奏が多かったというのも皮肉である。

Reflectoryの録音が6月14日。その後何本かのレコーディングセッションに参加するが、6月28日からはライオネルハンプトンオーケストラのリハーサルが始まった。3日間かけてじっくり行われたが、今回はニューポートジャズフェスティバルに向けてのオーケストラの再編であった。
ハンプトンはニューポートには此の頃何年か続けて参加していたが、この年1978年のニューポートはハンプトンのミュージシャン生活50周年を祝う特別プログラムが用意された。ニューヨーク市も7月1日をハンプトンデイとし、巨人の功績と70歳になっても現役で活躍している健在ぶりを称えたという。さらにその後、ヨーロッパツアーも予定されており、ハンプトンとしてもいつもより力の入ったリハーサルとなった。

集まったメンバーもアーネットコブやチャビージャクソン、ドックチーサムなど往年のメンバーも加わって1940年代のハンプトンオーケストラの再現を試みた。
ペッパーアダムスはドナルドバードとコンビを解消した直後、ハンプトンのオーケストラに加わって全米をツアーしていた時期がありハンプトンとの関係は深く、長老に交じってこのオールスターメンバーに加わった。

この7月1日のニューポートの舞台はカーネギーホールに設けられた。この年のニューポートはビッグバンドだけで9つのバンドが参加したが、これらのバンドの会場は、この年初めて開催されたサラトガでの会場であったので、他のバンドとは全く別扱いであった。

このコンサートの模様が録音され残されている。以前紹介したLionel Hampton All Stars Band at Newport ‘78も同じソースだが、こちらのCDにはLP未収録曲を含めてほぼ全貌が収められている。

このステージでは、オーケストラだけでなく、ピアノのテディウィルソンを招いて、ボブウィルバーのクラリネットを加えてハンプトンがいたベニーグッドマンのコンボの再現も行われた。このウィルソンとの共演もこのコンサートでのハイライトの一つであった。
前のアルバムでは未収録であったが、このCDではアバロンなどでこの小編成の演奏もたっぷりと楽しむことができる。

このオーケストラに参加したベースのチャビージャクソンが後に語る所によると、入念にリハーサルを行い、ステージでのセットリストも決めてステージに上がるが、ハンプトンは興がのると勝手に違う曲を始めてしまうそうだ。ハンプトンのライブ物では題名の無いブルースがよくあるが、それもそのひとつだろう。
バックの面々はこれを聴き分けてフォローするのが大変だが、それがプロの仕事、特にベースは両手がふさがっているので余計に・・・と。

確かに、メンバーは大変だが、考えようによってはジャズにおける臨機応変の楽しさ、それだけ楽しいステージに盛り上げることができるというのと裏腹の様に思う。
このようなお祝いを兼ねた記念コンサートのような時には失敗ができないだけに、このようなアドリブでのステージ進行はやりたくともできないのが普通であるが、それをやってしまうのがハンプトンの素晴らしさであり、メンバーのチームワークだろう。

余談だが、翌日サラトガで行われた9つのビッグバンドが次々に登場するステージに、ハウスバンドとしてディックハイマンが音楽監督を務めたニューヨーク・ジャズレパートリー・カンパニー・オーケストラなるバンドも登場した。オープニングを務め、バンドチェンジの間のいわゆる幕間繋ぎの演奏をするためであったが、何とディックハイマンが当日の譜面を自宅に忘れたという。会場のサラトガからは取りに帰れる距離ではないので、オープニングは、即興でピアノのイントロからアンサンブルを作っていったそうだ。先日三木敏悟がインナーギャラクシーで見せてくれた技だ。

残りの曲は、他のバンドの演奏中に新たに譜面を次々と書き起こして何とか乗り切ったそうだ。実は、このビッグバンドの主要メンバーはハンプトンオーケストラに参加していたメンバー達、ペッパーアダムスもその一人であった。この状況に較べれば曲順の変更などはプロにとっては驚くには当たらないという事になる。

アダムスは、このオーケストラではフライングホームでソロパートがあるが、他はひたすら盛り立て役、ソリストとしての出番はない。このカーネギーホールでのコンサートだけでなく、その後のヨーロッパツアーにも同行するので、2カ月のヨーロッパツアーからニューヨークに戻るのは8月末になる。

1. On The Sunny Side Of The Street
2. Hamp's The Champ
3. Slow Blues
4. Stompin' at The Savoy
5. Flyin' Home
6. Hamp's Boogie Woogie
7. Tea For Two
8. I'm Confessin'
9. Nearness Of You
10. Misty
11. Avalon
12. More Than You Know
13. Runnin' wild

Lionel Hampton (vib,p,con)
Cat Anderson, Doc Cheatham, Jimmie Maxwell, Joe Newman (tp,flh)
John Gordon, Benny Powell, Eddie Bert, (tb)
Charles McPherson, Earle Warren (as)
Arnett Cobb , Paul Moen(ts)
Pepper Adams (bs)
Bob Wilber (cl)
Ray Bryant (p)
Billy Mackel (g)
Chubby Jackson (b)
Panama Francis (ds)
Teddy Willson (p)
Producer Teo Macero

Recorded July 1, 1978, Newport Jazz Festival at Carnegie Hall, New York

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