『一心斎不覚の筆禍』は佐藤雅美の「物書同心居眠り紋蔵」シリーズの第9作である。居眠り紋蔵のシリーズはなかなか面白く、第1作から読んできた。この本には、「女心と妙の決心」、「江戸相撲八百長崩れ殺し一件」、「御奉行手柄の鼻息」、「文吉の初恋」、「天網恢恢疎にして漏らさず」、「一心斎不覚の筆禍」、「糞尿ばらまき一件始末」、「十四の娘を救ったお化け」の7つの表題の作品が入っており、それぞれ一話完結しながら連続していく組み立ててである。
今回の作品では、不動岩が死に直面し不動岩の倅と兄弟分の杯を交わした文吉を、紋蔵のもとに引き取ってくれと言う話が来る。文吉はもとより勘太も引き取って紋蔵は近くの手習い所に行かせるが、色々ともめごとが起こり、その手習い所をやめて、今は女ばかり教えている塾に文吉たちは通うことになる。文吉は養子として紋蔵の後をついで同心になる決心を固める。例繰り方という物書き同心の藤木紋蔵は、いつも居眠りをする病気をもっているが、例繰り方に長くつとめ、そのため知識は豊富なのと、独特の知恵を働かせて事件を解決するのである意味期待もされているという変わった同心だ。捕物帳というとだいたい岡っ引きか、回り同心などが主役なのだが、この話ではまったく違う。先日読んだ『源之助人助け帖』も「姓名係」という役職に左遷され、その余暇に事件を解決する話で、何となく共通しているなと思った。
「居眠り紋蔵」シリーズは、作者が続ける限り読まないとならない。