ほよほよさんぽみちNEW

いつでも君のこと好きだったよ

水曜日は短歌の日(7) 木下こう『体温と雨』

2014-08-06 19:19:12 | 日記

 朝、出勤するつもりで服を選び、充電していた携帯とハンカチを持って一階へ降りたのに、まったく声がでず、仕事にならないのでお休みすることにしました。

 

 よくなったと思って油断すると、またぶり返してしまう今年の夏風邪。みなさんも気をつけてくださいね。

 

 さて、きょうは水曜日。短歌の日です。きょうは木下こうさんの『体温と雨』です。

 

 ・サンダルの釦をとめる指先のちひさき響き 海に行きたし

 

 サンダルの釦をとめる音。なんてささやかな音でしょう。音になる以前の音、というような誰にも聞こえない音です。釦をとめている人の耳にも届いていないかもしれません。

指先にしか届かない音。ちゃんとはまったことを教えてくれる安心のちいさい音です。そういう音を歌にする、そういう聞こえるような聞こえないような音を捉える木下さんがすてきだなぁと思います。

 

 ・草木(さうもく)を食むいきものの歯のやうなさみしさ 足に爪がならぶよ

 

 足の爪は言われてみるとなにかの歯のような気がします。肉食動物のような、噛み千切るとか、噛み砕く、といった大きな動きのある派手な(?)歯ではなくて、静かに草をもぐもぐと反芻するような静かで落ち着いたふうの歯。手の爪と比べてみると、足の爪は体のいちばん遠くにあって、自分のものなのによそよそしい感じがします。手の指は敏感で、ちいさな切り傷でもすぐに気が付いて何度もそれを見てしまいます。足の爪は寝る前くらいしか見ませんし、そんなにしょっちゅう怪我をすることもないので、放置されがちです。ちいさくて歯の形をした爪が並んでいるのをみたときに萌したさみしさは、遠くからじわりじわりと伝わってくるようです。

 

 ・葉のすみをすこし燃やしてよごれざるままに冷えたるじふやくの白

 

 クチナシもそうですが、十薬(ドクダミ)の花の白さは、雪の白、砂糖の白さではなくて、ちょっと絵具の白を塗り重ねたような、厚みのある白なんですね。葉のすみが少し枯れているのを「すこし燃やして」という言い方で表現されているのもいいですし、「よごれざるままに」といいながら、前に「すみをすこし燃やして」とあるので、ドクダミがすぐに茶色く焦げたように枯れることも連想されて、その短い時間、際立った白さがくっきりと見えてくるようです。

 

 ・煮ればなほつやめきながら魚(うを)は冷ゆ魚のまなこは雪をみてをり

 

 煮魚の目に映る雪。自在な目を通してみれば、そこらじゅうに物語はあふれていると、教えてくれるような歌です。

 

 歌を読む楽しさが感じられる1冊です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする