息子が学校で借りてきて、「いま、これにハマッてる」というので、テーブルに置いてあった『都名所圖會』をぱらぱらめくっていると、おもしろくて、最近毎晩眺めています。
江戸時代後期に刊行された京都のおすすめスポット集のようなもので、全6巻11冊を1冊にまとめたものが『新修 京都叢書 第六巻』。
私の住んでいる京都府南部のことは5巻なのでうしろのほうに載っています。 見慣れた地名が次々にでてきて、挿絵も味があってとてもいいです。
たとえば、「宇治の里」のページには、
「都の巽宇治の里は茶の名産にして、高貴の調進年毎の例ありて製法作境にならびなし。山吹ちり卯の花咲そむる頃、茶摘 とて此里のしづの女白き手拭をいただき赤き前だれを腰に飜して、茶園に入り声おかしくひなびたる歌諷ひて興じけるあ りさま、陸羽が茶経には書遺し侍る。 木がくれて茶摘もきくや子規 ばせを」
と書いてあります。 お茶どころであること、茶摘みの様子などが生き生きと描写されていて、その場に立って書かれた臨場感があります。
しかも、芭蕉の句まで引用されているところが心憎い。 「木隠れて茶摘みも聞くや子規(ほととぎす) 芭蕉」 の句の下には茶摘みをしている女性の絵が添えてあります。
今もお茶摘みの時期には黒い寒冷紗で覆われた茶畑の中から女性の声が聞こえてきたりするので、昔から同じような風景だったのだなぁと思わされます。
六地蔵、木幡里、黄檗山万福寺、宇治橋、平等院と続きます。
この『都名所図会』は当時大変な人気の書であったらしく、これを皮切りに各種名所図会が次々と刊行されたそうです。
確かに、隠れた名所とか伝説などが載っているガイドブックっていまでもなかなかないですね。
しばらく返さないでほしいな。