大木昌の雑記帳

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STAP細胞騒動(2)-第二幕の行くへは?-

2014-04-20 06:36:14 | 健康・医療
STAP細胞騒動(2)-第二幕の行くへは?-

4月16日,小保方氏の上司である理研の発生・再生科学総合研究センター副センター長の笹井芳樹氏は,3時間半に及ぶ会見を行いました。
今回の会見は,民法テレビ局では,日本テレビが一部を放送しただけで,他局はライブで放送しませんでした。

小保方氏の会見の際には既存の番組をつぶしてまで,各社が会見を実況で伝えたのとは対照的です。私は,USTREAMで最初から最後まで見て
いましたが,今回の会見で分かったこと,分からなかったことがさらにはっきりしました。

まず,分かったことは,小保方氏が写真の取り違いについて気づき笹井氏に報告したのは2月18日であり,それ以前笹井氏はこの事実を
知らなかったことです。

この点は,小保方氏の主張が正しいかもしれません。ただし,同月13日に調査委員会が発足して調査を始める際に,写真の取り違いに関
する他からの指摘があったかどうかは分かりません。

もう一つ,はっきりした重要な事実がありました。会見の出席者が「第三者は作製に成功したのか」と質問したのに対して笹井氏は:
  「理研内で発表前に少なくとも一人,発表後に一人,多機能性を示す目印が発現するところまでは確認した。次の段階のキメラマウス
まで一貫してやらないと統一的な解析にならない。 そこまで行ったものは知らない」
と答えています。つまり,現段階では,多機能性を示す目印が確認できた,という段階だということです。

ところで,STAP現象とSTAP細胞という言葉の意味が同じなのか違うことなのかという言葉の混乱も,今回の事態の理解を混乱させている一つの
要因になっています。

笹井氏は「体細胞筋肉やリンパ球などから逆戻りして,刺激によって多機能性細胞ができることをSTAP現象と呼ぶ」と明瞭に定義した上で,
「STAP現象」と「STAP細胞」とは同じ意味だ,とも言っています。ただ,今のところ,これを確認するのは,たんぱく質に仕組んだ目印の確認
にとどまっています。

なお,現在まで本当の意味でのSTAPP細胞の作製に成功した事例は一つもありませんが,それには難しい問題があるといいます。

笹井氏によれば,体細胞(皮膚とか筋肉とか,すでに分化を終えた細胞)が多機能性を示すまでの7日間に4ステップの段階がある。

このステップのどこで止まってもSTAP細胞はできない。

「何がステップを促進し,また阻害するのか,まだ分かっていない」とも答えています。(注1)どうやら,STAP現象は,ある段階で進行が止
まってしまっているようです。

つまり,まだ,4段階に変化することの因果関係も解明されていないし,第三者が再現実験できるための手順書も完成していないという状況です。

このように考えると,小保方氏が「200回以上成功している」ことの内容が,4段階のどこまでなのかが問題となります。

極端に言えば,緑色の蛍光が確認できるという第一段階のSTAP現象が発現していれば,それは「STAP細胞」が存在すると言えるというのが小保方
氏と笹井氏の立場です。

言い換えると,「STAP細胞が存在します」という時,何をもって「STAP細胞」というのかの定義によって,存在するとも,しないとも言えるのです。 

小保方氏が代理人弁護士を通じて14日に発表した文書によると、小保方氏以外の第三者がSTAP細胞作製に成功し、それを「理研も認識している」
と主張しました。

理研はSTAP細胞論文の著者以外に2人が作製したとの情報があることを認めましたが、「部分的な再現にとどまる」としています。

このことは,笹井氏の説明からも分かるように,多機能性を示す目印を確認した,という段階にとどまっていることがはっきりしました。

しかし,この目印だけでは、できた細胞が本当に,さまざまな臓器に分化し得る万能細胞(幹細胞)だと証明するには不十分なのです。
 
笹井氏は「STAPという現象は,非常に不思議な現象。

今でも信じられないが,その現象がなければ説明できない」という論理で,これを乗り越えようとしていますが,結論としては,STAP現象はもっとも
合理的で有望な「仮説]という見解に立っています。したがって,理研としては「仮説」を証明する必要があることになります。

笹井氏は,今回『ネイチャー』に掲載された論文はその部品にいろいろなヒビが入っているので,一旦,撤回して150パーセント確実な論文に仕上げ
てから再度,投稿すべきだと主張しています。

の点は,私もまったく同意見です。しかし,意地悪く考えると,笹井氏は「仮説」の段階で,『ネイチャー』誌への論文作製を手伝い,共著者として
投稿したことになります。

これにたいして小保方氏は,「仮説」ではなく,実証された「真実」だと主張し,論文撤回を拒否しています。

いずれにしても,今回の笹井氏の説明は,そつのない釈明ではありましたが,小保方氏および笹井氏の主張を裏付ける,新たな科学的根拠は何一つ示
されませんでした。

私は,今回の小保方氏の論文に関する限り,やはりこれは科学論文としては未完成で不正があり,直ちに撤回すべきだと思います。しかし,外部からの
刺激(ストレス)を与えることによって,細胞に多機能化への変化(たとえ不完全でも)を引き起こすことができるかもしれない,という発想は非常に
魅力的です。

これは,麻酔医であるチャールズ・バカンティが20年以上も前から唱えているアイディアですが,小保方氏は,その刺激として弱酸性の溶液に細胞を
浸す,というシンプルな方法を試みたわけで,この因果関係の説明ができれば,それだけでノーベル賞に値する発見だと思っています。

STAP細胞があるのかないのか,という問題とは別に,今回の一連の騒動で,私が非常気になった問題がいくつかあります。

その一つは,若い研究者に対する研究指導が甘く,もっと言えば「いいかげん」になっているのではないか,といいうことです。

まず私が驚いたのは,小保方氏が早稲田大学に提出した博士論は,100ページのうち20ページが,引用元を明示せず,コピーアンドペースト
(通称コピペ)であったことです。

この事実を審査員が発見できなかったのか,分かっていながら博士号を与えてしまったのかは分かりません。私の関係する歴史や社会科学の論文で,
ここまで露骨にやれば,その論文は「盗作」となり,著者は身分が問われます。

さらに驚くのは,小保方氏の博士論文の審査員の一人であった,チャールズ・バカンティ氏は,英科学誌ネイチャーの関連サイトの取材に「論文のコピー
をもらったり、読むように頼まれたりしていない」と話していることがわかったことです。(注2)

これは,信じられない話で。教育研究機関として早稲田大学は大学としての体をなしていない,と言われても仕方ありません。

小保方さんの博士論文を審査した早稲田大学の生命医科学科・常田聡教授の研究室で、彼女以外にも6人の博士論文にコピペ疑惑が浮上しました。

大学は第三者調査委員会を設けて博士論文全般にわたった再調査する方針です。しかし,今のところが具体的な内容は明らかではありません。

疑惑が指摘されているこれら6人の「博士」たちは現在、それぞれ大学や研究機関に所属しています。

東大医科学研究所の上昌広特任教授は「小保方さんは(論文盗用の)常習犯だった可能性が高い。
彼女はどこでそれを覚えたのか」と疑問を呈しています。小保方疑惑は日本科学会を揺るがす「パンドラの箱」を開けてしまったのではないだろうか。(注3)

大学院時代に,研究者としての基本的な倫理や方法の指導を受けてこなかったことが,今回の『ネイチャー』への論文に17行にわたってコピペが行われて
いることにも現れています。

しかし早稲田大学だけでなく,理研の調査委員会は,小保方論文のコピペにたいして「不正なし」との判定くだしています。これでは,若い研究者は,
他人の文章やアイディアを無断で借りることを当たり前と考えるようになってしまいます。

実際,小保方氏は,画像に別の画像を切り貼りしても,「してはいけないという認識がなかった」と平然と答えています。早稲田時代の教育指導の欠如に加えて,
理研においても基本的な指導が行われていないことを物語っています。

こうして「悪意なく」さらりとやってしまうことこそが,本当は最も深刻な問題であるという認識がないのです。

ちなみに,私は人文系ゼミを担当してきましたが,学部生の卒論に対しても,他人の文章をそのまま引用する場合には「  」をつけ,脚注で出所を示すこと,
アイディアを借りた場合にも,同様にその根拠を示すこと,それをしない場合には,盗作となるから注意するよう繰り返し指導してきました。

小保方氏が主筆となっている論文のチェックが内部でできなかったことは,理研という組織の監督・指導体制,共同執筆者にも大きな問題があったことを示して
います。

どう考えても,『ネイチャー』への投稿は時期尚早だったのではないかと思われます。というのも,一旦は『ネイチャー』側から採用を拒否された論文ですから,
どこからも疑義が生じない論文として万全を期すべきだったと思います。

投稿を急いだのは,4月の半ばには国会の承認を得て決定するはずだった,「特定国立研究開発法人」の指定が迫っているため,世間の評価を得るための業績
として,STAP細胞の衝撃的な論文を急いで出版する必要があったのかもしれません。

理研はこれを否定していますが,小保方論文が問題となった後,理研の理事長以下の幹部が特定法人の指定を受けられるよう,自民党の複数の国会議員に陳情
しています。

しかし,菅官房長官は4月9日,特定法人指定の閣議決定を先送りする考えであることを表明しました。この一事をみても,小保方論文が理研にとっていかに
マイナスに働いたかがわかります。

それどころか,今回の一連の問題が世界中に明るみに出てしまい,日本の科学研究の信頼性や,日本の大学が出す博士号にたいする信頼性を大きく損なったこと
は,日本にとって大打撃です。

ところで,日本において,小保方論文に関してさまざまな疑念や問題が指摘されているのに,当の『ネイチャー』誌が,今のところ何のアクションも起こして
いません。

これは,『ネイチャー』の査読機能が働いていないことを示しています。

「世紀の発見」といわれる衝撃的な論文であるにもかかわらず,「捏造」や「改ざん」が指摘されている論文を,なぜそのままにしているのでしょうか?

ある科学ジャーナリストは,「理研の対応を見極めているのでしょう」と述べています。『ネイチャー』にとって理研は大事なスポンサーなのです。
「ネイチャー・ジャパン」の英文広報誌のネットコンテンツ,小冊子の作製費に理研は年間7000万円ほど拠出しています。(『日刊ゲンダイ』2014年4月9日)
す。ここにも,純粋に科学とは離れた金銭の問題が見え隠れしています。

小保方氏の不服申し立て,論文の撤回,『ネイチャー』誌の対応,そして小保方氏の「研究不正」にたいする理研の再調査があるのかないのか,この騒動は当分,
続きそうな雲行きです。

(注1)私は会見の模様を見ていますが,活字媒体としては,『東京新聞』(2014年4月16日,朝刊)を参考にしています。
(注2)「朝日新聞 デジタル」(2014年3月20日) http://www.asahi.com/articles/ASG3M5WRDG3MULBJ00N.html
(注3)http://woman.infoseek.co.jp/ (Woman 2014年3月26日号) さらに,早稲田大学でのコピペ問題に関して,『AERA』(2014年3月31日号)は,
    審査員は実際にはよく読んでいないのではないか,ともコメントしています。
    また,第3章では,本文にない引用文献が参照文献欄では38の文献が突如,著者名,タイトル,引用雑誌とページが現れます。「朝日新聞 デジタル」3月12日号。
    http://www.asahi.com/articles/ASG3D32NBG3DULBJ002.html
    また,小保方氏が所属していた早稲田大学先進工学研究科がこれまで博士号を授与した280本すべての論文を対象に,盗用などの不正の有無を専門家が調査する委員会を設置することを決めました。
    『YOMIURI ONLINE』(20144月7日号)inehttp://www.yomiuri.co.jp/science/20140406-OYT1T50132.html;「朝日新聞 デジタル」(2014年3月18日)http://www.asahi.com/articles/ASG3X5CRBG3XULBJ00S.html

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【「いぬゐ郷」だより6】最近は,借りた田んぼの両側に連なる里山の整備に集中しています。
里山は,昔から人が手入れをして維持してきた人工林です。放置しておくと,藪となり,特に笹と竹が進入してしまいます。
最近,チェーンソーを購入し,村の人の同意を得て里山の整備を進めています。
これらを切り日の光が入るようにすると,さまざまな植物やきのこ類が繁殖します。今は,里山の端に,「のびる」が大繁殖しています。


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