2月4日(土)、日本絹の里の染織体験室で、標記の講習会が行われました。9時からの開講に、厳しい冷え込みにもかかわらず8時半にはほとんどの受講者が揃うという熱心さです。
絹の里所有の座繰り器8台に対して16名の希望者が出ましたので、1台を2名で使用することで希望者全員受講となりました。うち9名は2ヶ月程前に伝道師になった方々です。
推進課から土屋さんと秋山さんが来てくださり、学習部の井上雄が担当として参加しました。過去最高の受講者で活気に満ちた雰囲気になりました。
予定の9時に開講、今年も休日を返上して講師を務めて下さるのは県蚕糸園芸課絹主監の狩野さんです。ユーモアを交えた分かりやすい説明とていねいな指導に受講者の緊張感も消え、笑い声も混じります。狩野さんの改訂版のテキストに添って、製糸技術の移り変わり、座繰り生糸の特徴、煮繭することの意味、繭の煮方、座繰り糸の挽き方について講義があり、続いて煮繭の実習です。「座繰りの行程で一番難しいのは煮繭であり、座繰り器を繰ることはそれほど難しいことではない」というのが狩野さんの持論です。
繭の産地や生産時期により繭の品質が異なると煮繭時間も変わってくるので、必ず試し煮繭をすること、それによって煮繭時間が決まった
らその時間を厳守すること、繭がお湯によく沈むよう落とし蓋をする、繭の中にお湯を浸透させるために差し水をする等、糸を最も引き出しやすい状態の繭にするための作業についての解説がありました。糸が切れた場合の効率的なつなぎ方の実習も行いました。
追加使用の煮繭は秋山さんと絹の里の高橋さんが担当してくださり繭の補給はとてもスムースでした。
8台の座繰り器に16名が並んで操作する様は迫力を感じます。順調に器械が回り続ける組がある一方でよく糸が切れて中断する組もあり、挽く生糸の長さがずいぶん違ってきそうです。生糸を巻き取った小枠を座繰り器からはずし、お湯に浸します。今まで各自使用した道具類は洗剤を使って洗い上げます。そして昼食休憩です。この時間はいい交流の場になったようです。
午後は「揚げ返し」の実習です。2台の揚げ返し器に8人ずつ付き、昼食前に座繰り器からはずして湯に浸してあった小枠から、揚げ返し器の大枠に巻き取ります。交替でハンドルを回し、それぞれ生糸の長さに違いがあるものの、無事巻き取りが終わりました。大枠に巻き取った後は最初と最後の糸口がわかるように一緒に結びます(くち留)。そしてカセの形がくずれないように、「あみそ針」と「あみそ糸」を使い「あみそ」をかけます。割合難しい作業ですが、あらかじめ小枠の糸で練習しておいたので、皆さん上手に仕上げていました。美しい光沢の生糸の束を手にした受講者の皆さんは、一つの技術を習得した喜びに浸っていました。
受講者がお互いに協力しながら和気あいあいと実習する姿はとても気持ちのよいものです。
自分で蚕を飼って繭をとり、糸を挽いて着物に仕上げたいという夢を語る参加者も出てきました。そうした夢が実現できる環境が残されていって欲しいと心から思いました。
最後に、熱心に指導してくださった講師の狩野さん、絹の里の高橋さんと職員の皆さん、推進課の土屋さん、秋山さんに感謝いたします。
満足そうな受講者の皆さんの笑顔に今後の伝道活動での活躍を期待しつつ、散会しました。
(Y.I記)